ぼっちの俺にはラブコメは訪れないんですか?

最東 シカル

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第2章 ぼちお君、奮闘

第37話 違和感と矛盾と

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「昨日のは冗談だからね?アッシー」

 授業の合間の休み時間。神咲さんがトコトコと俺の席に寄って来て、少し動揺しながら言った。

「・・・もちろん知ってるよ」

 冗談じゃなく、ガチということを知ってるよ。

「だ、だよねー」

 昨日のトークで俺のメンタルはズタズタに崩壊した。陽キャのノリかと思っていたのだが、まさか俺の名前ほんとに知らないとは思ってはいなかった。いくら俺が陰キャだとしても、最近いくらか喋り合った仲だ。下の名前くらい知ってるかと思うよそりゃ・・・。これからは自惚れ厳禁だな。

「そ、それにしても武流ってカッコいい名前だよね?アッシー」

 フォローになってませんよあなた。絶対思ってないでしょ。たける、って顔してないもん、俺。

「俺には不相応だけど」

「そんなことないと思うよ?」

 なんで疑問形なんですかね。

「そう・・・」

「あ、そういえば、あのトークグループ39人しか入ってないんだよね。全員入ってたら40人な筈なんだけど・・・。誰か知ってる?アッシー」

「さぁ知らない」

 ・・・あいつしかいないだろ、という気もしないでもないが。

「そうだよねー、じゃねっ」

「うん」

 多分、あいつはそういうものに興味を示さないだろう。興味があるのは妹キャラか、あるいは妹キャラか。それにしか興味がないらしく、何年か前、あいつの部屋に行った時俺は衝撃を受けた。部屋中タペストリーだらけだったのである。無論、アニメキャラの。細かく言うと、妹キャラであるが。
 当時は俺も若干尖っていた時期だから(芦田にとっての尖っていた時期、というのは、親を偶に無視する程度な事)その光景を見た時、俺はショックと共にを抱いた。

――お前・・・これ全部、集めたのか・・・?  

――あぁ、凄いだろっ。それでな、これが俺の一番のお気に入りなんだけど・・・

 ・・・変わり果てた祐樹の姿に、俺は思わず、泣きたくなるような思いに駆られた。

 出来事一つで、人はここまで変わるのだと、思い知らされた事を今でもハッキリと覚えている。
 俺は、祐樹のあの姿に、ずっと憧れていた。飾らない笑顔で人と接し、誰とでもすぐに仲良くなるその性格で、あいつは今まで生きてきた。
 幼いころから陰キャだった俺は数々の陽キャ達を見てきた。だが陽キャの中でも、あいつだけは、祐樹だけは何かが違って見えた。輝いて見えた。俺にはないものを腐るほど持っている。だがそれでも、変わらない姿に、驕らない姿に、俺は・・・憧憬の念を抱いた。
 
――祐樹お前は・・・

――うん?どうした?

――・・・いや、なんでもない。

――?そうか。

 どうにか祐樹を回復させようと、当時の俺は躍起になって頑張った。周囲の人間も巻き込んで、祐樹を戻らせようとした。・・・だが、ダメだった。祐樹は自分からやめてくれ、と俺に言ってきた。本人から言われたら流石に続行できないと思った俺は、仕方なく断念した。  
 だがそれ程までに、祐樹をここまでさせてしまうまでに、あいつは、あの出来事は・・・幼馴染の絵里奈は。祐樹にとって何よりも大切な存在だったのだろう。

「はぁ」

「どうした?ため息なんか出して」

 目ざとさナンバーワンの西条君が聞いてきた。

「・・・いんや、なんでもないよ」

「ならいいが・・・」

 ほんと、なんでもないならどれだけ良いか。


 ◇◆



<放課後 ―図書室―>

「最近、来ないね、芦田君」

「・・・そうですね」

 昨日声を掛けた時、芦田君はもう来ないと言っていた。あの件は解決したから、と。でも、本当にそれだけだろうか?芦田君は私と同じでボッチだ。今は・・・どうだろう。最近、芦田君の周りにはクラスメイトが沢山いるような気がしてならない。特に、神咲さんや瀬口さんと仲良さげな気がする・・・瀬口さんに至っては、この前のバスケの時間に一緒に何か話してたし・・・。一体どんな関係なんだろう。聞きたい・・・けど、なんて聞けばいいんだろう。あんまり深堀りした聞き方すると勘繰られる気もするし・・・。どうしよう・・・。

「詩音ちゃんは、武流さんに来て欲しいのですか?」

 っ!

「っ、ち、違うよっ、そ、その最近まで3人で一緒に居たから、なんていうか・・・」

「ふふっ、冗談ですよ。詩音ちゃん」

「もぉ―」

 麻衣ちゃんは真顔で言うから冗談に聞こえないんだよぉ・・・。

「ふふっ」

 ・・・麻衣ちゃんは、ほんとうに、何しても綺麗。一つ一つの動作にも所作がある。笑い方だってそう。女である私でも、一瞬目を奪われる程の美しさを持っている。
 だから、恥ずかしい話だけど、最近麻衣ちゃんの真似を練習している。笑い方や所作、麻衣ちゃんの真似をすれば、私みたいなぼんくらでも少しはマシになるかと思ってやっている。実際どうかは分かんないけど・・・。

「麻衣ちゃんは、何かその、違和感みたいなの、感じない?」

「違和感、ですか」

「うん」

 私はタメ口で話せるようになったのだが、未だ麻衣ちゃんは敬語で会話をする。何で敬語で話すのか聞いてみたところ「特に意識したことはありませんが、私は敬語で話す方が話しやすいのだと思います。なので、大体の方と話す時は敬語で話してしまいます」と言った。・・・私的には若干距離があるように感じるからタメ口で話してほしいけど・・・私のエゴを押し付けるのは良くないね。

「・・・特にはない、ですね」

「?そうか・・・」

 一瞬顔を逸らしたけどどうしたのだろう?

「・・・」

「・・・」

 これ。この静寂が私の違和感。基本は麻衣ちゃんとの会話はずっと続く。けど、偶にこうやって気まずくなる時が来る。このどこかしっくりこない感じ。喉元に魚の骨が刺さってイガイガする感じとよく似ている気がする。
 でも、大抵この静寂を先に破るのは・・・

「・・・正直に言いますと、私も、最近その違和感とやらを感じていると、思います」

「っ・・・ほんとに?」

 やっぱり、麻衣ちゃんも・・・

「はい、言葉に言い表しにくいのですが・・・」

「うん・・・私も、すごく、分かる」

「その、やっぱり武流さん、なのでしょうか・・・?」

「だと、思う」

 芦田君が居た時は、もっと楽しかったし、もっと充実してた。そしてなにより・・・。この3人とはそれ程長い時間一緒に居たわけじゃない。でも、そう感じさせる何かが、確かにあった。それは、麻衣ちゃんもそうなのだろう。違和感を感じているの事がその証拠だと思う。

「・・・」

「・・・」

 また、静寂が訪れる。

 そして、またしてもそれを先に破ったのは、麻衣ちゃんだった。
 麻衣ちゃんはふぅーと長めの息を出し、こう言った。

「・・・この違和感の原因を、始末しましょう」

「っ!・・・うんっ」
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