42 / 60
第2章 ぼちお君、奮闘
第41話 本物と偽物と‥‥
しおりを挟む
「一緒に、帰る?」
「は、はい・・・」
どういうことだ?槻谷のストーカーの件も沈着し、もはや彼女たちと一緒に帰る必要はないはずだ。
最近は、古瀬さんの若山さんの二人で仲良くしていたと勝手に思っていたのだが、どうやら違うのかもしれない。
「以前のように、また、3人で帰りたいと思っているのです」
「・・・」
若干彼女の頬が紅潮しているのは、自分の発言による大きな羞恥心のせいだろう。
「なぜですか?」
「そ、それは・・・」
再び言い淀む古瀬さん。何か言いにくい事なのかな。
「・・・女子2人の方が何かと都合が良くないですか?」
「それは、そうなのですが・・・」
「友達同士の方が気楽でいいと思いますよ?俺男だし、友達いないし、ぼっちだし」
あ、なんか自分で言ってて悲しくなってきた。
「「・・・」」
憐みの目で見られました。
「そもそも、なにかあったんですか?」
「・・・伝えるほどの内容でもないのですが、その、違和感を感じてまして」
「違和感?」
「はい」
・・・違和感なら最近俺にもいっぱいあるな。俺の周囲の人間関係とか。
「以前、3人で帰っていた時はこの様な違和感を感じたことは一度たりともありませんでした」
「・・・3人、と言ってもたった数日でしょ?」
この俺達3人の関係を一言で表すならば、浅すぎする関係としか言いようがないだろう。若山さんとだって、話すのは最低限度の内容だけだ。・・・最近はちょこちょこ話すけど。
古瀬さんに限っては知り合ってたった1ヶ月。ストーカー君の件が終り、彼女とは一度たりとも話していない。このような関係で、たった数日の関係で、違和感なんて感じるのだろうか。ましてや彼女はトップカースト。俺にはいくら頑張ったって届きやしない存在、はるか遠くて崇高な存在だ。俺が彼女と、彼女達と一緒に居ていいはずは、全くもってありやしない。
だが俺が言い終わったタイミングで、古瀬さんはふぅ、と短く息を吐いて強く、こう言った。
「私は・・・いいえ私達は、その数日が、とても輝いて感じられたのです」
「・・・」
「この違和感の正体は、私にはまだ、分かりません・・・」
ただ、と彼女は続ける。
「私達は、武流さんと過ごしたあの数日が、この3人で過ごしたあの数日が、何よりも素晴らしい時間に思えたのです」
「っ・・・」
「・・・詩音ちゃん」
隣で俯きながら、先程から黙っていた若山さんに優しく声を掛ける古瀬さん。
「詩音ちゃんも何か、言いたいことがあったのですよね?」
若山さんの背中を摩りながら、言い聞かせるように言う。
「・・・わ、私は、今までダメダメだったんです。私は、いつだって下を向いて、ウジウジして、前を向いて歩けませんでした。・・・いえ、その努力も怠って来たんです。いつか、誰かが、私に気づいてくれる。いつか、私にも心から笑える日が来るって、そう思っていたんです・・・。でも、結局そんなの私の驕りで、傲慢だったんです。・・・・・・・・・・でも、でもっ」
涙を目尻に溜めながら、必死に言葉を紡ぐ若山さん。
「芦田君は、そんな私を・・・・・初めて、見てくれました」
「・・・」
「麻衣ちゃんは、私の初めての友達のなってくれました」
「・・・」
目元をごしごしと拭いながら、若山さんは俺たち以外誰も居ないがらんどうの図書室で叫んだ。
「私にはっ!それが、本当に、本当にっ・・・・・・嬉しかったんです」
「っ・・・」
「だから!私はっ、また、3人で一緒に過ごしたいんです・・・・それだけなんです・・・」
それきり、すすり泣きしながら黙った若山さん。
「・・・」
そうか・・・・・
流石に俺は、そこまで若山さんが思い詰めていたとは気づけなかった。彼女がどんな思いで俺達と接していたのか、それを俺はもっと熟考するべきだった。
俺は自分がぼっちである事を何とも思っていないし、別に友達が欲しいわけでもない。だが若山さんは違う。彼女は本気で友達が欲しかったのだ。それも、低俗なものでなく、高い次元のものを。
「武流さん、以前の私は確かに間違っていました。武流さんに言われるまで、私は気づけなかったでしょう。人に頼って得たものは本物か。私は自分で言った事を自分で反故にしようとしていました」
そう、彼女はあの時明らかに錯乱していた。彼女のお願いを無碍にしたのは心苦しかったが、あれは致し方無しだった。
「ですが私は、それこそが間違っていたのだと気付きました」
「?」
「人に頼って得たものは本物ではないのかもしれません。ですが、本物になる為の糧となるものだと、私は気付かされました」
あなた達お二人のお陰で――
「そうですか・・・」
「はい」
この二人は成長している、確実に。初めの頃に比べ、彼女達には言いようがない何かが、実際に現れている。
それに比べ、俺はどうだろう。成長しない、成長しようともしない、成長したくもない。将来の夢、何がしたいのかも分からない。目前の目標すら持っていない。ただ単にのうのうと生きているだけ。そんな妥協で生きてきた俺と彼女達とは、やはり別世界の住民のように思える。
俺は彼女達と一緒に居ていいような奴じゃ・・・ない。
そして、丁重にお断りをしようとしたとき
「・・・すみません、やっぱり俺は「知りません」
「・・・・?」
・・・どうした?いきなり割って入ってきて。なにが知らないのだろう?
「知りません、武流さんの考えなんて」
「え?」
「武流さんが私達の申し出を断ることは分かっていました。ですが、それにもちゃんとした理由があるのでしょう?武流さんのその顔を見れば、分かります」
「・・・」
・・・その顔って一体どんな顔なのだろう。気になります。教えてください。めっちゃブサイクとかだったら流石に泣く。
「ですが私は先程も言った通り、知りません。武流さんの事。全くと言っていい程。なので私は断れたとしても構いません。なぜなら・・・・私は、あなたが素晴らしい人だと、分かっているからです」
「・・・」
・・・違う。そんなんじゃない。
「は、はい・・・」
どういうことだ?槻谷のストーカーの件も沈着し、もはや彼女たちと一緒に帰る必要はないはずだ。
最近は、古瀬さんの若山さんの二人で仲良くしていたと勝手に思っていたのだが、どうやら違うのかもしれない。
「以前のように、また、3人で帰りたいと思っているのです」
「・・・」
若干彼女の頬が紅潮しているのは、自分の発言による大きな羞恥心のせいだろう。
「なぜですか?」
「そ、それは・・・」
再び言い淀む古瀬さん。何か言いにくい事なのかな。
「・・・女子2人の方が何かと都合が良くないですか?」
「それは、そうなのですが・・・」
「友達同士の方が気楽でいいと思いますよ?俺男だし、友達いないし、ぼっちだし」
あ、なんか自分で言ってて悲しくなってきた。
「「・・・」」
憐みの目で見られました。
「そもそも、なにかあったんですか?」
「・・・伝えるほどの内容でもないのですが、その、違和感を感じてまして」
「違和感?」
「はい」
・・・違和感なら最近俺にもいっぱいあるな。俺の周囲の人間関係とか。
「以前、3人で帰っていた時はこの様な違和感を感じたことは一度たりともありませんでした」
「・・・3人、と言ってもたった数日でしょ?」
この俺達3人の関係を一言で表すならば、浅すぎする関係としか言いようがないだろう。若山さんとだって、話すのは最低限度の内容だけだ。・・・最近はちょこちょこ話すけど。
古瀬さんに限っては知り合ってたった1ヶ月。ストーカー君の件が終り、彼女とは一度たりとも話していない。このような関係で、たった数日の関係で、違和感なんて感じるのだろうか。ましてや彼女はトップカースト。俺にはいくら頑張ったって届きやしない存在、はるか遠くて崇高な存在だ。俺が彼女と、彼女達と一緒に居ていいはずは、全くもってありやしない。
だが俺が言い終わったタイミングで、古瀬さんはふぅ、と短く息を吐いて強く、こう言った。
「私は・・・いいえ私達は、その数日が、とても輝いて感じられたのです」
「・・・」
「この違和感の正体は、私にはまだ、分かりません・・・」
ただ、と彼女は続ける。
「私達は、武流さんと過ごしたあの数日が、この3人で過ごしたあの数日が、何よりも素晴らしい時間に思えたのです」
「っ・・・」
「・・・詩音ちゃん」
隣で俯きながら、先程から黙っていた若山さんに優しく声を掛ける古瀬さん。
「詩音ちゃんも何か、言いたいことがあったのですよね?」
若山さんの背中を摩りながら、言い聞かせるように言う。
「・・・わ、私は、今までダメダメだったんです。私は、いつだって下を向いて、ウジウジして、前を向いて歩けませんでした。・・・いえ、その努力も怠って来たんです。いつか、誰かが、私に気づいてくれる。いつか、私にも心から笑える日が来るって、そう思っていたんです・・・。でも、結局そんなの私の驕りで、傲慢だったんです。・・・・・・・・・・でも、でもっ」
涙を目尻に溜めながら、必死に言葉を紡ぐ若山さん。
「芦田君は、そんな私を・・・・・初めて、見てくれました」
「・・・」
「麻衣ちゃんは、私の初めての友達のなってくれました」
「・・・」
目元をごしごしと拭いながら、若山さんは俺たち以外誰も居ないがらんどうの図書室で叫んだ。
「私にはっ!それが、本当に、本当にっ・・・・・・嬉しかったんです」
「っ・・・」
「だから!私はっ、また、3人で一緒に過ごしたいんです・・・・それだけなんです・・・」
それきり、すすり泣きしながら黙った若山さん。
「・・・」
そうか・・・・・
流石に俺は、そこまで若山さんが思い詰めていたとは気づけなかった。彼女がどんな思いで俺達と接していたのか、それを俺はもっと熟考するべきだった。
俺は自分がぼっちである事を何とも思っていないし、別に友達が欲しいわけでもない。だが若山さんは違う。彼女は本気で友達が欲しかったのだ。それも、低俗なものでなく、高い次元のものを。
「武流さん、以前の私は確かに間違っていました。武流さんに言われるまで、私は気づけなかったでしょう。人に頼って得たものは本物か。私は自分で言った事を自分で反故にしようとしていました」
そう、彼女はあの時明らかに錯乱していた。彼女のお願いを無碍にしたのは心苦しかったが、あれは致し方無しだった。
「ですが私は、それこそが間違っていたのだと気付きました」
「?」
「人に頼って得たものは本物ではないのかもしれません。ですが、本物になる為の糧となるものだと、私は気付かされました」
あなた達お二人のお陰で――
「そうですか・・・」
「はい」
この二人は成長している、確実に。初めの頃に比べ、彼女達には言いようがない何かが、実際に現れている。
それに比べ、俺はどうだろう。成長しない、成長しようともしない、成長したくもない。将来の夢、何がしたいのかも分からない。目前の目標すら持っていない。ただ単にのうのうと生きているだけ。そんな妥協で生きてきた俺と彼女達とは、やはり別世界の住民のように思える。
俺は彼女達と一緒に居ていいような奴じゃ・・・ない。
そして、丁重にお断りをしようとしたとき
「・・・すみません、やっぱり俺は「知りません」
「・・・・?」
・・・どうした?いきなり割って入ってきて。なにが知らないのだろう?
「知りません、武流さんの考えなんて」
「え?」
「武流さんが私達の申し出を断ることは分かっていました。ですが、それにもちゃんとした理由があるのでしょう?武流さんのその顔を見れば、分かります」
「・・・」
・・・その顔って一体どんな顔なのだろう。気になります。教えてください。めっちゃブサイクとかだったら流石に泣く。
「ですが私は先程も言った通り、知りません。武流さんの事。全くと言っていい程。なので私は断れたとしても構いません。なぜなら・・・・私は、あなたが素晴らしい人だと、分かっているからです」
「・・・」
・・・違う。そんなんじゃない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幼馴染に告白したら、交際契約書にサインを求められた件。クーリングオフは可能らしいけど、そんなつもりはない。
久野真一
青春
羽多野幸久(はたのゆきひさ)は成績そこそこだけど、運動などそれ以外全般が優秀な高校二年生。
そんな彼が最近考えるのは想い人の、湯川雅(ゆかわみやび)。異常な頭の良さで「博士」のあだ名で呼ばれる才媛。
彼はある日、勇気を出して雅に告白したのだが―
「交際してくれるなら、この契約書にサインして欲しいの」とずれた返事がかえってきたのだった。
幸久は呆れつつも契約書を読むのだが、そこに書かれていたのは予想と少し違った、想いの籠もった、
ある意味ラブレターのような代物で―
彼女を想い続けた男の子と頭がいいけどどこかずれた思考を持つ彼女の、ちょっと変な、でもほっとする恋模様をお届けします。
全三話構成です。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?
さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。
しかしあっさりと玉砕。
クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。
しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。
そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが……
病み上がりなんで、こんなのです。
プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる