11 / 33
第十章
私は、西成で覚せい剤をシノギにしている組織と縁を持ち、売人から場代を納めさせる側の人間になった。
あの木村のオッサンと同じだ。
私が場代と言っているのは、場所代の事だ。
ミカジメという言葉を耳にした事があると思うが、それとはまた少し違う。
両方とも賃貸料と考えれば、同じようなものなんだけれど、西成でいう場代というのはそのまんま字の通りだ。
売人が立っているその場所を貸してやるから、その対価となる賃貸料を支払え。
そう考えれば判りやすいだろう。
場代はその場所によって金額が異なる。
一日、一万円そこそこの所もあれば一日、十万円以上する所もある。
客がよく来る場所程、場代も高くなるという訳だ。
この頃の私は豊中市の庄内にアパートを借りて、そこで生活していた。
西成という地区から少しでも距離をとりたかったからだ。
西成が普通の町じゃないからなのか、西成警察も普通ではない。
覚せい剤の取り引きをしている現場も、売人の顔も、西成警察はほとんど把握している。
そして、売人もその事を承知の上で取り引きしているのだ。
だから、デビューして一日で逮捕される売人もいれば、一週間で逮捕される売人、一ヶ月もつ売人もいる。
西成で一年もてば有名人になれる事は間違いないだろう。
西成には飛田新地という昔ながらの遊郭がある。
その飛田新地の守りをしているのは西成警察で、顧問か相談役をしているのが、あの有名な元大阪市長だという事は知られた話だった。
本当かどうかは知らないし、この頃がどうだったかなんて事も、勿論、判らない。
とにかく、西成という町が普通じゃない事だけは確かだ。
この頃、私の兄弟分が谷町にある覚せい剤の密売所を取り仕切っていた。
私は必要な時だけ密売所に出て、それ以外は庄内で過ごしていた。
そして、覚せい剤の配達などを始めて、シノギの範囲を広げていった。
尼崎のポン中仲間達のところにも、たまに顔を出したりしていたけれど、仲間達からはシノギなんかかけずに覚せい剤を渡してやるようにしていた。
平成八年の秋
私は尼崎のポン中仲間の家へと向かって歩いていた。
突然、腰から両足のつま先にかけて、ビリっと電気が走ったような衝撃を感じた。
かと思えば両足がつったようになって、両足とも痺れ始めて、動く事が出来なくなった。
その辺の物にしがみつきながら、何とか近くにある大隈病院までたどり着いた。
「これは難しいなぁ~ 私もこんなん見た事ないんやけど、、、ここ」
医師がレントゲンに写し出されている骨を指さした。
「これは第三腰椎になんねんけど、おたくの場合、これが生まれつき出来てない状態やねんなぁ~」
その医師の話では、人間の体というのは、外側から出来始めて、最後に真ん中がくっついて完成するという事だった。
私の場合、第三腰椎が完成しきれておらず、真ん中で分離している状態のようだ。
「これは、ほっといたら半身不随になる危険もあるから骨を移植せなあかんなぁ~」
難しい顔で医師から告げられた。
この医師は普段、兵庫県立塚口病院に勤めているからという事で、当分、そちらでの入院を勧められた。
だけど、この時には何とか歩けるぐらいにまで戻っていたので入院は断った。
当面、その県立塚口病院に通院しながら様子をみる考えを伝えた。
そして、手術自体は兵庫医大で行う予定を入れてから、大隈病院をあとにした。
平成八年十一月
私は二十歳になった。
成人してからほんの数日が過ぎた頃、尼崎東警察が家宅捜索令状と逮捕状を持って私の事を迎えに来た。
罪状は覚せい剤の譲渡と他人使用だった。
尼崎のたまり場に遊びに来ていた下新庄のユミが、覚せい剤を使用しておかしくなって、猫のように路上駐車してある車の下にもぐりこんだまま、誰かの名前を呼び続けていたところを通報されて、逮捕されたようだ。
それならそれで留置場か拘置所から手紙でもくれれば私は面会にも行ったし、差し入れだってしてやれたのだ。
しかしユミは御丁寧にも私の事だけじゃなく、たまり場にいた人間、全員の事をチンコロしてくれていた。
覚せい剤と注射器は谷町の密売所に置いていたので、庄内のアパートからは何も出なかった。
尿検査の結果もシロだったので不起訴になるだろうと考えていたのだが、世の中そんなに甘くはなかった。
私はユミへの覚せい剤譲渡と他人使用で起訴された。
起訴された私は尼崎東警察署から尼崎拘置所へと移監されて、クリスマスと正月と成人式を拘置所で過ごす羽目になってしまった。
尼崎拘置所には雑居房もあるにはあるのだが、ほぼ独居房だ。
入浴時間や運動時間以外は独居房でじっと座って生活しなければならない。
判決は懲役一年二ヶ月、執行猶予三年。
これが、私の初めての前科となった。
あの木村のオッサンと同じだ。
私が場代と言っているのは、場所代の事だ。
ミカジメという言葉を耳にした事があると思うが、それとはまた少し違う。
両方とも賃貸料と考えれば、同じようなものなんだけれど、西成でいう場代というのはそのまんま字の通りだ。
売人が立っているその場所を貸してやるから、その対価となる賃貸料を支払え。
そう考えれば判りやすいだろう。
場代はその場所によって金額が異なる。
一日、一万円そこそこの所もあれば一日、十万円以上する所もある。
客がよく来る場所程、場代も高くなるという訳だ。
この頃の私は豊中市の庄内にアパートを借りて、そこで生活していた。
西成という地区から少しでも距離をとりたかったからだ。
西成が普通の町じゃないからなのか、西成警察も普通ではない。
覚せい剤の取り引きをしている現場も、売人の顔も、西成警察はほとんど把握している。
そして、売人もその事を承知の上で取り引きしているのだ。
だから、デビューして一日で逮捕される売人もいれば、一週間で逮捕される売人、一ヶ月もつ売人もいる。
西成で一年もてば有名人になれる事は間違いないだろう。
西成には飛田新地という昔ながらの遊郭がある。
その飛田新地の守りをしているのは西成警察で、顧問か相談役をしているのが、あの有名な元大阪市長だという事は知られた話だった。
本当かどうかは知らないし、この頃がどうだったかなんて事も、勿論、判らない。
とにかく、西成という町が普通じゃない事だけは確かだ。
この頃、私の兄弟分が谷町にある覚せい剤の密売所を取り仕切っていた。
私は必要な時だけ密売所に出て、それ以外は庄内で過ごしていた。
そして、覚せい剤の配達などを始めて、シノギの範囲を広げていった。
尼崎のポン中仲間達のところにも、たまに顔を出したりしていたけれど、仲間達からはシノギなんかかけずに覚せい剤を渡してやるようにしていた。
平成八年の秋
私は尼崎のポン中仲間の家へと向かって歩いていた。
突然、腰から両足のつま先にかけて、ビリっと電気が走ったような衝撃を感じた。
かと思えば両足がつったようになって、両足とも痺れ始めて、動く事が出来なくなった。
その辺の物にしがみつきながら、何とか近くにある大隈病院までたどり着いた。
「これは難しいなぁ~ 私もこんなん見た事ないんやけど、、、ここ」
医師がレントゲンに写し出されている骨を指さした。
「これは第三腰椎になんねんけど、おたくの場合、これが生まれつき出来てない状態やねんなぁ~」
その医師の話では、人間の体というのは、外側から出来始めて、最後に真ん中がくっついて完成するという事だった。
私の場合、第三腰椎が完成しきれておらず、真ん中で分離している状態のようだ。
「これは、ほっといたら半身不随になる危険もあるから骨を移植せなあかんなぁ~」
難しい顔で医師から告げられた。
この医師は普段、兵庫県立塚口病院に勤めているからという事で、当分、そちらでの入院を勧められた。
だけど、この時には何とか歩けるぐらいにまで戻っていたので入院は断った。
当面、その県立塚口病院に通院しながら様子をみる考えを伝えた。
そして、手術自体は兵庫医大で行う予定を入れてから、大隈病院をあとにした。
平成八年十一月
私は二十歳になった。
成人してからほんの数日が過ぎた頃、尼崎東警察が家宅捜索令状と逮捕状を持って私の事を迎えに来た。
罪状は覚せい剤の譲渡と他人使用だった。
尼崎のたまり場に遊びに来ていた下新庄のユミが、覚せい剤を使用しておかしくなって、猫のように路上駐車してある車の下にもぐりこんだまま、誰かの名前を呼び続けていたところを通報されて、逮捕されたようだ。
それならそれで留置場か拘置所から手紙でもくれれば私は面会にも行ったし、差し入れだってしてやれたのだ。
しかしユミは御丁寧にも私の事だけじゃなく、たまり場にいた人間、全員の事をチンコロしてくれていた。
覚せい剤と注射器は谷町の密売所に置いていたので、庄内のアパートからは何も出なかった。
尿検査の結果もシロだったので不起訴になるだろうと考えていたのだが、世の中そんなに甘くはなかった。
私はユミへの覚せい剤譲渡と他人使用で起訴された。
起訴された私は尼崎東警察署から尼崎拘置所へと移監されて、クリスマスと正月と成人式を拘置所で過ごす羽目になってしまった。
尼崎拘置所には雑居房もあるにはあるのだが、ほぼ独居房だ。
入浴時間や運動時間以外は独居房でじっと座って生活しなければならない。
判決は懲役一年二ヶ月、執行猶予三年。
これが、私の初めての前科となった。
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
AI小説のみわけかた
みねバイヤーン
エッセイ・ノンフィクション
小説家になろうでは2025年10月28日にリワードが開始されました。
それ以来、小説家になろうのランキングがAI小説に汚染されているように感じ、エッセイをなろうに投稿したところ、多数の反響をいただきました。
なろう民のノウハウを結集した、AI小説のみわけかたです。
いただいたノウハウは随時更新中です。
アルファポリスの皆さま、アルファポリスのAI小説汚染状況や、みわけかたなどコメントいただけるとありがたいです。
なお、いただいたノウハウは本文に追記し、他サイトにも掲載します。本文に記載しないでほしい方は、コメント欄にその旨あわせて明記してください。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。