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#0『全ての始まり』
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ごく普通の朝だった。天気は晴れもう九月も終わると言うのにまだ暑くシャツが背中に張り付いている。
「暑いなぁー、秋はどこいったんだよー、遅刻か?消滅か?」
「なぁーに鬱陶しいことぼやいてんの、よ!」
「いっづっっ‼︎」
不意に背中に大きな衝撃が加わりよろけ、バッと後ろに振り向くとそこには元気なボーイッシュ少女にして僕の幼馴染、九九花 希だ。幼少というか同じ病院で生まれた仲ではあるものの性格が合わないため彼女が一方的に絡んでくるのだ。彼女は痛みで背中をさする僕を見て高らかに笑っている。
「情けないなー、ちょっとこづいただけだよ?」
「こずいた⁉︎あれでか⁉︎背中にドロップキック喰らったかと思ったわ‼︎」
「はぁ?流石に大袈裟でしょ!私パーで叩いただけだし!」
「こずいてないじゃん…」
希は見るからに不貞腐れているがそこにフォローを入れるほど僕も人間ができていない。しかし後が怖いので放課後にハーゲンダッツを奢ることで手を打ってもらった。
「じゃあ、私こっちだから。」
「ああ、じゃあまた。」
僕たちは昇降口で別れる、そして気だるげに階段を登り踊り場に足を置いた瞬間、足元に光り輝く魔法陣が現れる。
「は!?なっ!は!?」
僕はパニックになり辺りを見回す。止まっていた。人が、いや僕以外の時間そのものが止まっていた。
「なんなんだよこれ⁉︎クソッ!」
逃げようと駆け出したが既に僕の足は光の粒になり消えかけていた。
「うわぁぁぁあ‼︎ああああ!なんなんだ‼︎なんだよ!これぇ‼︎」
ジタバタと醜くもがくが体がうまく動かない、これだけ騒いでいるのに自分以外の全てが微動だにしない状況に激しい疎外感を感じ、気が狂いそうになる。
「だr」
ついに口までもが消え去り僕の身体は鼻より上以外は消えてしまった。
(くそ!なんだよ。眠い。)
ゆっくりと瞼が落ちる。そしてついに僕の全てがこの世界から、あの世界からは消えてしまった。
「おお!成功したぞ!」
「ついに!ついに成し遂げたのね!」
(誰だ?うるさいな)
「静まるのじゃ!王の御前であるぞ!」
「「も、申し訳ありません。」」
僕は目をゆっくりと開ける。すると目の前には荘厳な柱が立ち並び黄金の装飾が輝かしく彩られている。辺りを見回すと、老人2名とローブを被った数名の男女に囲まれている。
「あ、あのここはどこですか?」
戸惑いながら質問するものの興味深そうにこちらを伺っているだけで答えない。
「あの‼︎」
「よくぞ来てくれた‼︎勇者よ‼︎」
突然の大声に驚いて前を向くとそこには髭の長い老人が立っていた。王冠をかぶり、高級そうな服を着ていて見るからに王様だったので急いで体勢を変えてひざまずく。その様を見て王様は高らかに笑う。
「はっはっはっ!構わんよ、楽にしなさい。」
僕は気さくなその物言いに心を許してしまった。ゆっくりと立ち上がり軽く会釈をする。
「えっと、ありがとうございます。それで、ここはどこなのでしょうか?」
「うむ、ここはラビアム・ムグラ王国、その王の玉座よ。そしてお主はわしらが異世界から呼び寄せた勇者様なのじゃ。」
「はぁ、異世界?勇者?」
「まぁ、混乱も分かるが、まずは話を聞いてくれ。」
「え?ああ、はい。」
軽く頷く僕を見て王様は続ける。
話を簡単にすると、今この世界ではここ「ラビアム・ムグラ王国」と「セラシリア・レグールル帝国」とで戦争をしており、防戦一方のところ魔王が復活し、なんとかしろと「聖教会勢力」が圧力をかけ他国ともどもドタバタとしているらしい。だから外の世界から人を連れてきてなんとかしてもらおうとしたらしい。
「いや、無理でしょ。」
「無理ではなぁい!」
「いや!無理っすよ!僕は学生ですよ!戦闘で使えそうな特技なんて射的だけだし、政治のことも無知なんですよ!?」
「安心せい!戦争や政治はわしの領分、なんとかする。お主には魔王をどうにかしてほしいのだ。それにお主にはギフトもある!」
「ギフト?」
「おい、魔水晶をもってこい。」
「かしこまりました。」
王様のそばにいた老人が奥に行き戻ってくると緑色の水晶を持ってきた。王様は水晶を受け取るとこっちに歩み寄り水晶を差し出す。
「さあ、触れてみよ。この水晶を使えばお主のステータスとスキルが分かる、こんな風にな。」
王様がそう言って水晶に触るとウィンドウ画面のようなものが出る。
ゼクレスト・ウル・ラビアムLv45
HP26 MP96 体力21 筋力15 技量32 知能98
スキル
・王の威圧・王流剣術・王国魔術
と表示されるのを見る。
「ぼくもそれにさわれば良いんですか?」
「そのとおり、さぁ」
目の前に出されたそれに触れるとウィンドウ画面が表示される。
入江 陽一Lv12
HP65 MP0 体力72 筋力32 技量 垓 知能78
スキル
・無し
「おお、ん?」
僕は周りの空気が変わったことを感じ取った。
「なぜだ?勇者は全てのステータスが100を超えるはず、スキルもなければ技量のステータスもまともに表示されんとわ、とんだハズレだ。」
周りが落胆と苛立ちの眼差しで僕を見る。
「えっとハズレなら僕は元の世界に帰れますか?」
「無理じゃ。」
「は⁉︎なんでですか⁉︎」
「言ったろ、ハズレだと、お主が選ばれたのは偶然、何も見えぬ中で適当に手繰り寄せたカードをまた何も見えぬ中で完璧に元の位置へ戻せるか?現実的ではない。」
動揺が隠せなかった。足は震え、視界が溶ける。それでもなおこの場の過半数が僕に苛立っているのが分かる。恐怖があるが、何も聞かないわけにはいかなかった。
「じゃあ、僕はこれからどうなるんですか?」
「ん?ああ、当然穀潰しなどおいてはおけないな」
そういうと王様は右手を上げる。すると、兵士が2人駆け寄ってきて携えていた剣を使って僕の両足を切断した。
「グァぁぁぁあー‼︎‼︎」
僕は倒れもがき苦しむ。断面が熱く、じわじわと痛みがやってくる。血潮を撒き散らしカーペットを濡らす。
「ああ‼︎ぐっ!うぐっ!」
王はゴミでも見るかのように僕を見る
「おい、早くソレを片付けろ。次の召喚をやるぞ。」
そう吐き捨てると王は奥へ消えた。僕は兵士に抱えられて城の後ろに広がるスラム街へ落とされた。
「ぐっ、うぅぅ…」
血が流れている。どうやら積み上がったゴミがクッションになり助かったらしい。揺れる視界で辺りを見回すと近くで火が焚かれていた。僕はそこへ這っていき、火の中に脚を突っ込む。
「くっ」
肉が焼け爛れたところで引き出すときちんと止血がなされていた。しかし痛みが消えるわけもなくまだ地獄を脱した訳では無かった。僕は地面を這いながら移動を始める。その街には人の気配がなく動物の声と僕が這い進む音のみが響いていた。しばらく移動するとゴミの中の車椅子を見つけた。這い寄り、ひっぱり出し、壁に車椅子を押し付けてからよじ登り座る。うまく座れた事によって僕の目線が変わり見たく無かった現実に直面する
「ああ、僕の足が…」
痛みのせいか焦燥感のせいか涙が出て止まらなかった。何一つ好転せぬまま車椅子を動かす。廃れたスラム街はジメジメしており、なおかつひどい悪臭が立ち込めていた。しばらくして曇天の空を見つめ、もういっそのこと死んでしまおうかと思った時、遠くから微かに人の声がした。僕は車椅子を走らせた。何か考えがあった訳ではないがとにかく人と話したかった。しばらく走りようやく見つけたのは、黒い鬼のような大男と逃げ惑うエルフの少女だった。
「マジかよ。どうすれば…」
辺りを見回すと錆びてはいたが使えそうな直剣を拾い近くの石を鬼に投げつけた。
「おい!化け物、食いやすい餌ならここにあるぞ!」
鬼は声に反応し、振り向いたと思ったらいきなり突進してきた。それをいなし、背中に突き刺すが筋肉が硬くうまく刺さらない。
「うぐっ!」
あの巨体で回し蹴りできるのかよ。僕は車椅子を止め鬼に向かって突進して飛び乗り鬼の目に剣を突き立てて掻き回した。暴れ狂う鬼の首を捩じ切った。
と同時に僕は倒れた。
「うっうーん。」
目が覚めると知らない天井が目に入る。ゆっくりと起き上がると両足に義足が付いていた。
「ここは?」
「ああ、目覚めたのですね。」
声の方を向くと銀髪の可愛らしいエルフが泣きそうな顔で頭をげた。
「先ほどは助けてくださりありがとうございました。」
「いえ、気にし何いでください。えっとお名前は?」
「ああ、もうし遅れました。私はリリンと言います。」
「僕は入江 陽一です。」
僕は手を差し出し握手を求めた。僕たちは握手を交わし、僕がここにいる経緯を話した。するとリリンも僕に自分の身のうちを話してくれた。
「そうか、リリンさんは迫害を。」
「ええ、ダークエルフは不吉ですから。居場所が無いんです。」
「うーん、綺麗なのにね。」
「うぇあ?」
リリンは戸惑い顔を赤くしていた。その仕草が可愛らしかったこともあり放って置けなかった。
「なら、つくろうか。」
「え?」
突然の話に彼女は困惑していた。
「居場所だよ。居場所のない奴なんて何人もいるんだよ?そういう人たちを集めてさ。」
僕は車椅子から立ち上がるとよろけてリリンに支えられる。
「ごめん、まだ慣れなくて。」
「当たり前です!まったく。」
「でも、居場所を作るって何を作るんです?」
「うーん、街とか?」
「王国にバレますよ?」
痛いところをつく、でも確かに現実的じゃ無いのかもしれない。
「じゃあ組織で!」
「組織?」
「そう、ギャングみたいな。」
「ギャング?」
「ああ、ギャング無いのか、えっと裏社会を牛耳る組織みたいな。」
「ああ、ファリングのことですね。」
ここではそういうらしい。リリンがポンと手を叩いている。
「じゃあそれで!」
僕は窓の外、晴れ渡った空を見上げた。この地の底から這い上がる確かな決意を胸に。
To be continue
「暑いなぁー、秋はどこいったんだよー、遅刻か?消滅か?」
「なぁーに鬱陶しいことぼやいてんの、よ!」
「いっづっっ‼︎」
不意に背中に大きな衝撃が加わりよろけ、バッと後ろに振り向くとそこには元気なボーイッシュ少女にして僕の幼馴染、九九花 希だ。幼少というか同じ病院で生まれた仲ではあるものの性格が合わないため彼女が一方的に絡んでくるのだ。彼女は痛みで背中をさする僕を見て高らかに笑っている。
「情けないなー、ちょっとこづいただけだよ?」
「こずいた⁉︎あれでか⁉︎背中にドロップキック喰らったかと思ったわ‼︎」
「はぁ?流石に大袈裟でしょ!私パーで叩いただけだし!」
「こずいてないじゃん…」
希は見るからに不貞腐れているがそこにフォローを入れるほど僕も人間ができていない。しかし後が怖いので放課後にハーゲンダッツを奢ることで手を打ってもらった。
「じゃあ、私こっちだから。」
「ああ、じゃあまた。」
僕たちは昇降口で別れる、そして気だるげに階段を登り踊り場に足を置いた瞬間、足元に光り輝く魔法陣が現れる。
「は!?なっ!は!?」
僕はパニックになり辺りを見回す。止まっていた。人が、いや僕以外の時間そのものが止まっていた。
「なんなんだよこれ⁉︎クソッ!」
逃げようと駆け出したが既に僕の足は光の粒になり消えかけていた。
「うわぁぁぁあ‼︎ああああ!なんなんだ‼︎なんだよ!これぇ‼︎」
ジタバタと醜くもがくが体がうまく動かない、これだけ騒いでいるのに自分以外の全てが微動だにしない状況に激しい疎外感を感じ、気が狂いそうになる。
「だr」
ついに口までもが消え去り僕の身体は鼻より上以外は消えてしまった。
(くそ!なんだよ。眠い。)
ゆっくりと瞼が落ちる。そしてついに僕の全てがこの世界から、あの世界からは消えてしまった。
「おお!成功したぞ!」
「ついに!ついに成し遂げたのね!」
(誰だ?うるさいな)
「静まるのじゃ!王の御前であるぞ!」
「「も、申し訳ありません。」」
僕は目をゆっくりと開ける。すると目の前には荘厳な柱が立ち並び黄金の装飾が輝かしく彩られている。辺りを見回すと、老人2名とローブを被った数名の男女に囲まれている。
「あ、あのここはどこですか?」
戸惑いながら質問するものの興味深そうにこちらを伺っているだけで答えない。
「あの‼︎」
「よくぞ来てくれた‼︎勇者よ‼︎」
突然の大声に驚いて前を向くとそこには髭の長い老人が立っていた。王冠をかぶり、高級そうな服を着ていて見るからに王様だったので急いで体勢を変えてひざまずく。その様を見て王様は高らかに笑う。
「はっはっはっ!構わんよ、楽にしなさい。」
僕は気さくなその物言いに心を許してしまった。ゆっくりと立ち上がり軽く会釈をする。
「えっと、ありがとうございます。それで、ここはどこなのでしょうか?」
「うむ、ここはラビアム・ムグラ王国、その王の玉座よ。そしてお主はわしらが異世界から呼び寄せた勇者様なのじゃ。」
「はぁ、異世界?勇者?」
「まぁ、混乱も分かるが、まずは話を聞いてくれ。」
「え?ああ、はい。」
軽く頷く僕を見て王様は続ける。
話を簡単にすると、今この世界ではここ「ラビアム・ムグラ王国」と「セラシリア・レグールル帝国」とで戦争をしており、防戦一方のところ魔王が復活し、なんとかしろと「聖教会勢力」が圧力をかけ他国ともどもドタバタとしているらしい。だから外の世界から人を連れてきてなんとかしてもらおうとしたらしい。
「いや、無理でしょ。」
「無理ではなぁい!」
「いや!無理っすよ!僕は学生ですよ!戦闘で使えそうな特技なんて射的だけだし、政治のことも無知なんですよ!?」
「安心せい!戦争や政治はわしの領分、なんとかする。お主には魔王をどうにかしてほしいのだ。それにお主にはギフトもある!」
「ギフト?」
「おい、魔水晶をもってこい。」
「かしこまりました。」
王様のそばにいた老人が奥に行き戻ってくると緑色の水晶を持ってきた。王様は水晶を受け取るとこっちに歩み寄り水晶を差し出す。
「さあ、触れてみよ。この水晶を使えばお主のステータスとスキルが分かる、こんな風にな。」
王様がそう言って水晶に触るとウィンドウ画面のようなものが出る。
ゼクレスト・ウル・ラビアムLv45
HP26 MP96 体力21 筋力15 技量32 知能98
スキル
・王の威圧・王流剣術・王国魔術
と表示されるのを見る。
「ぼくもそれにさわれば良いんですか?」
「そのとおり、さぁ」
目の前に出されたそれに触れるとウィンドウ画面が表示される。
入江 陽一Lv12
HP65 MP0 体力72 筋力32 技量 垓 知能78
スキル
・無し
「おお、ん?」
僕は周りの空気が変わったことを感じ取った。
「なぜだ?勇者は全てのステータスが100を超えるはず、スキルもなければ技量のステータスもまともに表示されんとわ、とんだハズレだ。」
周りが落胆と苛立ちの眼差しで僕を見る。
「えっとハズレなら僕は元の世界に帰れますか?」
「無理じゃ。」
「は⁉︎なんでですか⁉︎」
「言ったろ、ハズレだと、お主が選ばれたのは偶然、何も見えぬ中で適当に手繰り寄せたカードをまた何も見えぬ中で完璧に元の位置へ戻せるか?現実的ではない。」
動揺が隠せなかった。足は震え、視界が溶ける。それでもなおこの場の過半数が僕に苛立っているのが分かる。恐怖があるが、何も聞かないわけにはいかなかった。
「じゃあ、僕はこれからどうなるんですか?」
「ん?ああ、当然穀潰しなどおいてはおけないな」
そういうと王様は右手を上げる。すると、兵士が2人駆け寄ってきて携えていた剣を使って僕の両足を切断した。
「グァぁぁぁあー‼︎‼︎」
僕は倒れもがき苦しむ。断面が熱く、じわじわと痛みがやってくる。血潮を撒き散らしカーペットを濡らす。
「ああ‼︎ぐっ!うぐっ!」
王はゴミでも見るかのように僕を見る
「おい、早くソレを片付けろ。次の召喚をやるぞ。」
そう吐き捨てると王は奥へ消えた。僕は兵士に抱えられて城の後ろに広がるスラム街へ落とされた。
「ぐっ、うぅぅ…」
血が流れている。どうやら積み上がったゴミがクッションになり助かったらしい。揺れる視界で辺りを見回すと近くで火が焚かれていた。僕はそこへ這っていき、火の中に脚を突っ込む。
「くっ」
肉が焼け爛れたところで引き出すときちんと止血がなされていた。しかし痛みが消えるわけもなくまだ地獄を脱した訳では無かった。僕は地面を這いながら移動を始める。その街には人の気配がなく動物の声と僕が這い進む音のみが響いていた。しばらく移動するとゴミの中の車椅子を見つけた。這い寄り、ひっぱり出し、壁に車椅子を押し付けてからよじ登り座る。うまく座れた事によって僕の目線が変わり見たく無かった現実に直面する
「ああ、僕の足が…」
痛みのせいか焦燥感のせいか涙が出て止まらなかった。何一つ好転せぬまま車椅子を動かす。廃れたスラム街はジメジメしており、なおかつひどい悪臭が立ち込めていた。しばらくして曇天の空を見つめ、もういっそのこと死んでしまおうかと思った時、遠くから微かに人の声がした。僕は車椅子を走らせた。何か考えがあった訳ではないがとにかく人と話したかった。しばらく走りようやく見つけたのは、黒い鬼のような大男と逃げ惑うエルフの少女だった。
「マジかよ。どうすれば…」
辺りを見回すと錆びてはいたが使えそうな直剣を拾い近くの石を鬼に投げつけた。
「おい!化け物、食いやすい餌ならここにあるぞ!」
鬼は声に反応し、振り向いたと思ったらいきなり突進してきた。それをいなし、背中に突き刺すが筋肉が硬くうまく刺さらない。
「うぐっ!」
あの巨体で回し蹴りできるのかよ。僕は車椅子を止め鬼に向かって突進して飛び乗り鬼の目に剣を突き立てて掻き回した。暴れ狂う鬼の首を捩じ切った。
と同時に僕は倒れた。
「うっうーん。」
目が覚めると知らない天井が目に入る。ゆっくりと起き上がると両足に義足が付いていた。
「ここは?」
「ああ、目覚めたのですね。」
声の方を向くと銀髪の可愛らしいエルフが泣きそうな顔で頭をげた。
「先ほどは助けてくださりありがとうございました。」
「いえ、気にし何いでください。えっとお名前は?」
「ああ、もうし遅れました。私はリリンと言います。」
「僕は入江 陽一です。」
僕は手を差し出し握手を求めた。僕たちは握手を交わし、僕がここにいる経緯を話した。するとリリンも僕に自分の身のうちを話してくれた。
「そうか、リリンさんは迫害を。」
「ええ、ダークエルフは不吉ですから。居場所が無いんです。」
「うーん、綺麗なのにね。」
「うぇあ?」
リリンは戸惑い顔を赤くしていた。その仕草が可愛らしかったこともあり放って置けなかった。
「なら、つくろうか。」
「え?」
突然の話に彼女は困惑していた。
「居場所だよ。居場所のない奴なんて何人もいるんだよ?そういう人たちを集めてさ。」
僕は車椅子から立ち上がるとよろけてリリンに支えられる。
「ごめん、まだ慣れなくて。」
「当たり前です!まったく。」
「でも、居場所を作るって何を作るんです?」
「うーん、街とか?」
「王国にバレますよ?」
痛いところをつく、でも確かに現実的じゃ無いのかもしれない。
「じゃあ組織で!」
「組織?」
「そう、ギャングみたいな。」
「ギャング?」
「ああ、ギャング無いのか、えっと裏社会を牛耳る組織みたいな。」
「ああ、ファリングのことですね。」
ここではそういうらしい。リリンがポンと手を叩いている。
「じゃあそれで!」
僕は窓の外、晴れ渡った空を見上げた。この地の底から這い上がる確かな決意を胸に。
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