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序章

0話 炎上しやすく、壊れやすい

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 このページ、プロローグは、直接物語には関係しない導入の儀式のようなもの。大概、意味不明な謎設定が書き連ねられているだけ。読み飛ばしても構わない。

 おっと、彼女が戻ってきたから黙るね。

 <なろう界隈>と称される沼は、今日も燃えている。
 この沼は、小説家になろうと志し、漫然まんぜんと何年、何十年ものあいだ書籍化しょせきか作家という偶像ぐうぞうに囚われ、魑魅魍魎ちみもうりょうに成り果てた幻影ファントム巣窟そうくつ

 <なろう界隈>に魅了される人間は、炎上しやすく、壊れやすい者が多い。その性質は、まるで針葉樹しんようじゅのよう。
 針葉樹しんようじゅは、燃えやすく延焼えんしょうしやすい。けれど火持ちは悪い。しかし良く燃えるため、瞬間的な火力は高い。それゆえに、炎上しやすい。そして密度がひくく、軽い。柔らかいという特性を有する。それゆえに、いとも 容易たやすく割れる。

 この物語のストーリーテラーは幻影ファントム
 名をドリドリという。〝Iアイ Dreamedドリームドゥ a Dreamドリーム〟――『夢を夢見ていた』がその名の由来。

 ドリドリはアラサーの喪女もじょ色恋沙汰いろこいざたとは無縁な生活を送っている。とはいえ〝無縁〟であることと〝無関心〟であることは別。
 プライベートな時間の全てを費やし執筆し続けていた大人の恋愛小説が、コンテストで受賞。それを機に書籍化しょせきかの話が進行。しかし、もうすぐ出版――という矢先、<取りめ>の洗礼を受けた。結果、その作品は死に、ドリドリは幻影ファントムへと成り果てた。
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