周りが英雄職なのに俺だけが無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~

咲良喜玖

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侍の里 剣聖の師は無職

第10話 レミさんの意見に賛成だ

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 朝の日差しが部屋に入る前。
 まだ暗闇が空を支配している頃。

 「おはようじゃ! さ! 起きろじゃ!」
 「え?」

 声に驚いて目が覚めた。
 起きたと同時に外を見ると。

 「暗! まだ朝じゃねえわ」
 「起きる時間じゃ!」
 「いやだから朝じゃねえって、つうかまだレミさんいたの。夢じゃなかったの!?」
 「現実じゃぞ!」

 枕元で、踊っているレミさんは、夢の住人じゃないらしい。
 現実の世界にいる話す鳥だ。
 
 頭がおかしくなったと思ったからこそ、オレは早く寝たのに、一日経っても現実が変わらなかった。
 ということは、本当に現実なのか。
  
 「マジで・・・現実なの。夢であってよ」
 「何がっかりしてるのじゃ」
 「いやだって、まだ小鳥が話してるんだぜ。オレ頭おかしくなったんだなってさ。思っちゃうじゃん。やっぱ病院行こうかな……どうしよう」
 「それはそれは大変じゃな」
 「ああ。これはこれは大変だぜ」

 なんて会話して、謎の鳥と意気投合してから、真っ暗な庭に出た。
 まだ夜だろうが、朝一の風だと思い込んで、風を感じて、深呼吸してからの仕切り直しである。
 澄み切った山の空気で心機一転してみた。

 「オレの肩に乗るなよ」
 「なんでじゃ、乗り心地抜群じゃ」
 「へぇ~。乗り心地ってあるんだ」 
 「あるのじゃ!」
 
 なんてまた普通に会話しながら準備運動をしていると。

 「朝早いな」
 「お! アマルか。軽く体操でもするか。動こう!」
 「・・・うむ。そうしよう。リフレッシュだ」
 「ああ、気分を変えようぜ。オレも、お前もさ」
 「??????」

 アマルが来てくれたので、オレは二人で準備運動をした。
 戦いでよく動かす肩や腰などを重点的にして、体操が終わるとオレたちは縁側に並んで座った。

 「どうだ。アマル。心と体は休まったか」
 「うむ。だいぶ回復してきたと思う」
 「そうか。お前、まあまあ回復力あるな。ハードモードで鍛えて、ボロボロの体だったろうにな。頑丈でよかったな」
 「うむ。ボロボロである。ぬしの鍛え方は異常である」

 普通に会話ができるようになってきた。
 だいぶ、クソガキ感が抜けてきた。

 「そうだな。オレもそこは思う所はある。だが」
 「だが?」
 「時間がない。強くなるにはな。お前さ、このままだと死ぬわ。これは決定事項と言ってもいいくらいだ。それにな、いくらオレとルナさんが一緒にダンジョンに行くと言っても、お前のレベルが、二級よりもやっぱり準一級程度に入らねば、進み切れないかもしれない。いいか。あそこは、モンスターのレベルも出現回数も桁が違うからな。オレたちでも、お前を気遣う時間がないかもしれないんだ。分かってくれるか?」

 戦いに集中しだせば、オレもだが、ルナさんもきっと、アマルを気にしていられない可能性がある。
 そうなると二級程度では足りないかもしれない。
 準一級は必須かもしれない。 

 「・・・うむ。わかっている。拙者、あの時のおぬしの戦いで分かったのだ。拙者には力が足りない。あのミノタウロスを前にして、余裕でいるくらいの実力でなければ、ダンジョンを突破できないんだと、思い知らされた」
 「おお。そうか。じゃ、オレの指導。明日からまたハードに行くぞ」
 「え・・・え、さすがに・・・」
 「意気込みどうした?」
 「・・・うむ。やろう。生きるために」
 「おお! そんじゃ、今日も全力で休め。親父さんとどこか出かけろ。英気を養うんだ」
 「わかった。そうする!」
 「おう! 切り替えが大事だからな。今日は目一杯休むんだぞ」
 「わかった」

 と言ってアマルはいい顔つきになって来た。
 親父さんの愛情の効果があったかもしれない。
 うん。やっぱり成長には愛だぜ。
 無償の愛が必須だわ。

 ◇

 自分の部屋に戻るアマルの背中を見て、レミさんは急に話しかけてきた。

 「ルルよ」
 「なんだ。レミさん?」
 「なんか切羽詰まっておるのじゃ? あの小僧、顔が暗いのじゃ」
 「ああ。あの子はな。ガルズタワーに挑戦しなきゃいけんのよ」

 レミさんは人間の表情の変化を読み解けるらしい。
 オレの設定上の鳥にしてはやけに人間臭い一面がある。

 「ガルズタワー……ああ、あそこの斜めのじゃな・・・え? 子供じゃぞ。あそこに?」
 「そうだぞ。子供でも挑戦しないといけないんだ。よく分からんがここの掟らしいぞ」
 「なに。子供にあそこをか。あの子・・・死ぬのじゃな」
 「ああ。でもオレとルナさんが行くからな。死なせん」 
 「ほう。あの昨日、ご飯の時にいた女子じゃな?」
 「ああ。そうだ。オレの剣の師匠でもある。それと姉さんみたいな存在の人だな」
 「そうか・・・でも、あの女子でも厳しいのでは?・・・あそこは並大抵のモンスターの設定じゃないのじゃ」

 たしかに、ルナさんの実力でもダンジョンは厳しいような気がする。
 なぜなら、ダンジョンは、準特級クラスのオレのような冒険者ですら行く手を阻むギミックが多数あるのだ。
 そのダンジョンに対して、数多の戦場を駆けてきたルナさんでも、軍の戦場と同じように上手く立ち回れるかと言われたら難しい。
 今回、オレ以外がド素人というパーティーだ。
 それで、最高難易度のダンジョンに挑む。
 普通の冒険者ならやらない馬鹿クエストだわ。
 あえてランクをつけるとなると、Sランクの護衛任務となるだろう。
 改めて思う。
 オレってアホだな・・・・。
 相変わらず一銭にもならんことをするのが好きらしいわ。
 
 「まあな。オレもそこを気にしてるのさ。ってオレはいいのかよ」
 「ルルは強いのじゃ。なんでも適応できるじゃろうて」
 「マジかよ。あんた、嘘くせえ」
 「なんでじゃ、そちは強いと褒めておるじゃろが」
 「いや、オレって英雄職じゃないしさ。無職だぞ」
 「英雄職? 無職?」
 「あんた。ジョブ知らんの?」
 「知らん!」
 「なんで、神様じゃないんか。オレたちは必ず10で天啓をもらうんだぞ」
 「天啓????」
 「は? やっぱ夢じゃん。皆さん、この人、俺の設定で話してますよ。どうしよう。病院行った方がいいかもしれない。困るわ。時間がないのに」

 俺はマジで頭がおかしくなったのかもしれない。

 「もしや・・・まだ、やっておるのじゃ・・・あやつは・・・相変わらずじゃな」

 レミさんは誰かのことを友達みたいに話した。
 天啓を与える人の事を言っているなら、女神の事だよな。

 「あやつって誰よ。女神さまの事か」
 「女神・・・・あやつが・・・悪たれじゃろ。あやつ」
 「悪たれだって、はぁ?」
 「まあよいのじゃ。あやつは好き勝手やればじゃ。それより余を連れてってくれ」

 話をはぐらかされた。

 「なんだっけ。聖なる泉だっけ?」
 「おお。そうじゃ」
 「それ、ファイナの洗礼に守られているジークラッド大陸に行かないとダメなんでしょ」
 「そうじゃ!! 覚えておったか!!! でかしたのじゃ!!!」
 「昨日の事だよ。覚えてますよ。オレの頭がおかしくなったってね」
 「おかしくないのじゃ! ちゃんとしておるのじゃ!」
 「ああ。はいはい。そうですよね。そういう風に最初は思いますよね。自分が異常じゃないって、最初は思いたいですよね」
 「だから! ルルは正常じゃ! 何故か、余の声が聞こえるだけで、他は正常だ」
 「ああ。オレに優しい設定で嬉しいですね。おかしくないよって言ってくれるだけでありがたいっすね」

 こんな言い合いをした後に、朝食を食べに行った。

 ◇

 レミさんは四六時中、オレの肩に乗っている。
 だから、オレが見ている幻とかではないことは明らかだ。
 なんせレミさんのことは、確実に皆に見えている。
 オレの肩に皆の視線があるからだ。
 
 でも、このレミさん声が、皆には届いていない。
 オレにだけ声が聞こえるらしい。
 なんで?
 マジで頭おかしくなったのかと思ったが、翌日に認識が変わる。

 「アマル。いいぞ! キレが増した」
 「本当か!」
 「おお。自信持っていけよ!」
 
 アマルはついにオレの指導に応え始めた。
 だいぶ動きが良くなったので、ゴブリンジェネラルを呼び出して再戦させてみた。
 
 ごめんよ。
 ご近所のゴブリンジェネラルさん。
 アマルの戦闘経験値になってくれ。


 でも、いざゴブリンと対峙するとアマルの動きが悪い。
 訓練の時の三分の一の実力になってしまっていた。

 「ん? なんでだ」
 「そうじゃな。動きが悪いのじゃな」
 「おお。レミさんもそう思うか」
 「うむ。修練の時の動きは悪くないのじゃ・・・でも今は・・・」
 
 オレとレミさんは同じ意見だった。
 アマルの動きは、練習だと遥かに良い動きをしている。
 動きとしては、準一級くらいに強くて速い。
 なのに、今だと三級程度の動きになっていて、やっと動いているような形だ。
 せっかくの強さがあるのに、心が邪魔して、その実力を発揮していない。

 「アマル。焦るな。お前はもう強い。ゴブリンジェネラル如きの攻撃はいなせるし。倒せるぞ!」
 「・・・う・・・うむ」

 素直に返事はしてくれるが、動きがまだ固い。
 どうにかしてやりたいが、こればかりは本人次第だ。
 心を鍛える。
 これは誰かが介入してできるものじゃない。
 自分が乗り越えるべき課題だ。
 心だけは誰かに鍛えてもらえるわけじゃないんだ。
 自分で気付いて、自分で心を叩いていくしかない。
 鋼を鍛えるように・・・。

 「自信じゃな・・・あやつ、どこかで自信をつけなければ、死ぬのじゃな。ガルズタワーに行くのじゃろ。ぶっつけ本番では死ぬのじゃ」
 「なるほど。それもそうだよな。たしかに、レミさんの言う通りだ」

 オレを納得させる意見を言ってくれたので、レミさんが、オレの意思で喋る小鳥ではないことを知ったのだった。

 
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