周りが英雄職なのに俺だけが無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~

咲良喜玖

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ジョブは関係がない 無職と英雄たち

第10話 寝かしつけ

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 土曜には、王都に戻ったオレたち。
 日曜になるとお天気予報をしないといけないヨルガさんの為に帰って来たわけだ。
 それで今回の事は、アマルやゲルグにも、良い気分転換になったみたいで、二人はあれ以来仲良くもなった。
 年が近いので、これはちょうどいい。
 王となれば、親しい友を作るなんて難しいだろう。
 剣聖とあれば、強さゆえに友が作りにくいだろう。

 二人の今後の人生にとって、この子どもの時代から、友情を育めるのは大きいはずだ。
 二人で協力して生きていって、この国を盛り立てていけるかもしれない。
 絶対に良い事だと思う。
 オレたちのようにさ。

 そして、オレも、今回のディディさんのおかげで成長した気がした。
 それは心の成長だ。
 オレもまだまだな部分がたくさんある。
 自分を見つめ直して、ディディさんのように工夫して成長していこうと思った。


 ◇

 そこから一カ月後。
 王子の座学を後ろから見ていたオレは、ずっと知りたかった授業を聞けた。

 「よいですか。王子。民を守るためには・・・時には・・・」

 この授業は為政者としての心構えなどを教わる授業。
 帝王学だ。
 ゲルグが、一生懸命ノートに書いて勉強している後ろで俺もメモをしていた。
 爺さん先生の授業は、黒板などに字を書かずで、コンコンと話すだけの授業なので、必死にメモをしないと爺さんの話に手が追いつかない。
 ちょっと、言葉と言葉の間に間をくれ!
 せめて、一呼吸を置こうぜ爺さん!
 っと思っていることは内緒にしよう。
 

 「以上です。王子。三日後にテストします」
 「わかりました。よろしくお願いします」

 王子は爺さん先生に頭を丁寧に下げて、オレの所に来た。

 「ルル殿! 今日は稽古をしますか?」
 「そうだな……今日は座学にしよう」
 「え? 座学?」 
 「ああ。とりあえずさ。お前を重戦士として一流にすることにしたわ。んで、そこから王として勉強しよう。兵よりも強い王となれば、舐められるようなことはないだろう」
 「なるほど。武も文も・・・両方頑張れと!」
 「ま、そういう事だな」

 いつも前向きに頑張るゲルグは、オレの事をかなり信頼してくれているみたいだ。
 スキルや戦い方の座学も成長著しかったので、教えと指導の結果が反映されている。
 そして、アマルも彼と一緒に座学を受けているのだが・・・。
 こいつ、オレの事をお師匠様とか言ってるくせに、座学になると眠りやがる。

 「zzzzzzzz」

 机に突っ伏して、完全拒否反応を示していた。
 アマルは授業開始五分も経たない内に夢の世界へ旅立った。


 ◇
 
 オレが一通り重戦士のスキル解説などをした後。

 「んで、重要な事を伝える。お前の成長ルートだ」
 「成長ルート?」
 「ああ、出来るだけお前は重戦士の速度を取っていこう」
 「え? 重戦士に速度型があるのですか」
 「いや、そういう名称はない。けど、オレがその道しるべを作っておいた。お前は斧の二刀流という非常に珍しいタイプの戦士だからな。スキル取得は、『二刀流』と『重武器』『重装重量無制限』のスキルを取ろう。防御技術は自前で鍛えるから、防御のほとんどを重装でカバーするんだ。んで、攻撃だけに専念して、相手を圧倒する攻撃を身につけよう。攻撃の滑らかさを手に入れるためにスキルの重武器が必須で。二刀流は、利き手じゃない方の攻撃速度が落ちないという副次効果もあるから、早めに取ろうな」

 オレが渡した用紙が分厚かったので、ゲルグが驚いていた。

 「わ、わかりました」
 「よし。あとは、二つの小斧を操っても、斧の一刀流よりも早く動かすことを意識しよう。イメージは大切だ。重戦士なのに、速度で相手を圧倒だ! これがスローガンな!!!」
 「はい! ルル殿!」

 とまあ、素直なゲルグはここから懸命に修行に励んでくれるのだった。

 「あ・・・授業・・・終わったのでしょうか。あれ」
 
 最後に座学が終わると起きるアマル。
 なんとなく、こいつがあのルナさんの甥っ子であることが分かる座学だった。


 ◇

 それから三カ月後。
 オレは手紙を書いた。
 色々な事を同時進行でしている状態では、しばらくジャコウに帰ることが出来なくなったので、今までお世話になった人にお礼の気持ちも込めて、手紙を書いておいた。
 
 お袋、親父に一通。 
 元気であると簡単に。
 
 それとシエナにも書いておいた。
 彼女のおかげで、オレは前向きになれたから。
 元気かい? くらいの可愛らしい文章に・・・。
 って思ったけど。
 あの子はもう8歳くらいになっているし、頭のいい子だったから、文章もしっかり読み込むかもしれない。
 だから大人に書くのと同じように挨拶の分も丁寧に書いておいた。
 喜んでくれたら嬉しいな。

 あと、師匠と先生。ルナさんにも書き。
 あいつらにも書いておいた。
 フレデリカの手紙には帝王学の知識をまとめたものを先生と同じ内容で送り。
 クルスとジャックにも二人に有益なスキルを羅列して、頑張れとだけ伝えておいた。

 オレが帰らなくなって一年と少し・・・・。
 すぐ帰るとか言った手前にさ。
 いまだに帰れずにいるのが、何だが申し訳ない気がしてくるんだけど。
 こればかりはしょうがない。

 人生は旅。
 人生は出会いと別れの連続。
 みたいなもんなんだ・・・・。
 分かってくれ。可愛い生徒たちよ

 ってカッコつけてるけど、ただ流されているだけだよね。
 運命とかじゃないよね。
 オレの人生ってさ。
 行き当たりばったりになってるよな。
 今の王様やアマルとの出会いだってさ。
 めちゃくちゃ運だよね。人生って運だよな。
 人と人との出会いの運だよな!!!
 ははははははは!!!

 って言い訳をさらりと発動させて、今日もオレは自分自身の鍛錬を積み重ねながら、アマルとゲルグを指導していったのであった。


 ◇

 王にゲルグを頼まれてから八カ月。
 オレは遂に新たな場所に行く。
 新天地ジョルバ大陸だ。


 ジョー大陸の飛空艇離着陸場にて。
 目の前にある飛空艇は、見たことがない形であった。

 「これは・・・なんだこれ? 流線形じゃなくて、筒状?」
 「ああ。ルルはこれが空を跳んでいる所を見たことが無いのか。この飛空艇は俺たちのものなんだよ」

 王は気軽に声をかけてくれた。
 ここに来てオレと王はだいぶ打ち解けている。

 「へえ、シャルテ号とヴィセンテ号しか知らなかったですよ」

 オレが飛空艇を見上げて言った。

 「そうか。これはテレミア王国の飛空艇アーゲント号だ」
 「おお。初代王の名ですね」
 「そうだ。王がご存命の頃にはなかったが。それから二百年後に作られた。世界に今ある五機の飛空艇の一つであるぞ」
 「え、五機? そんなにあるんですか」

 この世界にある飛空艇は二機だとばかり思っていたので、オレは普通に驚いた。
  
 「五機の内訳は、俺たちのアーゲント号。世界を回るヴィセンテ号とシャルテ号。テレスシア王国のアスタルト号。そして、冒険者ギルドが持つボヤージュ号だ」
 「へえ。冒険者ギルドにも飛空艇なんてあったのか」
 「あそこはな。連絡手段に使うようだぞ。手紙とかクエストの管理とかをするために、飛び回っているみたいだ」
 「へえ、そうだったんすか」

 知らない知識だった。
 さすがは一国の王だ。

 「それで、ギルドのは小型さ。人を大量に運び出すものではないからな。そして俺たちのアーゲント号は中型機で、アスタルト号も同じくだな。王族のみを運び出すから大きくする必要がないのさ」
 「なるほどね……少し小さめですもんね」

 飛空艇アーゲント号を詳しく見てみると分かる。
 ヴィセンテ号とシャルテ号のツーサイズ位小さく感じる。

 「では、乗ろう! ジョルバを目指すとしようか。皆の者!」
 「「「はっ。王様」」」

 皆が最敬礼している中。
 オレは。

 「アマル! 気合い入れろよ」
 
 隣にいるアマルに声をかけた。

 「ううううう。お師匠! どうしましょう。高いんですよね。空は・・・」
 「まあな。空だもん。アマル、空が高くなかったら、それは空じゃなねえよな。たけえに決まってんのよ」

 ビビりのアマルには、空は高いんだぞとお伝えしておいた。

 ◇

 飛空艇アーゲント号のメインルームには、操縦桿を握る人や、マジックタンクの方たちがずらりと並んでいた。
 そしてこの部屋は外が丸見えで240度ほどのガラス張りの部屋だった。

 「外が見えるな……凄いな」

 オレは王族たちが座るアーゲント号の前方の特等席に、座らせてもらった。
 普通の兵士たちはアーゲント号の胴体部分の客席のような固い席にいる。
 ちなみにオレの後ろにいるのは興奮気味のゲルグがいて、彼は目を輝かせていた。

 「おお~~。初めて乗りました。ルル殿。私、初めて乗りました!!!」

 しかし、オレの隣にいる男は。

 「どうしましょう。空が見えるんですよね。高いんですよね」

 めっちゃ怖がっていたのである。
 アマルの顔は青ざめていた。

 「はぁ。度胸ねえな。ゲルグを見習えよ。今にも立ち上がりそうなくらいに元気一杯だぞ。座ってろって言われてるのにな」
 「えええ。ゲルグ王子は高い所が得意なんですよ」
 「そうか。お前は苦手か」
 「苦手というか。落ちたからというか」
 「・・・ああ、あの時落ちたもんな。でもオレが助けたじゃないか」
 「はい。非常に助かってますが……怖かったもので」
 「そうか……いつか克服できるといいな・・・お! 飛ぶらしいぞ」

 目の前にいるマジックタンクの方たちの魔力が全開になったのを見た。
 マジックタンクが三人。
 通常の飛空艇は五人が魔力を回して飛ぶ。
 一回のフライトで十人がこまめに交代して進むが、王族御用達のアーゲント号はそれよりも小さいために、三人で十分なんだそう。
 でもオレの計算では、この人たち……ジョルバに着いた時にはヘロヘロじゃないか。
 そう思ったのである。
 
 「三秒後出発します! 三、二、一・・・・アーゲント号発進!」

 艦長が合図を出すと、普通の飛空艇よりも速く船体が浮き上がり飛び立った。

 「まじか! 速ええ」
 
 オレにはこの速度が通常の飛空艇の二倍に感じる。
 それくらい風を切り裂いて進んでいるように感じた。

 「おお。空ですね。雲ですね」

 ゲルグは外を見て楽しそうであった。

 「ううう。下に海が・・・高い・・・」
 「アマル、下を見るなって。黙って目を瞑って、寝てろ」
 「え・・怖いんですけど・・・目を瞑って落ちたらどうするんですか」
 「落ちる事を考える馬鹿がいるか。そしたら誰もが怖いわ!」

 情けない剣聖であると思ったが、オレは肝心な事を忘れていた。
 こいつはまだ13の子供だった。

 「よし、それじゃあ、アマル。ゲルグ。授業をしてやろう・・・今行くジョルバ大陸。そこは何の大陸と呼ばれている」
 「火の大陸です」

 ゲルグは自信満々で即答してくれた。

 「正解だ。ゲルグは勉強してるな。それじゃあ、ジョルバ大陸の災害は知ってるか」
 「え? 分かりません。勉強してませんでした」
 「そうか。じゃあ覚えておけ。ジョルバ大陸の災害はモンスタークエイクだ。大陸にある山の約二分の一が火山であるジョルバ大陸。あそこで巨大な地震が起きたと同時に、火山が噴火して、辺りにモンスターが出現するんだ」

 はた迷惑な災害。
 それが、モンスタークエイクだ。

 「マグマの中にいた火属性のモンスターどもが一斉に辺りにばら撒かれる迷惑極まりない災害であるんだぞ。ただし、この災害は滅多に起きない。大体、80年から150年くらいの周期だから、人間でいえば爺さん婆さんの代の人間にしか被害が分からんな」
 「わかりました。大切な事ですね……覚えておきます」
 「ああ、そうしておけ・・・ってやっぱな」

 オレの予想通り、ゲルグはしっかり授業を聞いてくれた。
 だからアマルは・・・。

 「zzzzzzz」
 
 寝た。
 授業をしたから寝てくれたのである。
 オレの鮮やかな寝かしつけにより、アマルはアーゲント号が無事にジョルバ大陸に着くまで眠ってくれたのであった。
 オレに感謝しろよ。居眠り剣聖!!!

 でもさ、オレの授業を受けろよな!
 一回くらいまともにさ

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