周りが英雄職なのに俺だけが無職の冒険者  ~ 化け物じみた強さを持つ幼馴染たちの裏で俺は最強になるらしい ~

咲良喜玖

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ジョブは関係がない 無職と英雄たち

第18話 考えは色々

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 とある部屋にて。
 ヴィジャル騎士団団長シャオラと、ヴィジャル騎士団を支える男ディクソンが対面で会話していた。
 ディクソンは机に肘をかけて椅子に座り、彼の前にいるシャオラは後ろ手で立つ。

 「閣下。オリッサが・・・」
 「そうか。やはりテレミア王を襲う気か」

 ディクソンが悩んだ顔で答えた。

 「そうみたいです。情報を分析した結果。テレミア王のゲイン様と我らの王が横並びになる武闘大会が一番可能性が高いかと」 
 「シャオラ。私はどうしたらよいかな。黙認した方がいいか。その後に私が王になるための戦いをした方が良いか?」

 現王が殺されてから動いた方がいいのか。
 それとも現王を守る事で、事態を終息させた方がいいのか。
 二つの考えがあった。

 「…それは答えかねます。閣下」 

 シャオラは真っ直ぐディクソンの瞳だけを見た。
 あなたが導き出す答えは、なんでしょうか。
 信頼している男がする決断はいかほどであるのかと、ここで堂々と値踏みした。

 「・・・そうだな。お前の言う通りだ」
 「閣下。私は、なにもおっしゃってませんが」
 「いや、お前の目が物語っている。私がここで王を見殺しにして、自分が王になろうとするなとな! よし。私たちは、オリッサが動き出してから、すぐに王を守る。両方の王を守るように動け!」
 「はっ! 閣下の仰せのままに!」

 難しい顔をしていたシャオラは満面の笑みになった。

 「ふっ。今ごろになって笑顔になって。私にこう答えてほしかったのだろう」
 「いえ。私は希望を申しておりません!」

 そう言ったシャオラは満足げな笑みを浮かべて部屋を後にした。
 彼女が去っていった扉を見つめ、静かになった部屋の中でディクソンは呟く。

 「これはとっておきの隠し玉を使うか。シャオラだけでは、この戦場は厳しいかもしれん。あの人に依頼するか。上手い具合に嵌めこんでな……」
 
 何らかの秘策を持ち合わせているようだった。
 
 ◇

 テレスシア王国の国王バルマ・ダルトンは自室に、マールヴァー騎士団団長レックス・キーサーを呼んだ。
 王の部屋に呼ばれるなど滅多にないことなので、レックスは緊張していた。

 「王。私を部屋に呼ぶとは。さすがに緊張します」
 「うむ。そうか。はははは」

 王は高らかに笑った。

 「で、情報はどうなってる。騎士団は動き出すのか」
 「……そうですね。掴んだ情報によれば、オリッサがあちこちで動き出していると。特に城下町の締め付けは厳しいものであるそうです。一般人の税はおよそ1.4倍ほどになっているとか」
 「馬鹿な。勝手にそんなに増やすとは・・・いったいどういう事だ」
 「それが王を無視して議会が動いているようです」
 「貴族連合か……まずいな」
 「どうしますか。王! このままオリッサと、貴族連合を野放しには出来ませんよ」
 「分かっている。ああ、フレデリカがいればな。こんな事態になるとは。あの子の才覚で皆をまとめるのが一番効率的だったかもしれない」
 「王! それは出来ないでしょう。あの子はまだ幼かったのです。それに今の現状で、こちらで過ごせば、他の王子や王女らのように殺されていたかもしれません」
 「それもそうだな。大王………逃した魚は大きいか」
 
 王は天を見上げて、天井の先の空の彼方へ意識を飛ばした。
 王はフレデリカの事を思い出していた。
 一国の王として、王族の誰よりも才覚があった彼女。
 時折見せる王としての器は幼少時からずば抜けていた。
 他の王子や王女らでは比較の対象にもならないほどに、圧倒的な輝きを持っていたのだ。
 惜しいと思っても仕方ない事だった。

 「レックス。お前たちの今後の動きだが。余は無視してくれ。民の方を頼む。もし、余の命が狙われる時が来ても、守るべきは民! そして今回はなんとしてもテレミア王国の方たちには無事でいてもらえ。内戦になろうとも、ここと仲が悪くなり、対外戦も行ってしまっては最悪だ。マールヴァー騎士団は全力でテレミア王国の一団を守るのだ」
 「わかりました。王。必ずテレミア王国の方々をお守りします」

 マールヴァー騎士団の役割は、王よりもテレミア王国一団の無事。
 律儀な男レックス・キーサーは重要な任務を任されていた。


 ◇
 
 次期王の呼び声が高いイェスティ・メーラは、自分の支持母体である貴族連合の盟主ゴルディ・メーラとオリッサ騎士団団長バージス・メーラとの会話をしていた。

 三人の関係は、王位継承権一位のイェスティ。二位のゴルディ。
 この二人の従弟であるバージスである。

 「姉様。僕たちのこれからの動きはどのように」
 「そうですわね。このままでいいでしょう。あ奴らを泳がしておきましょう」
 「……俺もそれでいいのか。本家の姉弟」
 「ええ。バージス兄様もそうしてくださいまし」
 
 優雅に紅茶を飲むイェスティは、今後に期待していた。
 これから起きるであろう大混乱の時代の覇者になろうとしていた。

 「手配は済ませておりますでしょ。ゴルちゃん」
 「姉様・・・ゴルちゃんはやめてください。いつまでも子供ではありません」
 「ええ。でもわたくしにとってはあなたはいつまでも可愛い弟ですもの。おほほほ」
 「はぁ」

 ゴルディはため息をついてから、姉が飲んでいる物と同じ紅茶を飲んだ。

 「どう、バージス兄様。他の方はわたくしたちの動きをお気づきですの?」
 「まあ、そうだな。そういう風に情報を流しておいたから、どこもかしこも俺たちが動くだろうと思っているだろうな」
 「計画通りですわね」

 イェスティは満足そうにクッキーを頂いた。

 「ゴルちゃん。手筈は?」
 「心配しないでいいですよ。ちゃんと裏から手を回して、足がつかないようにあの方たちに依頼しましたから。あとはバージス兄様たちが一掃してくれれば終わりです。姉様の王位は確実となりましょう」
 「あら、ゴルちゃん、よく出来ましたね。では、後はバージス兄様にお願いしますね」
 
 バージスは無表情で答えた。

 「・・俺に任せておけ」 
 「ええ。お任せしますわ」

 そう言って、イェスティはバージスに何かを託した。


 ◇

 オレはヨルガさんの拘束から逃れたので、ちょうど一息を入れたいと思っていた。
 近場にカフェがあると、司書のアルステルさんが教えてくれたので、そこに向かって歩いていると、後ろから声をかけられた。
 
 「あの・・・ルルさんでは。ルルさん!!!」
 「え?」

 聞いたことのある声に驚き振り向く。

 「私です。私!!!」 
 「・・・おお! シエナのお父さん!!!」

 オレはシエナの親父さんのリンドウさんに会った。

 「なぜこちらに。あ、そうだ。立ち話もなんだし、そこのカフェに行きませんか?」
 「ええ、オレも、ちょうどそこに行こうと思ってたんですよ」

 彼が誘ってくれたので、二人でカフェに入ってお茶をした。
 席に着き、オレと彼の会話は疑問から始まる。

 「あの、どうしてシエナのお父さんがここに? ここはジョルバですよ?」
 「それがですね。あの後、元々の事業が成功しましてね。今は大陸間での事業拡大をしてるところです。ジョルバで販売を始めたんです」
 「・・・へ~~。何の仕事ですか?」
 「私の仕事は、魔力で移動する車。魔力車の販売と開発、その他諸々ですね」
 「車???」
 「はい。車と言えば、荷車とか馬車とかあるじゃないですか」 
 「ありますね」

 『牛車もかな』
 と余計な思考も出ていた。

 「それらの動力は人の力、馬の力とかですが。私の車は魔力で移動する車です。しかしですね。結構魔力消費が激しくてですね。今後はそこが改良点ですが。それでもその段階でも、便利なんで、所々で売れている感じです。でも大量には売れませんよ。お高いのでね」
 「へ~~~。そうだったんだ。この二年で売れた感じですか?」
 「はい。以前もちょくちょく売れていたんですが、妻の体調が良くない頃はそんなに精力的に仕事が出来なかったので、ルルさんに妻を治してもらってからは、仕事に身が入り、どんどん上手くいくようになりました。ですから、全てルルさんのおかげです」
 「いえいえ。それはあなた自身のお仕事の実力ですよ。オレは関係ないですよ」

 なんか絶賛されているんですが。
 なんでだ???
 彼女を治したくらいしか、オレは役に立っていないじゃないか。

 「あ! そうだ。大切なことを聞いてませんでしたね。シエナは元気ですか!」
 「ええ。元気一杯ですよ。いつかお兄ちゃんに会うんだって毎日言ってます。冒険者になるための鍛錬なんだって言って弓を勉強してますね。まだ幼くて力がないから、敵を倒すには弓がいいって自分で決めてました」
 「へえ。弓ならね……シエナの力が弱くても、モンスターを倒せるもんな。シエナはやっぱ頭がいいな」

 8歳くらいなのに考えがしっかりしている。
 やっぱり頭が良いみたいだ。

 「それでですね、ルルさん。あの子。冒険者にすぐになりたいから、日曜学校に入りたいってずっと言ってるんですよ。でもまだ8歳じゃないですか。あと4年待ちなさいって言っても。毎日しつこくて困ってるんですよ」

 シエナのお父さんが苦笑いをした。
 彼女がしつこくて、よほど困っているんだろう。

 「そりゃ困りますね・・・んん。そうだな。あと二年後。もし、あの子の天啓が凄いものでしたら、こちらを見せてジャコウ大陸の日曜学校に行ってみてください。ルルロアが推薦する子であるとホンナーさんという先生に伝えてみてください。そうすればオレの恩師であるホンナー先生が彼女を何とかすると思います」

 オレは青い輝きを放つペンダントをシエナの親父さんに渡した。

 「え? 10歳で?」
 「ええ。10歳でもホンナー先生ならば、あなたの大切な娘であるシエナを育ててくださいますよ。オレも先生には大切に育ててもらえました。だから、先生ならばよい教育を彼女に授けるはずです」
 「ルルさんの恩師・・・なら安心ですね。ありがたくこちらを保管させてもらって、時が来たらいってみます」
 「ええ、大陸は違ってしまいますが。ホンナー先生は最高の先生ですから。彼女の才能の全てが開花すると思います」
 「はい。何から何まで・・・本当にあなたには感謝しっぱなしですよ。はははは。これもうちの家宝にしようかな。あ! そうだ。なんだったらルルさんの肖像画とか。待てよ、銅像とかも作って・・・毎日挨拶できるようにしないと」
 「いやいや・・・それはちょっと・・・ご勘弁を・・・」

 と、なんか崇め奉られそうだったんで、軽くお断りをした。
 なんだかシエナのお父さんは、オレと会わない内にオレを神格化しているような気がしたのであった。

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