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長きに渡る南北魔大戦の終結
第7話 会議乱入
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リタを見つけてから、シオラという女性に護衛を任せた後。
ジャバル軍の陣で、ジャバルから連絡を受ける。
「領主殿。これでいいのかな」
「ああ。上手くやってるよ。ジャバルって結構器用なんだな」
「いや、私に演技は難しいです! ただ単に奴が私を疑ってきていないだけで。それが助かっているだけだと思うのですが・・・」
「つうかさ。普通、疑うよな。なんでこっちに来たんだよってさ」
「ええ。私もそこをもっと突かれると思ったのですがね。何も聞かれずでありまして。まさかで、自分も驚いています」
「だよね。そいつ馬鹿だよな。あんたの方が大将向いてそうだよな。割とマジでさ」
オレが笑うと、ジャバルもつられて笑った。
最初の頃よりも、ジャバルはオレに対して緊張感が無くなってくれたと思う。
敵同士ではなく、今は味方同士に感じる。
「よし。それじゃあ、皆。オレが準備をしておいたから、結界を展開するぞ。ナディアを中心に、エルフ魔法部隊とジャバル軍の魔法部隊が展開しよう。これは人をその中に閉じ込める結界だ。オレが石をばら撒いたから、難しい術式はナディアに任せて、あとの魔力の部分は魔法部隊で補おう。頼んだ。ナディア」
「ええ。いいわよ。あのガルドラの術式の奴だよね。エルフだけにした奴」
「そうそう。部屋に鍵をしていた奴よ。あれを大規模にして、丸く薄く張る。ファイナの洗礼みたいにさ。ナディアなら出来るだろ。もしできなかったら、マーゼンにでも手伝ってもらえ」
「え? マーゼンに???」
ナディアが驚きながら、マーゼンを見る。
「マーゼン。君はさ。本当は結界を作るのが得意でしょ。魔力の癖かな。所々で不思議な力を感じるよ」
「さ、さすがは、アイス王・・・・お気づきになられていたのですね」
本当にこの人からアイス王という言葉が取れません。
オレは、ルルロアなんですけども!?
「まあ、不思議な力を感じるだけで、具体的にはよくわかってないよ。でも得意そうな気配がするだけね。それで、ナディアの手伝いって出来そう?」
「出来ます。ナディア様が、結界の構築ができやすいように、道筋だけを作っておきましょう。それをなぞるようにして、ナディア様が術式を付与して頂ければ、簡単に構築できます」
「よし。マーゼンとナディアで作ってくれ。オレとジャバルが軍会議に出席して合図を出したら、結界を作り出してくれ」
オレは二人に任せてジャバルと共に会議へと向かった。
◇
ジャバルが来たことで、本格的な会議を開いた連合軍。
本来ならば、シオラも会議に出るらしいが、今は参加していない。
あのムカつく男どもが彼女のことをボコボコにしたから、彼女が気絶しているとでもこいつらは思っているのだろう。
一番偉そうな態度の男から会議が始まる。
「てめえら、負けんじゃねえよ。何で敵に負けてんだよ」
いや、それを分析しろよ。
「あそこには解放軍のトップクラスがいるのかもしれないぞ。今までと違ってかなり強かったんだ」
そういう分析じゃねえんだわ。
「「俺たちの場所にもいた」」
だから、馬鹿か!?
なにこれ。頭、悪そうな会話だ。
マジでさ。なにこの感想会。
日曜学校の子供たちかよ。
いや、まだあそこの子らの方が建設的な意見を言うよな。
馬鹿会議の一員になってしまったジャバルが話し出す。
「それは解放軍の四天王のことじゃないのか。強さが一般兵と違うのならば、たぶん四天王だろう」
ツッコミ入れたいくらいにアホそうな会話に、笑いもせずに話すジャバルは、中々の演技派だわ。
無理もなく会話に入り、スムーズに話が進んでいるからさ。
マジで素晴らしいよ。
オレなら爆笑しちまって、演技どころじゃないもん。
「四天王だと。奴らがあそこに入っているのか。いつの間にジュズランに集合していたのだ・・この短い間に・・・」
「リョクナン。焦るな。ここで焦っても仕方がないだろう」
「ん。そうだな。ジャバルの言う通りだ。いずれは解放軍を倒すのだからな。遅かれ早かれ倒さないといけないからな」
お前なんかにあいつらを倒せるわけないだろう。
オレの貧乏ゆすりの右足が止まらねえ。
今のオレのこのイライラが伝わっているのか。
目の前にいるジャバルの顔から汗が急に噴き出た。
一生懸命、右腕で拭っている。
現在のオレがどうやって会議を見ているかというと、ジャバルの従者としているからだ。
ジャバルはオレにビビっている節があるからな。
そこはスマン。
第一印象が悪かったと思うし、仲間になって欲しくて、脅したようなものだしな。
オレの機嫌で彼の緊張が左右されるかもしれない。
「ご・・・ごほん。ハールセン。これからはどうするつもりなんだ」
ジャバルの声が上ずった。
「このままいく。ジャバルの軍も後詰にしよう。俺たちは相手を潰すだけだ。四方をヒュガでせめ続ける」
「それは無茶じゃないのか? さきほどのように、一人でやるつもりというのか?」
「そうだ。俺たちの強さを見せるのと、強くなるための練習でもある」
「練習?」
「マーメイドの生き血で回復させて強くするんだよ。あれは死にかけでも回復するから、俺たちは奴の血を毎日採取してだな。それで攻め続ければいずれは向こうよりもこちらが強くなる」
「………」
会話の途中で、ジャバルがオレの方を見た。
不自然な動きをしたことで、オレの方に全体の視線が来た。
「しょうがねえ。オレの怒り。敏感に察したか。ジャバル」
「も、申し訳ありません」
オレも怒りを隠す気が無くなっちまっていたから、ここらがジャバルの限界でいいでしょう。
「いや。オレが悪かった。ジャバル下がっていいぜ。皆の所まで下がっていい」
「わかりました。お願いします」
「ああ。サンキューな。あ! あとさ。帰り際に合図を出してくれ。火魔法を一つ。空に」
「はい」
オレとジャバルが入れ替わる。
席に着いた直後、ジャバルの魔法の音が聞こえた。
◇
ジャバル軍にいたナディアは、空を見上げた。
「合図ね……いくわよ。マーゼン。ここで合ってるよね」
「はい。私が経路を作りましたので、あとはナディア様がご自身の魔力と皆の魔力分を走らせていただければ、結界は完成します。これは、封道結界と呼ばれる結界です。この結界への進入禁止と出ることを禁止する結界で、選ばれた者以外を遮断するものですね」
発動者がナディアで、結界構成がマーゼンである。
「へえ。選ばれた者以外って今回はどうなってるの?」
「今回は設定しません。人種を選ばないで、このエリア内の人間を外に漏らしません・・・ただ、今回の結界は少々アイス王によって、書き加えられています。あの方は結界についても勉強していたのですね」
「え? ルルが?」
ルルロアは、魔大陸に来てから結界について調べていた。
それは、ファイナの洗礼の事もあるが、実はこちらの大陸の方が結界術について詳しいのだ。
ジーバードは、あまり得意ではない。
それにあちらには滅多にいないのだ。
英雄職の召喚士。
又は、特殊職の結界士などが使用可能である。
しかしいずれも珍しい職種のものだ。
現代では現れていない。
「マスロの石。あれは結界に事細かく条件を付けることが出来る石です。なにを条件にしたのか。そこが気になった私は、アイス王が足した条件を読み取ったところ。スキル効果を増加させるというものでした。なので、アイス王はあちらの世界の技を使用するつもりなのでしょう」
「そうなのね。ジーバードの技ね……ふ~ん。よく分かるわね。マーゼン」
「ええ。私のお師匠様が結界を得意としていまして。お師匠様は、口頭でしか技を教えてくれなかったために、読解が得意となりました」
「お師匠様か。結界が得意なんて珍しい人ね」
「はい。お師匠様は可愛らしくて凄い人なんです」
「そっか。可愛いんだ・・・よし、皆から魔力をもらったから、結界を作るよ」
「はい。お願いします」
ナディアは、魔法部隊から渡された魔力を保持したまま、自身の魔力を先に出した。
結界の形作りはマーゼン。その形に術式を付与するのがナディアの魔力。そして、結界を生み出す魔力は魔法部隊の魔力である。
三者の力を混ぜ合わせて、ルルロアが注文した通りの結界が、連合軍の本陣に出来上がった。
これにて、連合軍は外に逃げ出すことが出来なくなったのだ。
「さてと・・・ルルはこの結界を作って、どうするつもりなんだろう?」
「そうですね。アイス王はなにをするかわからない。そこが面白いかもしれませんね」
「ふふふ。そうね。それはあたしも思う所ね。見てて飽きない人よね」
「そうですね」
二人は青く輝いている結界を見ていた。
◇
「んで。あんたらみたいなアホが。彼女のことを幽閉してたんだな」
オレはジャバルが座っていた席に座った。
「なんだてめえ。ジャバルの席に座るな。てめえは呼んでねえんだ」
「ギャーギャーうるせえ。黙ってろ」
王魂に、威風を混ぜた。
敵が黙る。
「そんなアホそうな頭でも軍のトップだろ。どっしり構えていろよ。やっぱお前はさ。イルヴァやアルランに比べたら雑魚だわ。耳もついてねえのかよ・・・・なあ、オレはあんたがイルヴァを騙し討ちにしたって聞いてたんだけどさ。それは合ってんのか? 出来たのか本当に?」
こいつがあまりにも馬鹿で、あのイルヴァを出し抜くのは難しいのではと思った。
「イルヴァ・・ああ、あのどうしようない腰抜けだな」
リョクナンとかいう男が割って入ってきた。
「あんたは黙ってろ。オレはそこに偉そうに座ってる奴に話しかけてんだよ。リョクナンだっけ。外野は黙ってろ」
「なにを!! ヒュームが馬鹿にするな。死ね」
「短絡的すぎるわ……邪魔すんなって言っただろうが。今日のオレはすこぶる機嫌が悪い。手加減しねえぞ」
あれくらいの言葉で怒り狂ったリョクナンは攻撃しようと走ってきた。
オレも立ち上がり、攻撃準備開始。
全身に薄く魔力を解放して、奴の首筋に左足を入れ込んでから、下方向に押し込む。
「ぐおっ。な、なんだこの蹴りは」
リョクナンは地面に埋まった。
「話の邪魔をすんな。そこにいろ」
「・・・な、なんだこの蹴りの強さは・・・」
「んで。ハールセン。お前の目的はなんだ」
「俺の目的?」
「そうだ。連合軍の盟主になってまで、何をする気だったんだ。この戦争が無意味なのによ」
「それは、俺が最強だと証明するため」
「はぁ。クッソ……くだらねえわ。そんなことで、連合軍を乗っ取ったのかよ。マジかよ」
幼稚な回答にため息しか出ねえ。
「くだらなくない。ヒュガは最強なんだ。てめえのようなヒュームには分からん事だろう」
「ああ、わからん。でも、わからなくていいわ。オレがお前よりも強いって証明してやるから、この戦争をやめろ」
風魔法でこの天幕をぶっ壊した。
天に舞う千切れた布の中で、オレが叫ぶ。
「雄叫びと王魂だ」
大きく息を吸い込んで、吐き出す。
「だりゃああああああああああああああああああああ」
町を出る前から考えていた作戦。
それは、こいつに会うことを念頭に置いたものだ。
こいつにだけ会って、こいつと話し合いをして、丸く収めようと思った。
そのためにジャバルには援軍のフリをしてもらい、直接会う機会を作ってもらった。
だけど、それは間違いなようだ。
上手く会話が出来ればいいなと思っていたのが良くなかった。
こいつは、今まで出会った人物の中で一番底が浅い。
何も考えてない馬鹿だ。
だから叩きのめすことに決めた。
話し合いをする意味がないと思うんだ。
ナディアが生み出した結界には、オレが用意した特殊な石が混じっている。
石には、スキル効果を増強する魔力を込めている。
雄叫びと王魂。
この両方の効果を高めるためだ。
「効果は抜群だな! 全体に上手く入った」
雄叫びは本来、オレの声が届いていて、オレの仲間じゃない連中は恐慌状態に入ったはずだ。
「まあでも、あんたら四人は、動けるようだな。ほれ。かかって来いよ」
ここでの話し合いに意味がない。
だからオレは、ヒュガ四人との決闘に何の躊躇もなく入っていった。
ジャバル軍の陣で、ジャバルから連絡を受ける。
「領主殿。これでいいのかな」
「ああ。上手くやってるよ。ジャバルって結構器用なんだな」
「いや、私に演技は難しいです! ただ単に奴が私を疑ってきていないだけで。それが助かっているだけだと思うのですが・・・」
「つうかさ。普通、疑うよな。なんでこっちに来たんだよってさ」
「ええ。私もそこをもっと突かれると思ったのですがね。何も聞かれずでありまして。まさかで、自分も驚いています」
「だよね。そいつ馬鹿だよな。あんたの方が大将向いてそうだよな。割とマジでさ」
オレが笑うと、ジャバルもつられて笑った。
最初の頃よりも、ジャバルはオレに対して緊張感が無くなってくれたと思う。
敵同士ではなく、今は味方同士に感じる。
「よし。それじゃあ、皆。オレが準備をしておいたから、結界を展開するぞ。ナディアを中心に、エルフ魔法部隊とジャバル軍の魔法部隊が展開しよう。これは人をその中に閉じ込める結界だ。オレが石をばら撒いたから、難しい術式はナディアに任せて、あとの魔力の部分は魔法部隊で補おう。頼んだ。ナディア」
「ええ。いいわよ。あのガルドラの術式の奴だよね。エルフだけにした奴」
「そうそう。部屋に鍵をしていた奴よ。あれを大規模にして、丸く薄く張る。ファイナの洗礼みたいにさ。ナディアなら出来るだろ。もしできなかったら、マーゼンにでも手伝ってもらえ」
「え? マーゼンに???」
ナディアが驚きながら、マーゼンを見る。
「マーゼン。君はさ。本当は結界を作るのが得意でしょ。魔力の癖かな。所々で不思議な力を感じるよ」
「さ、さすがは、アイス王・・・・お気づきになられていたのですね」
本当にこの人からアイス王という言葉が取れません。
オレは、ルルロアなんですけども!?
「まあ、不思議な力を感じるだけで、具体的にはよくわかってないよ。でも得意そうな気配がするだけね。それで、ナディアの手伝いって出来そう?」
「出来ます。ナディア様が、結界の構築ができやすいように、道筋だけを作っておきましょう。それをなぞるようにして、ナディア様が術式を付与して頂ければ、簡単に構築できます」
「よし。マーゼンとナディアで作ってくれ。オレとジャバルが軍会議に出席して合図を出したら、結界を作り出してくれ」
オレは二人に任せてジャバルと共に会議へと向かった。
◇
ジャバルが来たことで、本格的な会議を開いた連合軍。
本来ならば、シオラも会議に出るらしいが、今は参加していない。
あのムカつく男どもが彼女のことをボコボコにしたから、彼女が気絶しているとでもこいつらは思っているのだろう。
一番偉そうな態度の男から会議が始まる。
「てめえら、負けんじゃねえよ。何で敵に負けてんだよ」
いや、それを分析しろよ。
「あそこには解放軍のトップクラスがいるのかもしれないぞ。今までと違ってかなり強かったんだ」
そういう分析じゃねえんだわ。
「「俺たちの場所にもいた」」
だから、馬鹿か!?
なにこれ。頭、悪そうな会話だ。
マジでさ。なにこの感想会。
日曜学校の子供たちかよ。
いや、まだあそこの子らの方が建設的な意見を言うよな。
馬鹿会議の一員になってしまったジャバルが話し出す。
「それは解放軍の四天王のことじゃないのか。強さが一般兵と違うのならば、たぶん四天王だろう」
ツッコミ入れたいくらいにアホそうな会話に、笑いもせずに話すジャバルは、中々の演技派だわ。
無理もなく会話に入り、スムーズに話が進んでいるからさ。
マジで素晴らしいよ。
オレなら爆笑しちまって、演技どころじゃないもん。
「四天王だと。奴らがあそこに入っているのか。いつの間にジュズランに集合していたのだ・・この短い間に・・・」
「リョクナン。焦るな。ここで焦っても仕方がないだろう」
「ん。そうだな。ジャバルの言う通りだ。いずれは解放軍を倒すのだからな。遅かれ早かれ倒さないといけないからな」
お前なんかにあいつらを倒せるわけないだろう。
オレの貧乏ゆすりの右足が止まらねえ。
今のオレのこのイライラが伝わっているのか。
目の前にいるジャバルの顔から汗が急に噴き出た。
一生懸命、右腕で拭っている。
現在のオレがどうやって会議を見ているかというと、ジャバルの従者としているからだ。
ジャバルはオレにビビっている節があるからな。
そこはスマン。
第一印象が悪かったと思うし、仲間になって欲しくて、脅したようなものだしな。
オレの機嫌で彼の緊張が左右されるかもしれない。
「ご・・・ごほん。ハールセン。これからはどうするつもりなんだ」
ジャバルの声が上ずった。
「このままいく。ジャバルの軍も後詰にしよう。俺たちは相手を潰すだけだ。四方をヒュガでせめ続ける」
「それは無茶じゃないのか? さきほどのように、一人でやるつもりというのか?」
「そうだ。俺たちの強さを見せるのと、強くなるための練習でもある」
「練習?」
「マーメイドの生き血で回復させて強くするんだよ。あれは死にかけでも回復するから、俺たちは奴の血を毎日採取してだな。それで攻め続ければいずれは向こうよりもこちらが強くなる」
「………」
会話の途中で、ジャバルがオレの方を見た。
不自然な動きをしたことで、オレの方に全体の視線が来た。
「しょうがねえ。オレの怒り。敏感に察したか。ジャバル」
「も、申し訳ありません」
オレも怒りを隠す気が無くなっちまっていたから、ここらがジャバルの限界でいいでしょう。
「いや。オレが悪かった。ジャバル下がっていいぜ。皆の所まで下がっていい」
「わかりました。お願いします」
「ああ。サンキューな。あ! あとさ。帰り際に合図を出してくれ。火魔法を一つ。空に」
「はい」
オレとジャバルが入れ替わる。
席に着いた直後、ジャバルの魔法の音が聞こえた。
◇
ジャバル軍にいたナディアは、空を見上げた。
「合図ね……いくわよ。マーゼン。ここで合ってるよね」
「はい。私が経路を作りましたので、あとはナディア様がご自身の魔力と皆の魔力分を走らせていただければ、結界は完成します。これは、封道結界と呼ばれる結界です。この結界への進入禁止と出ることを禁止する結界で、選ばれた者以外を遮断するものですね」
発動者がナディアで、結界構成がマーゼンである。
「へえ。選ばれた者以外って今回はどうなってるの?」
「今回は設定しません。人種を選ばないで、このエリア内の人間を外に漏らしません・・・ただ、今回の結界は少々アイス王によって、書き加えられています。あの方は結界についても勉強していたのですね」
「え? ルルが?」
ルルロアは、魔大陸に来てから結界について調べていた。
それは、ファイナの洗礼の事もあるが、実はこちらの大陸の方が結界術について詳しいのだ。
ジーバードは、あまり得意ではない。
それにあちらには滅多にいないのだ。
英雄職の召喚士。
又は、特殊職の結界士などが使用可能である。
しかしいずれも珍しい職種のものだ。
現代では現れていない。
「マスロの石。あれは結界に事細かく条件を付けることが出来る石です。なにを条件にしたのか。そこが気になった私は、アイス王が足した条件を読み取ったところ。スキル効果を増加させるというものでした。なので、アイス王はあちらの世界の技を使用するつもりなのでしょう」
「そうなのね。ジーバードの技ね……ふ~ん。よく分かるわね。マーゼン」
「ええ。私のお師匠様が結界を得意としていまして。お師匠様は、口頭でしか技を教えてくれなかったために、読解が得意となりました」
「お師匠様か。結界が得意なんて珍しい人ね」
「はい。お師匠様は可愛らしくて凄い人なんです」
「そっか。可愛いんだ・・・よし、皆から魔力をもらったから、結界を作るよ」
「はい。お願いします」
ナディアは、魔法部隊から渡された魔力を保持したまま、自身の魔力を先に出した。
結界の形作りはマーゼン。その形に術式を付与するのがナディアの魔力。そして、結界を生み出す魔力は魔法部隊の魔力である。
三者の力を混ぜ合わせて、ルルロアが注文した通りの結界が、連合軍の本陣に出来上がった。
これにて、連合軍は外に逃げ出すことが出来なくなったのだ。
「さてと・・・ルルはこの結界を作って、どうするつもりなんだろう?」
「そうですね。アイス王はなにをするかわからない。そこが面白いかもしれませんね」
「ふふふ。そうね。それはあたしも思う所ね。見てて飽きない人よね」
「そうですね」
二人は青く輝いている結界を見ていた。
◇
「んで。あんたらみたいなアホが。彼女のことを幽閉してたんだな」
オレはジャバルが座っていた席に座った。
「なんだてめえ。ジャバルの席に座るな。てめえは呼んでねえんだ」
「ギャーギャーうるせえ。黙ってろ」
王魂に、威風を混ぜた。
敵が黙る。
「そんなアホそうな頭でも軍のトップだろ。どっしり構えていろよ。やっぱお前はさ。イルヴァやアルランに比べたら雑魚だわ。耳もついてねえのかよ・・・・なあ、オレはあんたがイルヴァを騙し討ちにしたって聞いてたんだけどさ。それは合ってんのか? 出来たのか本当に?」
こいつがあまりにも馬鹿で、あのイルヴァを出し抜くのは難しいのではと思った。
「イルヴァ・・ああ、あのどうしようない腰抜けだな」
リョクナンとかいう男が割って入ってきた。
「あんたは黙ってろ。オレはそこに偉そうに座ってる奴に話しかけてんだよ。リョクナンだっけ。外野は黙ってろ」
「なにを!! ヒュームが馬鹿にするな。死ね」
「短絡的すぎるわ……邪魔すんなって言っただろうが。今日のオレはすこぶる機嫌が悪い。手加減しねえぞ」
あれくらいの言葉で怒り狂ったリョクナンは攻撃しようと走ってきた。
オレも立ち上がり、攻撃準備開始。
全身に薄く魔力を解放して、奴の首筋に左足を入れ込んでから、下方向に押し込む。
「ぐおっ。な、なんだこの蹴りは」
リョクナンは地面に埋まった。
「話の邪魔をすんな。そこにいろ」
「・・・な、なんだこの蹴りの強さは・・・」
「んで。ハールセン。お前の目的はなんだ」
「俺の目的?」
「そうだ。連合軍の盟主になってまで、何をする気だったんだ。この戦争が無意味なのによ」
「それは、俺が最強だと証明するため」
「はぁ。クッソ……くだらねえわ。そんなことで、連合軍を乗っ取ったのかよ。マジかよ」
幼稚な回答にため息しか出ねえ。
「くだらなくない。ヒュガは最強なんだ。てめえのようなヒュームには分からん事だろう」
「ああ、わからん。でも、わからなくていいわ。オレがお前よりも強いって証明してやるから、この戦争をやめろ」
風魔法でこの天幕をぶっ壊した。
天に舞う千切れた布の中で、オレが叫ぶ。
「雄叫びと王魂だ」
大きく息を吸い込んで、吐き出す。
「だりゃああああああああああああああああああああ」
町を出る前から考えていた作戦。
それは、こいつに会うことを念頭に置いたものだ。
こいつにだけ会って、こいつと話し合いをして、丸く収めようと思った。
そのためにジャバルには援軍のフリをしてもらい、直接会う機会を作ってもらった。
だけど、それは間違いなようだ。
上手く会話が出来ればいいなと思っていたのが良くなかった。
こいつは、今まで出会った人物の中で一番底が浅い。
何も考えてない馬鹿だ。
だから叩きのめすことに決めた。
話し合いをする意味がないと思うんだ。
ナディアが生み出した結界には、オレが用意した特殊な石が混じっている。
石には、スキル効果を増強する魔力を込めている。
雄叫びと王魂。
この両方の効果を高めるためだ。
「効果は抜群だな! 全体に上手く入った」
雄叫びは本来、オレの声が届いていて、オレの仲間じゃない連中は恐慌状態に入ったはずだ。
「まあでも、あんたら四人は、動けるようだな。ほれ。かかって来いよ」
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高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
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