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二十四、
「ふれー、ふれー、凡クラス。負けるな負けるな凡クラス。勝てー!」
お。
なかなかいいじゃん。
誰だか知らないが、特進クラスの嫌味くん。
いいフレーズをありがとう。
サテンの生地にスワロフスキーをふんだんに付けた、凡そ実用的とは思われないぽんぽんを振りながら、薫は楽しく応援を続ける。
「ふれっ、ふれっ、凡クラス、そこだ、いけいけ、凡クラス!」
よしっ、ここでジャンプ!・・って、えーと、豪快に跳ぶんじゃなくて、女の子っぽく。
足を後ろに跳ねさせたら、いいかな?
「はあ。薫が可愛い」
「ほんっと、秋庭はぶれないよね」
「いや、水原。舞岡は確かに可愛い・・・ところで、凡クラスとは?」
きらきらと陽に輝くぽんぽんを胸元で振り、時には大きく手を挙げと、心底楽しそうに満面の笑みを浮かべて応援する薫を見ながら、将梧が蕩けるような目で言うのに水原が苦笑しつつ言えば、その隣で首を傾げた門脇が、その問いを口にした。
「特進の奴に言われたそうだ。『ちょっと聞いてよ、将梧!なんか、知らない奴に突然、凡クラスのルーナ、って言われた!けどまあ、特進から見たら本当のことだから仕方ないか』と。そんな風に、へにょっと眉を寄せる薫も可愛かった」
そんな門脇を見ることもせず、薫に視線を合わせたままに将梧が答えれば、水原が目をぱちくりとさせる。
「え。ルーナって、それ」
「ああ。月の女神だろうな。恐らくは、舞岡と親しくなるきっかけを作ろうとしたのだろうが」
「ふっ。薫に、ルーナなんて通じるわけないだろう。ルナと短く言えばともかく」
特進の誰かは知らないが、薫を知らなすぎると将梧が嘲るように笑って言うも、水原がそこに意義を唱える。
「えええ。ルーナもルナも一緒じゃない?かおちゃんだって、本当は分かっているとか」
「あると思うか?」
「はい、すみません。思いません」
あの薫が、本質の意味を分かっていてわざととぼけるなど出来る筈もないと、水原も頷いた。
「そこも、舞岡のいいところだろう」
「はあ。そこも、も、なんだ。いいんちょも、ほんとぶれない」
「だが。薫が分かっていようといなかろうと、薫にちょっかいかけることは許さない」
「ああ。許す必要も無いだろう」
「よし、消そう」
互いに納得と、門脇と頷きあった将梧が水原に厳しい目を向ける。
「そして、水原 彰。いつから、薫を、かおちゃんと呼んでいる?誰の許可を得て?」
「だ、誰のって。別に、舞ちゃんって呼んだり、かおちゃんって呼んだりしてもいいだろ?」
「まあ・・。水原 彰は、安全牌か」
「しかし、特進の輩といい、羽虫が多いな」
「羽虫って、いいんちょ。言い方・・って、秋庭も頷いてるし」
『がんばれー!』とぴょんぴょん跳びながら応援をしている薫を見る目は変わらず蕩けるように甘いのに、ドスのきいた声で言い切る将梧と門脇に、水原が呆れたような目を向けた。
「あのさあ、ふたりとも。勝手に羽虫呼ばわりしているけどさ。かおちゃんが、そいつがいいって言えば、それこそおたくらが許すも許さないも・・・ひえっ」
それすべて薫の自由だと言いかけた水原は、ふたりから同時に睨まれて思わず飛び上がり、珍妙な声をあげた。
「お、あきちゃん!今のなんか、可愛かった!ぴょん、って後ろに跳ぶの。俺もやろうかな。後ろ跳び」
そこに、水分補給に来た薫がにこにこと加わるも、水原は激しい鼓動にさいなまれ、声を出すこともままならない。
「え。どしたの?あきちゃん」
「運動不足なんだろう」
「そうだな。激しく疲労してしまったようだ・・舞岡。疲労と言えば、疲れただろう。きちんと水分を取るところ、素晴らしいと思う」
「え、うん、ありがと。あきちゃん、だいじょぶ?」
将梧から渡された水筒から、こくこくと美味しそうに冷えたほうじ茶を飲みながら、薫は水原を心配そうに見た。
「ああ・・精神的ダメージが」
「そんなことより薫。後ろにぴょんと跳ぶの、可愛いと思う」
「そうだな、舞岡。是非、やってみてくれ」
双璧の魔王に睨まれた心地だと、訴えようとした水原を制し、将梧と門脇はそんな注文を付ける。
「あ、うん。やってみるね。てか、さっきまでの動きはどうだった?やりながら楽しくなっちゃったんだけど、趣旨に合っているかな?」
見栄えは兎も角と、苦笑しながら言う薫に、将梧と門脇は満面の笑みを浮かべた。
「薫の動き、何もかもが可愛かった」
「ああ。秋庭の言う通り、素晴らしいチアぶりだった」
相変わらずなふたりの意見、そして、最後に水原が付け加えた言葉に、薫は首を傾げることになる。
「うん。双璧の魔王が降臨したから、かおちゃんがどんなに可愛くっても大丈夫だと思った」
「え。なにそれ、どういう意味?」
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