カラフルボックス ~絡め取られて腕のなか~

夏笆(なつは)

文字の大きさ
26 / 54

二十六、

 

 

 

「よっし!いよいよ騎馬戦だ!みんなで勝利を勝ち取ろうな!・・・じゃ、なかった。勝ち取ろうね」 

 可愛らしいチアの衣装を身に着けたまま、拳を振り上げ鼓舞しそうになった薫は、慌てて拳を引っ込め、にこりとした笑みを浮かべると、首を傾げて言い直す。 

「おう!あたぼうよ!舞岡は大将だからな。戦闘は俺らに任せてどんと構えておけ」 

「ああ。俺らが蹴散らしてやるよ!」

「俺達の雄姿、見せつけてやらあ!」 

「秋庭!門脇!水原!舞岡の護りは任せたからな!」

 大将と決まった薫の号令にみんなが熱く応え、一瞬でその場が熱気に包まれた。 

 今回の騎馬戦は、大将騎のみ騎乗者含み四人で、後は三人の編成という変則規則で、大将を落とされれば敗北となる。 

「頼もしい。俺も、頑張って踏ん張らないと」

 その敗北を決定づける大将になってしまったと、薫はやや緊張気味に息を吐いた。

「薫のことは、絶対に落とさない。安心しろ」 

「ああ。舞岡は、絶対に守り抜いてやる」 

「はははー。魔王ふたりと比べたら、俺は平凡、凡庸、平均値って感じだけど、頑張るよ」 

 そして、大将騎の騎馬を将梧と門脇と担うことになった水原は、やや遠い目をしてそう言った。 

 身長的には何も問題無いが、機動能力的、身体能力的に差がありすぎて不安があると遠い目をする水原だが、そもそも将梧と門脇が抜きんで過ぎていて、誰も横には並べないとあって、水原はその役を脱することが出来なかった。

『ふたりとは、舞岡含めていつも一緒にいるし。息は合うんじゃない?』
 
 そんな誰かのひと言で、門脇、将梧と組んで騎馬となるのは水原となってしまったのだが、俯瞰的に見て妥当だろうと、水原本人も思ってはいる。 

「俺、重いかもだけど三人ともよろしく。落ちないように、頑張るから」 

「それはいいが。舞岡。そのままの姿で騎馬に乗るつもりか?」 

 他クラスの第一戦の歓声をバックミュージックに、門脇が気づかわしそうに薫の足を見る。 

「うん。このまま行くよ。だって、その方がチアとしても評価付くかもしれないからね。あ、安心していいよ。不気味な物は見えないように、ちゃんとショーパン履いてるから!」 

 短いスカートをひらひらとさせ、無邪気に笑う薫に将梧と門脇は何故か残念そうな目を向けた。 

「そうなのか」 

「いや。考えてみれば、当然か」 

 見えそうで見えないチラリズム。 

 それは幻影であったと、将梧と門脇は知ったのだった。 

 

 

「井田くん!長谷くん!二時の方向に敵騎襲来!」 

「おう!田上!小回り効かせろ!遠心力かけるぞ!長谷、落ちるなよ!」

「分かった!大回りよろしく!」 

「騎馬の動きに付いてけねえで落ちるなんて、だせえ真似しねえから安心しな!」

 そして迎えた薫達の初戦。 

 これは乱闘騒ぎかと目を見開くような砂埃のなか、タッグを組んだ井田と田上が小刻みに動き周り、次々に敵騎を打ち崩して行く。 

「わあ。田上くんと井田くん、凄い。もちろん、上に乗っている長谷くんも」 

 自陣の後方でその激闘を見守る薫は、迷いなく動き回る田上と井田の騎馬に目を瞠った。 

「そういえば。特攻隊長になってやると、井田が言っていた。それはもう、楽しそうに」 

「ああ。田上もやる気だった。『要は、舞岡くんに近づかせることなく、相手を撃破、全滅させちゃえばいいんだよね』って。あいつ、のほほんとした調子のままで言うから、一瞬聞き間違いをしたかと思ったな」 

「俺は、その方が有難い。んでもって、べらんめえな長谷も、凄く生き生きしているね。正に、水を得た魚って感じ」 

 そして、そんな薫を乗せている三人も警戒を怠ることなく視線を動かしながら、優勢を譲ることのない自分達のクラスを見つめた。 

「凄い。あそこなんて、殴り合っているみたいに見える」 

「まあ、ギリ顔には当たっていないだろうが、肩のあたりは掴み合っているな」 

「やはり、腕が長い方が有利か」 

 若干、のほほんとした会話を繰り広げるうち、薫のクラスは相手を殲滅、大将騎を崩して勝利をあげた。 

「あれ?何か俺、何もしてなくない?」 

 乞われるままに中央で勝鬨をあげた薫が、これでいいのかと首を捻る。 

「その姿でここに居る。それが、薫の役目だ」 

 そんな薫に、将梧はきっぱりと言い切った。 

 
感想 0

あなたにおすすめの小説

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた

BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。 けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。 もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。 ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。 「俺と二人組にならない?」 その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。 執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。 約九万字、全三十話+αの物語です。