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二十六、
「よっし!いよいよ騎馬戦だ!みんなで勝利を勝ち取ろうな!・・・じゃ、なかった。勝ち取ろうね」
可愛らしいチアの衣装を身に着けたまま、拳を振り上げ鼓舞しそうになった薫は、慌てて拳を引っ込め、にこりとした笑みを浮かべると、首を傾げて言い直す。
「おう!あたぼうよ!舞岡は大将だからな。戦闘は俺らに任せてどんと構えておけ」
「ああ。俺らが蹴散らしてやるよ!」
「俺達の雄姿、見せつけてやらあ!」
「秋庭!門脇!水原!舞岡の護りは任せたからな!」
大将と決まった薫の号令にみんなが熱く応え、一瞬でその場が熱気に包まれた。
今回の騎馬戦は、大将騎のみ騎乗者含み四人で、後は三人の編成という変則規則で、大将を落とされれば敗北となる。
「頼もしい。俺も、頑張って踏ん張らないと」
その敗北を決定づける大将になってしまったと、薫はやや緊張気味に息を吐いた。
「薫のことは、絶対に落とさない。安心しろ」
「ああ。舞岡は、絶対に守り抜いてやる」
「はははー。魔王ふたりと比べたら、俺は平凡、凡庸、平均値って感じだけど、頑張るよ」
そして、大将騎の騎馬を将梧と門脇と担うことになった水原は、やや遠い目をしてそう言った。
身長的には何も問題無いが、機動能力的、身体能力的に差がありすぎて不安があると遠い目をする水原だが、そもそも将梧と門脇が抜きんで過ぎていて、誰も横には並べないとあって、水原はその役を脱することが出来なかった。
『ふたりとは、舞岡含めていつも一緒にいるし。息は合うんじゃない?』
そんな誰かのひと言で、門脇、将梧と組んで騎馬となるのは水原となってしまったのだが、俯瞰的に見て妥当だろうと、水原本人も思ってはいる。
「俺、重いかもだけど三人ともよろしく。落ちないように、頑張るから」
「それはいいが。舞岡。そのままの姿で騎馬に乗るつもりか?」
他クラスの第一戦の歓声をバックミュージックに、門脇が気づかわしそうに薫の足を見る。
「うん。このまま行くよ。だって、その方がチアとしても評価付くかもしれないからね。あ、安心していいよ。不気味な物は見えないように、ちゃんとショーパン履いてるから!」
短いスカートをひらひらとさせ、無邪気に笑う薫に将梧と門脇は何故か残念そうな目を向けた。
「そうなのか」
「いや。考えてみれば、当然か」
見えそうで見えないチラリズム。
それは幻影であったと、将梧と門脇は知ったのだった。
「井田くん!長谷くん!二時の方向に敵騎襲来!」
「おう!田上!小回り効かせろ!遠心力かけるぞ!長谷、落ちるなよ!」
「分かった!大回りよろしく!」
「騎馬の動きに付いてけねえで落ちるなんて、だせえ真似しねえから安心しな!」
そして迎えた薫達の初戦。
これは乱闘騒ぎかと目を見開くような砂埃のなか、タッグを組んだ井田と田上が小刻みに動き周り、次々に敵騎を打ち崩して行く。
「わあ。田上くんと井田くん、凄い。もちろん、上に乗っている長谷くんも」
自陣の後方でその激闘を見守る薫は、迷いなく動き回る田上と井田の騎馬に目を瞠った。
「そういえば。特攻隊長になってやると、井田が言っていた。それはもう、楽しそうに」
「ああ。田上もやる気だった。『要は、舞岡くんに近づかせることなく、相手を撃破、全滅させちゃえばいいんだよね』って。あいつ、のほほんとした調子のままで言うから、一瞬聞き間違いをしたかと思ったな」
「俺は、その方が有難い。んでもって、べらんめえな長谷も、凄く生き生きしているね。正に、水を得た魚って感じ」
そして、そんな薫を乗せている三人も警戒を怠ることなく視線を動かしながら、優勢を譲ることのない自分達のクラスを見つめた。
「凄い。あそこなんて、殴り合っているみたいに見える」
「まあ、ギリ顔には当たっていないだろうが、肩のあたりは掴み合っているな」
「やはり、腕が長い方が有利か」
若干、のほほんとした会話を繰り広げるうち、薫のクラスは相手を殲滅、大将騎を崩して勝利をあげた。
「あれ?何か俺、何もしてなくない?」
乞われるままに中央で勝鬨をあげた薫が、これでいいのかと首を捻る。
「その姿でここに居る。それが、薫の役目だ」
そんな薫に、将梧はきっぱりと言い切った。
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