28 / 54
二十八、
「決勝まで残るなんて、やるじゃん。舞岡薫。流石、雅のライバルを気取るだけのことはあるね」
「は?お前のライバルを気取るってなんだよ。大体、何のライバル・・・って、チアか」
決勝戦を目前に、そう言って揚々と両陣営の間まで歩いて来た須田雅を見て、薫は引き気味にしながらも、そうかチアのことかと納得した。
「はあ!!チア?そんなチンケなもんじゃないってば!あんた、本当に今から何をして、何を決めるのか分かってないの!?もしかして!」
「そんなの分かってるに決まってんだろ。これから騎馬戦の決勝戦して、優勝クラスを」
「ばかばかばかばか!あほあほあほあほ!そんなわけないだろ!これから決まるのはね、真実の姫だよ! 」
「はあ?」
決勝開始前。
それぞれのクラスが、それぞれの位置につくなかで、須田雅はその中央に立ち、すっくと薫に人差し指を突きつけた。
因みに、騎馬戦は全クラス総当たりの結果、ここまで全勝している薫のクラスと、同じく全勝している須田雅のクラスが最終戦、事実上の決勝戦を行うこととなった。
この一戦を制した者が、騎馬戦の覇者となるとあって、緊張感に満ちた空気が流れていたのだが、須田雅の行動によって、それが一部削がれる。
「いやいやいやいや。何言っちゃってんの。姫ってなんだよ、姫って」
その筆頭たる存在は、薫。
最終戦、ここまでの他クラスとの闘いでその強さを目の当たりにし、自分達の全勝を守り切れるかどうかという緊張に身がふるえるほどだった薫は、一気に弛緩したように間抜けな声を出し、次いで、そう言って笑わせ、油断させる策かと苦笑した。
「姫は姫!この須田雅が姫でなくて、なんだっていうんだよ。そもそもだろ?当然のことなんだよ。須田雅と書いて姫と読む。それくらい、常識」
「・・・・・・・・」
須田雅の言い分に薫が絶句するも、須田雅は当然という姿勢を崩さない。
「うわあ。今、自分のこと姫って言い切ったよ」
「ああ。奴の思考回路は正常か疑わしいが、舞岡の緊張が解けたのはよかったな」
須田雅の宣言に、水原が仰け反り、門脇は『まあ役に立った』と訳知り顔に頷いた。
「ねえねえ。あれ、あの言葉。須田くんは、自分のこと姫だって、本気で思っているってことだよね。こおんな大勢の前で、須田雅と書いて姫と読むと断言するなんて、凄いね」
そして薫は、素直に凄いと繰り返す。
「確かに凄い自信だよねえ。俺に少し分けて欲しいよ」
まんざら冗談でもないように水原が言い、そこまで黙っていた将梧が、徐に薫の前に立った。
「薫。強張っている薫も、可愛かった。間抜けている時も、何を思ってか敵に賞賛を送っている今も。でも、笑顔の薫が一番可愛い」
そして告げられた言葉に、薫が強く反応する。
「それ!俺のことディスってるよね!?」
「何を言う。薫は可愛い。そして姫だ」
「いや、将梧!今、可愛いも姫も関係無いから!これからあるの、騎馬戦の決勝だから!」
『ちゃんと分かってる!?』と叫ぶ薫からは、須田雅の悪意に満ちた視線は見えない。
何故なら将梧がその正面に立ち、完全に塞いでいるから。
「反応スレッショルドの違いか」
「まあ、門脇もがんばんなよ」
そんな将梧の動きの意味に気付いた門脇が呟き、水原が励ます。
「これから騎馬戦の決勝戦。そして、薫が真実の姫だと証明する。大丈夫だ。ちゃんと分かっている」
「いや、だから!姫は関係ないだろ!」
「いいや、舞岡。お前が真実の姫だと、俺達全員で証明してやる」
「そうだよ、かおちゃん。一緒にがんばろうね」
将梧の言葉に薫が反論するも、門脇や水原はじめ、クラスメイト達は『舞岡こそが、真実の姫!』などとコールを始めてしまう始末。
「もう!みんな、正気に返って!田上!井田も!」
薫の叫びも空しく、遂には薫を中心に円陣を組んだ彼らは、高揚する気分のままに騎馬を組み、騎乗して、その合図が鳴り響く時を、今や遅しと待つのだった。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた
時
BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。
けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。
もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。
ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。
「俺と二人組にならない?」
その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。
執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。
約九万字、全三十話+αの物語です。