31 / 54
三十一、
「それでは。我がクラスの優勝を祝って・・乾杯!」
「「「かんぱーい!」」」
体育祭のすべての種目を終え、見事優勝を勝ち取った薫達のクラスは、教室に戻ると、担任の市谷が用意してくれていたジュースで祝杯としゃれ込んだ。
「いっちゃんセンセ、ジュースありがと」
「いやなに。みんなの奮闘ぶりには、手に汗握って楽しませてもらったからな。ほんの気持ちだ」
薫が笑顔を向ければ、何より無事に終わってよかったと、市谷も嬉しそうな笑みを浮かべた。
「それにしても、いっちゃんセンセ、すっごく綺麗だったよ」
「舞岡こそ、とても可愛かった。流石、一位だと思った」
教師陣のチアとして衣装を身に着けていた市谷は、とても綺麗だったと薫が言えば、市谷も薫の方こそ可愛かったと目を細める。
「うわあ。チアの一位と二位で誉め合ってる」
「そういえば、そうだな。うちのクラスには、可愛いと綺麗が存在するということか」
水原の言葉に門脇も頷き、他のクラスメイト達も確かにそうだと笑い合った。
「本田。MVPはどうなった?」
そこへ将梧が真顔で尋ね、体育委員である本田が、どれどれと集計表を開く。
「ちゃんと記録してあるから安心してくれ。クラス優勝に最も貢献した人物、つまり、最多得点を叩き出したのは・・お、秋庭、お前と門脇委員長だ」
「凄いじゃん!将梧も門脇も、凄い活躍だったもんね」
その発表を聞き、薫が満面の笑みでぱちぱちと拍手した。
「ふたり揃って得点王、ってのは凄いけど。景品がひとつしかないよ?上下で分けるとか、ふたりの所有にするとか、する?」
その景品が入っているらしい紙袋を少し持ち上げて、田上が将梧と門脇を交互に見る。
「上下に分けるのも、所有権をふたりとするのも却下だ」
「秋庭の言う通りだな。それを所有できるのは、ひとりだけだ」
「ああ、はいはい分かったから、そう空気をぴり付かせない。ね、かおちゃん。最終決戦は何で競うのがいいと思う?」
相手を威嚇するように互いを見る将梧と門脇の間に、どうどうと馬をいなすように割って入った水原が、いい笑顔で薫に問うた。
「え?なんで俺?っていうか、景品ってそんなにいい物なの?将梧や門脇がこんなに真剣になるなんて」
「うん。ぼくが言うのも何だけど、世界にひとつしかないものだし、すっごい付加価値が付いたものだから」
興味津々の様子で、目を輝かせて景品は何かと思いを巡らす薫に、田上が笑顔で頷く。
「へえ。そんな凄い物なのか。な、将梧、門脇。どっちか貰った方、後で俺にも見せてくれな」
「「ああ。もちろん」」
薫の願いに即座に当然だと大きく頷いた将梧と門脇を嬉しそうに見た薫に、体育委員の本田が尋ねる。
「で、舞岡。最終決戦は?」
「え。ほんとに俺が決めるの?」
みんなも、本人である将梧と門脇もそれでいいのかと、不安の籠る目で周りを見た薫は、みんなが一様に頷くのを見て、ならばと考えつつ、音にした。
「うーん、そうだなあ。腕相撲!とか言いたいところだけど、今日は筋肉も疲労しているから、怪我でもしたら大変・・ってことで、じゃんけんにしよう!三回勝負で!」
「流石、薫。俺の体の心配までしてくれて、ありがとう」
「ありがとう、舞岡。だがいつか、腕相撲もしよう」
薫の提案に、早速と将梧と門脇が向き合って、体勢を整える。
「じゃあ、みんなで言おう!せーの、じゃんけんぽんっ!」
薫が音頭を取り、最初の勝利は将梧、二度目の勝利は門脇となり、次が決戦という三戦目。
「では!泣いても笑ってもこれで最後!両者、恨みっこなしで!せーのっ、じゃんけんぽんっ!」
「よしっ」
そして、最終戦を制して勝者となった将梧は、拳を強く握りしめた。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた
時
BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。
けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。
もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。
ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。
「俺と二人組にならない?」
その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。
執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。
約九万字、全三十話+αの物語です。