43 / 54
四十三、
「浮気って、月岡さん。またまた酷い冗談を。まあ、門脇が格好いいのは本当だけど。それにしても、間男?・・って、なに?」
ほほほと笑いながら言った月岡の言葉に、色々翻弄されながら、薫は疑問を口にする。
「間男というのは、浮気相手のことねえ」
「は!?浮気!?なんで!?」
「『なんで』って。だって可愛いさんには、格好いい彼氏さんがいるからとしか、言えないわねえ。だから、そちらの格好いいさんは間男さん。あ、マスター。いつものをお願いしますねえ」
「はい。お待ちください」
「おお。月岡さん、自由」
薫たちに話を振るだけ振って、さっさと定位置に座る月岡に苦笑して、薫は門脇を見た。
「ごめんな。常連さんなんだけど、冗談がきつくて」
「舞岡。あのご婦人の言う『彼氏さん』とは?」
十中八九、己が思う人物で間違いないだろうと思いつつ、門脇は楽しそうな様子でカップに口をつける薫を見つめる。
「将梧のこと。将梧さ、いっつも迎えに来てくれるんだよ。だから、それで揶揄われてんの」
「そうなのか」
『うん。そうなんだ。マスターなんて《ナイト》とか言っちゃうんだよ』と答える薫は、それで揶揄われているのだという理由付けのつもりでの頷きだが、門脇にとっては別角度の確認だった。
そうか。
秋庭は、毎回迎えに来ているのか。
「門脇?毎回迎えになんて、幼なじみでも有り得ないだろうって呆れた?」
改めてふたりの結びつきの強さに眩暈を覚える門脇に、薫が『引いたか?』と心配そうな目を向ける。
「いいや。出来るなら、俺もそうしたい」
「えええ。門脇も過保護」
「ところで。舞岡、この夏休みはどう過ごしていたんだ?何処かに出掛けたりしたか?」
『舞岡は、コーヒーはブラックで飲む』と、そんな薫の素顔を見られたことも嬉しいと思いつつ、門脇は静かにカップを置いた。
「うん。将梧が希望する大学の見学に行って、その足で俺の就職の斡旋先の喫茶店に行ったし、将梧の誕生日をみんなで祝った・・のは、俺ん家だったな。後、動物園巡りもした!」
『楽しかった!』と屈託なく笑う薫に、門脇はやや目を細める。
「もしかして、それ全部秋庭と一緒か?ふたりで行った?」
「そうだよ。あ、ねえ門脇、聞いてよ!将梧ってば『折角の夏休みなんだから、何泊かして全国の動物園を周れば良い』なんて真顔で言うからさ、それは絶対に駄目だって言ったの。だって、将梧、受験するんだからね?」
『知っていると思うけどさ』と付け加え、薫はこくんとコーヒーを飲む。
ああ。
喉が動くのも可愛い。
「舞岡は、コーヒーを飲む仕草も可愛いな」
「ふぇ!?ちょっと門脇、やっぱり将梧の『薫は可愛い病』に、罹患しちゃったんじゃないの!?」
「いや。別に感染したわけじゃない。元々だ」
「元々?」
「ああ、いや。それで?秋庭は、何と言ったんだ?簡単に、引き下がったりはしなかったんだろう?」
あの秋庭が、舞岡と居る時間、ふたりだけで出かける機会を、そう簡単に諦めるわけがない。
「流石、門脇!その通り。まあさ、俺も将梧と一緒に動物園行くの好きだからさ。『じゃあ、日帰りで行ける所!』って言ったんだよ。そうしたら、どんな範囲で考え出したと思う?」
その時の、将梧の発言を思い出し遠い目になった薫に、門脇は考えつつ答える。
「そうだな。秋庭がどう言ったかは、置いておいて。飛行機を使えば、かなりの範囲が可能だろう。自家用のヘリを使えば、移動時間は、もっと短縮できる」
「うごぉ・・自家用ヘリ。あ、もしかしてそれって、ドクターヘリなんじゃないの?」
門脇の家は、大きな病院だからという薫に、門脇は柔らかい笑みを浮かべた。
「流石に、私用で病院のヘリは使わないから安心しろ。もう、免許も俺が持っているし」
「え!?門脇、ヘリの免許、持っているの!?」
「ああ。いつか、俺の操縦するヘリに乗ってくれ」
『凄い。世界が違う』と仰け反る薫に、門脇はそんな誘いをかけた。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた
時
BL
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。
けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。
もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。
ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。
「俺と二人組にならない?」
その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。
執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。
約九万字、全三十話+αの物語です。