カラフルボックス ~絡め取られて腕のなか~

夏笆(なつは)

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四十三、

 

 

 

「浮気って、月岡さん。またまた酷い冗談を。まあ、門脇が格好いいのは本当だけど。それにしても、間男?・・って、なに?」 

 ほほほと笑いながら言った月岡の言葉に、色々翻弄されながら、薫は疑問を口にする。 

「間男というのは、浮気相手のことねえ」 

「は!?浮気!?なんで!?」 

「『なんで』って。だって可愛いさんには、格好いい彼氏さんがいるからとしか、言えないわねえ。だから、そちらの格好いいさんは間男さん。あ、マスター。いつものをお願いしますねえ」 

「はい。お待ちください」 

「おお。月岡さん、自由」 

 薫たちに話を振るだけ振って、さっさと定位置に座る月岡に苦笑して、薫は門脇を見た。 

「ごめんな。常連さんなんだけど、冗談がきつくて」 

「舞岡。あのご婦人の言う『彼氏さん』とは?」 

 十中八九、己が思う人物で間違いないだろうと思いつつ、門脇は楽しそうな様子でカップに口をつける薫を見つめる。 

「将梧のこと。将梧さ、いっつも迎えに来てくれるんだよ。だから、それで揶揄われてんの」 

「そうなのか」 

 『うん。そうなんだ。マスターなんて《ナイト》とか言っちゃうんだよ』と答える薫は、それで揶揄われているのだという理由付けのつもりでの頷きだが、門脇にとっては別角度の確認だった。 

 

 そうか。 

 秋庭は、毎回迎えに来ているのか。 

 

「門脇?毎回迎えになんて、幼なじみでも有り得ないだろうって呆れた?」 

 改めてふたりの結びつきの強さに眩暈を覚える門脇に、薫が『引いたか?』と心配そうな目を向ける。 

「いいや。出来るなら、俺もそうしたい」 

「えええ。門脇も過保護」 

「ところで。舞岡、この夏休みはどう過ごしていたんだ?何処かに出掛けたりしたか?」 

 『舞岡は、コーヒーはブラックで飲む』と、そんな薫の素顔を見られたことも嬉しいと思いつつ、門脇は静かにカップを置いた。 

「うん。将梧が希望する大学の見学に行って、その足で俺の就職の斡旋先の喫茶店に行ったし、将梧の誕生日をみんなで祝った・・のは、俺ん家だったな。後、動物園巡りもした!」 

 『楽しかった!』と屈託なく笑う薫に、門脇はやや目を細める。 

「もしかして、それ全部秋庭と一緒か?ふたりで行った?」 

「そうだよ。あ、ねえ門脇、聞いてよ!将梧ってば『折角の夏休みなんだから、何泊かして全国の動物園を周れば良い』なんて真顔で言うからさ、それは絶対に駄目だって言ったの。だって、将梧、受験するんだからね?」 

 『知っていると思うけどさ』と付け加え、薫はこくんとコーヒーを飲む。 

 

 ああ。 

 喉が動くのも可愛い。 

 

「舞岡は、コーヒーを飲む仕草も可愛いな」 

「ふぇ!?ちょっと門脇、やっぱり将梧の『薫は可愛い病』に、罹患しちゃったんじゃないの!?」 

「いや。別に感染したわけじゃない。元々だ」 

「元々?」 

「ああ、いや。それで?秋庭は、何と言ったんだ?簡単に、引き下がったりはしなかったんだろう?」 

  

 あの秋庭が、舞岡と居る時間、ふたりだけで出かける機会を、そう簡単に諦めるわけがない。 

 

「流石、門脇!その通り。まあさ、俺も将梧と一緒に動物園行くの好きだからさ。『じゃあ、日帰りで行ける所!』って言ったんだよ。そうしたら、どんな範囲で考え出したと思う?」 

 その時の、将梧の発言を思い出し遠い目になった薫に、門脇は考えつつ答える。 

「そうだな。秋庭がどう言ったかは、置いておいて。飛行機を使えば、かなりの範囲が可能だろう。自家用のヘリを使えば、移動時間は、もっと短縮できる」 

「うごぉ・・自家用ヘリ。あ、もしかしてそれって、ドクターヘリなんじゃないの?」 

 門脇の家は、大きな病院だからという薫に、門脇は柔らかい笑みを浮かべた。 

「流石に、私用で病院のヘリは使わないから安心しろ。もう、免許も俺が持っているし」 

「え!?門脇、ヘリの免許、持っているの!?」 

「ああ。いつか、俺の操縦するヘリに乗ってくれ」 

 『凄い。世界が違う』と仰け反る薫に、門脇はそんな誘いをかけた。 

 

 
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