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四十五、
「将梧?なに、にまにましてんだよ?」
途中までは、門脇も一緒だった<喫茶 ソレイユ>からの帰り道。
薫は、ポケットに手を入れたまま、何故かにやにやしている将梧を下から覗き見た。
因みに、下から覗き見る趣味が薫にあるわけではなく、背の高さゆえにそうなってしまうのだが、その度に薫は『もっと身長が欲しい!』と願っているのだが、今のところ、その願いが叶う様子は無い。
もっと露骨に言うなら、皆無、である。
「いや。今日も、薫は可愛いと思って」
「なんだ、それ」
呆れたように言う薫を見て、将梧は満足の息を漏らした。
『お、来たな。噂の《彼氏さん》」
今日、将梧が<喫茶 ソレイユ>へ、いつも通りに薫を迎えに行くと、そこには、その場では見慣れない顔・・門脇が居た。
しかも、門脇には将梧が来ると分かっていたらしい余裕の対応をされ、将梧は顔を顰めてしまう。
『なんで』
『舞岡に、癒されに来た』
『なら、もう帰れ』
『ああ。帰るさ。舞岡と一緒にな』
薫とふたりの帰り道。
その楽しみを汚され、奪われた気がした将梧が何を言うより早く、薫が、にこにこと将梧に言った。
『途中まで一緒に帰ろうと思って。なんか、新鮮じゃないか?三人で、ここから帰るなんて』
というわけで、将梧は不本意ながらも薫と、そして門脇と共に家路についたのだが、その道中で、ふと門脇に対して更に優位に立てる品を持っていることを思い出した。
そうだ。
誕生日に、薫から貰った、あれがある。
『門脇。これを見ろ』
『はあ。それが、舞岡から誕生日に贈られたプレゼントか』
『なんだ。知っていたのか。もしや、薫から聞いた?』
それは不快だと思った将梧に、門脇は想像とは違う、苦い笑みを浮かべた。
『ああ。『将梧の誕生日に、揃いのキーケースを贈ったら、すっごく喜んでくれた』と、舞岡が、それは可愛い、嬉しそうな笑顔で言っていたからな』
『そうか。それだけじゃない。薫の誕生日には』
『リングをペンダントヘッドだと言って、贈ったのだろう?見せられたときは驚いたが、舞岡は意味を分かっていないからな。あれは、無効だ』
『これから、だ。あのリングも、これから意味を持つ』
何と言っても、これから共に住むのだからと言う将梧に、門脇は心の底から羨望の眼差しを向ける。
『それは、羨ましくて仕方がない。その、リングも、キーケースも』
自分が揃いの品物が欲しいと言ったところで、本気になどしてもらえないだろうと呟いて、門脇は大きなため息を吐いた。
つまり、俺の勝ち。
話
「将梧?ほんと、さっきからどうした?」
「いや。このキーケース。触り心地もいいから」
薫が、将梧のために選んだ、揃いのキーケース。
それが、門脇への勝利の証のようにも思えて、将梧は幾重にも嬉しさが増す。
「ほんと!?それを選んだ理由のひとつに、触って心地いいってのがあったんだ!将梧と俺って、趣味合うよな!」
門脇が聞いたら青くなって呼吸困難になりそうな、そして、今、聞かされた将梧は、またも無意識に自分を幸せにしてくれる薫を、抱き締めたい衝動を抑えるのが大変な話だったのだが。
「将梧!これが、幼なじみの絆ってやつかな!」
と、それはもう、嬉しそうに笑っていた。
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