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十九、
「はあ。楽しかった」
将梧の父、夏樹も遅れて合流した薫の誕生日会は、薫にとって、大切な人たちの笑顔に囲まれる大切な時間となった。
そして、本格的に飲み始めた大人たちを残し、薫と将梧は、将梧の部屋へと退散して来た。
「弾ける笑顔の薫。最高に可愛かった」
「だって。本当に嬉しかったし、楽しかったから」
今年の誕生日はひとりかもしれない、と思ってからの心の籠ったお祝いは、とても嬉しかったと、薫は持って来たジュースをコップに注ぐと、将梧に『はい』と渡す。
「俺。薫が、俺の部屋で、俺のために何かしてくれるの好き」
まるで、一緒に生活しているようだと満足の笑みを浮かべ、将梧は薫へのプレゼントを取り出した。
「薫。お誕生日おめでとう。いいのがあったから、俺が選んだ」
「ありがとう。開けていい?」
「もちろん」
細長い箱に、丁寧に掛けられた包装紙とりぼんを解き、薫はそれをそっと手に取る。
「お。ナットみたいなペンダント。俺さ。さっき、俺が『猫の子じゃねえ』って言ったとき、将梧、ちょっとぎょっとしただろ?だから、もしかしてプレゼントは、チョーカーかもって思ったんだ。ほら、チョーカーって、首輪っぽいだろ?」
「薫に首輪・・いいな。ああ、いや。薫なら、チョーカーも似合いそうだ」
くすくすと笑って、将梧は薫がナットと称した、見ようによっては指輪にも見えるそれを指さした。
「実はそれ、お揃いなんだ」
「そうなんだ。いいな。将梧と離れているときも、一緒に居る感じで・・ん?あ、名前も彫ってある。いいな、これ」
早速と、着けてみようとする薫の背後に周り、将梧はその細い首にそっと指を這わせる。
「んんっ。くすぐったい。将梧、もしかして不器用?てか、慣れてないだけか」
「悪い」
「いんや。大丈夫」
将梧がわざと首筋に触れたとは考えもしない薫は、楽しそうに笑いながら将梧がペンダントを着け終わるのを待つ。
「薫。よく似合う」
「おう。改めて、ありがと」
「俺には、薫が着けてくれる?」
「もちろん!」
将梧に言われ、気安く将梧から、将梧の分のペンダントを受け取った薫は、そこではたと固まった。
「薫?やっぱり、お揃いは嫌だった?」
そんな薫に、将梧は心配そうに声をかける。
「ああ、違う。こういう時ってさ。将梧の分は、俺が用意するもんなんじゃないの?」
お揃いなのだから、そうするべきだったのではと考え込む薫に、将梧は明るい笑みを浮かべた。
「薫が、そう言ってくれて嬉しい。じゃあ、俺の誕生日には、薫が何か、お揃いで用意して」
「分かった!楽しみにしていてくれな」
薫の言葉に、将梧の心は、ふわふわと浮き立ち、薫に着けてもらった揃いのペンダントを見れば、更に気分が上がる。
「何だか、俺の方が薫に幸せにしてもらってる。薫の誕生日なのに」
「何言ってんだよ。俺こそ、将梧には、いつも幸せにしてもらってる」
無意識って怖い。
いや、無意識で言ってくれるからこそ、喜びも一入なのかと、将梧は、自分と揃いのペンダントを着ける薫を、幸せな気持ちで見つめた。
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