カラフルボックス ~絡め取られて腕のなか~

夏笆(なつは)

文字の大きさ
22 / 54

二十二、

しおりを挟む
 
 

 

 

「じゃあ、舞岡。そろそろ、チアの衣装に着替えてくれるか?」 

「え?もう?今、開会式が終わったばっかじゃん。応援合戦は、もっと後だろ?」 

 今、正に開会式を終えたその場所で、笑顔の門脇に促された薫は、目をぱちくりさせてそう言った。 

「だからだよ。チアって、体育祭全体を通して、どれだけ応援していたか、そのパフォーマンスも得点対象になるから」 

「うげ。俺、そんなの聞いてないよ」 

 パフォーマンスと急に言われても、何をしていいか分からないと、薫は困惑してしまう。 

「大丈夫だよ、薫。薫は、そこにいるだけで可愛い」 

 そして、安定の将梧の言葉に、薫は遠い目になった。 

「ああ。審査員の目と思考回路も、将梧と同じだったらいいな・・って。そういや、チアって、どうやって得点を決めんの?応援とかパフォーマンスでって言うけど、誰が審査員?」 

 普通に審査員と言ってしまってから、特にそういった存在はいなかったと気づいた薫は、知っているだろう門脇にそう尋ねた。 

 敢えて言えば教師かもしれないが、教師は教師でチームを作り、チアも存在すると市谷から聞いている薫は、どうするんだと首を傾げる。 

「審査員か。そうだな。言うなれば、参加者全員が審査員だ。チアに関しては、生徒、教師問わず全員の投票で決めるから。全員、一位から三位までを選んで、一位は三点、二位は二点、三位は一点と加算していく」 

「へえ。それで、一番得点の高かった奴が優勝ってことか」 

 納得と頷く薫に、門脇は瞳を光らせた。 

「そういうこと。単純に言えば、一位を最も多く取得すると優勝ってことだけど、そこはまあ、自分の所属するチームのチアに入れるだろうからな。いかに二位を多く取得するかにかかって来るだろう。だがまあ、舞岡だからな。心配無用だ。大量得点間違いなしだと確信している」 

 門脇が自信ありげに言い、将梧も大きく頷く。 

「薫が優勝するに、決まっている」 

「いやいや、それは無いでしょ。でも、なるべく得点貰えるように、パフォーマンスとやらも頑張ってみるよ」 

 そうは言っても、ポンポンを振り回すことくらいしか出来ないけどと笑う薫を見て、将梧と門脇は目配せを交わす。 

 

 この可愛いの、今日は共同で守りぬく。 

 

 普段、互いに最大の障害物、最大の要注意人物と目する相手ではあるが、共通の敵を相手にした場合、これ以上力強い味方はいないと認め合ってもいる。 

 もちろん、クラス全体で薫の警護をすることになってはいるが、やはりふたりのうち、どちらかが薫に付いているのが確実だと、既に時間配分も決めてある。 

「舞岡くん。着替え、手伝おうか?」 

「お!田上、頼む」 

 そこに、衣装が入っているらしい袋を持った田上がにこにこと現れ、薫は素直に田上の傍に寄った。 

「よし。行くか」 

「そうだな」 

 そして、当然のように門脇と将梧も薫と田上と共に動き出す。 

 今日最初の警護担当である田上が、ぴたりと薫に張り付いているにも関わらず、である。 

「ふふ。ふたりとも、最強の騎士ナイトだね。あとは、早く舞岡くんのチア姿が見たいっていうのもあるか。一緒に行けば、それだけ早く見られるもんね」 

「ああ。別に、田上の腕っぷしを疑っているわけじゃない」 

 くすくすと最強の騎士ナイトふたりだと笑う田上に、門脇がばつが悪そうにそう言った。 

「分かっているから、大丈夫だよ。それに、ぼくとしては心強いから。だって、舞岡くん、今だって充分可愛いのに、チアの衣装着たら、本当に犯罪者吸着装置になってしまいそうじゃない?ふらふら~って吸い寄せられて、変態さんがたくさんなんてことになったら、ぼくだけじゃどうしようもないもん」 

「はあ。犯罪者吸着装置・・言い得て妙だな。写真も、写真部にだって撮らせたくないけど、それは無理か?」 

 田上の言葉を聞いて、将梧が眉間にしわを寄せてそう言い、門脇も難しい顔になる。 

「個人個人が勝手に写真を撮ることは禁止出来たが、新聞部は、それが活動だからな」 

「うわ。売れそう。新聞部、高額収入のために張り切りそうだね。ずっと舞岡くんに張り付いていたりして」 

 そんな、将梧、門脇、そして田上の会話を聞いて、薫が呆れたように肩を竦めた。 

「あのな。三人とも、夢見すぎだろ。まあ、もし本当に高額収入なんてことになったら、俺にも恩恵寄こせって、モデル料くらいせびれそうだけど」 

「せびる、って。舞岡くんが言うと、何か新鮮だね。そんな言葉さえ、舞岡くんが言うと可愛いって感じる」 

「薫。せびらずとも、きちんと報酬として要求すればいい」 

「ああ。秋庭の言う通りだ。その時には、俺も一緒に交渉してやる。何なら、先に行くか?」 

 そうやって会話をしつつ、校舎へ向かう道すがらも、既に多くの下級生、同級生が瞳を煌めかせて薫を見ている。 

 

 

『はあ。普段、余り近づけない最上級生相手でも、こういう日は特別・・無礼講って感じがするのかな』 

『教師のなかにも、あやしい目をしている奴がいる』 

『あいつ。手紙か何かもって、舞岡のことチラ見しているな』 

「なあなあ。他のクラスのチアの奴って、どんな格好すると思う?」 

 田上、将梧、門脇が油断せず連携し合って周りを警戒するなか、薫だけは、ひとりのほほんと他のクラスのチアに思いを馳せていた。 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

発情期のタイムリミット

なの
BL
期末試験を目前に控えた高校2年のΩ・陸。 抑制剤の効きが弱い体質のせいで、発情期が試験と重なりそうになり大パニック! 「絶対に赤点は取れない!」 「発情期なんて気合で乗り越える!」 そう強がる陸を、幼なじみでクラスメイトのα・大輝が心配する。 だが、勉強に必死な陸の周りには、ほんのり漂う甘いフェロモン……。 「俺に頼れって言ってんのに」 「頼ったら……勉強どころじゃなくなるから!」 試験か、発情期か。 ギリギリのタイムリミットの中で、二人の関係は一気に動き出していく――! ドタバタと胸きゅんが交錯する、青春オメガバース・ラブコメディ。 *一般的なオメガバースは、発情期中はアルファとオメガを隔離したり、抑制剤や隔離部屋が管理されていたりしていますが、この物語は、日常ラブコメにオメガバース要素を混ぜた世界観になってます。

孤毒の解毒薬

紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。 中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。 不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。 【登場人物】 西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。 白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。

【完結】君の笑顔を信じたい

加賀ユカリ
BL
恋愛に臆病な受けが、後輩攻めに一途に愛される話。 高校三年生である高森浩太(たかもり こうた)は、自身の忘れ物をきっかけに後輩である瀬川蓮(せがわ れん)と知り合うようになる。 浩太は中学時代、同じ部活の男先輩への失恋により、「自分はもう恋愛なんてしない」と恋愛に臆病になる。一方、後輩である蓮は事あるごとに浩太を積極的に遊びに誘う。 浩太が遠まわしにいくら断っても諦めない蓮に、浩太は次第に自身の恋心を隠せなくなっていく── 攻め:瀬川蓮。高校二年生。爽やかな笑顔の持ち主。 受け:高森浩太。高校三年生。日々勉強に追われる受験生。 ・最終話まで執筆済みです(全36話) ・19時更新

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。

或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。 自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい! そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。 瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。 圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって…… ̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶ 【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ 番外編、牛歩更新です🙇‍♀️ ※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。 少しですが百合要素があります。 ☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました! 第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。 そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。 「一緒にコラボ配信、しない?」 顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。 これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。 ※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。

処理中です...