掃除屋

夏笆(なつは)

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四、




 はあ。
 キキョウも、見た目は悪くないのにな。
 小難しいことばっか言うのが難点よね。
 

「まあ。もずの頭じゃ、それが限界か」


 それに、すぐ、こうやってひとのこと小ばかにするのも、減点。
 まあ、私は本当に馬鹿だけど。


 優しく話を聞いてくれるマスターとは大違いと、内心で減点評価するもずに、キキョウが諦めのため息を吐いた。
「はあ。でも、もうちょっとなんとか」
「何その目。さっきのひと言で、諦めたんじゃなかったの?往生際の悪い」
「往生際って・・はあ」
「もう。何度もため息吐かないの!何を言っても、難しい話は私には無理。教養も求めない、以上!・・で?そのクローンがどうかしたの?私に、何か関係ある?」
 登校拒否で、中学もまともに行かなかったもずは、自分に難しいことは理解できないと早々に話を打ち切り、本題へと移行する・・否、移行しようとした。
「ああ・・もずが、中学もまともに出てないってのは知っているけど。多くの場合、中学もまともに出てないのは、あんま関係なくない?知ろうとする姿勢とか、考えようとする心構えってものが、もずには無いだけな気がする」
「あのね、キキョウ。それがないから無知なの。わかっているから問題なし。だから、あの鬼畜上司とのやり取りだって、キキョウ任せなんじゃないの」
 『鬼畜上司は馬鹿が嫌い、ってね』と、歌うように言いながら、もずは肩を竦めて見せる。
「まあ、確かに。あのひとは、理解力低い奴と話すのは時間の無駄って考えるタイプだけど」
「でしょ?だけど、実際に動く人間は、あまり自分で物事を考えない方が都合がいい、ってことで、私はあの鬼畜上司とは直接やり取りしない実行部隊なの。それでお互い平和に過ごせるんだから、いいじゃない・・ってことで、はい。クローンの話題をここで出した説明よろしく」
 『はい、キキョウくん』と、手でキキョウを差し、もずは流石にキキョウを見る。
「はいはい、かしこまりましたよ・・。そうだな。もずにも分かるように言えば、そのクローン技術は人間を作ることも可能だけど、世界協定で禁止されている」
「へえ。この腐った混沌の世の中でも、そんな良識があるのね」
 現存する、阿国あこく威国いこく羽国うこく荏国えこく緒国おこく華国かこく綺国きこく
 各国それぞれで諜報部員が活発な活動を見せ、もずたちのような<掃除屋>が暗躍する世の中で、そんな良識もあったのかと、もずは素直に感動した。
「だがしかし、だ。てやんでえと言わんばかり、そのクローン人間を作っちまった国がある」
「ああ。暗殺に怯えたお偉いさんが、自分の影武者用にとか?有り得そうな話ね」
 不謹慎にも、やや楽しそうに言ったキキョウに、然もありなんと、もずも頷きを返す。
 「なるほど。自分の影武者か。未だその方が可愛げがあるな。開発されたのは、自分の都合のいいように動かせるクローンだ」
「ん?自分の都合のいいように、って。どういうこと?影武者じゃないにしても、自分のクローンを作るんじゃないの?」
 キキョウの説明に、もずは首を傾げた。
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