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六、
「あんのっ、くそっ、鬼っ、鬼畜上司め!こんな過酷な現場にふたりだけで乗り込ませるなんて!いつか絶対、ずええったいに!ぎったんぎったんにして、吠え面かかせてやるんだから!」
「はははっ。もずってば、清掃者の制服でモップ持ったまま悪態ついても、可愛いだけだよ。迫力無い」
「うるさいわよ、キキョウ!自分だって同じ格好してるくせに!それとも、自分が可愛いって言われたいから言っている!?」
もずとキキョウ。
今ふたりは、とあるビルの中を激走している。
因みに、今日は例のクローン関連とは別件のため、その身にまとっているのはこのビルの清掃業者の制服、そしてその手にあるのは、武器を仕込んであるモップ。
「私、戦闘はあんまり得意じゃないのに」
「いやあね、もずちゃん。だからぁ。戦闘は最小限で済ませるために、こうして一生懸命逃げているんでしょ。大丈夫。いざとなったら、アタシが護ってあげるから。あ、最終兵器だけは、失くさないようにしてねん」
「キキョウ。その薄気味悪い言葉遣い、やめて」
走りながらウィンクをされたもずは、鳥肌が立つと思い切り睨んだ。
「いやだ、もずちゃんってば。照れちゃって可愛いんだからぁ」
「照れていないから!」
「もう・・乙女さん!アタシが恰好良すぎるからいけないのよね。罪作りだわあ」
「そこ!勝手な解釈しない!それと妄想も!」
気持ち悪いにもほどがあると、もずは手にしたモップを、思い切りぶんと横に振った。
「わお!あっぶないじゃないのぉ」
そのモップを簡単にぴょんと跳び、キキョウは緊張感の欠片も無い声を出す。
「避けんじゃないないわよ!」
「無茶言わないでよぉ。避けなければ当たっちゃうじゃない」
「だから!当たるように振ったのに!」
かなりのスピードだったはず、その証拠に自分への反動も大きかったと、もずは、頬を膨らませた。
「もずちゃんってば。そんな顔しても可愛いだけよん。それから、悔しいのはわかるけど、油断禁物。そんなことしてたら、本当に落としちゃうわよ?大切なもずちゃんの最終兵器」
「そんな簡単に落としたりしないに決まっているでしょ!物が物なのよ!?そこまで間抜けじゃないわよ、もう!」
「もうもう言っていると、牛になっちゃうわよぅ」
冗談のように言いながら、キキョウは笑いのない目でちらりと後ろを振り返った。
今、もずとキキョウを追走しているのは、さきほどふたりの存在がばれてしまった警備員と、後から合流したらしいふたり。
「何人!?」
「三人。このまま連れて行って、一緒に始末しよう。予定通り、もずが社長を、俺が奴らを片付ける」
「了解」
今回の任務は、他国に大量の武器を売りさばいて自国への侵攻を促し、その上で自国にも武器を売り、利益を得ようとしている人物を消すこと。
「ほいほーい!社長室に到着!」
頑健な扉の前に到着したキキョウは、躊躇いもなくその扉を蹴り壊した。
「侵入、本人確認・・っと」
『相変わらず、すごっ』と、破壊された扉を見、頭の片隅で思いつつも、最初ほどの動揺もなく部屋へと侵入したもずは、迷わず奥へと突き進む。
「なっ。貴様ら、何者だ!?」
「いつも思うんだけど。名乗る筈、無いでしょって。意味も無いし」
見るからに偉そうな男に近づいたもずは、怯え、後ずさりながら尋ねる男に『すぐにさよならするのだし』と、素気無く答えた。
「誰か!侵入者だ!」
「はいはーい。何人来ても無駄ですよ・・っと」
その間に、追い付いて来た警備員をキキョウが倒し、社長の傍に付いていた護衛も倒した。
「なっ、何が目的だ!」
「それも思うんだけど。分かっているでしょうに、って」
首を傾げつつ、もずは、取り出したそれを右手に握る。
「く、来るな!・・・うぐっ」
「来るなって言われても、これがお仕事なので・・って。もう聞こえていないか」
首筋に押し付けた針を抜き、もずは頽れた男を見つめる。
「戻るぞ」
「うん」
自分が殺した男に手を合わせ、もずはキキョウと共にその場を離れた。
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