おにぃちゃんと私のラブコメは形は違えど、現在進行形なのです！

二話 おにぃちゃんの事が世界で一番好きな妹です！ 二

「ねぇ、お父さん？　あれはどうゆう事かな？」

　響は相変わらずの作り笑いを浮かべ、威圧的にそう問いかける。
　すると賢治は左頬を指で掻いて、一度気まずそうに視線を逸らした。

「おぃ──」

　響がもう一度問おうとした所で、賢治がばっと顔をあげたので言うのをやめる。

「前もって言っておくぞ、これは非常に大事な話だから、心して聞く様にしてくれ」

　いつになく真剣な父、賢治にただならぬ決意を感じ、乾いた唇を一度湿らせると「あぁ」と首肯した。

「あの子結菜ちゃんは、つい先日のある日、俺の会社の玄関前に倒れた所を発見された少女なんだ。まぁ、ただの疲労と空腹で倒れてただけだったんだがな」

　賢治はそう言って乾いた笑いをあげる。

（なんだよそれ、ただのバカかよ⋯⋯）

　響は一瞬そんな事を考えたが、さっきの父の顔からはそれだけじゃないことが分かったので、何も言わずに頷いた。

「それでご飯を食べさせたり、少しの間寝かせておいたんだが、その後普通に元気になって話を聞いてみたんだ。そしたらどうやら俺を探していたらしくてな。俺と知るなり目を輝かせて、ある一つの封筒を渡してきたんだ⋯⋯。いやぁ⋯⋯あの時の嬉しそうな表情は、本っ当に可愛かったなぁ⋯⋯」

　そんな事を言って幸せそうに耽っている賢治を見て、響はため息をつく。

「お父さんにそんな趣味があったとは思わなかったよ⋯⋯。あぁ、心底引いた」
「は？　て、なんだその目は！　俺にそんな趣味はねぇよ！」

　響は軽蔑の眼差しを、しどろもどろになりながら否定する父、賢治に向ける。

「で、その封筒には、何が書いてあったんだよ」
「あぁ、結構色々と書いてあったんだがお前に言える事は、あの子の名前が桜庭 結菜という名前で年齢が君より一つ下の16歳である事、どこで関わりを持ったのかは知らないが結菜ちゃんはお前に会うためだけにここまで来たという事だ！」
「俺の為に来たのか⋯⋯？　あんな可愛い子の知り合いなんて──」
「あぁ、あと結菜ちゃんは既に帰る場所がなくて一文無しだから、少しの間俺たちの家に住んで貰うことにしたからな、ちゃんと面倒、もとい気持ちに応えてあげるんだぞ！」

　笑顔でそう言い残し出て行こうとする賢治、だが響は肩を掴むと掴む力を強め振り返らせる。
　そして青筋を立てて無理に作った笑顔を見せた。

「なぁ、お父さん⋯⋯」
「⋯⋯ん？　どうした⋯⋯？」

　どこか思う事でもあったのか、ふいっと目をそらす賢治。

「今一番重要な事をさらっと言い逃げしようとしたよな？」
「な、何言ってんだ、俺とお前の中だろ？　硬い何かで繋がってるだろ。そんなお前なら分かってくれると思っただけさ」

　無駄にカッコつけた父に響はため息を吐くと手を離した。

「まぁ、お父さんの決めた事だし⋯⋯いいけどさ⋯⋯あの子がもしも本当に俺の事が好きだとしても、それは叶わないよ」

　無機質に、そして少し寂しそうに漏れたその言葉に賢治が振り向く事なく答える。

「まだ、好きなのか⋯⋯もう忘れろとは言わない⋯⋯だけど、あの子にはちゃんと真正面から相手してやってくれ。それがお前、いやお前らの為・・・・・だと俺らは信じてみる・・・・・・・・事にしたんだからな」

　どこか、願いを囁くようで響は思わず賢治を見るがその意図を掴めることなくみ部屋を出て行った。