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第一章 復讐の少女。
第六話 黒兵との遭遇
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ある日の夜。俺は村を離れ、森の中を歩いていた。
理由は獲得したスキルの試運転だ。魔獣を倒して得たスキルは村人には秘密にしているため、人目のつかない場所で練習するしかないのだ。
村長にも許可を貰っており、あまり森の奥へ行かなければ魔獣を狩ってもいいとのことだ。
俺は手に持つ羊皮紙で出来た本を捲る(異世界では紙が高いらしい)。これは狩り仲間がくれた物で、この森に生息する魔獣について記されている。
エルフや今の俺の様な魔物、森に生息する魔狼などの魔獣には様々な種類があり、姿形、固有スキル、そして危険度も違う。その危険度、強さによって魔物や魔獣にはランク付けされているらしい。
ランクはF~Sまで存在している。どうやらこのランク付けは人間の軍がしたらしく、基準は....
F~Eは訓練兵、一般兵でも狩れるランク
D~Cがベテランの者が、Bはそのベテランの中でも一部の許可を得た人間が狩れる
A~Sまで来るとその更に上、町や国、世界を動かす程の危険性を持ち、戦えば多くの命が亡くなると言われる化け物のランク....らしい。
流石にSランクまでくると想像出来ないが、実際に数百年前に幾もの国を滅ぼして回った化け物が存在していたと記録が残っている。
この森の中に生息する魔獣の最高ランクはB-、統率力が高く、氷の牙と爪を持つ《アイスファング》魔植物種の一種の《トレント》の上位種《ギガントトレント》の二種だ。
俺はCの魔獣までしか狩った事がないがそれでもやはり強敵だった(固有スキル無しの状態だけど)。
エルフ族は皆が風を扱うスキルを持つためC+とそこそこ高いランクを誇っているそうだ。
ちなみに種族=その個体の強さではなく、実際の強さや危険度はその個体の技量や力などによって実際のランクは変わる。
先のエルフ族で例えるならエルフ族の平均的な能力を見てC+、同じエルフ族のエレンがだいたいD~C-ぐらいじゃないだろうか?。この様にその個体がその個体の種族と同ランクの強さを持つとは限らないのだ。
このように様々な基準でランク付けされている。
魔獣の特徴を本で確認しながら森の中を歩いていた俺は道の先、そのそばの木にもたれかかる人影に気づいた。
あちらも俺に気づいた様で小走りで近づいてくる。
「やっぱり。夜中に一人でこっそり狩りに出ていたのね」
「何だよエレン。別に俺は金稼ぎや採取が目的じゃないぞ」
エレンは俺に近づくと軽く小突く。
「私も混ぜなさいよね、バカ。一人だと危険でしょ?」
「......はぁ、分かったよ」
別に俺は元から二人で行っても良かったのだが村人に秘密にしているスキルの練習ということもあり、出来れば一番こそこそと出来る一人が良かったのだ。
村を出るときには門を出なければならない。そこは二人だと見られやすい、もしつけてこられても困る(それに最近エレンとの百合疑惑が浮上してきてるから尚更だ)。
しかし、それもあちらから先回りされては意味も理由も無くなる。
俺がそう言い了承するとエレンは上機嫌になり俺の先を歩き出した。
「ほら、早く行こう!! 昼に珍しい薬草がいっぱい生えてる所見つけたの!!」
別に採取しに来た訳じゃないんだけどなぁ。
俺は苦笑しながら笑顔で先にいくエレンを追いかけた。
「ツキヒノ薬草にルメア鉱石も沢山取れてもう最高!! これだけ有ればしばらくの生活は間は安定ねっ」
「あまり騒ぐなよ。夜になると昼と違って荒れる魔獣も居るんだからな」
暫くの間狩りや採取を続け、俺達は帰路についた。
エレンはあまり夜の森に入ったことがないらしく大はしゃぎしていた。
俺も注意を促しているがエレンがはしゃぐ気持ちもわかる。前世では森行くことがそもそも無かったからな。
それに今回の採取で、使えば大きな傷も直ぐに治る上位回復薬の調合に必要な主な素材であるツキヒノ薬草と、武器や防具などの使われる素材に使われる加工しやすく丈夫なルメア鉱石が沢山取れたのだ。
そのせいでエレンの背負う鞄はパンパンに膨らんでしまっている。
「まぁ確かにこれだけあれば回復薬にも困らないし、武器も新調出来るかもな。俺は回復薬使わないからツキヒノ薬草はお前にやるよ」
「え、良いの!? やった、今夜はいいことばかりね! お金が儲けて素材も沢山採れて....そ、それに....クレインと夜に二人っきり....デ、デートみたい....」
「ん? 何? 最後のほう良く聞こえなかったけど」
「え!? ええとあなたと二人っきりだから、そのデ、デー....」
俺はエレンが最後まで話すのを待たず少し先を行くエレンに向かって走りだした。
エレンは驚いているようだが今は無視だ。
俺はエレンのすぐそばの木から彼女目掛けて伸びる鋭い枝を切り飛ばす。そして、その木、C-ランクの魔獣トレントに固有スキル【部分装甲】で鎧のような甲殻を纏わせた左腕で殴り付ける。トレントは苦痛に声を上げ、その声が止まる前にその幹に剣を突き立てる。
トレントは静かになり、ただの倒木のようにその場に倒れ動かなくなった。
「な、なな....」
「ふぅ....危なかったな。【索敵】スキルを疎かにしてしまってたみたいだ。すまん、このスキルもまだまだ練習しないとな」
ノーマルスキル【索敵】は自分を中心に約百メートルの中の魔力を感知するスキルだ。
トレントは普通の木に擬態することができ、擬態中は自信の魔力をほとんど静めてしまうため【索敵】にかかりにくくなっていたから気づくのに遅れてしまった。
「で、さっきのだけど何て言ってたの?」
エレンにさっきのの事を聞き直すと顔を真っ赤に怒った。
「うるさいバカッ!! もう知らない!!」
怒鳴られた。ええぇ、助けてくれた相手にこれって....何で?
ズンズンど聞こえるように足を踏み鳴らしながらエレンが先を歩いていく。
「どうしたんだよ。俺は助けてあげただけだろ。あ、もしかしてトレントに気づいてたとか? 自分の獲物取られたッ、みたいな....」
「違う!! もう、人の気も知らないで!!」
....それ少女扱いされて困ってる俺を笑うお前に言ってやりたい言葉だな。言った所よけい笑われるだけだから言わないけど。
「たくっ、女になっても女の気持ちを理解するのは難しいなぁ」
そう呟きエレンとの距離を縮めようと歩を速める....
「ん!? もう、どうしたのよクレイン!!」
「しッ」
突然立ち止まった俺に気がついたエレンが何事か聞いてくるが、静かにするようジャスチャーする。
耳を澄ませると何処かで人が騒ぐ声が聞こえてきた。
エレンもそれに気づき表情を改める。
どうやら誰かが争っているようだ。
「村とは違う方向ね。こんな夜に何してるのよ」
「さぁ....ただ村の人達じゃないと良いけどな。様子を見に行くか」
「そうね、エルフの仲間なら止めないと。違ったら違ったで話を聞くか様子を村に報告しないと行けないしね」
エレンも賛成し、二人で声のする方へ走り出した。
近づいていくうちに次第に声がはっきりと聞こえてくる。やはり、誰かが争っているようだ、戦闘音も聞こえてくる。索敵範囲に入ったようだ、複数の人達が動きまわり、スキルを使っているのがわかる。
辿り着くとそこにはやはり複数の人影が争っていた。
フードを目深に被った少女と、漆黒の鎧で身を包んだ複数の兵士が戦っている。
少女の動きは速く、兵を撹乱しアサルトスキルを叩き込んでいる。
だが、少女は疲弊しているのか速さの割りにキレがない。
それに反し兵士は仲間が倒れても気にせずに少女へ襲いかかる。
「おい!! そこで何してる、一旦争うのを止めて説明しろ!!」
「待ってクレイン!!」
俺が声をかけるのとエレンが俺を止めるのは同時だった。エレンの注意は遅かった。
こちらに気づいた兵士は俺達に襲いかかってきたのだ。
「おわっ!? 危ないだろ!!」
兵士の降り下ろす長剣をかわして距離をとる。
「クレインのバカッ!! コイツら魔王軍の兵士よ!!」
「マオーグン? 魔王軍!? 嘘っ、そんなの本当に居るの!?」
「コイツら魔王軍の兵士、その中でも一人一人の戦闘力がCランク以上の実力を持っているっていう漆黒の鎧を装備する兵《黒兵》よ!! 何でこんな所に!?」
魔王軍ってマジか、そんなの居るのかよ。後でちゃんと説明してもらおう。
漆黒の兵士、黒兵は、兜の暗い奥からこちらを見据えている。
全身を鎧で覆っているため種族が分からないが、エレンいわく一人でCランク相当の力を持っているらしい。
それが今目の前に六人。
本気を出せばどうにかなるか....? 一応不死らしいし、俺。まだ大怪我なんかしたことないから分からないけど。
やるか。そう決めた俺は先ほど黒兵と戦っていた謎の少女に声をかける。
「おい!! 俺達も首突っ込んでしまったからな。後は任せとけ!!」
「えー!! 俺達って私も!?」
エレンが後ろから顔を青くして抗議の声をあげているが知ったことじゃない。
黒兵が俺めがけて再び剣を振るってくる。
それを体を軽くずらし、スレスレでかわすと黒兵の鎧を観察する。
まずこの鎧は俺の剣や俺の【剣術】スキルもかねた剣の腕前じゃ弾かれるだけだろう。ならばと、黒兵の兜の死角に入り背後を取る。そして鎧と鎧の間、膝の裏を剣で切りつける。
「衝撃よ、放たれろッ、【インパクト】!!」
その場に倒れこんだ黒兵背中に手を当て、アサルトスキル【インパクト】を発動。
【インパクト】は対象に衝撃波を放つスキルであり、その衝撃波は鎧の中にまで浸透する。
このスキルは護身用に多く使われているノーマルスキルのため決して人を殺すような威力は持たないが気絶させるには十分の威力をもつ。
「《氷の矢よ、吹雪を纏いて、我が敵を乱れ撃て》【吹雪散矢】」
一人を仕留めた俺に別の黒兵がくぐもった声でスキルを発動する。
凍てつく風を纏い数本の氷の矢が俺目掛けて飛んでくる。
「《風よ、迫り来る脅威から彼の身を防げ》!! 【ウインドウォール】!!」
エレンのスキルで風の壁が出来上がり矢を弾く。
そしてスキルを放った黒兵に【ウインドブラスト】を放つ。巨大な突風は黒兵に強い衝撃を与え、その体を高く宙に飛ばす。
俺は【宙蹴り】を使い何もない空を踏み締め、飛ばされた黒兵の真上へ飛び上がる。
そして空を蹴り黒兵目掛けて突っ込む。その勢いを利用して【部分装甲】で甲殻を纏った右腕を黒兵へ降り下ろす。
黒兵は鎧の胸部を割りながら地面に叩きつけられ動かなくなった。
地に着地した俺にエレンが怒った顔で走り寄ってくる。
「もう!! 黒兵に勝手に突っ込んでいって!! アイツらはC以上の実力よ!? まだ私達C-しか狩ったことないのに戦うのは無理よ! さっきのだって危なかったじゃない、私に感謝してよね!!」
「はいはい、サンキューな」
エレンが微かに震えている手で俺の手を握ってくる。
怖かったのだろう。エレンは不死属性持ちの俺と違って根っこの所は怖がりだ。
さっきの行動も咄嗟に俺を救っていて恐怖が薄れていただけに違いない。
先の謎の少女は俺の背後にある木の下にいるからまだ安全だろう。
いまここでまともに戦えるのは俺一人、しかも俺だって対人の命のやり取りは初めてだ。本当はプレッシャーが凄い。
それなのに一対四。
さぁ....どうするか。
暫く互いに見つめあっていが、黒兵達が何か会話をし始めた。そしておもむろに踵を返しその場を去っていった。
その漆黒の鎧の姿は木々の中に消えていった。
「....助かったのか?」
「私、今日良いことばかりと思ってたのに....最後の最後で死ぬかと思った..」
エレンが緊張がほどけたのかその場に座り込む。
....何だったんだ結局。黒兵があの少女を襲っているのは見て分かったが何故なのかは分からないままだ。
「なぁ君、何で黒兵に襲われて..」
俺が謎の少女に事情を聞こうと近づくと急に力尽きたように少女が倒れこんでしまった。
「あ、おい!?」
エレンが慌てて少女を抱き起こす。どうやら相当疲れが溜まっていたらしい。気を失ったようだ。
「....この人も村に連れて帰りましょう」
エレンがそう言う。俺もそれに賛成し、少女を背中に背負う。
「村長にこのこと伝えないとな。この人からも話を聞かないと」
俺の想像通りの魔王ならば、魔王軍というのは危険な奴等だ。
前世と今戦った俺の経験からして多分、近いうちに何かが起きる。それに、こんな所に魔王軍が居るのはおかしいとエレンが言っていたからな。なにかがあるのだろう。
俺達は少しでも速く村長にこのこと伝えるため、歩を速める。
理由は獲得したスキルの試運転だ。魔獣を倒して得たスキルは村人には秘密にしているため、人目のつかない場所で練習するしかないのだ。
村長にも許可を貰っており、あまり森の奥へ行かなければ魔獣を狩ってもいいとのことだ。
俺は手に持つ羊皮紙で出来た本を捲る(異世界では紙が高いらしい)。これは狩り仲間がくれた物で、この森に生息する魔獣について記されている。
エルフや今の俺の様な魔物、森に生息する魔狼などの魔獣には様々な種類があり、姿形、固有スキル、そして危険度も違う。その危険度、強さによって魔物や魔獣にはランク付けされているらしい。
ランクはF~Sまで存在している。どうやらこのランク付けは人間の軍がしたらしく、基準は....
F~Eは訓練兵、一般兵でも狩れるランク
D~Cがベテランの者が、Bはそのベテランの中でも一部の許可を得た人間が狩れる
A~Sまで来るとその更に上、町や国、世界を動かす程の危険性を持ち、戦えば多くの命が亡くなると言われる化け物のランク....らしい。
流石にSランクまでくると想像出来ないが、実際に数百年前に幾もの国を滅ぼして回った化け物が存在していたと記録が残っている。
この森の中に生息する魔獣の最高ランクはB-、統率力が高く、氷の牙と爪を持つ《アイスファング》魔植物種の一種の《トレント》の上位種《ギガントトレント》の二種だ。
俺はCの魔獣までしか狩った事がないがそれでもやはり強敵だった(固有スキル無しの状態だけど)。
エルフ族は皆が風を扱うスキルを持つためC+とそこそこ高いランクを誇っているそうだ。
ちなみに種族=その個体の強さではなく、実際の強さや危険度はその個体の技量や力などによって実際のランクは変わる。
先のエルフ族で例えるならエルフ族の平均的な能力を見てC+、同じエルフ族のエレンがだいたいD~C-ぐらいじゃないだろうか?。この様にその個体がその個体の種族と同ランクの強さを持つとは限らないのだ。
このように様々な基準でランク付けされている。
魔獣の特徴を本で確認しながら森の中を歩いていた俺は道の先、そのそばの木にもたれかかる人影に気づいた。
あちらも俺に気づいた様で小走りで近づいてくる。
「やっぱり。夜中に一人でこっそり狩りに出ていたのね」
「何だよエレン。別に俺は金稼ぎや採取が目的じゃないぞ」
エレンは俺に近づくと軽く小突く。
「私も混ぜなさいよね、バカ。一人だと危険でしょ?」
「......はぁ、分かったよ」
別に俺は元から二人で行っても良かったのだが村人に秘密にしているスキルの練習ということもあり、出来れば一番こそこそと出来る一人が良かったのだ。
村を出るときには門を出なければならない。そこは二人だと見られやすい、もしつけてこられても困る(それに最近エレンとの百合疑惑が浮上してきてるから尚更だ)。
しかし、それもあちらから先回りされては意味も理由も無くなる。
俺がそう言い了承するとエレンは上機嫌になり俺の先を歩き出した。
「ほら、早く行こう!! 昼に珍しい薬草がいっぱい生えてる所見つけたの!!」
別に採取しに来た訳じゃないんだけどなぁ。
俺は苦笑しながら笑顔で先にいくエレンを追いかけた。
「ツキヒノ薬草にルメア鉱石も沢山取れてもう最高!! これだけ有ればしばらくの生活は間は安定ねっ」
「あまり騒ぐなよ。夜になると昼と違って荒れる魔獣も居るんだからな」
暫くの間狩りや採取を続け、俺達は帰路についた。
エレンはあまり夜の森に入ったことがないらしく大はしゃぎしていた。
俺も注意を促しているがエレンがはしゃぐ気持ちもわかる。前世では森行くことがそもそも無かったからな。
それに今回の採取で、使えば大きな傷も直ぐに治る上位回復薬の調合に必要な主な素材であるツキヒノ薬草と、武器や防具などの使われる素材に使われる加工しやすく丈夫なルメア鉱石が沢山取れたのだ。
そのせいでエレンの背負う鞄はパンパンに膨らんでしまっている。
「まぁ確かにこれだけあれば回復薬にも困らないし、武器も新調出来るかもな。俺は回復薬使わないからツキヒノ薬草はお前にやるよ」
「え、良いの!? やった、今夜はいいことばかりね! お金が儲けて素材も沢山採れて....そ、それに....クレインと夜に二人っきり....デ、デートみたい....」
「ん? 何? 最後のほう良く聞こえなかったけど」
「え!? ええとあなたと二人っきりだから、そのデ、デー....」
俺はエレンが最後まで話すのを待たず少し先を行くエレンに向かって走りだした。
エレンは驚いているようだが今は無視だ。
俺はエレンのすぐそばの木から彼女目掛けて伸びる鋭い枝を切り飛ばす。そして、その木、C-ランクの魔獣トレントに固有スキル【部分装甲】で鎧のような甲殻を纏わせた左腕で殴り付ける。トレントは苦痛に声を上げ、その声が止まる前にその幹に剣を突き立てる。
トレントは静かになり、ただの倒木のようにその場に倒れ動かなくなった。
「な、なな....」
「ふぅ....危なかったな。【索敵】スキルを疎かにしてしまってたみたいだ。すまん、このスキルもまだまだ練習しないとな」
ノーマルスキル【索敵】は自分を中心に約百メートルの中の魔力を感知するスキルだ。
トレントは普通の木に擬態することができ、擬態中は自信の魔力をほとんど静めてしまうため【索敵】にかかりにくくなっていたから気づくのに遅れてしまった。
「で、さっきのだけど何て言ってたの?」
エレンにさっきのの事を聞き直すと顔を真っ赤に怒った。
「うるさいバカッ!! もう知らない!!」
怒鳴られた。ええぇ、助けてくれた相手にこれって....何で?
ズンズンど聞こえるように足を踏み鳴らしながらエレンが先を歩いていく。
「どうしたんだよ。俺は助けてあげただけだろ。あ、もしかしてトレントに気づいてたとか? 自分の獲物取られたッ、みたいな....」
「違う!! もう、人の気も知らないで!!」
....それ少女扱いされて困ってる俺を笑うお前に言ってやりたい言葉だな。言った所よけい笑われるだけだから言わないけど。
「たくっ、女になっても女の気持ちを理解するのは難しいなぁ」
そう呟きエレンとの距離を縮めようと歩を速める....
「ん!? もう、どうしたのよクレイン!!」
「しッ」
突然立ち止まった俺に気がついたエレンが何事か聞いてくるが、静かにするようジャスチャーする。
耳を澄ませると何処かで人が騒ぐ声が聞こえてきた。
エレンもそれに気づき表情を改める。
どうやら誰かが争っているようだ。
「村とは違う方向ね。こんな夜に何してるのよ」
「さぁ....ただ村の人達じゃないと良いけどな。様子を見に行くか」
「そうね、エルフの仲間なら止めないと。違ったら違ったで話を聞くか様子を村に報告しないと行けないしね」
エレンも賛成し、二人で声のする方へ走り出した。
近づいていくうちに次第に声がはっきりと聞こえてくる。やはり、誰かが争っているようだ、戦闘音も聞こえてくる。索敵範囲に入ったようだ、複数の人達が動きまわり、スキルを使っているのがわかる。
辿り着くとそこにはやはり複数の人影が争っていた。
フードを目深に被った少女と、漆黒の鎧で身を包んだ複数の兵士が戦っている。
少女の動きは速く、兵を撹乱しアサルトスキルを叩き込んでいる。
だが、少女は疲弊しているのか速さの割りにキレがない。
それに反し兵士は仲間が倒れても気にせずに少女へ襲いかかる。
「おい!! そこで何してる、一旦争うのを止めて説明しろ!!」
「待ってクレイン!!」
俺が声をかけるのとエレンが俺を止めるのは同時だった。エレンの注意は遅かった。
こちらに気づいた兵士は俺達に襲いかかってきたのだ。
「おわっ!? 危ないだろ!!」
兵士の降り下ろす長剣をかわして距離をとる。
「クレインのバカッ!! コイツら魔王軍の兵士よ!!」
「マオーグン? 魔王軍!? 嘘っ、そんなの本当に居るの!?」
「コイツら魔王軍の兵士、その中でも一人一人の戦闘力がCランク以上の実力を持っているっていう漆黒の鎧を装備する兵《黒兵》よ!! 何でこんな所に!?」
魔王軍ってマジか、そんなの居るのかよ。後でちゃんと説明してもらおう。
漆黒の兵士、黒兵は、兜の暗い奥からこちらを見据えている。
全身を鎧で覆っているため種族が分からないが、エレンいわく一人でCランク相当の力を持っているらしい。
それが今目の前に六人。
本気を出せばどうにかなるか....? 一応不死らしいし、俺。まだ大怪我なんかしたことないから分からないけど。
やるか。そう決めた俺は先ほど黒兵と戦っていた謎の少女に声をかける。
「おい!! 俺達も首突っ込んでしまったからな。後は任せとけ!!」
「えー!! 俺達って私も!?」
エレンが後ろから顔を青くして抗議の声をあげているが知ったことじゃない。
黒兵が俺めがけて再び剣を振るってくる。
それを体を軽くずらし、スレスレでかわすと黒兵の鎧を観察する。
まずこの鎧は俺の剣や俺の【剣術】スキルもかねた剣の腕前じゃ弾かれるだけだろう。ならばと、黒兵の兜の死角に入り背後を取る。そして鎧と鎧の間、膝の裏を剣で切りつける。
「衝撃よ、放たれろッ、【インパクト】!!」
その場に倒れこんだ黒兵背中に手を当て、アサルトスキル【インパクト】を発動。
【インパクト】は対象に衝撃波を放つスキルであり、その衝撃波は鎧の中にまで浸透する。
このスキルは護身用に多く使われているノーマルスキルのため決して人を殺すような威力は持たないが気絶させるには十分の威力をもつ。
「《氷の矢よ、吹雪を纏いて、我が敵を乱れ撃て》【吹雪散矢】」
一人を仕留めた俺に別の黒兵がくぐもった声でスキルを発動する。
凍てつく風を纏い数本の氷の矢が俺目掛けて飛んでくる。
「《風よ、迫り来る脅威から彼の身を防げ》!! 【ウインドウォール】!!」
エレンのスキルで風の壁が出来上がり矢を弾く。
そしてスキルを放った黒兵に【ウインドブラスト】を放つ。巨大な突風は黒兵に強い衝撃を与え、その体を高く宙に飛ばす。
俺は【宙蹴り】を使い何もない空を踏み締め、飛ばされた黒兵の真上へ飛び上がる。
そして空を蹴り黒兵目掛けて突っ込む。その勢いを利用して【部分装甲】で甲殻を纏った右腕を黒兵へ降り下ろす。
黒兵は鎧の胸部を割りながら地面に叩きつけられ動かなくなった。
地に着地した俺にエレンが怒った顔で走り寄ってくる。
「もう!! 黒兵に勝手に突っ込んでいって!! アイツらはC以上の実力よ!? まだ私達C-しか狩ったことないのに戦うのは無理よ! さっきのだって危なかったじゃない、私に感謝してよね!!」
「はいはい、サンキューな」
エレンが微かに震えている手で俺の手を握ってくる。
怖かったのだろう。エレンは不死属性持ちの俺と違って根っこの所は怖がりだ。
さっきの行動も咄嗟に俺を救っていて恐怖が薄れていただけに違いない。
先の謎の少女は俺の背後にある木の下にいるからまだ安全だろう。
いまここでまともに戦えるのは俺一人、しかも俺だって対人の命のやり取りは初めてだ。本当はプレッシャーが凄い。
それなのに一対四。
さぁ....どうするか。
暫く互いに見つめあっていが、黒兵達が何か会話をし始めた。そしておもむろに踵を返しその場を去っていった。
その漆黒の鎧の姿は木々の中に消えていった。
「....助かったのか?」
「私、今日良いことばかりと思ってたのに....最後の最後で死ぬかと思った..」
エレンが緊張がほどけたのかその場に座り込む。
....何だったんだ結局。黒兵があの少女を襲っているのは見て分かったが何故なのかは分からないままだ。
「なぁ君、何で黒兵に襲われて..」
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「あ、おい!?」
エレンが慌てて少女を抱き起こす。どうやら相当疲れが溜まっていたらしい。気を失ったようだ。
「....この人も村に連れて帰りましょう」
エレンがそう言う。俺もそれに賛成し、少女を背中に背負う。
「村長にこのこと伝えないとな。この人からも話を聞かないと」
俺の想像通りの魔王ならば、魔王軍というのは危険な奴等だ。
前世と今戦った俺の経験からして多分、近いうちに何かが起きる。それに、こんな所に魔王軍が居るのはおかしいとエレンが言っていたからな。なにかがあるのだろう。
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高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中)
※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
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