神霊魔王の英雄談 〜転生先で性転換してしまいますが主人公を目指してます〜

メンゼ

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第一章 復讐の少女。

第十一話 エゴとエゴ

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 肩、胸、横腹、太腿、足首....身体のあちこちに激痛が走りのたうちまわりたくなるが、それさえ出来ずに身体を固定された。

 普通の人間ならこの時点で急所が傷つくか血を流しすぎるかで死ぬ所だろう。

 端からみたら、昆虫の標本のようだろう。

「グッ、くぁぁ....はぁはぁ.......」

 身体は再生しようとしているのに刺さる針が邪魔をする。再生して、針で肉が傷つき、また痛みが弾ける。

 首を動かすと、ふらつきながらも立ち上がるステーデの姿が目にうつった。

 まるで、何かに取り憑かれたのではないのか。そう思えてしまうような動きを彼女はしていた。

「やっと、捕まえま....したよ、クレ....インさん」

 ふら....ふら....と少しずつ近づいてくる。

「これでやっと、あなたを....殺して、喰らって....力を......」

 まるでうわ言のように物騒な単語を口にする。

「グッ....ス、ステーデ....何度も....言ってるだろ。....まず説明しろって....」

 正直、まずもなにも大人しく殺されるつもりはない。彼女は殺すと言っているが恐らく俺のの【不老不死】が働いて死ぬことはないだろう。
 難しいシステムのスキルで良く自分も理解出来ていないが、取り敢えず肉体か空中、取り敢えず回りに魔力があれば死ぬことのない身体らしいからな。

 それでも....痛い思いは勘弁してほしい。ステーデの今の様子からして、本当に死ぬまで殺されてしまいそうだ。

 彼女は俺がもう抵抗出来ないと考えたのか、それとも殺す前に説明をするつもりだったのかポツリポツリと語り始めた。

「知っていますよね、僕が魔王軍幹部《炎帝》と《黒兵》達を恨み、復讐したがっていたことを。....残念ながら今の僕の力では、あいつ等には敵わないということは僕にだって理解していたんです。だけど、だからといってあいつ等を許すことは出来ない、強い力を得らないといけないと思っていたんです....」

 彼女は肩を震わせながら、唇を強く噛みしめながら語る。

 そして彼女は俺の事を見つめた。

「そんなときに、あなたの事を....あなたが使っていたスキルの事を知ったんです、昨日の帰り道に」

「俺の....スキル....? 【可能性獲得】の、事か....?」

 彼女は頷く。

「あなたのそのスキルがあれば、僕も様々なスキルを得て、使いこなし、あいつ等と戦うことができる....ッ。そう、思ったんです」

「だ、だけど....普通は他人からスキルを奪う事なんて....できないんじゃ........」

 他人からスキルを奪うことが出来ない、または難しいからこそ俺のスキルは珍しく、強力なはずだ。

「はい....普通は、ですけどね」

 他にもあるのか....他人からスキルを得る方法が。

「スキルの受け渡しの方法は大きく分けて二つ。一つは自分が死ぬその時に、自分のスキルを他人に継承する....というものがあります。これは通常自分の跡継ぎかなにかに行う一つの儀式のようなものです。自分の死ぬ前に渡す、もしくは死んでも託したいスキルが有るものが行うものです」

 彼女は続ける。

「二つ目はスキルの効果によるスキルの受け渡し、強奪。これはクレインさんの【可能性獲得】が含まれているもので....」

 彼女は俺の事を見つめ、話す。

「僕のエクストラスキル【異能喰いスキルイーター】も含まれます」

「【スキルイーター】....?」

「前に話した滅んだ同族がライカンスロープとは言いましたが、ライカンスロープ全てが....おそらくですが、滅んだのはその内の僕達の一族だけです。僕たちの一族は、かつて世界を揺るがす程の力を持っていた黒狼族《フェンリル》の子孫である僕達なんです」

 フェンリル....意味は地を揺るがす者....だったか。前世の神話の狼が此方で実在していて、目の前の少女がその子孫らしい。にわかに信じがたい話だ。今さらだけどな。

「このスキルの本来の力は、《己が殺した者を喰らい、スキルを奪い取る》という効果で、かつてのフェンリルが所有していたユニークスキルで、フェンリルは多種多様なスキルを扱っていたそうです。あなたのスキルと違ってスキルスロットの制限は合ったそうですけどね」

 彼女は悔しそうに唇を噛みしめる。

「このスキルは僕ら一族の固有スキルとなって子孫代々受け継がれてきました....。ですが、そのスキルの力は、代を継ぐごとに弱まっていき....今では廃れた力として捨てられるようになったスキルです。今のこのスキルは奪えるスキルは一つだけ、奪ったスキルと前に奪ったスキルはどちらか一つしか持てない、奪ったスキルの効果は半減する....というほどに、弱体化してしまいました......」

 ですが、と彼女は言葉を続ける。

「あなたのそのスキルはそれを差し引いても強力な力です。だから....あなたのその力を得て、僕は《炎帝》に....復讐を....」

 ......ステーデは、復讐の為だけに動き、生きて、俺に襲いかかってきたのか。

「....バカたれがッ」

 俺がそう、吐き捨てる。

「お前が復讐に燃えてようが、自分の命を捨てにいこうが文句は言わない。俺を殺しにかかった事は怒るし抵抗もする。俺だって死ぬのは嫌だしな....」

 だけどな、

「一言相談してくれれば良かったじゃないかッ!! 言ったはずだぞ、協力できることは力になると」

 出会って三日の相手に信用を寄せろとは思っていない。それでも、

「それでもな....もう仲間だろ、俺達はッ。確かに俺達はお前程まだまだ強くないし、足手まといかもしれない。だけどな、全面的に信用しなくてもいいから少しは頼ってくれよッ!!」

 俺がそう叫ぶとステーデは顔を歪ませた。

「そんなこと言われたって....どうしろって言うんですかッ。これはちょっとしたお使いのような簡単な事じゃないんです。簡単に頼れだなんて言われた所で頼れる筈がないんですよッ。相手は魔王軍ですよ、僕の勝手に、あなた達を巻き込めるはずがないじゃないですかッ」

「もう巻き込んでるじゃないか!!」

「それはそれですっ!! 力を得るにはどうしてもその力が....」

「ならッ」

 俺が彼女に叫ぶ。刺さった針の傷が痛むのさえきにせずに叫ぶ。

「こんな事しないで素直に、俺にッ、その手伝いをさせろよッ!!!!」


 +   +   +


 何を叫んでるんだこの少女は。

 頼れだとか、協力するだとか、手伝いさせろとか....。失礼なことかもしれないが正直、気味が悪くも感じた。

 だが、その気味悪さとは別に、本気でこの少女が叫んでいる、伝えようとしているのが分かった。

 でも、だからと言って.....言えるはずがない。

「手伝いさせろって何ですか!? バカなんですかッ、私はあなたを殺そうとした、喰らおうとしたんですよ!? その相手の力になるだとかなんだとか....意味が分かりません!!」

「はぁ!? なんだよそれッ。意味が分からない? ただ俺はステーデの事を思って....」

「嘘ですっ、普通の人がそんなこと....殺そうとした相手に言えませんよ!! それなのにあなたは何ですかッ。気味が悪いです、気持ち悪いですッ」

「ひっ、酷いなッ。気味が悪いとか、いっていいことと無いことが有るだろッ」

 僕は何を言ってるんだろう。自分が興奮仕切っていることがやけに冷静に分かる。
 矛盾。
 興奮している自分が冷静に見えるという、矛盾。

 もう、黙って殺して、喰らえば終わるのに。素直に引き下がって、逃げれば終わるのに。

 どうして僕はこんなに....

「いいえ、有りますッ。クレインさんは気持ち悪いおバカですッバカバカバカッ」

「バカばっかりいってガキかよ、素直になったらどうだ。さっきのあの暗いステーデはどうしたんだよ、今興奮しているのは何か琴線に触れたからだろうかがッ。それが何なのか教えろ!!」

 何で怒っているのか。言われて気づいた、何で自分がこんなに興奮しているのかが自分にも分かっていないことに。

「うるさい、うるさいですッ。今は関係ないですッ」

「関係大有りだろ!!」

「いいえないですッ、逆に何でクレインさんは私に、殺そうとした私にそんなに良くしようとするんですかッ。何か裏が有るんでしょう!?」

「無いよッ。前も言ったろ、何度も言わせるなって。協力できることは力になるって!!」

「だっかっらっ!! それが分からないんです。どうせあれでしょう、昨日言ってた主人公になるためだとかどうとか、結局は自分のエゴの為なんでしょう!? 今だってそのヒロインとかいうものを探すという一環に、決まってます!! 私と変わらないです!!」

「うぐっ、ま、まあ確かにそれも多少あるかも....」

「ほらっ!! やっぱり自分の為..」

「でもッ」

 彼女が、クレインさんが体になん本もの針に刺されながらその金色の瞳で私の目を見て告げる。

「それ以上に今は、お前のことが心配なんだよッ」

「ッ!!」

 思わず私の涙腺が緩む。目頭が熱くなってきた。

「お前に腕を飛ばされて、殴られて、刺されて....確かにこれは許されないことだ。だけどそれ以上にお前がこのあと本当に、晴れた気持ちで要られるかが心配なんだよ」

 なんなんですかこの人は。

「なら、晴れた気持ちで要られるなら....俺はお前の力になりたい」

 いつの間にか僕は、【シャドウニードル·キルレンジ】を解除し、彼女を解放していた。

「相手は魔王軍幹部ですよ....クレインさんと居て、多少強くなった所で敵わないですよ」

「それでもやるしかないだろう。したいんだろ、復讐」

「やるしかないってどうやるんですか....」

「お前と俺が強くなる」

「簡単に言わないでください。そういって本当に強くなれる人なんてそうそういません」

「今は言葉でしか言えない。だから簡単に言う。お前と俺、協力して強くなる。俺が力を貸す」

「僕よりも弱いくせに....」

「ならステーデよりも強くなるだけだ」

「僕でも敵わない相手ですよ? もし僕が死にそうになったらどうするんですか....」

 僕に敵わないあなたが、僕でも敵わない相手にどうするのか聞きたかった。けれど、彼女が口にした言葉は僕の想像していたどの答えとも違った。

「俺が、お前を守れるくらい強くなるから問題ないよ」

 彼女が僕にゆっくりと、人を安心させるような笑みを浮かべながら近づいてくる。

 今、僕の顔はどうなっているんだろう。目頭が、頬が熱い。嗚咽が止まらない。涙が溢れだしては流れ、溢れだしては流れ落ちる。
 きっと人にはみせられない顔をしているに違いない。

 私は自分の尻尾を抱き抱え、座り込む。

 あちこちズタズタになった服を着て、青みがかった白髪を自分の血で汚した、けれど力強く感じる少女が僕の傍にしゃがみこみ、頭を撫でてくれる。

「俺も力になる。だから、一緒に強くなろうな」

 僕は嗚咽混じりに頷いた。


 +   +   +


 その頃、エルフの村。

 そこには漆黒の鎧に身を包む兵。そして和の衣服を着る中年のゴツい中年男性、一本角を生やす大男の姿があった。

 その大男は漆黒の兵を連れて言う。

「よおッ!! 強く美しき森の守護者、エルフの者達よ。ここに黒狼族の娘が来てないか!? いるなら連れてこい。それと、お前ら森の守護者は強いと聞く....ああ聞くとも....」

 ならばと、快活そうに残酷な、無慈悲なことをいい放つ。

「我と手合わせ願おう、祭りだッ!!!!」

 誰も彼には敵わないと分かっているのに....それでも《炎帝》は楽しそうに笑っていた。
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