僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~

葉影

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第一章

第8話:パーティーの待ち合わせ①

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共同開発パートナーである『フロンティア・エンジニアリング』の周年記念パーティーの日は、久遠の心を表しているような空模様だった。

早めの退勤後、久遠と神永はそれぞれ一度家に帰り、会場近くのカフェで待ち合わせをしていた。
会場はウェスティンホテル横浜。開始は20時半。
久遠の地元は神奈川にあるため、横浜までの行き方には慣れていた。不慣れな路線を用いなくていいことには多少安堵した。

大慌てで準備した結果、むしろ早めに着いてしまった久遠は、フィッシュテールカットのワンピースに身を包み、窓の外を見ていた。
パラパラと雨を落としている曇天から、窓ガラスに映る自分にピントを合わせてみる。
可憐なワンピースが不憫なほど、久遠の顔には生気がない。目の下にクマが見えそうなほど、不安げな表情をしていた。

ドレスコードがあるパーティーにあわせて髪をアップに結い上げたものの、雨の湿気で毛先が少し乱れている気がして落ち着かない。
暑い夏が終わり、待望の秋が顔を出してくれたかと思ったのも束の間、最近は曇天の日や秋雨が増えて、ここのところ一気に気温が下がったような気がする。

何度もスマホで時間を確認しているけれど、こんなに時間が気になるのは相手が待ち遠しいからではなく、彼の到来へのカウントダウンに対する警戒だ。
着飾った服で会ってしまう方が恥ずかしい。
この格好は彼に可愛いと思ってほしいからなんかじゃなく、必要があるから着飾っているだけだ。チーム長神永に恥をかかせないための業務の一環……。
そう自分に言い聞かせても、気持ちはなかなか落ち着かなかった。
落ち着きなく何度もカップを口に運んだせいで、注文したルイボスティーは水深1センチほどしか残っていない。

今朝も今朝とて、また昔の夢を見た。
夢分析なんてなんで必要なんだろう、と思うくらい、基本的に久遠の夢は、出てくるモチーフも流れも実際の経験に基づくものが多く、意図も明確だ。ストーリーも大抵は彼とカップルだった頃の内容で、創造性のあまりない、思い出を忠実になぞるような夢が多かった。


『絶対見に行くからね!』
『やめて。久遠にだけは見られたくないんだけど』


普段はなんでも許してくれた彼が、唯一拒否したこと。
それは、彼が高2、久遠が高1の時の文化祭で、ミスターコンに推薦されてしまった彼のステージを見に行くことだった。




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