9 / 104
第一章
第8話:パーティーの待ち合わせ①
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
共同開発パートナーである『フロンティア・エンジニアリング』の周年記念パーティーの日は、久遠の心を表しているような空模様だった。
早めの退勤後、久遠と神永はそれぞれ一度家に帰り、会場近くのカフェで待ち合わせをしていた。
会場はウェスティンホテル横浜。開始は20時半。
久遠の地元は神奈川にあるため、横浜までの行き方には慣れていた。不慣れな路線を用いなくていいことには多少安堵した。
大慌てで準備した結果、むしろ早めに着いてしまった久遠は、フィッシュテールカットのワンピースに身を包み、窓の外を見ていた。
パラパラと雨を落としている曇天から、窓ガラスに映る自分にピントを合わせてみる。
可憐なワンピースが不憫なほど、久遠の顔には生気がない。目の下にクマが見えそうなほど、不安げな表情をしていた。
ドレスコードがあるパーティーにあわせて髪をアップに結い上げたものの、雨の湿気で毛先が少し乱れている気がして落ち着かない。
暑い夏が終わり、待望の秋が顔を出してくれたかと思ったのも束の間、最近は曇天の日や秋雨が増えて、ここのところ一気に気温が下がったような気がする。
何度もスマホで時間を確認しているけれど、こんなに時間が気になるのは相手が待ち遠しいからではなく、彼の到来へのカウントダウンに対する警戒だ。
着飾った服で会ってしまう方が恥ずかしい。
この格好は彼に可愛いと思ってほしいからなんかじゃなく、必要があるから着飾っているだけだ。チーム長神永に恥をかかせないための業務の一環……。
そう自分に言い聞かせても、気持ちはなかなか落ち着かなかった。
落ち着きなく何度もカップを口に運んだせいで、注文したルイボスティーは水深1センチほどしか残っていない。
今朝も今朝とて、また昔の夢を見た。
夢占いや夢分析なんて、どうして必要なんだろう。そう思うくらい、基本的に久遠の夢は、出てくるモチーフも流れも実際の経験に基づくものが多く、意図も明確だ。ストーリーも大抵は彼とカップルだった頃の内容で、創造性のあまりない、思い出を忠実になぞるような夢が多かった。
『絶対見に行くからね!』
『やめて。久遠にだけは見られたくないんだけど』
普段はなんでも許してくれた当時の彼が、唯一拒否したこと。それは、彼が高2、久遠が高1の時の文化祭で、ミスターコンに推薦されてしまった彼のステージを見に行くことだった。
共同開発パートナーである『フロンティア・エンジニアリング』の周年記念パーティーの日は、久遠の心を表しているような空模様だった。
早めの退勤後、久遠と神永はそれぞれ一度家に帰り、会場近くのカフェで待ち合わせをしていた。
会場はウェスティンホテル横浜。開始は20時半。
久遠の地元は神奈川にあるため、横浜までの行き方には慣れていた。不慣れな路線を用いなくていいことには多少安堵した。
大慌てで準備した結果、むしろ早めに着いてしまった久遠は、フィッシュテールカットのワンピースに身を包み、窓の外を見ていた。
パラパラと雨を落としている曇天から、窓ガラスに映る自分にピントを合わせてみる。
可憐なワンピースが不憫なほど、久遠の顔には生気がない。目の下にクマが見えそうなほど、不安げな表情をしていた。
ドレスコードがあるパーティーにあわせて髪をアップに結い上げたものの、雨の湿気で毛先が少し乱れている気がして落ち着かない。
暑い夏が終わり、待望の秋が顔を出してくれたかと思ったのも束の間、最近は曇天の日や秋雨が増えて、ここのところ一気に気温が下がったような気がする。
何度もスマホで時間を確認しているけれど、こんなに時間が気になるのは相手が待ち遠しいからではなく、彼の到来へのカウントダウンに対する警戒だ。
着飾った服で会ってしまう方が恥ずかしい。
この格好は彼に可愛いと思ってほしいからなんかじゃなく、必要があるから着飾っているだけだ。チーム長神永に恥をかかせないための業務の一環……。
そう自分に言い聞かせても、気持ちはなかなか落ち着かなかった。
落ち着きなく何度もカップを口に運んだせいで、注文したルイボスティーは水深1センチほどしか残っていない。
今朝も今朝とて、また昔の夢を見た。
夢占いや夢分析なんて、どうして必要なんだろう。そう思うくらい、基本的に久遠の夢は、出てくるモチーフも流れも実際の経験に基づくものが多く、意図も明確だ。ストーリーも大抵は彼とカップルだった頃の内容で、創造性のあまりない、思い出を忠実になぞるような夢が多かった。
『絶対見に行くからね!』
『やめて。久遠にだけは見られたくないんだけど』
普段はなんでも許してくれた当時の彼が、唯一拒否したこと。それは、彼が高2、久遠が高1の時の文化祭で、ミスターコンに推薦されてしまった彼のステージを見に行くことだった。
あなたにおすすめの小説
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―
七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。
彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』
実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。
ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。
口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。
「また来る」
そう言い残して去った彼。
しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。
「俺専属の嬢になって欲しい」
ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。
突然の取引提案に戸惑う優美。
しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。
恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。
立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。
カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~
伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華
結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空
幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。
割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。
思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。
二人の結婚生活は一体どうなる?
32歳、恋愛未経験の私に彼氏ができました。お相手は次期社長で完璧王子なのに、なぜか可愛い。
さくしゃ
恋愛
32歳、恋愛未経験の私に彼氏ができました。お相手は次期社長で完璧王子なのに、なぜか可愛い。
「甘酒って甘くないんだ!」
ピュアで、
「さ、さお…ふしゅうう」
私の名前を呼ぼうとして呼べなくて。
だけど、
「し、しゅ…ふしゅうう」
それは私も同じで。
不器用な2人による優しい恋愛物語。
果たして私たちは
「さ…ふしゅぅぅ」
下の名前で呼び合えるのでしょうか?
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
フリーランスエンジニアの優しすぎる無償の愛
咲妃-saki-
恋愛
26歳OLの木崎茉莉は人生のどん底にいた。上手くいかないことに慣れ、心を凍らせることで自分を守る毎日に絶望した茉莉は、雨の夜に思わず人生の終わりを願ってしまう。そんな茉莉に手を差し伸べたかっこいい彼。茉莉は、なぜか無償の愛のような優しさをくれる不思議な男性に少しずつ救われ、前を向いていく。けれど、疑ってしまうほど親切な彼には、親切であり続ける理由があって……。雨の夜の出会いがもたらした、優しくも切ない物語。
先輩、お久しぶりです
吉生伊織
恋愛
若宮千春 大手不動産会社
秘書課
×
藤井昂良 大手不動産会社
経営企画本部
『陵介とデキてたんなら俺も邪魔してたよな。
もうこれからは誘わないし、誘ってこないでくれ』
大学生の時に起きたちょっとした誤解で、先輩への片想いはあっけなく終わってしまった。
誤解を解きたくて探し回っていたが見つけられず、そのまま音信不通に。
もう会うことは叶わないと思っていた数年後、社会人になってから偶然再会。
――それも同じ会社で働いていた!?
音信不通になるほど嫌われていたはずなのに、徐々に距離が縮む二人。
打ち解けあっていくうちに、先輩は徐々に甘くなっていき……