38 / 104
第一章
37話:居場所
しおりを挟む
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
家に着く頃、痛みは絆創膏のおかげで随分落ち着いていた。けれど、湯船に浸かるとまた再び鋭い痛みが走る。顔をしかめながらゆっくり耐えていればその波はいずれおさまって、やっと全身を弛緩させた。
展示会は、想像以上に充実していた。チームの役に立てた。その感動が、じんわりと胸の奥に広がる。
今まではずっと、ここへ来てしまったことを後悔していた。出社する度、神永と顔を合わせる度、自分がここにいることに罪悪感を感じていた。
久遠が再び神永の前に現れただけでなく、彼のチームに参入するという事自体が彼への害になっていると、身を縮こまらせていた。そう振る舞うことがまた、彼にとって迷惑だという認識もありながら。
ここは自分の居場所ではないし、そう思ってはいけない、と思っていた。だけど――
自分の膝を抱え、ほとんど揺れていない水面を眺めながら、お礼を言ってくれた3人の顔を思い浮かべる。何よりも残っているのは、わざわざ一人残って伝えてくれた彼の姿。
『今日は小島さんのおかげで助かった。ありがとう』
成長して、自分なんか到底届かないと思っていた人の役に、ほんの少しでも立てた。
あんなの、誰にだってできる役目だった。けれど、それでも、人の役に立つことの幸せを改めて強く実感する体験だった。ここにいていいと、そう言われているみたいな。
温かいお湯が身体の芯を緩めていくのと共に、勤務以来固まっていた心のどこかも、少しほぐれていく。
この日久遠は、初めて今の会社を自分の居場所のように感じ始めてしまった。
家に着く頃、痛みは絆創膏のおかげで随分落ち着いていた。けれど、湯船に浸かるとまた再び鋭い痛みが走る。顔をしかめながらゆっくり耐えていればその波はいずれおさまって、やっと全身を弛緩させた。
展示会は、想像以上に充実していた。チームの役に立てた。その感動が、じんわりと胸の奥に広がる。
今まではずっと、ここへ来てしまったことを後悔していた。出社する度、神永と顔を合わせる度、自分がここにいることに罪悪感を感じていた。
久遠が再び神永の前に現れただけでなく、彼のチームに参入するという事自体が彼への害になっていると、身を縮こまらせていた。そう振る舞うことがまた、彼にとって迷惑だという認識もありながら。
ここは自分の居場所ではないし、そう思ってはいけない、と思っていた。だけど――
自分の膝を抱え、ほとんど揺れていない水面を眺めながら、お礼を言ってくれた3人の顔を思い浮かべる。何よりも残っているのは、わざわざ一人残って伝えてくれた彼の姿。
『今日は小島さんのおかげで助かった。ありがとう』
成長して、自分なんか到底届かないと思っていた人の役に、ほんの少しでも立てた。
あんなの、誰にだってできる役目だった。けれど、それでも、人の役に立つことの幸せを改めて強く実感する体験だった。ここにいていいと、そう言われているみたいな。
温かいお湯が身体の芯を緩めていくのと共に、勤務以来固まっていた心のどこかも、少しほぐれていく。
この日久遠は、初めて今の会社を自分の居場所のように感じ始めてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―
七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。
彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』
実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。
ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。
口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。
「また来る」
そう言い残して去った彼。
しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。
「俺専属の嬢になって欲しい」
ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。
突然の取引提案に戸惑う優美。
しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。
恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。
立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。
【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~
蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。
嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。
だから、仲の良い同期のままでいたい。
そう思っているのに。
今までと違う甘い視線で見つめられて、
“女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。
全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。
「勘違いじゃないから」
告白したい御曹司と
告白されたくない小ボケ女子
ラブバトル開始
溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
Melty romance 〜甘S彼氏の執着愛〜
yuzu
恋愛
人数合わせで強引に参加させられた合コンに現れたのは、高校生の頃に少しだけ付き合って別れた元カレの佐野充希。適当にその場をやり過ごして帰るつもりだった堀沢真乃は充希に捕まりキスされて……
「オレを好きになるまで離してやんない。」
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる