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76話(後半):8年越しのハジメテ
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「久しぶり、なので……」
久遠が縋るように紡ぎ出したその一言で、彼の動きが止まった。
「………………"久しぶり"?」
一織の声が、2人だけの家の静寂に落っこちた。
しばしの沈黙により、汗ばむ肌同士が織り成していた熱気が置き去りになる。
……あ。
久遠は、自分の失言を悟った。
今の久遠の言葉。それは、一織以外の他の誰かが、彼女の身体を先に知ってしまっているという事実を、残酷なほどに提示してしまった。
前髪の隙間から覗く彼の瞳は、久遠の目を見ていない。
沈黙は数秒だったはずだ。けれど、それは8年間の断絶を改めて突きつける、永遠のような静寂だった。
「ご、ごめんなさ……」
彼が思う久遠ではなかったかもしれない。耐えきれず久遠が謝ろうとした瞬間、一織の手が伸びてきて久遠の顎を強引に固定した。
「んっ!!」
一織は何も言わなかった。一織の中で駆け巡る、言葉にならない思考や情緒を、激しい接吻にし、久遠に襲いかかる。
ぐちゅぐちゅと舌を深く突き入れる。久遠の隅が、自分で占めるように。それはもはや愛撫ではなく、上書きのための暴虐だった。
「んぅ、んん……っ!」
彼からの激しいキスに脳をずくずくと溶かされながら、久遠は、鼠径部に当たっているものに恐怖を感じていた。
人間の肉体の一部とは思えないほど、硬く、重く、久遠の肌を圧迫している。――怖い。このまま貫かれたら、自分という形がなくなってしまうんじゃないか。
心がそう思えば思うほど、不思議なもので、身体は芯から疼き始めた。
「ん……ん……っ」
恐怖以上に、ずっと大好きだった人に、二度と手に入らないと思っていたこの腕に抱かれている幸せが、久遠の身体を支配する。
「ごめん、余裕なくて……でももう俺、久遠が欲しい……」
「はぁ……んっ、はぁ……」
久遠の腹の底を甘く溶かすような囁き声に悶える。
鼠径部というもどかしい位置で蠢く熱。その先端が欲しくて、たまらず腰が浮いてしまった。それに気づいた一織が、濡れそぼった秘部へとそれをあてがう。
けれど、それは簡単には挿入ってきてはくれない。蜜口に先端がひっかかったかと思うと、こちらの期待を嘲笑うようにぬるりと滑っていく。何度も入り口をなぞるだけの空虚な刺激に耐えられず、久遠は腰を揺らしてしまう。
こんなことをして、いやらしい子って思われたくないのに。一織くんに幻滅されたら嫌なのに。――でも、どうしても欲しい。彼が私を求めてくれているうちに。
首に顔を埋められながら、彼の首に腕を回した。
「んあぁ、はぁ、一織くん……」
「はぁ……はぁ……っ、久遠……」
吸い付かれる感覚が甘く、じれったい。
彼に吸われながら、ふと思った。
──彼は、私だけじゃないのかもしれない。
彼と交際していると聞いている彼女の顔が、天井にぼうっと浮かんだような気がした。
「んっ……はぁ……」
それでも引き戻せなかった。止まることなんてできない。だって、私は、こんなにも彼が欲しい。
今にも久遠の体を貫こうと硬くなっている矛先に、久遠の蜜壷もまた、吸い付かんとしている。まるで引き合う磁石のように、内なる衝動が、互いの体を近づけている。
「はぁ……はぁ……」
「久遠……好きだ」
彼の愛の言葉を耳にして、目を瞑る。
――最低な人間になったっていい。
不貞の共犯になろうが、もう構わない。倫理をかなぐり捨ててでも、目の前の彼に自分を求めてほしくてたまらない。
このまま、止まってほしくない。彼がその気のうちに、私を彼のものにしてほしい。
清らかな青春の思い出の中ではいつだって、爽やかに微笑みかけてくれるあなた。そんなあなたに、雄としての欲を全て私に向けて、私の中を満たしてほしいと思う。──今だけは。
取り逃さないように、繋ぎ止めるように、一織の首元を強く抱きすくめた。汗ばむ胸同士が触れ合い、安心する。
一織も、久遠の腕の中で久遠を頭ごと抱き寄せ、頬にキスしてくれる。
そして一織は、ゆっくりと上体を起こし、久遠の腕の鎖から出ると、久遠の顎に手を添えて、もう一度キスを落としてくれた。その時には、もう、蜜口に猛々しい硬さがあてがわれていた。
「久遠の中、入ってもいい?」
顔を隠している久遠が、こくこくと頷く。それを確認してから、一織はゆっくりと熱杭を沈めてきた。
「ぁっ…」
「久遠、息してね」
痛みに身構えていたけれど、十分に溢れていた蜜のおかげで、それは滑らかに滑り込んできた。
だけど、驚くほどに長い。まだ入り切らないのかと驚くほど、挿入の感覚がいつまでも続く。
「な、なにこれ……っ」
くちゅ、くちゅ、と 肉のひだを割り広げていく生々しい水音と、自分の心音が、聴覚を支配する。
「んっ、ふぅ、ふぁ……」
一織は再び唇を重ね、接吻で挿入の衝撃を和らげようとしてくれている。けれど、痛みはない。痛みはないけれど、もっと、代わりに、むしろ……。
自分のナカの感覚が信じられなかった。自分の身体じゃないみたいに、彼のモノの凹凸一つ一つを感じ取ってしまいそうなほど、感覚過敏になっている。奥へ奥へと進んでくるたびに、ぞわりと鳥肌が立った。
「んっ!」
ようやく、一織の太ももの付け根と、久遠の秘部がぴたりと密着した。
下腹部から脚全体までを、快感の波が、鈍く、しかし網羅的に、静かに拡がっていったのを感じた。まるで、風が湖面を逆撫でするように。
久遠を穿つそれは、今まで感じたことのない感覚を味わわせる予兆がしている。まだ動いていない。ただ、無視できない圧倒的な異物感に、内奥の粘膜は怯えるように、あるいは期待するように、熱くひくついている。
彼はそのまま覆いかぶさり、久遠の身体がその大きさに馴染むのを待ってくれた。
「はぁ……久遠、気持ちいい……。あっつ……」
耳をゆっくりと食まれ、首筋にも柔らかなキスを落とされる。愛おしむようなその愛撫に、抗う術もなく自然とお腹の奥に力が入った。きゅうっと内側が締まると、彼の一部が体内に入っているという感覚が、暴力的なまでに実感された。
ああ、一織くんだ――。
はじめて、一つになった。10年前、幼い恋心に名前を付けたあの日から。 8年前、彼のいない道を歩き始めたあの日から、久遠の胸に居座り続けた、この人と。もう二度と、触れることはおろか話すことすら叶わないと思い、何度も枕を濡らしていた、そんな相手と。
「ずっとこうしたかった……」
一織が言った。切実な響きを持って耳元で喘がれ、胸もぎゅうぎゅうと締め付けられるように苦しい。
「痛くない……?」
「痛く……ない……」
久遠が微かに応えると、彼はゆっくりと、けれど確かな重みを持って腰を動かし始めた。
……どうしよう、なんだこれ。
「まっ、あっ……だめ、これ……っ」
「久遠……」
「んっ……んんんっ……!」
どうしよう、何かがおかしい。体験したことのない異様な感覚に、思考が散る。
一織の動きが次第に激しさを増し、内壁を擦り上げる衝撃が顕著になっていく。
「だめ、一織、くん……あっ、あぁっ!」
「痛い?」
「痛く、ないっ、痛くないけど……っ」
「ごめん……痛くないなら待てない」
余裕を失った声とともに、ピストンの速度が跳ね上がった。
「んあぁっ! だめなの、待って笑 、ぅっ、こほっ……へ、変になる……っ!」
呼吸が乱れ、上手く息ができない。吐き出すつもりの吐息を無理やり吸い込んでしまい、危うく噎せそうになった。いつもは小さな自分の声が、予想外に大きく、淫らに響いてしまうのが堪らなく恥ずかしい。
けれど、一織は止まらない。苦悶に顔をしかめ、自分に組み伏せられている久遠の姿は、一織をさらに煽り立てる。
「変って? 言わないと分からないよ、久遠」
その瞳に隠し切れないサディスティックな光を宿し、一織は容赦なく腰を叩きつけ続けた。
「なんかっ……感じたことないのが、あっ、はぁっ……!」
「どんな感じがするの? 言って、久遠……っ」
逃げ場のない一織の体躯の下で、久遠は涙を浮かべながら必死に言葉を絞り出す。
「おなか、おなかの裏がっ、」
「お腹の裏? うん」
「こすれる、みたいな、あっ……んんっ! ずっと、擦れてる、みたいな……こんなの初めてっ、で……んぁ、んぁぁあっ 」
説明したとて解放はされず、むしろ勢いを増される。健気な久遠の言葉は、情けない喘ぎへと変わっていった。
一織はただ、腰を打ち付けているだけに見える。それなのに、彼がナカを往復するたびに、お腹の裏側の粘膜ばかりが、しつこいほど、ぞりぞりと擦り上げられ続けるのだ。
なんで、どうしてそこ、ずっと……っ!
パチパチと脳を焼くような快感のなかで、久遠はさっき見た彼の形を思い出した。 彼の平らな下腹部にぴたりと沿うように、天を向いて屹立していた、あれを。
理解してしまった。あの鋭い反りが、狭い膣内を激しく往復する度に、否応なしに天井を抉り倒しているのだ。
構造を想像したことで快感が増してしまい、さらに上り詰めた。
「あああっ!もうだめ、ね、ぇ、一回止まっ……あぁっ!」
「大丈夫だよ、一緒に気持ちよくなろうね」
「……んあっ!」
無意識に手で口を抑えようとした瞬間、それを予見していたかのように両手首を捕らえられ、頭の上へと拘束された。
「久遠、声我慢しないで。ずっと聞きたかった。可愛い声、聞かせて……?」
覆い被さるように耳元で囁かれる。愛おしい、静かで低い声が、それ自体が愛撫となって、久遠をまた快感の園へと押し上げていく。
「~~~っ、んっ! 」
「我慢しないでってば」
その時、突然最奥を突かれた。
「んああっ!」
肌をこれでもかと押し付けるようにして奥に分け入ってきた彼は、誰も――久遠自身もさえ知らない部位に到達したかと思うと、遠慮なしに踏み荒らし始める。
パンッパンッパンッと、肌が肌を打つ卑猥な音が部屋に響き渡る。
「ふかっ……深い、だめ、待って、ああぁ!」
耳を塞ぎたくなるのは、嫌だからじゃない。これ以上、一織に抱かれているということを感じざるを得ない刺激に曝され続ければ、自分の体が自分のものじゃなくなりそうで、怖いからだ。
彼は荒い息のまま、久遠の唇に食らいついた。 熱い舌が強引に割り込み、久遠の舌を絡め取って執拗に吸い上げる。
口内を吸い上げられる感覚と、下半身を貫く暴力的な刺激、そして、耳を犯す卑猥な聴覚刺激。3つの衝撃に一気に襲われている久遠の思考は、完全に白濁した。一織の唾液が熱を持って喉へと流れ込んできたのを、ただ素直に飲み込むことしかできない。
「久遠……もう俺のだよね?久遠……」
唇を離して腰を振ることに集中した彼が、うわ言のように名前を繰り返す。その目つきは、獲物を決して逃さない獣の鋭さを帯びている。その剥き出しの肉欲に射すくめられ、久遠の身体は着実に降伏モードへと堕ちていく。
「久遠、可愛い……好き……」
「い、一織く、んっ……だめ、だめかも、なんか、ああぁっ」
お腹の底から、形容しがたい圧がせり上がってきた。その危機を必死に一織に訴えるが、彼は応えてくれない。
「久遠、大丈夫、怖くないよ」
一織は、さらに深く、久遠を逃がさないように覆いかぶさった。
「だめ、一織くん止まって、くる、きちゃう、」
「大丈夫だから、イって……?」
彼に優しくそう言われた瞬間、久遠の体内で張り詰めていた何かが、一気に弾けた。 眼球が勝手に上を向きそうになるほどの、強烈な衝撃。
「ぅっ……ぁ、あ……」
未体験の圧が下半身全体にぎゅっと集まり仰け反った。
久遠がナカへの刺激で達したのは、これが初めてだった。体験したことのない電撃に身体は翻弄され、もはや久遠のコントロール下にない。
脚がピンと伸び、腰が浮き、まるで彼に自分から奥の奥を差し出すような体勢になってしまう。快楽から逃げたいのに、痙攣が、かえって彼との密着を強制してくる。
衝撃の波は、目が焦点を失うほど強くて、だらしない顔を晒すまいと目を瞑って耐えようとした。
――しかし、快感の暴力は、そこで止んではくれなかった。
「久遠、イった? 大丈夫……?」
一織がわずかに腰を引いたことが、残酷な追撃となった。絶頂で極限まで過敏になっていた内壁を、膨張した杭がずるりと逆撫でしたのだ。
「ぁあぁっ!!」
一織も意図していなかったその追撃は、剥き出しの神経を焼くような衝撃として久遠を襲った。腰がガクガクと跳ね、それが怖くて、久遠は必死に一織の太い腕にしがみついた。体はジンジンと痺れ、涙で天井の模様は滲んでいる。
「あぁ、どうしよう、気持ちいいね?可愛い……。どうしよう、全然耐えられないかも俺……」
普段は冷静沈着なチーム長の彼が、今は貪るように求めてくれている。砂糖を焦がしたみたいな、熱く甘い声で私の名前を呼びながら。
一織が、久遠の顎を強く掴んだ。いつも紳士的な彼には相応しくない、少し指が食い込むほどの強引な力だった。
けれど、痛いのは顎ではなく、胸だった。好きな人に強く求められることが、こんなに満たされることだなんて。高校の時までの恋愛では知らなかった、この感覚。
彼の重たい体に潰される圧迫感も、体を好き勝手されることも、そのすべてが気持ちいい。そんな多幸感に、久遠の目尻から涙が零れた。
一織の腰の動きが再開され、まだ淡い快楽の波が続いている久遠の体が揺さぶられる。
「あっ、あんっ、ああっ!」
「ずっと好きって言いたかった…っ、久遠…っもっと、もっと俺のこと見て……?」
「あっ、あっ、あっ」
快楽の熱に煮られ、揺さぶられた脳は、機能を落としている。もはや何を言われているのか分からないほどだった。
「目見て、久遠、見て」
快感の衝撃で反射的に顔が横に向きそうになっても、一織がそれを許さない。久遠が目を逸らさせないよう顎を引き戻す。
妖しく光る彼の瞳は、背反的な熱情が入り混じっていた。久遠を宝物のように守り抜きたいという思いと、破壊衝動。
「ずっと俺のこと見てほしいと思ってた……。は、久遠が俺のこと見てる……可愛い……っ」
久遠を見下ろす彼の口角が愉悦に歪む。
「久遠のその、っん、……誰にでも優しいその顔、はぁ……っ、俺のためだけに歪めばいいのに、とかも……っ」
破壊衝動の方が濃くなった瞳で、パンパンと肌を打ちつけ久遠の胎内を揺らし続ける。
「一織くん、も、むり……」
ギブの声を遮るように、一織が唇で唇を塞ぐ。
「……いいよ、イって」
久遠は休憩を頼んだのに、彼は体を起こすと、右手の親指で久遠の敏感な部分に触れた。
「あっ!そこ、だめっ、んああぁっ!」
絶頂で充血し、真っ赤に熟れきった花芯。そこに一織の長い指先が触れた瞬間、久遠の背筋を強烈な電撃が走り抜けた。
一織はもはや、紳士的なペルソナを完全にかなぐり捨てていた。指の腹でその敏感な一点を混ぜながら、久遠の奥を突き上げる。あまりにも露骨な刺激に、脳の芯と脚がピリピリする。
「待っ、くる、だめ、怖い……!」
「大丈夫、怖くないよ」
「イっ……んんんーーっ!」
二度目の絶頂を迎え、久遠の身体が大きく跳ねた。
一織は、果てた余韻でびくびくと震えている久遠の薄い腹を撫で、「可愛い……」と独り言のように呟く。
「……久遠がこんなに敏感だと思わなかった。全部俺のものにするからね」
イったばかりの過敏になった内奥。 そこを一織が、自身のすべてを叩きつけるように一気に突き上げた。
「あああぁぁっ!!!」
余韻が引く間もなく、お腹の裏を突き破らんばかりの衝撃が襲う。
2人の境界線が熱く溶け、ドロドロの快楽の中に沈んでいく。 10年分の飢餓感が、今、どしゃ降りの雨のような情欲となって、この部屋ごと飲み込んでいるようだった。
「久遠、好きだ、好きだ……」
耳元で繰り返される、切実で暴力的なまでの愛の告白。一織の瞳は、目の前の愛しい存在を完全に自分の色で染め上げようとする独占欲に燃えていた。
「一織くん、わたし、また……」
「一緒にイこう。奥に出すから」
一織は久遠の華奢な腰をがっしりと掴み上げると、根元まで叩きつけるような猛烈なピストンを開始した。
「ごめ、なさい、も…………あぁぁあっ!!」
あまりの衝撃に、久遠は一織が放つより先に、三度目の、そして最大の絶頂へと跳ね上げられてしまった。
内壁が激しくうねり、一織のモノを千切らんばかりにぎゅうぎゅうと締め付ける。その刺激に、一織もついに限界に接近した。一織の腰が、放出のための鋭い動きへ変わる。
「待っ、わたしまだイって……!あ、ああぁ……っ!」
「ごめんね久遠。可愛くて我慢できない」
「むり、とまって、やぁっ!」
「ごめん、耐えて、耐えてね……っ」
久遠の懇願も空しく、一織は困ったような、悦んでいるような表情で久遠を見下ろし、最奥を激しく小突いた。
「久遠……っ俺のこと、好き?」
「あぁん!だめ、も、」
「ねぇ答えて。好き?久遠、俺が好き?」
「す、好き、だいすきぃ、っぁぁあ」
「あ~、可愛い。出すよ……久遠に、全部出すからね」
一織の汗が降ってくる。意識は曖昧だけれど、彼の余裕のない姿には愛おしさを感じて、その首を抱き寄せた。そして、一織の耳元に口を寄せ、乱れた呼吸の中で必死にせがんだ。
「出して……っ、いおりくん、私のナカ、全部一織くんでいっぱいにして――っ!」
泣いているような声で耳を揺らされた途端、一織は決壊した。
「あぁっ!!」
「一織く……っ!!」
「イ……っくっ……」
ゴム越しとはいえ、その熱量は久遠の胎内をはっきりと焼き焦がすほどだった。
どっ、どっ……と、重量感を持って久遠の最奥へと注ぎ込まれる。
一度、二度、三度――久遠のナカで脈打つたびに、一織が抱えてきた8年分の曲がりくねった愛情が、熱い奔流となって久遠を内側から満たしていくようだった。
「も、だめ……」
放出の衝撃に、久遠の視界は真っ白な光に包まれた。一織の体躯に押し潰されながらも、久遠の身体は再び激しく震え、そのまま深い余韻の海へと沈み込んでいく。
久遠が縋るように紡ぎ出したその一言で、彼の動きが止まった。
「………………"久しぶり"?」
一織の声が、2人だけの家の静寂に落っこちた。
しばしの沈黙により、汗ばむ肌同士が織り成していた熱気が置き去りになる。
……あ。
久遠は、自分の失言を悟った。
今の久遠の言葉。それは、一織以外の他の誰かが、彼女の身体を先に知ってしまっているという事実を、残酷なほどに提示してしまった。
前髪の隙間から覗く彼の瞳は、久遠の目を見ていない。
沈黙は数秒だったはずだ。けれど、それは8年間の断絶を改めて突きつける、永遠のような静寂だった。
「ご、ごめんなさ……」
彼が思う久遠ではなかったかもしれない。耐えきれず久遠が謝ろうとした瞬間、一織の手が伸びてきて久遠の顎を強引に固定した。
「んっ!!」
一織は何も言わなかった。一織の中で駆け巡る、言葉にならない思考や情緒を、激しい接吻にし、久遠に襲いかかる。
ぐちゅぐちゅと舌を深く突き入れる。久遠の隅が、自分で占めるように。それはもはや愛撫ではなく、上書きのための暴虐だった。
「んぅ、んん……っ!」
彼からの激しいキスに脳をずくずくと溶かされながら、久遠は、鼠径部に当たっているものに恐怖を感じていた。
人間の肉体の一部とは思えないほど、硬く、重く、久遠の肌を圧迫している。――怖い。このまま貫かれたら、自分という形がなくなってしまうんじゃないか。
心がそう思えば思うほど、不思議なもので、身体は芯から疼き始めた。
「ん……ん……っ」
恐怖以上に、ずっと大好きだった人に、二度と手に入らないと思っていたこの腕に抱かれている幸せが、久遠の身体を支配する。
「ごめん、余裕なくて……でももう俺、久遠が欲しい……」
「はぁ……んっ、はぁ……」
久遠の腹の底を甘く溶かすような囁き声に悶える。
鼠径部というもどかしい位置で蠢く熱。その先端が欲しくて、たまらず腰が浮いてしまった。それに気づいた一織が、濡れそぼった秘部へとそれをあてがう。
けれど、それは簡単には挿入ってきてはくれない。蜜口に先端がひっかかったかと思うと、こちらの期待を嘲笑うようにぬるりと滑っていく。何度も入り口をなぞるだけの空虚な刺激に耐えられず、久遠は腰を揺らしてしまう。
こんなことをして、いやらしい子って思われたくないのに。一織くんに幻滅されたら嫌なのに。――でも、どうしても欲しい。彼が私を求めてくれているうちに。
首に顔を埋められながら、彼の首に腕を回した。
「んあぁ、はぁ、一織くん……」
「はぁ……はぁ……っ、久遠……」
吸い付かれる感覚が甘く、じれったい。
彼に吸われながら、ふと思った。
──彼は、私だけじゃないのかもしれない。
彼と交際していると聞いている彼女の顔が、天井にぼうっと浮かんだような気がした。
「んっ……はぁ……」
それでも引き戻せなかった。止まることなんてできない。だって、私は、こんなにも彼が欲しい。
今にも久遠の体を貫こうと硬くなっている矛先に、久遠の蜜壷もまた、吸い付かんとしている。まるで引き合う磁石のように、内なる衝動が、互いの体を近づけている。
「はぁ……はぁ……」
「久遠……好きだ」
彼の愛の言葉を耳にして、目を瞑る。
――最低な人間になったっていい。
不貞の共犯になろうが、もう構わない。倫理をかなぐり捨ててでも、目の前の彼に自分を求めてほしくてたまらない。
このまま、止まってほしくない。彼がその気のうちに、私を彼のものにしてほしい。
清らかな青春の思い出の中ではいつだって、爽やかに微笑みかけてくれるあなた。そんなあなたに、雄としての欲を全て私に向けて、私の中を満たしてほしいと思う。──今だけは。
取り逃さないように、繋ぎ止めるように、一織の首元を強く抱きすくめた。汗ばむ胸同士が触れ合い、安心する。
一織も、久遠の腕の中で久遠を頭ごと抱き寄せ、頬にキスしてくれる。
そして一織は、ゆっくりと上体を起こし、久遠の腕の鎖から出ると、久遠の顎に手を添えて、もう一度キスを落としてくれた。その時には、もう、蜜口に猛々しい硬さがあてがわれていた。
「久遠の中、入ってもいい?」
顔を隠している久遠が、こくこくと頷く。それを確認してから、一織はゆっくりと熱杭を沈めてきた。
「ぁっ…」
「久遠、息してね」
痛みに身構えていたけれど、十分に溢れていた蜜のおかげで、それは滑らかに滑り込んできた。
だけど、驚くほどに長い。まだ入り切らないのかと驚くほど、挿入の感覚がいつまでも続く。
「な、なにこれ……っ」
くちゅ、くちゅ、と 肉のひだを割り広げていく生々しい水音と、自分の心音が、聴覚を支配する。
「んっ、ふぅ、ふぁ……」
一織は再び唇を重ね、接吻で挿入の衝撃を和らげようとしてくれている。けれど、痛みはない。痛みはないけれど、もっと、代わりに、むしろ……。
自分のナカの感覚が信じられなかった。自分の身体じゃないみたいに、彼のモノの凹凸一つ一つを感じ取ってしまいそうなほど、感覚過敏になっている。奥へ奥へと進んでくるたびに、ぞわりと鳥肌が立った。
「んっ!」
ようやく、一織の太ももの付け根と、久遠の秘部がぴたりと密着した。
下腹部から脚全体までを、快感の波が、鈍く、しかし網羅的に、静かに拡がっていったのを感じた。まるで、風が湖面を逆撫でするように。
久遠を穿つそれは、今まで感じたことのない感覚を味わわせる予兆がしている。まだ動いていない。ただ、無視できない圧倒的な異物感に、内奥の粘膜は怯えるように、あるいは期待するように、熱くひくついている。
彼はそのまま覆いかぶさり、久遠の身体がその大きさに馴染むのを待ってくれた。
「はぁ……久遠、気持ちいい……。あっつ……」
耳をゆっくりと食まれ、首筋にも柔らかなキスを落とされる。愛おしむようなその愛撫に、抗う術もなく自然とお腹の奥に力が入った。きゅうっと内側が締まると、彼の一部が体内に入っているという感覚が、暴力的なまでに実感された。
ああ、一織くんだ――。
はじめて、一つになった。10年前、幼い恋心に名前を付けたあの日から。 8年前、彼のいない道を歩き始めたあの日から、久遠の胸に居座り続けた、この人と。もう二度と、触れることはおろか話すことすら叶わないと思い、何度も枕を濡らしていた、そんな相手と。
「ずっとこうしたかった……」
一織が言った。切実な響きを持って耳元で喘がれ、胸もぎゅうぎゅうと締め付けられるように苦しい。
「痛くない……?」
「痛く……ない……」
久遠が微かに応えると、彼はゆっくりと、けれど確かな重みを持って腰を動かし始めた。
……どうしよう、なんだこれ。
「まっ、あっ……だめ、これ……っ」
「久遠……」
「んっ……んんんっ……!」
どうしよう、何かがおかしい。体験したことのない異様な感覚に、思考が散る。
一織の動きが次第に激しさを増し、内壁を擦り上げる衝撃が顕著になっていく。
「だめ、一織、くん……あっ、あぁっ!」
「痛い?」
「痛く、ないっ、痛くないけど……っ」
「ごめん……痛くないなら待てない」
余裕を失った声とともに、ピストンの速度が跳ね上がった。
「んあぁっ! だめなの、待って笑 、ぅっ、こほっ……へ、変になる……っ!」
呼吸が乱れ、上手く息ができない。吐き出すつもりの吐息を無理やり吸い込んでしまい、危うく噎せそうになった。いつもは小さな自分の声が、予想外に大きく、淫らに響いてしまうのが堪らなく恥ずかしい。
けれど、一織は止まらない。苦悶に顔をしかめ、自分に組み伏せられている久遠の姿は、一織をさらに煽り立てる。
「変って? 言わないと分からないよ、久遠」
その瞳に隠し切れないサディスティックな光を宿し、一織は容赦なく腰を叩きつけ続けた。
「なんかっ……感じたことないのが、あっ、はぁっ……!」
「どんな感じがするの? 言って、久遠……っ」
逃げ場のない一織の体躯の下で、久遠は涙を浮かべながら必死に言葉を絞り出す。
「おなか、おなかの裏がっ、」
「お腹の裏? うん」
「こすれる、みたいな、あっ……んんっ! ずっと、擦れてる、みたいな……こんなの初めてっ、で……んぁ、んぁぁあっ 」
説明したとて解放はされず、むしろ勢いを増される。健気な久遠の言葉は、情けない喘ぎへと変わっていった。
一織はただ、腰を打ち付けているだけに見える。それなのに、彼がナカを往復するたびに、お腹の裏側の粘膜ばかりが、しつこいほど、ぞりぞりと擦り上げられ続けるのだ。
なんで、どうしてそこ、ずっと……っ!
パチパチと脳を焼くような快感のなかで、久遠はさっき見た彼の形を思い出した。 彼の平らな下腹部にぴたりと沿うように、天を向いて屹立していた、あれを。
理解してしまった。あの鋭い反りが、狭い膣内を激しく往復する度に、否応なしに天井を抉り倒しているのだ。
構造を想像したことで快感が増してしまい、さらに上り詰めた。
「あああっ!もうだめ、ね、ぇ、一回止まっ……あぁっ!」
「大丈夫だよ、一緒に気持ちよくなろうね」
「……んあっ!」
無意識に手で口を抑えようとした瞬間、それを予見していたかのように両手首を捕らえられ、頭の上へと拘束された。
「久遠、声我慢しないで。ずっと聞きたかった。可愛い声、聞かせて……?」
覆い被さるように耳元で囁かれる。愛おしい、静かで低い声が、それ自体が愛撫となって、久遠をまた快感の園へと押し上げていく。
「~~~っ、んっ! 」
「我慢しないでってば」
その時、突然最奥を突かれた。
「んああっ!」
肌をこれでもかと押し付けるようにして奥に分け入ってきた彼は、誰も――久遠自身もさえ知らない部位に到達したかと思うと、遠慮なしに踏み荒らし始める。
パンッパンッパンッと、肌が肌を打つ卑猥な音が部屋に響き渡る。
「ふかっ……深い、だめ、待って、ああぁ!」
耳を塞ぎたくなるのは、嫌だからじゃない。これ以上、一織に抱かれているということを感じざるを得ない刺激に曝され続ければ、自分の体が自分のものじゃなくなりそうで、怖いからだ。
彼は荒い息のまま、久遠の唇に食らいついた。 熱い舌が強引に割り込み、久遠の舌を絡め取って執拗に吸い上げる。
口内を吸い上げられる感覚と、下半身を貫く暴力的な刺激、そして、耳を犯す卑猥な聴覚刺激。3つの衝撃に一気に襲われている久遠の思考は、完全に白濁した。一織の唾液が熱を持って喉へと流れ込んできたのを、ただ素直に飲み込むことしかできない。
「久遠……もう俺のだよね?久遠……」
唇を離して腰を振ることに集中した彼が、うわ言のように名前を繰り返す。その目つきは、獲物を決して逃さない獣の鋭さを帯びている。その剥き出しの肉欲に射すくめられ、久遠の身体は着実に降伏モードへと堕ちていく。
「久遠、可愛い……好き……」
「い、一織く、んっ……だめ、だめかも、なんか、ああぁっ」
お腹の底から、形容しがたい圧がせり上がってきた。その危機を必死に一織に訴えるが、彼は応えてくれない。
「久遠、大丈夫、怖くないよ」
一織は、さらに深く、久遠を逃がさないように覆いかぶさった。
「だめ、一織くん止まって、くる、きちゃう、」
「大丈夫だから、イって……?」
彼に優しくそう言われた瞬間、久遠の体内で張り詰めていた何かが、一気に弾けた。 眼球が勝手に上を向きそうになるほどの、強烈な衝撃。
「ぅっ……ぁ、あ……」
未体験の圧が下半身全体にぎゅっと集まり仰け反った。
久遠がナカへの刺激で達したのは、これが初めてだった。体験したことのない電撃に身体は翻弄され、もはや久遠のコントロール下にない。
脚がピンと伸び、腰が浮き、まるで彼に自分から奥の奥を差し出すような体勢になってしまう。快楽から逃げたいのに、痙攣が、かえって彼との密着を強制してくる。
衝撃の波は、目が焦点を失うほど強くて、だらしない顔を晒すまいと目を瞑って耐えようとした。
――しかし、快感の暴力は、そこで止んではくれなかった。
「久遠、イった? 大丈夫……?」
一織がわずかに腰を引いたことが、残酷な追撃となった。絶頂で極限まで過敏になっていた内壁を、膨張した杭がずるりと逆撫でしたのだ。
「ぁあぁっ!!」
一織も意図していなかったその追撃は、剥き出しの神経を焼くような衝撃として久遠を襲った。腰がガクガクと跳ね、それが怖くて、久遠は必死に一織の太い腕にしがみついた。体はジンジンと痺れ、涙で天井の模様は滲んでいる。
「あぁ、どうしよう、気持ちいいね?可愛い……。どうしよう、全然耐えられないかも俺……」
普段は冷静沈着なチーム長の彼が、今は貪るように求めてくれている。砂糖を焦がしたみたいな、熱く甘い声で私の名前を呼びながら。
一織が、久遠の顎を強く掴んだ。いつも紳士的な彼には相応しくない、少し指が食い込むほどの強引な力だった。
けれど、痛いのは顎ではなく、胸だった。好きな人に強く求められることが、こんなに満たされることだなんて。高校の時までの恋愛では知らなかった、この感覚。
彼の重たい体に潰される圧迫感も、体を好き勝手されることも、そのすべてが気持ちいい。そんな多幸感に、久遠の目尻から涙が零れた。
一織の腰の動きが再開され、まだ淡い快楽の波が続いている久遠の体が揺さぶられる。
「あっ、あんっ、ああっ!」
「ずっと好きって言いたかった…っ、久遠…っもっと、もっと俺のこと見て……?」
「あっ、あっ、あっ」
快楽の熱に煮られ、揺さぶられた脳は、機能を落としている。もはや何を言われているのか分からないほどだった。
「目見て、久遠、見て」
快感の衝撃で反射的に顔が横に向きそうになっても、一織がそれを許さない。久遠が目を逸らさせないよう顎を引き戻す。
妖しく光る彼の瞳は、背反的な熱情が入り混じっていた。久遠を宝物のように守り抜きたいという思いと、破壊衝動。
「ずっと俺のこと見てほしいと思ってた……。は、久遠が俺のこと見てる……可愛い……っ」
久遠を見下ろす彼の口角が愉悦に歪む。
「久遠のその、っん、……誰にでも優しいその顔、はぁ……っ、俺のためだけに歪めばいいのに、とかも……っ」
破壊衝動の方が濃くなった瞳で、パンパンと肌を打ちつけ久遠の胎内を揺らし続ける。
「一織くん、も、むり……」
ギブの声を遮るように、一織が唇で唇を塞ぐ。
「……いいよ、イって」
久遠は休憩を頼んだのに、彼は体を起こすと、右手の親指で久遠の敏感な部分に触れた。
「あっ!そこ、だめっ、んああぁっ!」
絶頂で充血し、真っ赤に熟れきった花芯。そこに一織の長い指先が触れた瞬間、久遠の背筋を強烈な電撃が走り抜けた。
一織はもはや、紳士的なペルソナを完全にかなぐり捨てていた。指の腹でその敏感な一点を混ぜながら、久遠の奥を突き上げる。あまりにも露骨な刺激に、脳の芯と脚がピリピリする。
「待っ、くる、だめ、怖い……!」
「大丈夫、怖くないよ」
「イっ……んんんーーっ!」
二度目の絶頂を迎え、久遠の身体が大きく跳ねた。
一織は、果てた余韻でびくびくと震えている久遠の薄い腹を撫で、「可愛い……」と独り言のように呟く。
「……久遠がこんなに敏感だと思わなかった。全部俺のものにするからね」
イったばかりの過敏になった内奥。 そこを一織が、自身のすべてを叩きつけるように一気に突き上げた。
「あああぁぁっ!!!」
余韻が引く間もなく、お腹の裏を突き破らんばかりの衝撃が襲う。
2人の境界線が熱く溶け、ドロドロの快楽の中に沈んでいく。 10年分の飢餓感が、今、どしゃ降りの雨のような情欲となって、この部屋ごと飲み込んでいるようだった。
「久遠、好きだ、好きだ……」
耳元で繰り返される、切実で暴力的なまでの愛の告白。一織の瞳は、目の前の愛しい存在を完全に自分の色で染め上げようとする独占欲に燃えていた。
「一織くん、わたし、また……」
「一緒にイこう。奥に出すから」
一織は久遠の華奢な腰をがっしりと掴み上げると、根元まで叩きつけるような猛烈なピストンを開始した。
「ごめ、なさい、も…………あぁぁあっ!!」
あまりの衝撃に、久遠は一織が放つより先に、三度目の、そして最大の絶頂へと跳ね上げられてしまった。
内壁が激しくうねり、一織のモノを千切らんばかりにぎゅうぎゅうと締め付ける。その刺激に、一織もついに限界に接近した。一織の腰が、放出のための鋭い動きへ変わる。
「待っ、わたしまだイって……!あ、ああぁ……っ!」
「ごめんね久遠。可愛くて我慢できない」
「むり、とまって、やぁっ!」
「ごめん、耐えて、耐えてね……っ」
久遠の懇願も空しく、一織は困ったような、悦んでいるような表情で久遠を見下ろし、最奥を激しく小突いた。
「久遠……っ俺のこと、好き?」
「あぁん!だめ、も、」
「ねぇ答えて。好き?久遠、俺が好き?」
「す、好き、だいすきぃ、っぁぁあ」
「あ~、可愛い。出すよ……久遠に、全部出すからね」
一織の汗が降ってくる。意識は曖昧だけれど、彼の余裕のない姿には愛おしさを感じて、その首を抱き寄せた。そして、一織の耳元に口を寄せ、乱れた呼吸の中で必死にせがんだ。
「出して……っ、いおりくん、私のナカ、全部一織くんでいっぱいにして――っ!」
泣いているような声で耳を揺らされた途端、一織は決壊した。
「あぁっ!!」
「一織く……っ!!」
「イ……っくっ……」
ゴム越しとはいえ、その熱量は久遠の胎内をはっきりと焼き焦がすほどだった。
どっ、どっ……と、重量感を持って久遠の最奥へと注ぎ込まれる。
一度、二度、三度――久遠のナカで脈打つたびに、一織が抱えてきた8年分の曲がりくねった愛情が、熱い奔流となって久遠を内側から満たしていくようだった。
「も、だめ……」
放出の衝撃に、久遠の視界は真っ白な光に包まれた。一織の体躯に押し潰されながらも、久遠の身体は再び激しく震え、そのまま深い余韻の海へと沈み込んでいく。
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