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第一章

オーガとオークと主人公ズ  精霊に出会う

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こうして村での会合が終わった後…………
俺とツッキー、そしてエルミナ達は、森を進んでいた

「もう少し先か?」

「えぇ、この先に精霊契約に必要な魔石がある場所に着くわ」

俺がエルミナに聞けば、エルミナは、木の上を跳びながら答えた
精霊契約に必要な魔石を取りに行く為、エルミナとゾールスは、二人で向かおうとしていたが、興味がある俺と、隠し要素と言うことで、燃えてるツッキーも、護衛という名目で、付いてきたという訳だ

「しかし…………、お前まで付いてくることあるか? ネネ」

「いいじゃない、それに精霊は、私達、エルフの方が慣れ親しんでるわ」

ジト目になりながら俺は、後ろを振り返れば、さっきまでとは、打って変わって、身軽な服装をしたネネが、得意げな顔をしていた
出発の際、ネネに見つかり、付いてくると言い出して、断ろうとしたが、何とも言えない圧に屈して、こうして付いて来られた、という訳だが……………

(正直、あの圧は、ヤバい…………
下手すると、会社のあのハゲ部長と同じくらいめんどくさい…………)

そんな事を考えていると、エルミナが木から下りてきた

「見えてきたわ」

嬉しそうにそう言ってきて、前を向けば、丁度、森を抜けた所だった
そしてそこに広がる光景に、俺は、言葉を失った
そこは、花が咲き誇る綺麗な花畑が広がっていた
青………、黄色………
見るからに、様々な種類の花が咲いてるのが見えた

「おー、やっぱ生で見ると、こうも違うんだな」

「だな、鮮やかさがダンチだぜ」

隣でゾールスとツッキーが、物耽っていると、エルミナが、ネネの方を向いた

「ここが精霊の加護が宿る花畑、【フリマージュ】で、あってるかしら?」

「えぇ、でも驚いたわ
エルフしか、知らない此処を貴女が知ってるなんて」

「古い書籍があったのよ」

ネネの言葉にエルミナが、軽くそう言えば、キョロキョロと周りを見渡した

「魔石って、どれだ?」

「んー、魔石の特徴としては、澄んだ色をしているのだけど、見つけても、それが本人の魔力に合うか、分からないのよ
まして、精霊契約って言う隠し要素って所もあるから、多分、本人にしか見えないと思うわ」

俺がエルミナの側にしゃがみ、手伝おうとすると、エルミナは、少し困った表情をしながらそう言ってきた

エルミナの言葉を解説するなら…………

・本人にしか、その魔石は、見えない
・魔力を流すまで、ガッチリ合うかは、わからない

と、言う事だ………

(これは、長期戦になりそうだな…………)

そう思いながらふと、ツッキー達を見れば、ツッキー達もエルミナと同じように探してるみたいだ

(俺も探「ピロン」っあ?)

ツッキー達と同じように俺も、探そうとすると、突然、通知音が聞こえ、ふと、スマホを取り、確認した

《マッピング完了 指定の場所までの案内を開始》

そう文字が出たと思えば、この花畑の地図が出てきたが、少し離れた所にピンが刺されていた

(うわぁー…………、超便利…………
ってか、俺に来たってことは)

スマホを確認しながら、チラッとツッキー達の方を伺えば、ツッキー達もネネに気付かれないように、確認しているようだった

すると、ツッキーが俺に見えるように小さく指をクイクイ、とピンの方角に差してきた

(先に行けって事か)

高校の時、何かとツッキーの帰りを待ってた時に、よくこうして『先に行け』と、合図されてたのを思い出しながら、俺は、小さく頷いて、ピンの方へと、歩みを進めた

エルミナ達には、ツッキーから話すだろうし、おそらくだが、俺とツッキーは、同じ場所だとしても、エルミナとゾールスは、別の場所の可能性があるからな…………

しばらく歩く事…………
数分で目的の場所に着いた

目の前には、高い崖が競り立っていて、かなりの高度があると、見ていい…………
だけど、不自然な事に、俺の前に、洞窟がある
いや…………、洞窟と言うには、整備がされている
入口は、石畳で、小さいが階段もある
明らかに、人の手が加えられている祠のような感じがする

だが、マップを見る限り、その祠の中を指している

(祠の中にあるのか? すげぇ罰当たりな事をする感じがするが……………
迷っても進まねえか…………)

俺は、意を決して、歩き出し、その祠に入っていった
祠の中は、さっきまで、誰かが居たのでは無いかと思えるくらい、綺麗に整備され、壁には、魔鉱石で作ったと、見られるランタンが、吊るされている

(おかしい…………、明らかに人工物だが、気配が感じられない…………
それなのにこのランタン…………、さっき火を灯したばっかに見える…………)

注意深く進んでいると、少し開けた場所に出た
そこは……………

「何だ…………、こりゃあ……………」

自分の目を疑うような光景が広がっていた
ここは、祠と見える洞窟…………
当然、こういう開けた場所には、祠がある物だと思っていたが……………
今、目の前にあるのは、広大に広がる空間だった
壁一面には、星々と見えるモノがキラキラ光、この空間の真ん中の広場は、月明かりが照らすようにそこだけライトアップされていた

「明らかに空間魔法と見ていいが…………」

「ユーマ!!」

警戒を最大限まで引き上げ、警戒すれば、ツッキーの声が聞こえ、振り返れば、ツッキーとエルミナ、ゾールスが駆け寄ってきていた

「お前ら、ネネは?」

「この祠の入り口を警備してもらってる
それより何だよ、この空間は?」

ネネの姿が見えず、聞けば、ゾールスが簡潔に答え、真ん中の広場を見た

「明らかにボス部屋みてぇな空間してんな」

「あぁ、だが、案内は、此処を指していると見て、間違いないな」

「なら、注意して、進みましょう
ここでこうしてても進まないわ」

エルミナの言葉に頷けば、先頭を俺、後衛をツッキーとし、エルミナ、ゾールスを挟むような形で、中央に向けて、進み始めた
進むにつれ、俺は、ふと、体が清められているような感覚になった

気のせいかと、振り返れば、エルミナ達も同じような反応をしている為、気のせいでは無い事を確認しつつ、中央まで来た

「さて、中央まで来たが…………」「何が待ち受けてるんだか」

俺とツッキーがエルミナとゾールスを庇うように前に立って、呟けば、突然、俺達の目の前が光った

咄嗟に武器を構えて、警戒し、光が収まるのを待てば、光の中心に人影が見えた

「…………こうしてお話しするのは、初めてですね」

突然、女性の声が聞こえてくれば、エルミナが「あっ!!」と声を上げた

そして光が収まると、そこには、一人の女性が立っていた
その衣装は、白い装束だけで、肩がはだけていて、現代的に言うと、肩出しのスリットの入ったワンピースっていう、印象だ

そして女性の顔を見た瞬間、俺は、その人物が誰なのか、直感的に分かった

「お前…………、シェア、か?」

「はい、悠馬さん、暁さん
そして詩織さん、冬馬さん、改めて自己紹介させていただきます
私は、シェア
この世界を作り、見守る神です」

シェアは、そう言い、礼儀正しくお辞儀をしてきた
咄嗟にエルミナとゾールスもお辞儀返していた
貴族として、体に染み込んでるんだろうな……………
だが、俺は、それを無視して、シェアを見た

「ここは何だ?」

「ここは、私が作った空間です
一時的ですが、こうして貴方方の前に立てるように、作りました」

俺が聞けば、シェアは、そう言い、コチラに近づいてきた
そして俺達の前に来ると、改めて頭を下げてきた

「こうしてお会いできて、よかった………
先ずは、改めて謝罪を……………
私の管理不足の元、こうして貴方方を巻き込んでしまい、申し訳ございません」

「いや…………、シェアからの謝罪は、散々、受け取ったって…………
その気持ちだけ受け取ったから、大丈夫だから」

シェアからの謝罪をツッキーが困惑しながら言うと、隣に居たエルミナが、シェアに近づいた

「ところで、何でこの空間を作ったの?
謝罪の為だけに作ったって、訳じゃないのでしょ?」

「はい、詩織さん…………、いえ、今は、エルミナさんでしたね
エルミナさんとゾールスさんが、精霊契約を行うと、聞いたので、勝手ながらコチラで精霊の方にお願いしたので、その紹介を………、それとユーマさん達も精霊契約を行うとの事で、精霊契約に必要な魔石をご用意しました」

シェアは、そう言い、エルミナとゾールスに何かを渡せば、俺達の方に来て、俺に魔石と思われる石を渡してきた
その魔石は、明らかに宝石のルビーのように真っ赤な色をしており、鮮やかで、透いている…………、綺麗な魔石だった

「何だこりゃあ?
ゲームで見た魔石より、色が違うような…………」

「はい、それは、貴方方専用の魔石ですので、色は、ゲーム? とは、掛け離れたものになりますね」

ゾールスが、恐らく魔石を持っているだろうか、何も持っていない手を空に翳して、何かを見ている仕草をしながら呟けば、シェアが楽しそうに話している

「えっと、ゾールス
ゲームだと、主人公は、コレに魔力を流して、契約をしたのよね?」

「その筈だ
姉さん、俺が最初にやってみるから、離れてて」

ゾールスに言われ、エルミナが俺達の傍に駆け寄ってきた
それを確認してから、ゾールスは、息を深く吐き、手に魔力が集まるのを感じた
すると、一瞬、強い光を放ったと思えば、ゾールスの前に一匹の虎が現れた

「……………お前が、シェア様が話されていた冬馬とか言う人間か?」

「そうだ、今は、ゾールス・カタストロフィーと名乗っている」

「……………なるほど、シェア様の言う通り、闇を宿しているわけでは、無さそうだ」

虎はそう言い、ゾールスの前に来れば、ゾールスを見上げた

「我が名は、【白銀虎】
獣精霊の長にして、世界を支える【守護獣】なり
これより、ソナタの牙となろう」

虎…………、白銀虎は、そう名乗れば、ゾールスの手に額を押し付けた
すると、ゾールスの掌に紋章が現れた

「【契約の紋章】…………、やべぇ…………、興奮してきた」

紋章を見ながら、ゾールスがゾクゾクとテンションが上がっているのを微笑ましく見ながら、俺は、白銀虎を見た

「白銀の虎…………、白虎とは、少し違うのか?」 「アホ、白虎は、白い虎だろうが…………」

俺の小言に、ツッキーがツッコミを入れていれば、エルミナが気合いが入ったように自分の頬をバチんと叩いて、微笑んだ

「よし、次は、私の番ね!!」

ワクワク気味が漏れながら、ゾールスと同じようにエルミナも魔力を込めれば、強い光が出れば、エルミナの前に、一人の老男が立っていた

「ほぉ、シェアが珍しくワシに頼み事をしてきたから、来てみれば、これはこれはwww
何とも可愛らしく、それでいて、とても強いお嬢ちゃんとはなwww」

「シェアから聞いてると思うけど、エルミナ・カタストロフィーよ
貴方と契約したいわ」

「あぁ、良いぞ
ワシは、【ゼファーレンド】
この世界では、シェアと同じ位置の神であり、【戦神】と呼ばれておる
よろしくのぉ」

ゼファーレンドがエルミナの頭を撫でると、ゾールスと同じように、掌に紋章が現れた
エルミナは、と言うと…………

「    !?  !?  !!!?」

まさかの神様に言葉を失って、何度も口がパクパクと動いていた

「シェア、契約には、神も含まれてるのか?」

「いえ、神々と契約出来るのは、それこそこの世界で言うなら、勇者や聖女のような人達だけの一部です
まぁ、その中でもごく限られた人達だけですが」

シェアの話の内容だと、エルミナは、その中のレア中のレアを引き当てたと、言えるだろう

(まぁ、ゾールスも同じだろうがな)

そう考えていれば、ツッキーが、俺の肩を叩いてきた

「ユーマ、先、やらせてもらうぜ」

「おぅ、タコ出てこい」  「ヤメロ!!」

俺は、笑いながらそう言い、ツッキーがツッコミを入れれば、少し離れた

「ん? ところでシェア
エルミナ達は、直接、会って交渉したんだろ?
俺達の場合は?」

「ユーマ様達の場合だと、それこそ精霊契約と同じように魔力を込めるまで、分かりませんが、私の加護を与えてますので、良いご縁がありますよ」

ふと、気になって、シェアに聞けば、どうやら本来と同じようにランダムみたいだ
ツッキーの方を見れば、集中してるのが、分かる
そして魔力を込めて、光ったと思えば、ツッキーの前に…………

「……………た、タコだぁぁぁぁぁあ!?」

馬鹿でかいタコが居た

「ダハハハハハ!!!wwwwww」「爆笑してんじゃねぇ!?」

マジで言った通りになり、俺は、爆笑…………
ツッキーは、思わずツッコミを入れてくるが、気にしない

「こ、このモノは!?」

すると、隣に居たシェアが、驚きの声を出していると、タコが、ツッキーを見た

「お前が私を呼んだ者か?」


「お、おぅ、アカツキ・ロータスだ」

すると、タコが、ツッキーの体を触手で触ると、「ふむっ」と言った

「これは、これは…………、まさか別世界からここにやって来るとは、な」

「「なぁ!?」」

タコが何処となく嬉しそうに話した内容に、俺とツッキーが思わず食いついた
それもその筈だ…………
目の前に居るこのタコは、迷いなくツッキーを転生者と見破ったのだから

「お前は、何だ?」

「私の名は、【ロズガルドディザード】
この世界に棲む神獣…………、と言うところだのぉ」

「「神獣かよぉぉおおぉぉぉ!?」」

あまりの衝撃に、俺とツッキーが叫んでると、シェアが、ロズガルドディザードの前に立った

「久しぶりね、ロズ
相変わらずその巨体は、健在ね」

「おぉ、シェアでは、ないか
お主も相変わらず、神業をこなしておる…………、とは、行かんようじゃの…………」

「えぇ…………、今回の事は、私の管理不足が原因よ…………
貴方に何と言われても言い返せないわ」

「お主は、相変わらず頭が固いのぉ
何もお主一人で、担う事はなかろう?
【周りを頼る】、その重要性を理解しておるだろぉ?」

「えぇ…………、今回の件で、重々に思い知ったわ…………」

「なら、それで良い」

落ち込むシェアの頭を触手で撫でながら、孫に言い聞かせるようにロズガルドディザードは、優しく喋っている

その光景を見ながら、ロズガルドディザード…………、今後は、ロズと呼ぶ事にしよう
ロズが、どんな性格なのか、分かった

「さて、最後は、俺か」

そんな彼女らを見守りながら俺は、手にした魔石を見た

ここまでツッキーが、神獣が出てきたとなると、俺もそうなる可能性が出てきたから、どうなるかは、分からない………


「どうなるか…………」

少し離れてから、俺は、魔石に魔力を込めた
そして次の瞬間………、俺は、意識を失った

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