死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話

みっしー

文字の大きさ
53 / 117
番外編

令嬢と剣術

(レイチェル視点)
(フィリアが攫われてから少し経った頃のお話です)



 最近、フィリアちゃんが我が家によく遊びに来る。どうやら私に会いに来てくれているらしいけど、そんなに私に構っていてこの人はいいのだろうか。一応未来の王妃なのに。

「レイチェルちゃん、こんにちは!」

「う!」

「あなたは本当に賢いのね!こんなに可愛らしいのにその上賢いだなんて、本当に素敵!」

「うー」

 まあ、そう言われて悪い気はしないよね。にしても本当に元気だな……あの小説で読んだフィリアとはまるで別人。

「私ね、今日こそは剣術を習いたいってカイ様に言ってみようと思うの!」

「うー?」

「あら、まるで疑っている顔ね。大丈夫よ、これでも体力は付けたんだから!」

 うーん、病弱だった令嬢が付けた体力で剣術って厳しいと思うんだけど。それに何だか剣を持ってるフィリアちゃんなんて想像つかないし。

「上手く行ったらまた報告にくるわ。期待しててね!」

 ……まあ、砂糖一粒分の期待ならしとこうかな?そう心の中で告げながら意気揚々とお兄ちゃんのもとへ行く彼女の背中を見送った。さて、そろそろお昼寝と行きますか。私もすくすく育たなくちゃいけないからね。



******************



 ふぅ、よく寝た。驚くほどぱっちりと目が覚めて少し辺りを見回すと、ベビーベッドのすぐそばにお兄ちゃんが立っていた。何だか……疲れているような……。

「レイチェル、起きたのか」

「う!」

「起き抜けに悪いんだが、少しだけ話を聞いてくれないか?」

「うー」

 なになに?どうしたの?気になって耳を傾けると、お兄ちゃんはゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。





「カイ様!私に剣術を教えていただけませんか?」

 剣を磨いていたところに満面の笑みでそう言うフィリアちゃんが突然現れたらしい。いきなりのことで訳がわからないお兄ちゃんはもちろん何も言えなかった。そして少し経ってから話を聞くと……

「私は、自分で自分の身を守れるようになりたいのです。もう、あんな風にはなりたくありませんし……それに体調も随分良くなったので体を動かしたいんです!」

 真剣な顔で語るフィリアちゃんにお兄ちゃんは断るなんてできるわけもなく、しばらく考えてこう提案した。

「では、フィリア嬢に剣の素質があるか少し確かめてみましょう。それで素質がないと俺が判断した場合には諦めていただきます。よろしいですか?」

 フィリアちゃんは少し顔を強張らせて頷いたらしい。

 それからやったことは子ども用の軽い剣で練習用の人形を切る、という簡単なテスト。その動きを見てお兄ちゃんはフィリアちゃんに素質があるか判断しようとしたらしい。

「えい!……やあ!…………あれ?」

「これは……」

 10分近く格闘していたらしいけど、結果人形は無傷。何とフィリアちゃんには壊滅的にコントロール能力が欠けていたらしい。

「何とお声がけしたらいいか分からずにいると、フィリア嬢はお礼だけ言ってお帰りになったよ。……レイチェル、俺はどうすれば良かったのだろうか?」

「うー!う!」

 私は心の底からの「アンタは悪くない」をお兄ちゃんに送った。誰も悪くないよ。強いて言うならフィリアちゃんにコントロール能力を授けなかった神様が悪い。だから元気出して!

「レイチェル……励ましてくれているのか?お前は優しい子だな」

「うー!」

 そうだよ。自慢の妹でしょ。その私が悪くないって言ってんだから大丈夫だよ。ほら、さっさと部屋に戻って寝な!



 それから後日。フィリアちゃんが私のところに喋りにやってきた。だいたいはお兄ちゃんの話と同じだったけど。

「でね、そのことをジェイくんに話したら、『そんなことだろうと思った』なんて言われちゃって。肥料を撒くときとか水やりのときとか、そういうお手伝いをしていた時に薄々感じてたんですって!」

「うー」

 ……ジェイって誰?っていうかそんな作業の時にすらノーコン発揮するって相当だな。これで剣なんて持ってたら味方まで攻撃しちゃいそう。やめといて正解だね。





 
感想 85

あなたにおすすめの小説

噂の悪女が妻になりました

はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。 国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。 その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

姉の方を所望していたと言った婚約者に、突然連れ帰られて気づいたら溺愛されています

もちもちほっぺ
恋愛
侯爵家の地下室に住み、姉の食べかけで飢えをしのぎ、婚約者には初対面で「老婆のようだ、姉の方がよかった」と言われた令嬢リリアーナ。 ある日その婚約者に問答無用で公爵邸に連れ帰られた。 庭の恵みを口にするたびに肌が輝き、髪が艶めき、体に力が満ちていく。首に巻いたお守りの秘密、十数年続く国の不作の真実、虐げられ続けた令嬢の出生の謎。 全てが明かされる時、地下室令嬢の逆転劇が始まる。 なお婚約者は今日も庭でグルメリポートを最後まで聞いている。

【番外編も完結】で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?

Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。 簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。 一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。 ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。 そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。 オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。 オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。 「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」 「はい?」 ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。 *--*--* 覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾ ★2/17 番外編を投稿することになりました。→完結しました! ★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓ このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。 第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」 第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」 どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ もしよかったら宜しくお願いしますね!

公爵家の養女は静かに爪を研ぐ 〜元々私のものですので、全て返していただきます〜

しましまにゃんこ
恋愛
リヴィエール公爵家に養女として引き取られた少女、アリサ・リヴィエール。 彼女は華やかな公爵家の嫡子マリアとは対照的に、家でも学園でもひっそりと息を潜めて生きていた。 養女とは言っても、成人と同時に修道院へ入ることが決まっており、アリサに残された時間は僅かだった。 アリサはただ静かに耐えていた。 ——すべてを取り戻す、その時まで。 実は彼女こそが、前公爵が遺した真の娘であり、水の加護を持つリヴィエール公爵家の正統なる後継者だった。不当に奪い取られた地位と立場。 アリサは静かに時を待つ。 一方、王太子リュシアン・ルミエールは、傲慢な婚約者マリアに違和感を抱きつつ、公爵家に隠された不正の匂いを嗅ぎ取っていく。 やがて二人の思惑は重なり、運命の卒業パーティーが幕を開ける。 奪われた名前も、地位も、誇りも—— 元々、私のものなので。まとめて返してもらいます。 静かに爪を研いできた養女の、逆転ざまぁと溺愛ロマンス。 完結保証&毎日2話もしくは3話更新。 最終話まで予約投稿済み。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

【完結】無関心夫の手を離した公爵夫人は、異国の地で運命の香りと出会う

佐原香奈
恋愛
建国祭の夜、冷徹な公爵セドリック・グランチェスターは、妻セレスティーヌを舞踏会に残し、早々に会場を後にした。 それが、必死に縋り付いていた妻が、手を離す決意をさせたとも知らず、夜中まで仕事のことしか考えていなかった。 セドリックが帰宅すると、屋敷に残されていたのは、一通の離縁届と脱ぎ捨てられた絹の靴。そして、彼女が置いていった嗅いだことのない白檀の香りだけだった。 すべてを捨てて貿易都市カリアへ渡った彼女は、名もなき調香師「セレス」として覚醒する。 一方、消えた妻を追うセドリックの手元に届いたのは、かつての冷たい香りとは似て非なる、温かな光を宿した白檀の香水。 「これは、彼女の復讐か、それとも再生か——」 執念に駆られ、見知らぬ地へ降り立った公爵が目にしたのは、異国の貿易王の隣で、誰よりも自由に、見たこともない笑顔で微笑む「他人」となった妻の姿だった。 誤字、修正漏れ教えてくださってありがとうございます!