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2022年8月29日 初めての歩きと関東大震災バタフライエフェクト

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 2022年8月29日月曜日、僕が1歳となる4日前、僕は少しだけ歩くことが出来た。昼間、ジィージの家に遊びに行ってる時にダイニングにもたれていた僕は、ママにかけ寄るため、手をいつの間にか放してしまいながらも4~5歩いてママに抱きついた。

 ジィージはタバコを吸いに庭に出ていて見てくれてはいない。「何だよ、ジィージ、見てなかったのかよ」と僕は思った。けど、ママとケイちゃんは拍手してくれたから、まあ、いいか。

 その夜、自分の家で僕はパパとママの前で、12~13歩の小刻みなやっとの歩みを見せることが出来た。ママはビデオを撮ってくれた。これが僕が歩くことができた確たる証拠だ。直ぐにママがトモちゃんにもジィージ達にもラインで流してくれた。

 僕はまだ、這い這いの方が速い。
 歯も前歯の上5本、下4本にすぎない。

 けど、曲がりなりにも1歳の保育園デビューの前に歩くことができたのだ。

 ラジオの普及もなく、新聞だけがメディアであった99年前の9月1日、関東大震災後が発生した。地震の被害、火災の被害、風評の被害による惨事は想像をはるかに超えたものだった。

 それを伝えるテレビをみながら、僕は歩む事を覚えている。

 テレビからの〈蝶々の羽ばたき〉の関東大震災の映像に驚愕し、〈パリは燃えているか〉の音楽に心が締め付けられる。

 今後、僕はいったいどんなふうに歩んでいくのだろう。

 8月31日、ちょっとした10歩くらいよ歩きは頻繁にできる。歩き始めてからまだ3日目だけど、両手を前に出してバランスを取りながら、小さな歩幅で左右に揺れながら前に進める。

 ママへの10ケ月のパラサイトの後に訪れたママとの二人だけの蜜月の長い長い長い1年間の夏休みも今日で終わりだ。ママは育児休暇が明けて働きに出かける。

 僕もパパとママと優しい親戚達から守られた聖域を抜け出して、社会のコミュニティの世界へと心も体も踏み出す。外の世界よ、世俗の世界よ、僕は特別な魔王だ。楽しみだ。
 
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