死んだ幼なじみに会うため悪魔を召喚?!異世界に連行されて、四大霊剣を全入手!→そして龍・精霊・天使・神をも従える物語!

パイポ・シューリガン

文字の大きさ
27 / 30
第1部 エド・ホード

第27話 最終決戦

しおりを挟む
 迷路のような階段をのぼって、ラベラーズ本館の屋上に出る。時刻は午前零時ちょうど。鉄柵で囲まれた広場には、こないだより大きな魔法円が書かれてあった。

 ラルフさんは先に来て待っていた。グングニルはどこですか、と尋ねると、緑の石飾りのネックレスを見せてくれた。

「グングニルもカミラさんのフラガハラのように、首飾りの姿をとるんだよ。エクスカリバーは重いけど、まさか青龍にして連れていくわけにもいかないしね」

 僕はリテアのことを思い出した。これから神殿に行って神様を呼べば、また彼女に会えるのだろうか。僕はなんと言えばいいだろう。いったいなんと言うのだろう。昨晩からそんなことばかり考えていた。

「エドくん?」
 ラルフさんが心配そうに首をかしげる。そのとき出入口のドアが開いて、
「……リテア?」
「へ?」

 現れたのはカミラだった。当然、そんなことはわかっていたはずだった。僕は知らず知らずのうちに、彼女にリテアの姿を重ねていたのかもしれない。あるいは形のない印象のような、ぼやけた母さんのイメージまでも。

「そろったね」
 ラルフさんはそう言うと、魔法円の中心に立った。片膝をつき、何かを唱える。魔法円から紫色の光があがり、陽炎のようにめらめらと景色が揺れた。

「下がって」
 僕とカミラが言われた通りに後ずさると、
「来たれ、双頭の奇竜」
 音もなく巨大な竜が現れた。ここへ来るときにも乗った二つ頭の竜。ナイフのような鱗が月明りを受けて、ぎらぎらと銀色に光っていた。

「乗って」
 ラルフさんは手であおぐようにして風を起こし、僕とカミラの体を浮かせた。双頭の竜の背中に乗って、僕らは遥か海の先へと飛んでいった。緊張のせいか、誰も口をきかなかった。カミラが隣で、ときおり何か言いたげな視線をくれたが、僕は何を言えばいいのかわからなかった。

 竜はぐんぐん空を昇り、厚い雲のなかへ入っていく。稲光がひらめいて、あたりは身を切るほど寒かったが、竜の背中は温かかった。暗闇のなか、水と光にかき回され、竜が体をくねらせると、重力が反転したかのような錯覚をおぼえた。やがて僕が上空だと思っていたほうへ、竜はゆっくりと下降をはじめた。

「すごい」
「ああ、僕もはじめて見たよ」

 二人の言葉に、僕も目をこすって下界を眺める。暗い海の真ん中に、ぼやりと浮かぶ廃神殿があった。まるで遥か宇宙の片隅に、取り残された星のような。海面に浮かぶ殿堂と白い支柱、それ自体が、何かの術式のようだった。
 
 竜が神殿の隅に着地する。降り立ってみると、意外に広い場所だった。全力で走れば一往復もできそうにない。周囲に建つ支柱の配置は、波の浸食のせいかでたらめに見えた。何を描くでもなく、大きさすら不規則に並んでいる。

「ここにエクスカリバーを置いて」
 ラルフさんに言われて、石張りの地面に剣をそっと置いた。
「ここにフラガハラ」
 カミラも頷いて首飾りに触れる。フラガハラを剣の姿にすると、エクスカリバーから九〇度の位置に置いた。その対角に、ラルフさんがグングニルを置く。
「パラストラは?」
 僕が訊くと、ラルフさんは急に苦しそうに口を押えた。

「……逃げろ」
「え?」

 ラルフさんが地面に倒れる。たちまち火に入れられたイモのように、肌がまだらに変色していく。必死に吐き気をおさえていると、カミラが大きな悲鳴をあげた。
 顔をあげるとグングニルの位置に、赤い顔の魔物が立っていた。

「バリアム公爵」
 カミラがフラガハラを取って構える。

「こいつはそんな名だったか」赤い魔物はグングニルをつかんで言った。「この男の肉体は、とっくに私がいただいた。そしてこの死体には青龍が入る」
 
 エクスカリバーが青く発火し、人魂のようになってラルフさんの身体に飛び移った。たちまち火だるまになり、翼をはやして立ちあがると、僕の対角へ移動した。

「四つの神具に四人の魔術者。お前らは天使の人柱となる」
 赤い顔の魔物が言った。

「でも一つ足りないじゃない」
 カミラが言うと、魔物は僕を指さした。

「最後の霊剣はエド・ホード、その小僧が持っている。すでに三つの真名は明かされた。残るはお前のパラストラだけだ」
「僕は何も持っていない!」
「ぬかせ。代わりに女の命をもらうぞ」
 魔物はカミラに槍を飛ばした。

「エド、逃げて!」
 カミラが風を起こして押し返す。

「他人の心配をしている暇はないぞ? 地獄に降りし反逆の堕天使、今神をも突き通さん……行くぞ、我が名はルキエル!」
 
 槍がこがね色の光をまとい、地響きを鳴らして風を切り裂く。

「カミラ、真名を唱えろ!」
「それじゃあこいつの思うつぼだよ」
 
 青く燃える翼の天使が、僕に炎を吹きかけた。

「ラルフさん!」
 呼びかけてみるが、もう声は届かない。使。また誰かの声が聞こえる。エルク? テリー? ……父さん? ……母さん? 炎が僕を呑み込んでいく。

「エド!」カミラは叫んで舌打ちをした。「仕方ないね……反逆の民に引導を告げ、悪しき業火に吹きさらせ。創世の風、熾天使の剣。神を迎える銀の風よ。来たれ、アスラ・ル・ミカイル」

「いいぞ、次はお前だ!」 
 赤い魔物が高らかに叫ぶと、蒼炎の天使はラルフさんの声で唱えた。

「……シェン・ルー・アザエル」

 青白い炎が閃光を放ち、僕の身体を内まで燃やした。視界が飛び、胸が張り裂けるほど苦しくなる。母親を殺した。父親を滅した。最愛の人を取り殺した。邪悪な声が頭に響く。大勢の悲鳴がこだまする。うるさい。うるさい。黙れ。黙れ! 僕はこんな火に呑まれはしない。僕は自分自身の存在を赦す。僕はカミラを救わなければいけない。僕は彼女を愛したから。

 ――使

「エド、ダメ!」

 最後にカミラの声が聞こえた。
 僕はまっさらな気持ちで静かに唱えた。

「神よ来たれ、我が名は、ウリエル」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

【完結】うだつが上がらない底辺冒険者だったオッサンは命を燃やして強くなる

邪代夜叉(ヤシロヤシャ)
ファンタジー
まだ遅くない。 オッサンにだって、未来がある。 底辺から這い上がる冒険譚?! 辺鄙の小さな村に生まれた少年トーマは、幼い頃にゴブリン退治で村に訪れていた冒険者に憧れ、いつか自らも偉大な冒険者となることを誓い、十五歳で村を飛び出した。 しかし現実は厳しかった。 十数年の時は流れてオッサンとなり、その間、大きな成果を残せず“とんまのトーマ”と不名誉なあだ名を陰で囁かれ、やがて採取や配達といった雑用依頼ばかりこなす、うだつの上がらない底辺冒険者生活を続けていた。 そんなある日、荷車の護衛の依頼を受けたトーマは――

氷の精霊と忘れられた王国 〜追放された青年、消えた約束を探して〜

fuwamofu
ファンタジー
かつて「英雄」と讃えられた青年アレンは、仲間の裏切りによって王国を追放された。 雪原の果てで出会ったのは、心を閉ざした氷の精霊・リィナ。 絶望の底で交わした契約が、やがて滅びかけた王国の運命を変えていく――。 氷と炎、愛と憎しみ、真実と嘘が交錯する異世界再生ファンタジー。 彼はなぜ忘れられ、なぜ再び立ち上がるのか。 世界の記憶が凍りつく時、ひとつの約束だけが、彼らを導く。

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

処理中です...