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性欲の廃墟篇4
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待合室の話はある話題へと移ったー……。
まあ何てことは無い、今までの風俗の相手を褒めたたえたり、
あいつはどうだった、こうだった等ー…
しかし、各々風俗のすばらしさを語るような感じだった。
別々に話していたグループもいつしかまとまり合い、
場が一つの話題で持ちきりになり、一気に笑いが起こり、
和やかな雰囲気だった。
1人を除いてー……。
片隅の青年は相も変わらず寡黙だった。
特に彼を意識することなく場の和やかさは進んだ。
1人浮いた奴がいるが、無理に仲間に引き入れる事も無いー……。
楽しむ奴だけ楽しんでいればいい、
絡んでしらけるのもヤダ……。
そんな大人の距離感が周囲にある感じだった。
一人の老人がとくとくと風俗ちゅうのはな……と
ご満悦に話をしていた時だった。
急に青年が立ち上がったー……。
当然、視線は彼に集まり、場は先程の賑やかさを
消した……
彼の動向に誰もが目を光らせたー……。
彼は言った。震える唇を開いて……
「僕はこの風俗に来るため、今日十年ぶりに外に出ました……」
沈黙が走った、が……
満場の拍手が彼に送られた。
近くに居た赤ら顔の汚い服のおっさんは
彼の肩を抱き、そうだよな、そうだよなと
感慨深そうな笑顔を浮かばせていた。
彼も仲間に入れられ風俗のすばらしさを大いに
語り合った。
そんな光景を見ている中、僕は光に包まれ、
気が付くとまた廃墟と化した現在の待合室に戻っていた。
イスに座っていたペローリが言った。
「いかがでしたかな?過去の記憶の旅は?」
僕は率直に思った。引きこもりの彼を引き出した恐るべき
性欲のパワー。そしてそれを共有するある種の優しさ、寛容さ。
下でつながった兄弟達なのかー……。
それで思った。所謂公共の場で猥談をする人達、倫理的に思えば
野蛮で粗野である。
しかし例えばそういう人達が電車で近くに座っていて
でかい声で風俗の話をしていると、思わず聞き耳を立ててしまう。
デリカシーのないおやじだ、と思いつつも非常に勉強になるという
気持ちもある。
心の奥底で共感してるからかもしれない。
親しみが湧くのはなぜだろうか。
きっと過去の待合室の彼も同じ様に引き付けられたのだろうー……。
引き付ける糊になったのは言うまでもなく
性欲である。
今の世の中何でもクリーン、クリーンにしようとして、
汚い物には蓋をされてしまう世である。
しかし、その汚い中にこそ、人を結びつける本質がある様な気がする。
昔はそこいらに溢れていた性欲が
今は見えなくなってしまったというの事実だろうけど、
それは抑制しているからだ。人は本能的に性欲がある。
そして、性欲は人と人を結びつける。
その欲求は消えない。僕は心に蓋をしてしまっただけで、
本当はすぐそばに性欲は息を潜め、そっと佇んでいるんじゃ
ないかという気がした。
まあ何てことは無い、今までの風俗の相手を褒めたたえたり、
あいつはどうだった、こうだった等ー…
しかし、各々風俗のすばらしさを語るような感じだった。
別々に話していたグループもいつしかまとまり合い、
場が一つの話題で持ちきりになり、一気に笑いが起こり、
和やかな雰囲気だった。
1人を除いてー……。
片隅の青年は相も変わらず寡黙だった。
特に彼を意識することなく場の和やかさは進んだ。
1人浮いた奴がいるが、無理に仲間に引き入れる事も無いー……。
楽しむ奴だけ楽しんでいればいい、
絡んでしらけるのもヤダ……。
そんな大人の距離感が周囲にある感じだった。
一人の老人がとくとくと風俗ちゅうのはな……と
ご満悦に話をしていた時だった。
急に青年が立ち上がったー……。
当然、視線は彼に集まり、場は先程の賑やかさを
消した……
彼の動向に誰もが目を光らせたー……。
彼は言った。震える唇を開いて……
「僕はこの風俗に来るため、今日十年ぶりに外に出ました……」
沈黙が走った、が……
満場の拍手が彼に送られた。
近くに居た赤ら顔の汚い服のおっさんは
彼の肩を抱き、そうだよな、そうだよなと
感慨深そうな笑顔を浮かばせていた。
彼も仲間に入れられ風俗のすばらしさを大いに
語り合った。
そんな光景を見ている中、僕は光に包まれ、
気が付くとまた廃墟と化した現在の待合室に戻っていた。
イスに座っていたペローリが言った。
「いかがでしたかな?過去の記憶の旅は?」
僕は率直に思った。引きこもりの彼を引き出した恐るべき
性欲のパワー。そしてそれを共有するある種の優しさ、寛容さ。
下でつながった兄弟達なのかー……。
それで思った。所謂公共の場で猥談をする人達、倫理的に思えば
野蛮で粗野である。
しかし例えばそういう人達が電車で近くに座っていて
でかい声で風俗の話をしていると、思わず聞き耳を立ててしまう。
デリカシーのないおやじだ、と思いつつも非常に勉強になるという
気持ちもある。
心の奥底で共感してるからかもしれない。
親しみが湧くのはなぜだろうか。
きっと過去の待合室の彼も同じ様に引き付けられたのだろうー……。
引き付ける糊になったのは言うまでもなく
性欲である。
今の世の中何でもクリーン、クリーンにしようとして、
汚い物には蓋をされてしまう世である。
しかし、その汚い中にこそ、人を結びつける本質がある様な気がする。
昔はそこいらに溢れていた性欲が
今は見えなくなってしまったというの事実だろうけど、
それは抑制しているからだ。人は本能的に性欲がある。
そして、性欲は人と人を結びつける。
その欲求は消えない。僕は心に蓋をしてしまっただけで、
本当はすぐそばに性欲は息を潜め、そっと佇んでいるんじゃ
ないかという気がした。
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