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たわいない会話
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「ふう。こら、梓、初対面の人にあんなこと言っちゃだめだろう。だから、お前はもっとおしとやかにならないと……」
「だって、なんかすました顔がむかついたんだもん。生まれも育ちも違うんですっていう顔しちゃってさ。ごめんなさいー」
ツンとした表情で、悪びれた様子もなく梓は謝ると、売店に向かって歩き出した。
「ほらほら、見物は無理だってわかったし、ジュース買ってよ。おじいちゃん」
「なにを言うとる。お前は反省しとるのか」
「まぁまぁ。あの子も怒っとらんかったし。いいじゃないか。わしが買ってやるでな」
「んむう……あまり甘やかしたくはないんじゃが……こんな所で怒鳴るわけにもいかぬしな……でも……むむむ」
子育て、いや、孫育てで悩む昭雄の気持ちなどどこ吹く風。梓はいち早く売店に辿り着き、スポーツドリンクにするか、レモンウォーターにするか悩んでいた。
「私はこれ」
悩んでいる梓の脇から風音が手を伸ばし、クーラーボックスから牛乳を取り出す。身長が低いことと、身体的一部分の発育が遅いことを気にしているようだ。
「じゃあ、それと、わしは温かいお茶にするかの。小早川さんもそれでいいかの?アズちゃんは決まったかい?」
「ありがとうございます。飲食は館内に持ち込まず、ロビー内でお願いしますね」
店員のおばさんがお金を受け取りながらそう言ったので、四人は飲み物を持ちながら、備え付けのベンチに座ろうとしたが、すでに何人か座っていて二人分しか空いていなかった。
仕方ないので少し離れたベンチに梓と風音、おじいちゃんズで別れて座ることにした。
「それにしてもさー」
ごくり。結局スポーツドリンクでも、レモンウォーターでもない、『おいっ!お茶!』を一口飲んで、梓が口を開いた。
「さっきの、左近って言ったっけ。子供なのに、口演するなんてすごいねー。失敗すればいいのに」
「アズちゃんってさ」
「うん?」
ごくり、ごくり。
「好きな人に意地悪するタイプだよね」
「ぶはーっ!」
意表をつかれ、梓は勢いよく、口からお茶を噴き出した。
「なななな、なに言ってんのよっ。そんなことないわよ。ちょっと可愛くて、ちょっと礼儀正しくて、ちょっとアレなだけじゃない!」
「誰とは言ってないよ?」
風音はからかうように、くすっ、と笑った。
「でも、羨ましいな。不器用だけど、自分の気持ちがすぐ態度に表せて。私なんか、きっと、ずっと心に閉まったままで終わっちゃう」
「ちょっとぉ、だからなんでもないってば。風音の気のせいだよ」
「はいはい。そういうことにしとくよ」
「まったく……」
まるで保護者のような風音の微笑みに、困ったような表情で梓は再びお茶を口にふくむのだった。
「だって、なんかすました顔がむかついたんだもん。生まれも育ちも違うんですっていう顔しちゃってさ。ごめんなさいー」
ツンとした表情で、悪びれた様子もなく梓は謝ると、売店に向かって歩き出した。
「ほらほら、見物は無理だってわかったし、ジュース買ってよ。おじいちゃん」
「なにを言うとる。お前は反省しとるのか」
「まぁまぁ。あの子も怒っとらんかったし。いいじゃないか。わしが買ってやるでな」
「んむう……あまり甘やかしたくはないんじゃが……こんな所で怒鳴るわけにもいかぬしな……でも……むむむ」
子育て、いや、孫育てで悩む昭雄の気持ちなどどこ吹く風。梓はいち早く売店に辿り着き、スポーツドリンクにするか、レモンウォーターにするか悩んでいた。
「私はこれ」
悩んでいる梓の脇から風音が手を伸ばし、クーラーボックスから牛乳を取り出す。身長が低いことと、身体的一部分の発育が遅いことを気にしているようだ。
「じゃあ、それと、わしは温かいお茶にするかの。小早川さんもそれでいいかの?アズちゃんは決まったかい?」
「ありがとうございます。飲食は館内に持ち込まず、ロビー内でお願いしますね」
店員のおばさんがお金を受け取りながらそう言ったので、四人は飲み物を持ちながら、備え付けのベンチに座ろうとしたが、すでに何人か座っていて二人分しか空いていなかった。
仕方ないので少し離れたベンチに梓と風音、おじいちゃんズで別れて座ることにした。
「それにしてもさー」
ごくり。結局スポーツドリンクでも、レモンウォーターでもない、『おいっ!お茶!』を一口飲んで、梓が口を開いた。
「さっきの、左近って言ったっけ。子供なのに、口演するなんてすごいねー。失敗すればいいのに」
「アズちゃんってさ」
「うん?」
ごくり、ごくり。
「好きな人に意地悪するタイプだよね」
「ぶはーっ!」
意表をつかれ、梓は勢いよく、口からお茶を噴き出した。
「なななな、なに言ってんのよっ。そんなことないわよ。ちょっと可愛くて、ちょっと礼儀正しくて、ちょっとアレなだけじゃない!」
「誰とは言ってないよ?」
風音はからかうように、くすっ、と笑った。
「でも、羨ましいな。不器用だけど、自分の気持ちがすぐ態度に表せて。私なんか、きっと、ずっと心に閉まったままで終わっちゃう」
「ちょっとぉ、だからなんでもないってば。風音の気のせいだよ」
「はいはい。そういうことにしとくよ」
「まったく……」
まるで保護者のような風音の微笑みに、困ったような表情で梓は再びお茶を口にふくむのだった。
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