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12.恨より愛
しおりを挟む出会いの場所で、法子と李流は抱擁している。
昨日よりも、より心が近づいた、李流の事をより知りえたことに喜びを感じる。
それにこの場所はトシコとミヤコも来られない。
聞き耳されることはない。
何をしていても、バレない。
バレなくても、李流はいつも通りの抱擁しかしてくれない……
皇室命!降嫁するまで手を出さない……を貫くつもりらしい。
二人地面に座って、後ろから抱きかかえるように座る李流によりかかりながらスマホを睨む。
「私も反省しなきゃと思ったし……スマホ観るの控えるわ……」
李流のスマホを握りしめながらそう言う。
辞めるとは言わない。
そんな法子の後ろから、一緒にスマホを眺めて、
「そんなにスマホがお気に入りで情報を得たいなら、もう何も言いませんよ。
お勤め中は預からせてもらいますよ」
「そうね、こうやって二人で見たほうがいいかも……」
ずっと抱きしめてもらえるし、共通のものができるし…
スマホに集中して、李流と会話も減る事もない。
また、李流は法子の頭を優しくなでて、不意にキスをしてくれる……
「私はがお諌めしたのは日和国、国民ましてや『祈り姫』があのニダ国と同じレベルに落ちることが……とっても心配だったからです。それに……」
「それに?」
法子は李流を振り返ると、見たこともない、蔑むような、鋭い瞳に苦笑した笑みをして、
「私と同じニダ国を恨む
『恨』の感情に……
支配される事なんて、ないんですから……」
ニダの文化の恨みというより、これは人間の本質。
李流の生い立ちが、魂に張り付く枷のように、ニダに関連するすべての恨みなのだ。
いつもは表に出さない感情が表情に出てしまった。
祝皇に関しての侮辱愚弄事件をもその恨みに加算されたのだから……
それは、低い声がほんとに憎しみを含み冷ややかな笑みをする。
本気で李流はニダ国を恨んでいる。きっと、日和国民の誰よりも……
そんな李流に法子は、ゾクリとする。
嫌な鳥肌ではなく、
快感にちかい。
そのブラックな微笑みも
素敵かも……♥
「って……」
法子は李流の襟首を掴んで
「李流にネトウヨのことで注意される事ないじゃない!
李流ほうがよっぽどネトウヨよ!」
法子は襟を揺さぶって暴力にでる。
「……私もそう思って……反省してます……
でも、私は『ネトウヨ』ではなく、『愛国保守』なので……そこはちがうかなと……」
「それは言訳よ!」
もうっと、法子は怒って、微笑む。
李流もつられて笑う。
「まぁ、いいわ。今日はいろんな李流が見られて、知ることができたから、許してあげる」
「お許し頂き光栄です」
でも、もう少し先に進みたい……
さっきはギリギリのところで避けられた。
李流は不意打ちに弱い。
スマホを置いて、李流の顔を無理やり抑えてキスをする。
もう、李流からしてもらうより自分からのほうが早い。
軟らかい唇の余韻を味わいながら離すと、
「…………」
李流の魂は浄化されて気絶する。
気絶というより、寝ている。
昨日から李流は寝てないのかもしれない。
どこか、安心したような顔をして眠る李流を見るのも初めてで、愛おしい。
「好きよ。李流。」
気絶した李流の頭を膝に乗せて髪をなでる。
それだけで幸せを感じる法子だった。
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