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宿命の枷、運命の鍵
8☆運命の鍵(エンド)
しおりを挟む法子は唇を昨夜の仕返しのごとく触れる。
李流は突然、法子に迫った自責の念が噴き出してきて、せっかくの笑顔が曇る。
「この身に流れるニダの汚らわしい血が疎ましくてしょうがなかった……」
李流は顔を背けて悲しい顔をする。
「法子様を責める気はなかったのです。自分自身を責めていたのに、法子様に当たってしまった……」
「違うわ!李流は祈り姫としてあるまじき事を言ったから身を呈して叱ってくれたのよ。そうでしょう?」
たしかにそうしようと思ってのお諌めだったけれど、本当は八つ当たりのような気がしてきて罪悪感に苛まれる。
悲しい顔を隠すように目の上に腕を載せて隠す李流に、法子は、諭すように、
「私は李流だから好きなの。李流以外好きにならないわ、例えニダの国の血を引いていたとしても、日和を好きな李流に変わりはないでしょ?」
法子はじっと李流顔を見つめる。
その視線を李流は腕を目の上から離して、恐る恐る受け止めると、法子は微笑んだ。
李流もつられて微笑む。
心が不思議と軽くなる。
「祈り姫様にそう言われるなんて、汚れたこの身がやっと浄化された心地です」
心の深いところに根付いていた、どうしようもない負い目が法子の言葉でこんなにも解けるなんて……
やっぱり祈り姫神であられると、敬意を抱かずにいられなかった。
再び改めて……法子の顔が、唇が近づいてくる。
その唇を李流はそっと両手を重ねて避ける。
法子はムッとする。
「李流……なんでっ」
「祈り姫様に口付けされるなんて浄化どころかこの身は消滅してしまいます」
顔を真っ赤にして拒否するところは男らしくないと思う。
祈り姫を大切にしたいから、汚す行為はためらわれる。
李流がしようとした事は計算があったからで……
法子は李流に馬乗りになってるのをやめて諦める。
「でも手にはキスしちゃったわよ」
じっと李流はキスされた手を見つめる。
その手に唇を重ねて、間接キスをする。
法子は照れる。
可愛い行為で実際してるような感覚になる。
キスするだけかと思ったら舌を出して舐めるから、あまりのことに法子はびっくりして顔を真っ赤にしてなんて言ったらわからなくて、口をパクパクさせる。
李流はわざと色っぽく艶っぽい目をして、
「ね、汚してしまうでしょう?」
「……け、計算でしょ?」
ニコニコ笑顔で答えないからなおさらタチが悪い……
と思われたかもしれない。
「いつか、李流から熱ぅい本気のキスもらいますからね!」
法子はそう言霊を吐いて宣言した。
その後、晴房は寛大な処罰として、一年間の謹慎処分を李流に申し渡すのだった。
出会いは偶然
運命は必然
この先の未来は偶然と必然が折り重なって自然と運命に繋がっていくのかもしれない……
呪いの宿命は運命の出会いによって縁で祝福に変わる、李流は改めて思った。
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