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結婚指輪喪失事件
10☆夢見
しおりを挟む「かーさんがそーいう事だって!」
と、薫は早速、父に原因を話した。
伝統衛士の見回り終わりの李流を連れて瑠香の局に来た。
今夜は晴房は桜庭の家に行っていていない。
「葛葉子のせいだったのか…」
瑠香は、はぁ……と、理由がわかってため息を吐いた。
「なんか、なつかしいな。かーさん絡みでいろいろなトラブルあったしな!」
薫は父の様子を見て、懐かしくて母が生きていた頃の父の癖をみて微笑んだ。
「お前もだけどな。」
瑠香もフッ…と笑い、心が落ち着くし、なぜだか嬉しい。
心がわくわくとさざめく。
妻は死んだとしても、現し世で触れ合えた、関わり会えたと思ったからだ…
それだけで悶々とした気持ちも、何もかも落ち着いていく。
いや、落ち着いていられない。
「葛葉子のものは私のもので返してもらいたい。」
真剣に強く言霊に出す。
「だが、私は幽霊、生霊がみえないからな…」
瑠香の癖で腕を組み、下を向いて考える。
生身の人間ならまだしも幽霊の存在を捕まえるのは難しい。
神の化身で品が高いために、幽霊を見る事ができないし、品を落として見えたとしても瞳を合わせてしまえば消してしまう。
そして、指輪も戻らないと思う。
「なんのために李流を連れてきたとおもってんだよ。李流の夢見の力を使って捕まえればいいんだよ。な、李流!」
そう言って李流の肩を叩いた。
「はい!瑠香様の大切な指輪は取り返したいですし、オレにできる事なら手伝わせてください」
李流はそう声を弾ませて言った。尊敬する瑠香の手伝いができることは嬉しい。
「夢を使う、か…李流君よろしく頼む」
瑠香は頭を深々と下げて頼んだ。
李流は夢見の能力がある。
それは、稀代の祈り姫だった李流の曾祖母の能力だ。
それを密かに晴房が魂から引き出し、単なる夢ではなく様々な異界や過去未来、ましてや神の世界まで繋ぐことができるようにされている。
その事は本人には内緒で、そこまでの能力を引き出すにはルカの神の力も必要なことだった。
ハルの神もルカの神も李流の真っ直ぐな魂に祝福を与えるほど惚れている。
そのことを知って先月、瑠香は結婚記念日を夢の中でも良いから過ごしたいと思い、夢繋をおこなったら李流を抱きしめていたという事件を起こした。
その後、狐のぬいぐるみを抱き枕にして眠り夢の中で何度か葛葉子と逢瀬を重ねているが、目が覚めると、どうしても忘れてしまうのだ…しあわせな気持ちを残して……
だけど、今回は特別だ。
現し世とつながる指輪を生霊に取られている。
意識して夢に望めば取り返すことも出来るはずだし、魂から求めあった妻の葛葉子に会える……
道祖神で毎日願った、夢でもいいから逢いたい…と
鷹島絢子も夢でいいからと願った…
そして、厄介な事件になってしまったが、今に繋がった。
神はどこまでも見て知っているのだ。
「ふふ…道祖神も私の願いを叶えてくれる気なのかな…」
と独り言をついつぶやいた。
《私だってお前の望みを叶えてあげているよ…誓約以外はね》
少し不服そうに瑠香の背後でそう言った。
瑠香の背後に浮いて様子を見ていたルカの神に顔を上げて、
「ルカの神…ならば、夢に繋げてほしい…よいか?」
《ふふ。いいよ。我が依代》
ルカの神は口元を抑えてうれしそうに微笑んだ。
《そなたの楽しげな顔を見れたからね……これで自戒の呵責が取れるなら力を貸すよ》
「そうか…」
それが神だからこそ分かって背後でニヤニヤ笑っていたのかと納得がいった。
神の力……霊的に人を生まれ変わらせる力を使わないのは、妻だけを死なせた呵責…自戒だった。
神でも己の化身の気持ちに影響する。
《皇を守るためには必要な力だからね。心に枷をあまり作らないでおくれね。》
「ああ…すまなかった。ルカの神」
それは己への反省でもあった。
さらに、瑠香は晴房と同じ神の体として生まれ変わった神でもある。
晴房も一度ハルの神のもとに上った事も自分の呵責からでもあった。神と心は繋がっていることを話していた。
前のように使えないと瑠香は思い込んで力を己で封じていたことにも気がついた。
さらに神の力を見定める審神者でもあるからなおさらだった。
「では、……審神者として道祖神の縁違いをした落し前をしにいって解決しにいこう」
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