祈り姫

花咲マイコ

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願いと妄想の夢違え

8☆陰陽寮職員集合

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「その話、ゲームソフトの『王女ハーレム』に似てまつね?」

 李流の夢の話を中務の宮に話していたのを、そっと阿倍野野薔薇あべののばらは聞いていて、そう言った。
 野薔薇は女陰陽師で、局を一室頂き、常に宿直をして陰陽寮で、仕事をしていた。
 天然パーマで眼鏡をかけた幼い雰囲気のある彼女は、宮中に務める女性職員に陰陽寮が発行する吉凶予定表を配る役目を一人で担い、吉凶方位、風水を得意とする。
 野薔薇の局の両隣は瑠香と晴房と李流の局だった。男性職員が多い職場のために親戚である寮長、副長が野薔薇を万が一に備えて守っているが、今月まで陰陽寮を辞して滝口臣たきぐちおみと結婚生活に入る予定である。

 その事を快く思っている中務の宮は満面に微笑んで野薔薇の手を優しく握り、
「臣と仲直り出来て良かったね。結婚式には是非行くからね。予定はちゃんと知らせるんだよ?」
「そんな、来て下さるなんて!恐れ多いでつよぉ!もうっ!」
 そういって、嬉しさのあまり恐れ多くも宮の肩をばしばし叩く。
「野薔薇さん!ダメですよ!不敬です!」
 李流は卒倒しそうに青ざめて諌める。
「ご、ごめんなさいでつ!つい嬉しくて……」
 野薔薇はしょぼんとする。
「いいんだよ。若くてかわいい女の子に触れてもらえるなんて嬉しいからね」
 中務の宮はニコニコして仰る。
(ちょっとでれでれしてる……)
 と李流は思う。
(ハル様が中務の宮は女の子が好き、と言ったことは本当なんだな……)
 と李流は察して黙ることにした。

「で、『その王女ハーレム』っとはなんなのだ?」
 晴房は顎に檜扇を当てて訝しむ。
 名前だけ聞けば、いかがわしさ100%だ。
 晴房はそういうカルチャーに疎い。
 さらに触れたことも無いのでつかみづらい。
「ポータブルゲームで流行っているギャルゲーでつ。逆の乙女ゲーも時代背景が異なっておもしろいでつけどね!資料があるのでちょっと待っていてください!」

 野薔薇は、ゲーム雑誌を急いで部屋から持ってきてそのゲームのタイトルページを三人に見せる。
 何人もの美しい女の子の絵が構成よく描かれて、アラブ風と和風の掛け合わされた斬新のデザインで描かれたものだった。
 しかも最新作が春頃に出るようだ。
 
「『祝』を『祈』に変えたファンタジーゲームで、ゲームの内容は祈皇室に婿入りして将来帝を目指すゲームで色々なマルチでエンディングがあるんでつ!」
 と興奮気味に野薔薇は説明する。
 かなりのファンがいて新作を心待ちにしているという。
 臣とのデートでこのゲームの新作発表を期待していたけれど、あの時はそれどころじゃない事件が発生してチェックできなかった。
「そんな名作普及しているゲームの影響が妄想の夢が我が娘の『祈り姫』に届くものだろうか?」
 と中務の宮のはうーんと唸る。
 オタクカルチャーに興味を示していた事は知っているがゲームはやらせた事はまだなかった。
 漫画本も基本、我が国をテーマにしたオカルトものを与えて少しずつ知識を付けさせたことはあった。
 代表的なものは野薔薇の父の作品の『狐巫女と陰陽師』は不朽の名作で法子はワクワクしながら読んでいたのを知っている。
「神が関与するくらいなのだから力ある何かが悪意を導いているんだろうな……」
 晴房は真剣に考えをめぐらせている。
「その何者かを少しでも掴めればいいのだが……」
 瑠香も真剣だ。
 異界に繋げるにはきっかけの縁が必要のことだからだ。
 李流の夢に繋がる確かなイメージがあった方が安定的に繋げやすいと瑠香は思う。
 晴房は瑠香の言の葉に閃いて、「じゃ、弓削隼斗ゆげいはやとに透視してもらおう!誰か、隼人を起こしてこい!」
「いや、もう、起きてますんで……」
 長身でひょろっとした細身の男性が自ら覗いていた。
 表情が乏しいが美形の類だった。だが、仕事疲れで目の下に隈が出来ていた。
 ちょうど宿直当番の弓削隼斗もただならぬ陰陽寮職員の会話を覗いていた。
「自分だけグースカ寝てる訳にもいかないかなと……」
 あくび混じりでそうボソリという。
 弓削家は代々続く陰陽師の一族の末裔だ。
 寡黙で、仕事を淡々とこなす優秀な若者だ。
 とくに透視が得意で的確に犯人の顔や物を捉える事にが得意だ。
「法子殿下と李流の夢に関与する奴を透視出来るか?」
「やれるだけのことは……やってみます」
 陰陽寮は超能力者が集まるスペシャリスト機関につくりかえた中務の宮と晴房の陛下おわす皇居宮中をお守りする機関。
 弓削は李流の瞳をただじっと見つめる。
 じっと見つめられて、全てを見透かされている感覚は落ち着かないものもある。
 さらに
(早く法子様助けに行きたいのに!)と落ち着かない。
 目を逸らしたくなるのは本能か、それとも……
 無理やり弓削隼人は李流の顎を抑えて逃げないように押さえ込みさらなる瞳の奥を除くように、見つめてくる。
 まるでキスされそうな勢いだ。
「いいネタおもいついちゃいまつ!」
 野薔薇はあまりの光景に顔を赤らめて興奮して叫んだ。
「掴んだ!紙をください!」
 鉛筆を手に素早く紙に掴んだ姿を書き込む。

 透視占いは瞳に映った物を見つけて捉える特殊な能力。
 普通なら見過ごしてしまう能力を中務の宮は見抜いて晴房に力をさらに引き出させて人外の物を見つけることにも成功させることが出来た。
 今回が初めての試みだが成功して満足気に髪をみんなに見せる。
 弓削は絵が超絶上手く、素早く描くことができた。
 きつね耳の美女の絵を描いた。
 全体的に黒っぽいイメージだが艶がある。

「これって、葛葉子が犯人……?」
 中務の宮はうーんと渋い顔してそういうと、
「私の妻はそんなことしません。」
「冗談だよ。ふふ。」
 中務の宮は懐かしい雰囲気に微笑まられた。
「それ、夜子……じゃないでしょうか?」
 野薔薇は青ざめてそう言った。
 弓削の描いた絵に狐耳の他に豊満の胸が黒いレオタードで支えられている上半身の絵だ。
 それだけでも思い出すのは葛葉子おばさんよりも、夜子の方だ。
 ゲームイベントで大変な目に合わされたけど、臣さんと結ばれた思い出深い事件だ。
 忘れられるわけない。
「あら、どおりで神が夢を陰陽寮に繋ぐと思ったわ…私と縁があったのね…ふふ」
 絵が喋り出す。
 絵に相応しい声は艶っぽくて男を魅了する声だった。
 陰陽寮の者達は気を張り緊張する。
 陰陽師と言えど、オカルト的な不思議な出来事に遭遇することは稀だ。
 ハルとルカは神の化身とはいえ、気配が違うと素人の李流も感じる。
 光と闇の違いだ。
 さらにこの雰囲気は李流も既に知っていた。ゲームショウで夢に誘われた当事者でもあるのだから……
「私の『縁姿えにしすがた』を書くほどの能力者が陰陽寮にはいるのねぇ。さすがねふふったのしくなりそうねぇ」
 と楽しげに笑い狐の姿を描いた紙は宙に浮く。
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