祈り姫

花咲マイコ

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1☆こころの空洞

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 心が空洞になった後は悲しみが押し寄せて来る。

 
 朝登校すると法子(ほうこ)の机にはひどい落書きがされていた。

 戦犯王の子孫は消えろ!

 それは昨日の歴史の授業で、我が国、日和国の先代の皇帝が世界制服を企んだという内容の授業だった。

 結局白人国のコメリカに負けてしまい軍事国家から平和主義国になったという内容だが、それまでにニダ国やシナ国を侵略して略奪ひどいことをしたと延々と先生は熱弁を語った。

 その影響を受けたのか皇族の法子に自分たちは虐げられて民という大義を胸にいじめを行使したのだ。

 法子も少なからず罪悪感を植え付けられていたせいで自分の存在に疑問を持った。


 お父様やお母様はそういうことを教えてくれなかった。
 皇室はいつも慕われてる、国民の幸せを祈るのは日和皇族の役目。
 私達を慕ってくれる私達の国民の幸せを祈るのは当然の事、義務と教わった。
 けれど今の状態はとういうこと?

『消えろ』と書かれた机。

 法子を憎むような瞳
 ショックで涙する私をほくそ笑む友達。


 私は悲しくて悔しくて初めて学校を自ら早退した。

 そんなに日和国が悪い国だったなんて!
 その国の先代祝皇の命令で国民や他国を苦しめたなんて!
 それじゃ嫌われて当然だ!
 慕われるはずない!
 国民のために祈り姫なんてできる分けない!
 こうしてぬくぬくと国民からのお金で暮らしているのも罪・・・

 ……だったら……

 皇族なんてやめてやる!
 『祈り姫』である私なんていらないんだ!

 家出してやるんだから!


☆☆☆

 夜の七時
 十五歳になったばかりの桜庭李流さくらばりりゅうは皇宮殿内のある場所を探すために出勤時間外で見渡り歩きをしていた。

 手には解読した地図を手に服装は伝統的衣装を着ている。
 一目で内裏護衛の者だとわかる。
 内裏護衛とは祝皇の御家族が住む皇居の護衛だ。 
 選ばれた若者もしくは祝皇に心からの忠誠を誓った二十歳になる前の若者が付ける仕事だ。
 千年前からある狩衣姿に胸当てのよろいに背中に弓やをぶら下げて懐中電灯を持ち皇宮殿内を見回って警護をする。
 いまや、内裏衛士というより、伝統衛士と言われることのほうが多い。
 それは、警護といっても公職の警察はきちんと仕事をしているため、内裏衛士は日和国の伝統を守る仕事でもあった。
 門衛の仕事は皇室を大切な国の帝を守るため志ある若者が無償で競って志願する仕事だ。

 けれどこういう仕事があることを今の若者が知ることは皆無に等しい。
 さらに、昨今皇族に対して敬意を持たない若者や日和国民が増えた。

 それは自虐史と先の対戦の敗北が原因だった。
 学校で教わることは祝皇が悪かった、日和国民も残虐だったと、ねつ造が横行している……

 そう捏造なのだ。

 新聞から学校教育ましてや国会議員までもが反日和になりつつある。
 いや、むしろ大半だ。
 数の少ないまともな国を思う保守層からは

 国を壊す議員
 国壊議員(こっかいぎいん)と揶揄されている。
 そういう者たちが国をダメにして自虐史に邁進しているのだ。
 

 真実を見ることを恐れて簡単な嘘に騙されている。


 国が壊される状態に選挙権がまだない李流は成人していないながらも憂いを感じる。

 日和は侵略戦争なんかしてないと言うと異端者の目で見られる。
 けれど祝皇陛下を慕う心だけはまだあると信じたい。
 オレは陛下のためにいつでも命を捧げる覚悟はできている。
 純粋な日和人じゃない自分がこんなにも陛下や国を思う心をもったのだから、
 まだ真実に目覚めない純粋な日和国民の心の中、一%でもきっと陛下を思う心が遺伝子に組み込まれ 眠ってる筈なのだと……
 つらつら今の日和について思いを馳せながら地図の目的地についた。

「確かこの辺だったはず」

 警備の順路をわざと外れて祖父から受け継いだ菊桜の紋章が彫られたペンダント見開きの裏に隠されしまわれていた地図。
 地図解読して行き当たった場所が皇族様の住居だった。
 しかもこのあたりは祈り姫の住居のあたり。
 祈りを捧げる場所
 昔は斎宮と呼ばれた場所の遷都した時に作った宮だ。

 見上げる場所は自分より頭二つ分高い塀の壁だった。
 けれど、誰も通らないのか草が無雑に生えていて宮殿のなかだとは思えない。
    
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