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あやかしと神様の妊娠危機!?

8☆犯人は……

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 瑠香が教室を出ていくのを見送ってやれやれと東殿下は肩をすくめた。

「霊って、生霊って……本当にいるの……?」
と瀬古が話しかけてきた。
 東殿下の瑠香への叱咤のお声は教室にいた生徒には聞こえた。
 オカルト話が好きなのは知れ渡っているが、積極的に葛葉子の友達以外、東殿下に関わろうとはしない。
 だが、他の親しくない生徒から話しかけてくるとは……
 瀬古は東殿下だろうと敬語は使わなかった。
 見ため現実的で人を見下す癖のある大人っぽい女子だと認識はしていた。
 そういう態度をしている所をなんどかみた。
 性格は割り切った性格で見た目通りのようだと東殿下は思うし、こういう敬意を払わないタイプは新鮮で面白いと思い、東殿下はいつも通りの皇室オーラ全開の笑顔を向ける。
 そのオーラは目には見えないが誰しも謙虚な気持ちにさせられる。
「生霊はいるよ。見た事もあるよ」
 数ヶ月前も学校で暴れてたけど……と思いながら久美をちらりと見る。
「君、何か知ってる?知ってるなら教えて欲しいなぁ。僕そういう話が大好きだからね!」
 わざと親しみを持てるように子供っぽさも含めて瀬古に尋ねる。
 そんな東殿下に気脅されつつ、口元に手を当てて思い当たることを思い出し、
「生霊……か、どうか分からないけど……私も阿倍野さんと同じように階段から落ちて赤ちゃん流産したんだよね……」
 と、瀬古は苦笑して話す。
「妊娠してヤバい!降ろさなきゃ……!って思ってたから別にいいけどさ……」
 と言いながらどこか残念そうだ。
「その事知ってんの保健の先生しかいなかったんだよね……先生は優しかったし相談にのってくれて、階段を上がった時、透明に透ける般若のような表情の先生を見たんだよね……見間違えかと思ったけど……腑に落ちなくてさ……」
 それはまさに生霊……人の強い思い……そして無意識の負の感情。
 この間の事件は死霊に生霊にされた特殊な案件だったけれど、今回は現実に生きている者の念だ……と東殿下は確信する。

「阿部野さんも妊娠してるって知って、なんか、私と同じ目に会えばいいのに……!って思ったけど……やっぱり丈夫な赤ちゃん産んでもらいたい……と思って……自分でもなんて言っていいのか分からないけどさ……とにかく気をつけて……」
 と言って、自分でもたどたどしく何を言ってるのか分からなくなり、恥ずかしくなったみたいで廊下に出ると彼氏が廊下で待っていたらしく二人仲良く昼休みを楽しみに行った。
「まさか、保健の先生が犯人なのでしょうか……」
 二人の会話を聞いていた臣が深刻そうに呟く。
「だけど、現実では犯人ではないからね。これは僕達の出番かな?」
 と、オカルト探偵ごっこが出来そうで、東殿下は満面な笑みだった。
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