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あやかしと神様の修学旅行
7☆阿倍野を知るもと雪女
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「おぬし、新しい『阿倍野殿』じゃな?」
帰り際、瑠香は元雪女お婆さんに呼び止められた。
「……ああ、なんで分かった?」
『阿倍野殿』とあやかしに言い当てられたのは初めてだ。
「古いあやかしにはわかるのだよ。新たなあやかしには分からぬがな」
『阿倍野殿』のはあやかしの棟梁である。
陰のものあやかしの監視をするらしい。
審神者が神を見定め力を封じることと同じことだとジジ様が言っていた。
本来は本家の血筋の葛葉子が務めるものだがあやかしになってしまったので義父と同じく婿である瑠香の努めとなった。
「昔、阿倍野殿には世話になったし、その時の阿倍野殿も審神者だったな」
「ジジ様のことか?」
「そうじゃな、お前のように色男だったなぁ。元気にまだ生きておるか?」
「まぁな。ぴんぴんしてるよ」
ジジ様が本当に色男だったんだなぁとしみじみと思った。
似てるからと将来ジジ様になりたくないっ!とも強く思う。
「外見は阿倍野殿の妻にも似ているな。ふふ。
人間の世は巡るものよな…」
うれしそうにシワの増えた顔に更にシワを増やした。
《人の世の流れに身を委ねたお前の魂もめぐりのなかにとりこまれているよ…》
ルカの神は懐かしそうにいった。
穏やかなルカの神を見るとあやかしに容赦ないのは、瑠香自身なだけかもしれない…
東殿下は瑠香が何やらおばあさんと話をしていることに気づき、
「そろそろ。出発だよーって、何楽しいこと喋ってんの?僕も入れてよっ!」
ワクワク顔で瑠香の隣に並ぶ。
元雪女のお婆さんは苦笑して、
「二人だけで話している結界を見抜き入り込むとはさすがは阿闍梨の魂を持った皇族よ」
どうやら、余計な生徒に気づかれないように結界を貼っていたらしい。
人を惑わす能力はまだ持っているということだ。
「そこまでわかってるなんでやっぱり本物だったんだねっ!」
東殿下はすかさずカメラでピースを作ってツーショットを取る。
お婆さんも、ピースをして乗ってくれた。
しかもわざと瞳を青白いあやかし風にして写る。
正体をバラしたらあやかしに戻ってしまう『見るなの法則』を無視してると瑠香は苦笑した。
「ワレが阿倍野殿を呼び止めたのは頼みたいことがあったのでな。」
お婆さんは家の角を手招きすると白い毛のくまのようなゴリラのようなあやかしがおずおずと現れた。
「イエティだっ!」
東殿下は瞳をかがやかせて胸にとびこんだ。
そしてすりすりする。
イエティは困ったように、東殿下を自分から引き剥がすが、東殿下はイエティとツーショットをカメラに収めた。
「さっき雪男はいないって言ってなかったか?」
「本来はといっただろう?」
「たしかに…」
「数年前、何を間違ってか、この日和国に迷い込みこの土地でうろついていたのじゃ。
雪美が毛皮をはぐために育てていたのだが、途中で家出してから大きくなってしまってな…」
雪美とはこのおばあさんの子供らしい。
「役に立つので家族でかわいがっておったが、ワレらはもう年じゃ。余命まじかじゃ。だから、この子の面倒をみてやりゃせん…阿倍野殿の屋敷の異界にてイエテを返してやってくるんかの?」
旧香茂の自宅には様々な異界と通じる空間がある。
「そんな大きなあやかしを連れて行くのはむずかしいな…」
葛葉子が異界を作って繋げればなんとかなるかもしれないが…
悩んでいる瑠香をみたイエティは、ぽんっ!と煙で身を隠すと肩乗りの猿くらいの大きさになった。
「わあっ!そんなこともできるんだねっ!」
「あやかしだからの。そういう能力で身を隠していたんじゃろ。最後の生き残りしかも半妖らしいしの…」
東殿下はまた写真を取る。
「まぁ、そのくらいの大きさなら…大丈夫かな」
「たっしゃでな。」
少し寂しそうに手を振る雪女のおばあさんの隣におじいさんも寄り添い手を降った。
ホテルについてから、突然の吹雪なってスキーは中止になった。
生徒たちはホテルで自由行動をしていた。
葛葉子もホテルで待っているかもしれないと探そうとしたら、
「瑠香くん!葛葉子知らない?」
何かあったのかと不安がよぎる。
「しらない…どうかしたのか?」
久美は、瑠香が知らないということに戸惑いながら、
「温泉一緒に入る約束してたんだけど、葛葉子、やっぱり瑠香君と一緒にいたい!って言ってたから二人でいるのかと思ったのに…」
それは菊が言い訳の暗示でそう思っていた。他の生徒もだ。
瑠香は一瞬頭が白くなる。
その頭の中に、
《瑠香、瑠香、助けてっ!雪女に捉えられちゃった!》
助けを呼ぶテレパシーが響いた。
「…葛葉子っ!」
静止も聞かずに吹雪く外に出ていった。
帰り際、瑠香は元雪女お婆さんに呼び止められた。
「……ああ、なんで分かった?」
『阿倍野殿』とあやかしに言い当てられたのは初めてだ。
「古いあやかしにはわかるのだよ。新たなあやかしには分からぬがな」
『阿倍野殿』のはあやかしの棟梁である。
陰のものあやかしの監視をするらしい。
審神者が神を見定め力を封じることと同じことだとジジ様が言っていた。
本来は本家の血筋の葛葉子が務めるものだがあやかしになってしまったので義父と同じく婿である瑠香の努めとなった。
「昔、阿倍野殿には世話になったし、その時の阿倍野殿も審神者だったな」
「ジジ様のことか?」
「そうじゃな、お前のように色男だったなぁ。元気にまだ生きておるか?」
「まぁな。ぴんぴんしてるよ」
ジジ様が本当に色男だったんだなぁとしみじみと思った。
似てるからと将来ジジ様になりたくないっ!とも強く思う。
「外見は阿倍野殿の妻にも似ているな。ふふ。
人間の世は巡るものよな…」
うれしそうにシワの増えた顔に更にシワを増やした。
《人の世の流れに身を委ねたお前の魂もめぐりのなかにとりこまれているよ…》
ルカの神は懐かしそうにいった。
穏やかなルカの神を見るとあやかしに容赦ないのは、瑠香自身なだけかもしれない…
東殿下は瑠香が何やらおばあさんと話をしていることに気づき、
「そろそろ。出発だよーって、何楽しいこと喋ってんの?僕も入れてよっ!」
ワクワク顔で瑠香の隣に並ぶ。
元雪女のお婆さんは苦笑して、
「二人だけで話している結界を見抜き入り込むとはさすがは阿闍梨の魂を持った皇族よ」
どうやら、余計な生徒に気づかれないように結界を貼っていたらしい。
人を惑わす能力はまだ持っているということだ。
「そこまでわかってるなんでやっぱり本物だったんだねっ!」
東殿下はすかさずカメラでピースを作ってツーショットを取る。
お婆さんも、ピースをして乗ってくれた。
しかもわざと瞳を青白いあやかし風にして写る。
正体をバラしたらあやかしに戻ってしまう『見るなの法則』を無視してると瑠香は苦笑した。
「ワレが阿倍野殿を呼び止めたのは頼みたいことがあったのでな。」
お婆さんは家の角を手招きすると白い毛のくまのようなゴリラのようなあやかしがおずおずと現れた。
「イエティだっ!」
東殿下は瞳をかがやかせて胸にとびこんだ。
そしてすりすりする。
イエティは困ったように、東殿下を自分から引き剥がすが、東殿下はイエティとツーショットをカメラに収めた。
「さっき雪男はいないって言ってなかったか?」
「本来はといっただろう?」
「たしかに…」
「数年前、何を間違ってか、この日和国に迷い込みこの土地でうろついていたのじゃ。
雪美が毛皮をはぐために育てていたのだが、途中で家出してから大きくなってしまってな…」
雪美とはこのおばあさんの子供らしい。
「役に立つので家族でかわいがっておったが、ワレらはもう年じゃ。余命まじかじゃ。だから、この子の面倒をみてやりゃせん…阿倍野殿の屋敷の異界にてイエテを返してやってくるんかの?」
旧香茂の自宅には様々な異界と通じる空間がある。
「そんな大きなあやかしを連れて行くのはむずかしいな…」
葛葉子が異界を作って繋げればなんとかなるかもしれないが…
悩んでいる瑠香をみたイエティは、ぽんっ!と煙で身を隠すと肩乗りの猿くらいの大きさになった。
「わあっ!そんなこともできるんだねっ!」
「あやかしだからの。そういう能力で身を隠していたんじゃろ。最後の生き残りしかも半妖らしいしの…」
東殿下はまた写真を取る。
「まぁ、そのくらいの大きさなら…大丈夫かな」
「たっしゃでな。」
少し寂しそうに手を振る雪女のおばあさんの隣におじいさんも寄り添い手を降った。
ホテルについてから、突然の吹雪なってスキーは中止になった。
生徒たちはホテルで自由行動をしていた。
葛葉子もホテルで待っているかもしれないと探そうとしたら、
「瑠香くん!葛葉子知らない?」
何かあったのかと不安がよぎる。
「しらない…どうかしたのか?」
久美は、瑠香が知らないということに戸惑いながら、
「温泉一緒に入る約束してたんだけど、葛葉子、やっぱり瑠香君と一緒にいたい!って言ってたから二人でいるのかと思ったのに…」
それは菊が言い訳の暗示でそう思っていた。他の生徒もだ。
瑠香は一瞬頭が白くなる。
その頭の中に、
《瑠香、瑠香、助けてっ!雪女に捉えられちゃった!》
助けを呼ぶテレパシーが響いた。
「…葛葉子っ!」
静止も聞かずに吹雪く外に出ていった。
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