上 下
28 / 37
茨の魔女

3☆茨の森

しおりを挟む
 魔女を狩る聖職者に魔女と関わると心が汚れると言われていた。
 唯一神の使者である聖職者は人々にそう諭す。
 昔は女は全て魔女といった風潮が強い時期があった。
 魔女と認定された女は恐ろしい拷問器具で悲惨に殺されていった……
 今は使われていない拷問器具を見れば、どちらが善か悪か一目瞭然だが、そんなことを正直に言ったら男でも魔女認定される恐ろしい時代があったことも反省の意味を込めて語られる。

 聖職者は酷い時代に比べて本当に能力がある者以外認めない組織になったようだった。 
 悪魔を見分ける力を持っていれば聖職者になる事ができるようになった。
 悪魔を見えないのに見えると嘘をついたものが拷問にかけられる時代になったのだ。
 その事実はアーサーの叔父が聖職者の末端を担っていて協会の神父をやっていたし、アーサーの一族が治める領地の歴史を領主たる者は知っておく必要があった。
 家族や恋人と引き剥がされた悲しい悲惨な出来事を……
 二度と間違いを犯させないように……

 神に敬虔な領地の息子だったアーサーも魔女は怖いものと理解していたが魔女は普通の女性だということも信じていた。

(むしろ魔女がこの世にいること自体のほうが信じられない……)
 と、当時は思っていた。

「……実際に出会った彼女はとても純粋で美しかった…特別な存在に思えたんだ…」
 怖い思いをしても、出会った頃のときめきは忘れられないものらしい……

 魔女の自白剤の香のせいか、さっきのどす黒い飲み物のせいか思い出が明確にとめどなく口から出てくる。

 リネルと出会ったのは十歳の頃だった。


 領地をめぐりお家騒動が起こり跡取りであるアーサーは親戚が放った暗殺者に殺されかけた。

 逃げられるのは茨の森のみだと思った。
 むしろ森まで追い詰められていた。
 深夜暗殺者はアーサーを襲いにきた。
 身体能力に優れていたアーサーはなんとか屋敷を抜け出してどこともなく必死に走った。
 唯一領主の証である十字架の首飾りを持って逃げた。
 追い詰められてたどり着いた場所は目的の場所……茨の壁のような森だった。
 名前の通り、常に茨に絡まれた領地の森だった。
 その森には誰も近づかない。
 なぜなら棘一つ一つに毒が宿ってるとも言われて放置されてきた。
 茨の毒は無実の罪で死んだ乙女たちの怨念の籠もった茨ともされた。
 それでも危険な森に幼いアーサーは逃げ込んた。
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

祈り姫

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:38

あやかしと神様の子供たち

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

星を眺めて花が咲く☆あやかしと神様番外編

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

陰陽師と伝統衛士

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:9

狐のお姫様とキスの魔法

児童書・童話 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:6

憑かれて恋

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:109

処理中です...