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9☆心配する心
しおりを挟む「タヌさんを……狸を動物を消していたのは、晴房だったの……」
それを見たせいなのか、葛葉子は殺されそうになった。
「あぁ⁉︎晴房がやったのかっ⁉︎」
声を荒げて、キッと切れ長な瞳を更に釣り上げて、ハルの神が宿った晴房をさらに睨む。
最強の守護神とされるハルの神は瑠香に弱い。
瑠香の宿す、ルカの神はハルの神の対だ。拮抗する力を持つが審神者を依代にしているがために瑠香の方が上になる。
晴房が大人になったら、拮抗それ以上の神の力を存分に使えるようになるが年齢差、精神力も影響する。
瑠香の瞳が黒から輝くブルーに変化する。
縦長の瞳孔とキラキラ輝く瞳が晴房を、捉える。
元巫女の葛葉子は間近で二柱の神の力をかんじる。
ハルの神が破壊の力ならばルカの神は止める、抑える力はと感じた。
だから、白狐神のあやかしである葛葉子を封じることが出来るのかと納得がいった。
「………宮中で殺生を許したのか?」
宮中の庭の穢れを処理するのも審神者の役目、それが神がしたことなら尚更許されない事だ。
『死の穢を浄化しただけだ、審神者の仕事を手伝ったことを感謝してもらいたいものだな』
ハルの神は嘘は言わない。
だけど、わざとなのか、自分が殺生はしていないと言わなかった。
『だが、狸を消したのは晴房の意志だ。力を試すためのな』
晴房は陛下のためなら遠慮なく力を振るうことを厭わない。
まだ子供なので善悪の分別が曖昧でもあり、赤子の頃から神の依代としての徹底的に陛下を守るための衝動だし、役目だと魂がいうのだ。
(けれど、子供が動物の命を無意識に殺めるようなものか?)
瑠香も命の大切さの分別がつかず蟻や昆虫や虫を殺めまくった記憶がある。
そこで罪悪感が生まれ、命の不思議や大切さを学ぶのだ。
だが、動物を襲おうとは思っても見なかった。
(こいつ危ない方向に育つのではないか……)
と、不安になった。
しばらく、神の力を封印すると決めた。
瑠香はキッと瞳を晴房に合わせると、ハルの神の意識はスッと消えた。
神の世界に帰ることにしたらしい。
そのとき、ハルの笑う声が聞こえた。
《お前の力量をみせてもらおうか?》
ハルの神は何か意図があると、ルカの神は瑠香に伝える。
ルカの神もそれ以上のことは教えてくれない。
神を見る縛ること封じることはできるが神の意図を図ることは所詮人の身では難しい物なのだと深く考えることを諦めた。
ハルの神の意志から開放された晴房はきょとんとして、
「どうして、消してはいけないんだ?死は穢だろ?」
動物を消していたのはハルの神の言うとおり晴房の意思だった。
だが、死は穢れと教えたのはハルの神だと思う。
いや、たしかに、宮中の掟で死や血の穢れは厳禁なのだ。
その最大限の中で晴房は生まれた…
だからそのことはもっと大人になるまで教えないつもりでいたのに……
「……ずっと、宮中の獣を消していたのは晴房なのか?」
「穢を陛下の近くにおきっぱなしにするのは陛下に対して呪いだ!消して…当然だ!」
晴房は子供ながら言い切った。
パシン!
葛葉子は晴房の頬を引っ叩いた。
「んなっ!痛いではないか!」
いうことを聞かなくてわがままを言ったりして瑠香によく叩かれるのであまりショックではないが、瑠香以外の者に叩かれるとは思っても見なかった。
晴房の小さな両肩を葛葉子はつかみ、
「宮中で亡くなったなら…穢れかもしれないけど……大切な人が突然いなくなられたら心配するし、その消されたものの周りが胸が苦しいし痛いのよ……」
姉が消えた時すごく心配した…
真実を知って悲しく絶望した。
死体もなく死んだことに……
宮中の神殿で晴房を産み落とし、血の穢れ死の穢れで大変なことを起こした。
それは大変な罪穢れだった……
ハルの神が姉の房菊の遺体をタヌさんにしたように消したと言うことを想像してさらに悲しみを思い出してしまった……
それが、父は皇を憎み狂ってしまった原因だと言うことも……
動物たちもそうだった。
ここ数日、死体もなく行方不明になっていて、その気持ちがわかるから犯人を探していたのに、まさかの晴房だったとは……
ポロポロと涙が溢れて苦しくて悲しくて止まらない葛葉子が哀れで瑠香は葛葉子の肩を抱き締め慰める。
なにか、二人は勘違いしてるらしいと晴房は感じて、
「ハルが、狸の命をうばったわけではないぞっ!死にそうになって苦しそうだったから、消しただけだ!苦しい思いが長ければさらなる穢れになるとハルの神がいうし!」
と、必死に弁解した。
ふと、さっきの狸の苦しみを思い出した晴房はしゅんとして、
「ほんとうに……苦しそうなのはつらそうだったから……」
穢を気にするのはわかるが、苦しそうで可哀想と思うのは優しさからかとおもった。
(やばい精神な子供に育たないな…よかった。オレの教育は間違っていない)
と瑠香は安心した。
「でも、どうしてすぐに消してはいけないのだ?苦しみもがくよりいいと思う。」
葛葉子は更に言い聞かせるように目を離さず説く。
「宮中のの掟は厳しいのは仕方ないけれど……突然、大切な人が何も言わずに帰ってこなかったら周りが、辛いの……」
「周りが辛い?周りとは何だ?」
瑠香はため息をついて腕を組み晴房を見下ろす。
「オレがいなくなったらお前はどう思う?」
晴房は瞳を地に向けて、ボソリと言う。
「……探すと思う。せんていへいかの魂を追いかけたように……最後にこえをかけてもらいたかった……聞きたかった…」
そのことを思い出して葛葉子の言うことを理解して晴房は涙を落とした。
そのあふれる涙をエグエグと袖で拭う。
晴房が、あの時行方不明になったのはそういうことがと納得がいった。
光のもとに帰る魂を追うことができるとは恐れ入る。
瑠香も晴房を説くように晴房と瞳を合わせるよう腰をかがめる。
「とにかく、無闇に命を消すな。奪うな。時が来るまで……」
まだ幼い晴房に陛下や皇室、国を転覆させるためのスパイやあやかしを消すことを求めない。
物事を理解できてから自分の役目を果たせばいいのだから。
それは、陰陽寮長の父の方針でもある。
晴房は首を傾げて、
「さっきも言ったが、命を奪ったのはハルではないぞ?穢れを消したのはハルだが……」
「は?」
瑠香と葛葉子は真事実目を丸くする。
いや、あまりのことに晴房の言葉を聞こうとしなかっただけだ、
「ハルが来たときにはもう、いきいもたえだえだったぞ。」
晴房は説明をする。
無実の罪をきせられるのは御免だ。
ここ数日おかしな気配をハルの神に操られ向かうと獣がいきもたえで苦しそうにしてた。
手当ても呪詛がしかけられていて、治りそうもない。
ハルの神がいうには、呪ごと恨言を思わせる呪詛が、かかっていて苦しんで死ぬしかないと、説明された。
「だから、苦しまないように消した。」
「葛葉子にしたことは?」
瑠香はすかさず聞く。
葛葉子はたしかに一度死んだが苦しんでいるわけでもない。
「この、狐巫女は、人間じゃないあやかしだと思ったから消そうとしただけだぞ。」
素直に言う。
ハルの神にとって、晴房にとっても怪しいやつにしか映らなかったようだ。
「私は、夜の皇居を守る神ぞ!悪いあやかしと一緒にするな!」
よくよく晴房は葛葉子をみて、白い尻尾と耳は白狐という『神』狐だと理解した。
「そうか。わるかったな」
同じ皇を守る神だと理解してニカっと笑い警戒を解いた。
それに、とても近い懐かしい感じがするからだ。
「じゃあ。犯人は?」
どこの何者が動物を襲っているのだろか……?
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