鍵の在処ーカギノアリカ

カルトン

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死後の世界と真紅のドラゴン

死んでまた目を覚ましてみる

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 ※
 
 
 
 光が収まり、目を開き上体を起こし辺りを見回す。四方がカーテンで囲まれた中央に置かれているベッドで横になっていた。
 そこは、さっき敦也が撃たれた場所そのものだった。
 「ここは……俺が撃たれた場所か?」
 「やっと起きたましたか。一時間って結構長いんですね」
 カーテンを開き少女が入ってくる。
 「あっ、お前俺を撃った女だな!?」
 少女を顔を見てさっきの痛い記憶が戻ってくる。
 「えーと、さっきはごめん。起きたら君の部屋にいて。そしたら……」
 手をあたふたさせながら敦也は着替えを見てしまったことを謝罪する。
 「あー、その件なら忘れて。無かった事にしよう。あなたはわたしの着替えを見てない。わたしはあなたに着替えを見られてない……それでいいですね?」
 淡々と言う彼女に対して、敦也は「わかった。何も見ていない」とだけ頷いた。
 カーテンを全て横に避けて部屋一面が視界に写る。 部屋はさっき見えていた衣服の山々は仕舞われ赤白の斑模様がカーペットが広がっている。ベッドの対の所に机と椅子がセットで置いてあり、中心には小さい丸テーブルがあった。そこから右側にドアが一個、左側に窓とクローゼットがある。窓からは明るい光が差し込んでいるので、時刻は朝か昼と思える。
 「そうだ、お前この世界から生き返る方法を知ってか?」
 敦也は、ミサトが最後に言った言葉を思い出して彼女にそれを訊ねる。あとは生き返ってから訊いて、と言っていたのだ。彼女が知っている可能性はある。
 「お前じゃなくてわたしの名前は凜です。香月凜。生前は中三でした。あなたはの名前は?」
 「敦也。桜井敦也だ。高一だった」
 自己紹介をされたので、とりあえず簡単なことだけを敦也も伝える。
 「あ、先輩だったんですね。ごめんなさい。あ、凜って呼んでください」
 凜は慌てて謝罪する。あまり先輩後輩を敦也は気にしないが。
 彼女は椅子に腰かけると、考える顔を見せてから言う。
 「まず、先輩は死んでこの閉ざされた世界(クローズ)っていう世界に来て、生き返る術があるってとこまで知ってるっていうことで大丈夫ですか?」
 敦也は素早く頷く。そこまでは紙に聞いて理解した。
 「そこまでで合ってる。頼む、色々と教えてくれないか。神はあまり教えてくれなかったから」
 凜はすぐに「いいですよ」と微笑みながら答えてくれた。 
 「順をおって説明しますね。まず、先輩はわたしに銃で撃たれました。でも、先輩は今こうしてわたしと喋ってる。それはどういうことかわかりますか」
 質問を振られ、敦也は首を捻る。
 「俺は一度死んでこの世界に来た。そしたら、凜に撃たれた。次に神とお茶を飲み目を覚ますと、また同じ部屋にいる……俺は生き返ったんだよな?」
 敦也は、自分なりに推理をまとめた結果を凜に述べる。
 「質問をしたのはわたしなんですけど。はい、わたしがした質問に対しての答えは正解です。先輩の質問に対しても正解です」
 凜は笑いを溢してから答え合わせをした。その笑顔にうっかり敦也は見とれてしまう。
 「この世界ではね死ねないんです。弾丸で心臓を撃たれも、ナイフで身体を切り刻まれても、鈍器で頭を砕かれても、毒薬を飲まされても、身体が潰れてもある条件がないとこの世界では死ねないんです」
 何回か恐いことが凜の口から放たれたが、その経験をしたばっかなのでただ納得するだけだったのだが、一点だけ敦也は引っ掛かった。
 「ある条件っていうのは何なんだ?」
 「理解が早くて助かります。この世界で死ぬ方法が一つだけあります。それは魔力を宿した攻撃で致命傷を受けることです」
 「…………?」
 敦也は首を傾ける。
 多分頭上にはてなマークでも一個浮かんでいるだろう。魔力なんてゲームや漫画でしか聞くことのないない単語だ。
 「そうですよね。いきなりは理解できませんよね。閉ざされた世界にいる全ての生物は身体に魔力を宿し存在するらしいです……そして魔力を使った攻撃を死ぬまで食らったら本当に死ぬんです」
 敦也は更に首を傾ける。頭上ははてなマークでいっぱいになっているに違いない。
 「そうですね、ソードコマンド-神威」
 凜がそう言って椅子から立ち上がり右手を突き出す。すると、凜が右手に着けている腕輪から『ソードコマンド-神威を確認。神威を顕現します』と女性のがすると右手に一筋の電子式が出現し、次には剣の形に変わり一本の剣が現れる。それを右手で掴むと振るう。
 「何が起きたんだよ!?」
 敦也はいきなり目の前に現れた剣に驚く。
 どんな技術で剣を召喚したのか謎だった。
 「見ててくださいね……!」
 「ん……」
 凜にそう言われ敦也は息を飲む。
 次の瞬間、凜は消えていた。一瞬で俺の視界から消えたのだ。
 「えっ、凜はどこにいったんだ!?」
 敦也はベッドから立ち上がり、辺りを見回す。扉が開かれた以外はなにも変わっていない。数十秒部屋に取り残された後、突如頬に冷たい物が当たり敦也は思わずのけ反る。
 「どこ見てるんですか先輩」
 背後から凜の声がしたので、思考を止めて敦也は振り向く。
 背後から凜の声がしたので、思考を止め振り向く。 
 「はいこれ。先輩もどうですか?」
 凜は敦也に缶ジュースを渡す。敦也は口を開けながらとりあえずそれを受けとる。
 「ありがとう……じゃなくて、どこに行ってたんだよ!」
 「んっ、食堂に缶ジュースを取りに行ってたんですよ」
 凜は控えめな動作で缶ジュースをごくごくと飲み、「ぷふぁ~」と息を吐く。その一連の動作が放心状態の敦也には入らなかった。
 「シークワーサーって結構おいしいですよ。沖縄に行ってみたかったです」
 「……どうしたんですか先輩? シークワーサーは嫌いでしたか?」
 唖然となっている敦也を見て凜が首を傾ける。
 「それはどうでもいいんだ。どうやって消えたのかを教えてくれよ」
 一歩進む敦也に対し、「すいません」と凜は一歩下がった。
 「えっとね。先輩は魔力を持っています。わたしも魔力を持っています。この世界にいるみんな魔力を持っています。魔力を使うと強くなります……ここまでは大丈夫ですか?」
 「わかるかアホ!」
 「あうっ!?」
 一丁の拳銃が開きっぱなしのドアの向こうから飛んで来て凜の後頭部に当たった。
 ドアの向こうには灰色の少し長いウルフカットの髪、黒の短パンとシャツを着た男が怒りを露にしなかがら立っていた。
 「何するんだですか広太さん。痛いじゃないですか。死んじゃいます」
 「死なねぇだろ。俺のシークワーサー盗んだ報いだ!」
 「盗んでません。許可なくいただいたんです」
 「それを盗むっていうんだよ、天然かよこいつ」
 「天然ですか……天然ってなんですか?」
 首を傾けた凜がが敦也に振り返る。
 「いや、俺に訊くなよ」
 敦也は缶ジュースを傾けごくごくと喉に運ぶ。
 「……酸っぱ」
 「敦也兄もそう思う?」
 缶ジュースを傾けごくごく喉に運ぶ。
 「んっ、誰だよ今度は」
 広太さんと呼ばれる男の横に、少女のように細い少年が立っていた。
 少年は髪を首元まで伸ばし、全身をカジュアルな服装で覆い、頭に猫が描かれた帽子を被っている。全体的に体つきが細くて、声が高いからか少女か少年曖昧になってしまう。
 「僕の名前は空です。ちなみに中一です。よろしくお願いします。敦也兄。今から放送室でまともな説明するからついてきて」
 空は敦也を手招きして歩き始める。
 敦也はやっとこの世界のことがわかる、と心のどこかで安堵した。
 「俺高二のは辰上広太。広太って呼んでくれ」
 空を先頭に放送室へ向かいながら広太は自己紹介をしてきた。
 「趣味は果樹や野菜の栽培。最近はシークワーサーの栽培にはまっている」
 今時の高校生で栽培が趣味は珍しいと思いながら、シークワーサージュースの感想を考える。
 酸っぱかったことしか印象にないな。
 ありのままを伝えると、どやされそうな気がしたが、嘘を吐く気はないので本心を言うことにする。
 「酸味が強かったな。でも、おいしかった」 
 「そうか。じゃあ、今度改良して持ってくるから、また飲んでくれや」
 広太は微笑むと前を向く。
 「このちっこいのが、岸谷空。中一だ……簡単に言うとめんどくさい奴だ」
 「ちょっとバカ犬。めんどくさい奴って何だよ。僕ははめんどくさい奴じゃないよ。勝手に言うな。土中に埋めるぞ」
 適当に名前を教えられ、空が振り返り訂正と暴言を吐いた。
 「土中って何だよ!」
 「敦也さん。僕の名前は岸谷空って言います。好きな食べ物はラ・フランス。嫌いな動物は狼です。敦也さん、よろしくお願いします」
 空は広太のツッコミをスルーして、自己紹介をする。
 「お前みたいのがいたから、ニホンオオカミは滅びたんだよ!」
 「よろしく。空」
 敦也も広太を無視して、空に挨拶をする。隣で広太がガルルと吠えているが聞こえないフリをした。
 放送室に入ると先客がいた。背は飛鳥や凜より高い。青と黄のワンピースを着ている。服装からして女性だろう。
 「やぁ、空くんに広太に凜ちゃんと新入りくん。放送室に何のようだい」
 先客の女性からの質問に空がすぐに答えた。
 「プロジェクター貸してくれますか。敦也兄に色々と説明しなきゃいけないから」
 「もちろんさ。勝手に使っちゃっていいよ」
 空はプロジェクターをセットしはじめる。
 「……敦也くん、君も災難だねー。リンリンの部屋に落ちちゃうなんてね。まぁ、男子の君からしたら災難ではなく幸福かもね」
 リンリンとは凜だろうと自己的解釈ですませる。が一つ不明な点が浮かんできた。
 「俺が凜の部屋にいたことをどうして知ってるんだ?」
 すると彼女はふっ、と笑ってから言った。
 「わたしは耳がいいからずっと聞いてたんだよ」
 「騙されないでください。京子さんの能力は千里眼だから。ずっと笑いながら見てたんでしょう……先輩が部屋にいるならいるって教えてくださいよ」
 プロジェクターのセットを手伝いながら凜が京子さんをジトッと睨む。
 彼女は足を組み苦笑いをする。
 「いやぁ、リンリンが恥ずかしそうな顔が可愛いから。テンパって敦也くんを撃っちゃうし。リンリンはもうちょい落ち着きを覚えようね。どうだった敦也くんリンリンの裸は」
 京子さんが鼻血を滴ながら言う。
 「もう見られませんし、見せませんから、大丈夫です。それに、裸じゃないですよ」
 「敦也くん、遅れたね、わたしは和泉京子。大一だ。ギルドのアナウンサー的なことをしている。好きな漫画は百合系だ。オススメは凜ちゃんが受けだね。敦也くんわたしが描いた百合漫画今度読むかい?」
 ここは変人しかいないのか。そう思わざるを得ない発言だった。
 「敦也兄準備できました。椅子に座ってください」    空に呼ばれて敦也は椅子に座る。
 この放送室は結構広く。教室四つを合わせた広さはあるだろう。入り口から右側に京子さんが座っている。近くには本棚があり半分以上が埋まっていた。どうやら、その本は京子さんが描いた百合漫画なのだろう。左側に巨大なスクリーンがあり、そこに投影するらしい。スクリーンの前にはざっと三〇席はある。
 「では敦也さん始めますね」
 プロジェクターのスイッチを押してスクリーンに画像が映し出される。
 映し出されたのは大きな地図だった。外側と中央は黒く塗られている。その間の空間は九つの異なる色と大小様々な区分けがされている。異なる色の間にも黒く塗りつぶされている空間がある。
 「この地図は閉ざされた世界の世界地図です。まず、この黒い部分がブラックゾーンって言います。簡単に言うとモンスター達がうじゃうじゃといる場所になっています」
 空は映し出された黒い部分を指さしながら説明する。
 モンスターってどんなのがいるんだろう。
 と疑問に思い、訊こうとと敦也は口を開こうとする。
 モンスターなんて魔力同様にゲームや漫画でしか聞いたことがない。現実にモンスターなんて存在がいるとは敦也には思えなかった。
 「敦也兄、モンスターってナンジャラホイって思ったよね。それは、次のスライドショーをどうぞ」
 敦也が質問をする前に、空に図星を突かれガクッとする。
 スクリーンにモンスターの写真がスライドショーで五枚連続で映し出される。敦也は注視する。
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