鍵の在処ーカギノアリカ

カルトン

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死後の世界と真紅のドラゴン

自由人と二次会と

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 「でも、わたしの着替え覗いたわけですし」
 「あれは偶然だから。運が悪かっただけだから!」
 「そうですか」
 凜が冷たい声音で言葉を返す。
 「話し戻すけど、祐希の攻撃を防ぐってよっぽど凄いことなのか?」
 「もちろんです。このギルドで祐希さんと対等に渡り合えるのは、あそこで寝てるサブマスターの瀬尾大河さん、マスターの隣で喋ってる《攻略組》隊長の雲竜寺颯人さん、多分屋根の上で本を読んでいるであろう攻略組メンバーの月影夜鶴さんぐらいかな」
 「へー、かなり少ないんだな」
 祐希が俺に気づくと、こっちに走り抱きついてきた。
 「敦也くーん!」
 「おい、祐希!」
 「祐希さん、先輩から離れてください」
 敦也は祐希の身体が零距離ですごいい接していていることに、身体が熱くなってしまう。
 「敦也くん、顔赤いよ」
 ニハハと笑いながら祐希はアツヤから離れる。
 「祐希さん、落ち着いてください」
 「凜はぼくに敬語を使うのを直しなさい」
 祐希は崩れた浴衣を直してから、椅子に座り瓶の苺牛乳を少し飲んでから口を開いた。
 「敦也くん、ぼくの能力知りたいかい?」
 「あぁ、知りた」
 「答えは聞いてないよ」
 敦也の答えが言い終わる前に祐希は言った。
 「答えは聞いてない、必ず教える、今から教える、心して聞け」
 なぜ聞いたし。
 敦也も椅子に座り、祐希の話を聞く用意をした。
 「さて、敦也くんはさっきぼくを自由人だと言ったね」
 確かに祐希を自由人と言ったので、敦也は静かに頷く。
 「ぼくの能力はその通りだ。ぼくの能力は自由人、何者にも何事にも何時如何なるときも束縛からルールから解放さたれる能力なんだよ」
 「すまん、わけがわからん」
 祐希はだよねーと笑ってから、補足を始める。
 「えーと……例えば、ぼくら人間は重力に逆らえず、跳んだらすぐに落下してしまうでしょ」
 「そうだな」
 「ぼくらは重力に縛られている、その重力からぼくは自由だと想像する、すると、どうなる?」
 そこまで言って、祐希は敦也に問いかけるような形で手を振った。
 「………………えーと、凜どうなるんだ?」
 敦也は少し難しい顔をして考え、まったく祐希の言おうとしていることが出てこなくて、凜にバトンを渡す。
 「ちょっと先輩しっかりしてください。重力が祐希さんに関与しなくなるのですから、祐希さんが跳んだら飛びっぱなし、浮くことが可能になるわけです」
 さすが凜しっかり理解していたようだ。
 「凜また敬語だよー、直してよー」
 苺牛乳で喉を潤してから凜を突っつき、凜は引きつった表情になってしまった。
 「じゃー、祐希が瞬間移動したのはどうやったんだ?」
 「それはね、ぼくが敦也くんより遅いというルールから自由になり、敦也くんより速くなったというだけだよ。まぁ、速くなりすぎるけどね」
 確かに祐希のスピードが尋常じゃないことは目の当たりにしたからわかる。
 敦也は、一つ喉に突っかかりがあることに気づきそれを訊ねた。
 「高速移動したんなら、何でタオルが頭の上にあったんだ、速度で飛んでしまうだろ?」
 祐希は少し首を傾げてから言った。
 「あぁ、あれはタオルが頭から飛ぶというルールから自由にしただけだよ」
 「かなり万能な能力なんだな」
 「まぁ、自由になれないルールもあるけどね」
 祐希は最後には俯いて暗い顔をしていた。
 「強い能力ということは、それほど酷い死因か酷い環境か大きな未練のどれかを持っているっていうことなんだよ。だから、生前は大変だったんだよー」
 「ん、そうだったな。ごめん、なんか不謹慎だったな」
 敦也は祐希の過去を次に訊こうとしていたが、話すのは辛いだろうと思いやめることにした。
 「さぁ、みんなギルドパーティー恒例のメロンパン大食い大会だよ、エントリーする人は誰だ!?」
 咲夜が中央で叫び、注目を集める。
 「よっしゃ、今度こそ俺が勝つ!」
 と、広太が群集を掻き分けながら進む。
 「あぁ、お前はまだ俺には勝てねーよ!」
 さっきまで寝ていたサブマスーの瀬尾も起きて、中央に向かう。
 「毎回、広太と瀬尾先輩が勝負して瀬尾先輩が優勝してるんだよ。なかなか見てて笑えるよ」
 凜が苦笑いで今までの戦績を話す。
 「いや、見てるだけじゃつまらないな」
 「おー、敦也くんなら言うと思ったよ。ほら敦也くん行こ!」
 祐希に手を引かれ、敦也と祐希も大会に出場するべく中央に向かう。
 「今宵の主役のアツヤ君と軽音も出場だぞー!」 
 「敦也手加減はしないからな!」
 「本気で来いよ!」  
 広太と拳を軽くぶつけ、椅子に座る。
 「今宵のメロンパン大食い大会の出場者は、右からサブマスの瀬尾、自由人の軽音、期待のルーキーのアツヤ、そして広太だ。初出場の敦也と祐希がどれほど力を見せるか期待だ!」
 四人の前にメロンパン大盛りの皿が並べられる。一皿で三十個はありそうだ。 俺は回りのペースなど気にせず、いきなり全力で食べようと作戦をたてる。
 「先輩大丈夫ですかね」
 「いや、敦也くんならいけるかもよ」
 凜が心配する横で、京子さんが大盛りメロンパンの皿を両手に持ち立っていた。 
 「それでは……スタート!!」
 
 
 
 大会は壮絶だった。
 敦也は作戦通り序盤からフルスピードでメロンパンを口に運んだ。しかし、敦也のスピードの倍以上のスピードで瀬尾先輩と広太の皿からメロンパンが消えていった。一方の祐希はというと数個食べただけで、諦めてしまい横から俺の奮闘を眺めていた。
 「くそー、また瀬尾先輩が優勝かよ、これで五十三連敗だー!」
 「馬鹿、五十五連敗だよ!」
 と、瀬尾先輩は言い捨て食堂を出ていった。
 「そんなにゥプッ、やってるのかよ」
 敦也は腹に詰めすぎたメロンパンが帰ってこないようにするので神経を使っていた。
 「この大会は伝統ある大会なんだよ」
 広太は腹を擦りながら、立つ。
 凜が駆け寄り、心配を含んだ声をかけてくる。
 「先輩大丈夫ですか?」 
 「……問題ない」
 「いや、問題あるでしょ、その顔は」
  京子さんがそう言って笑いが広がった。
 「……なかなか楽しいな死後の(この)世界も」
 敦也は食堂中を見回し、笑いあってるギルドメンバーの笑顔を見て、死んだ悔しさがある仲間同士であるからこそ笑いあえるのだろうなと思った。
 「そうだよ、だってわたしが作ったんだもん楽しくないギルドなわけないじゃん」
 咲夜が敦也のそばで笑う。
 「さーて、敦也くんたちこれから少し付き合ってもらうよ」
 「ん、いいけど。なんでだ?」
 咲夜の言葉に敦也が首を傾げる。
 「記念すべき瞬間に敦也くんたちには立ち会ってもらおうと思ったんだよ」
 「記念すべき瞬間ってなんだ?」
 敦也はそれについて咲夜に訊ねるが、
 「まー、行けばわかるよ。付いてきなさい」
 咲弥が歩きだしたので敦也たちは食堂をあとにした。
 
 ※
 
 
 
 三十分ぐらい咲夜に付いて歩いただろうか。道のりには、畑や果樹などギルドが栽培している物がたくさんあった。咲夜が止まると目の前には巨大な壁が一面に広がっていた。
 よく見ると、その壁は分厚い木が伸び連なりあってできているようだった。
 「敦也くん、これが何かわかるかい?」
 咲夜は分厚い高い木製の壁をトントン叩きながら言った。
 「木でできた高い壁?」
 目の前の壁から判ることだけを俺は答えた。
 「確かにこれは、分厚い木でできた高い壁だ。この壁はとても偉大な壁なんだよ」
 「……偉大な壁?」
 敦也は分けがわからず、凜たちを見る。
 分けがわからない敦也のため、助け船を出そうと凜が口を開いた。
 「この壁はわたしたち、夢猫の努力と言うか頑張りと言うか……」
 「まぁ、ざっくり言えば成長であり進歩なんだよ、この壁は」
 「そう、それです!」
 敦也に助け船を出したはずの凜が京子さんの出した船に乗っていた。
 「まーまー、座って説明しようか」
 咲夜の提案に従い、それぞれ自由に草生い茂る地面に座った。
 京子さんの胸に頭を任せ座っている咲夜が、ギルドのマスターっぽい説明を始めた。
 「どのギルドにも領土がある。これは、ギルドマスター達の会議通称旧十天会議現九天会議で決まっていることなんだ」
 「何で通称が昔と今で違うんだ?」
 敦也の質問に咲夜は「やっぱ、気になるよね」と言いたそうな顔をしてから答えた。
 「まず、十天会議の十天って意味なんだけど。これは、ギルドマスターの別称を現しているんだ。この世界に初めて下り立ったマスターは十人なんだよ」
 咲夜の答えから推測すると考えはこうなった。
 「ギルドマスターが一人消えたってことか?」
 閉ざされた世界でその十人の一人が死んだことになる。
 「そゆことだ、死んではないと思うぞ。あいつはなかなか読めん奴だからな、どこかで息を潜めていると思う。思いたい。あいつが死ぬはずがないんだ」
 「生きてるのになんでもう死んだ扱いみたいになってるんだよ?」
 「それは旧十天会議の議長で総司会者、つまりはギルド『生き返る道リビングロード』のマスターが今は無きギルド抜きの会議で、そのギルドの破壊を提案したんだ」
 敦也は衝撃で言葉を失った。咲夜が真剣な目で口を開く。
 「もともと、そのギルドは他のギルドから嫌われていたんだ。いや、ギルドというよりはマスターを嫌っていた。わたしはもちろんギルドを潰すなどという作戦に参加をする気は一ミリも無く、すぐに会議の席から外した。すぐにその事実を狙われているギルドのギルドマスターに話したが、ただ笑って問題ないと言うだけだった。わたしは協力も提案したが断られてしまった」
 「その結果、そのギルドは潰されてしまったのか」
 「そゆことだ、そのギルドのメンバーはおそらくマスター以外は全員死に、領土は一番近かった、生き返る道が奪った」
 咲夜の言葉を聞いて、大きな衝撃がアツヤを襲った。
 「なんで、人間が人間を殺すんだよ」
 「それは生前の世界と同じだろうな。むしゃくしゃした、あいつが嫌い、邪魔、殺人衝動、強奪、理由を挙げればキリはないさ」
 「この世界でも戦争はあるのか?」
 咲夜は少し躊躇うような素振りを見せてから、きっぱりと答えた。
 「戦争みたいなのはさっきのギルドを潰すときの戦闘だけだよ。四ギルド対一ギルドでは、戦力差は歴然だったから」
 この世界でも殺し合いがあることを知り、敦也の心に恐怖心が少しだが生まれる。
 「そんな対人戦はやらないと思うぞ。わたし自身やりたくはないな。だから、対モンスターだけをやっていたいが、対人が避けれない日がいつか来るな」
 「それは何時なんだ!!」
 敦也はその避けれない日が気になってしまった。
 数秒の間、敦也と咲夜は睨みあってから、咲夜が言った。
 「…………今は置いといて話を戻そうか」
 「えっ、マスター教えてくださいよ」
 さすがに凜もこの話は知らなかったらしく、口を開く。広太や空も緊張した雰囲気を放っていた。
 「そのときがくればわかるさ、今はそれだけ言っておこう」
 結局何も伝わらない咲夜の答えに敦也は不安感を抱き始める。
 「ごめんね、こんな暗い話をしてしまって。さて、話を戻そうか……何の話してたっけ」
 「壁についてだよ咲夜」
 咲夜がど忘れをしたが、しっかりした京子さんが話の軸を戻させる。
 「さて、この壁はわたしたちの成長であり進歩と京子姉が言ったよね、実際その通りだ。この壁はわたしがギルド創立時に作り、領土が増える度壁は広がっていっている」
 咲夜は立ち上がり、スカートのポケットから一枚の折り畳まれた紙を取りだし広げ一瞥すると、紙を投げると息を吐き集中する。パチン! と両手を強く合わせ言った。
 「……ごらん、こんな風にだ!!」
 咲夜の声と共に壁が、いや木々がゴゴゴゴゴ!と動きだし左右に別れて領土の限界まで広がると、前方に木々が伸び始めた。木々は川を呑み込み、森を呑み込み、うねうねと伸び続ける木々は減速しだし、もう片方の木々と絡まりまた壁が出来た。
 「なるほど、記念すべき瞬間ってこれか!」
 音が止み広太が言った。  
 「今のはなんだったんだ!?」
 敦也は目の前の壁が動き出したことに驚く。
 「あれがマスター・根城咲夜の能力です」
 凜が説明をして前へ歩き出す。
 「この壁は夢猫の境界線なんです」
 木で出来た壁は、領土が増える度に伸びる。それが目で見えるギルドの成長の証なのであろう。
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