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第六話 満月と人獣
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古来より、満月には不思議な力があるとされている。
人獣にとって満月は、もっとも本能が目覚める日だと花蓮は言っていた。
本能が目覚めた人獣は、どうなるのだろう? それは俺にも分からない……。
『今日、私とミーニャは生徒会長の家に泊まるから』
『急にどうしたんだ? もしかしてミーニャ……お姉さんが恋しくなったか?』
俺は、からかうように言うと、ミーニャはムスッと頬を膨らませる。
『違うもん! ご主人こそミーニャが居ないと寂しいくせに』
そうか……花蓮とミーニャが生徒会長の家に泊まるって事は俺一人なのか……。
『今日は満月の夜になるみたいだから、生徒会長の家に泊まるのよ。 そ・れ・と、私とミーニャが居ないからって如何わしい本とか家に持ち込まないでよね』
ギクッ! 読まれてる……。
『本ってこれの事?』
その手には、俺の秘蔵のコレクション『メイドのメアリーちゃんがご奉仕しちゃうぞ☆』を持っていた。
『ミーニャ……それを何処で……』
『ご主人が学校に行ってる時、退屈だったから家の中を探検してたら、ご主人の匂いがするダンボール箱を見つけて、箱を開けたら沢山の本を見つけたの♪ あたし字読めないから後でご主人に読んでもらおうと思って♪ でも、何でみんな裸なの? 』
ミーニャが持っていた本の表紙をまじまじと花蓮は顔を真っ赤にして見ていた。
『か、花蓮?』
『ふひゃあ! あのさ……この表紙の女の子……私に似てる気がするんだけど』
驚いたのか変な声が出る花蓮。
『馬鹿言うなよ! あの本に登場するメアリーちゃんは、お前みたいに口も悪くないし胸だってもっと大きい! それに顔だっ……』
あれ……もう少し肌を白くして髪を黒くしたら似て……。
『ちょ、ちょっと! 私の顔を見たまま妄想するなこの変態! セクハラ大王!』
ガンガンガンガン! テレビのリモコンで俺の頭部を叩く。
『悪かったごめん! だから叩かないでくれ』
『ふんっ! あんたのコレクション全部没取、ミーニャ手伝って』
俺の……秘蔵のコレクションが……でも、捨てられないだけ助かった……。
『そうだ! あんた早く学校行かないと遅刻するわよ。 私は学校に風邪で休むって連絡したから』
壁掛けの時計を見ると八時十五分を過ぎていた。
『やべっ! このままだとまた遅刻だ! 俺もう行くから戸締りだけは頼むな、じゃあ行ってくる』
『『いってらっしゃ~い』』
大急ぎで学校に向かったが……結局遅刻。
最近遅刻が多かったせいか担任の桜井先生に放課後、職員室に呼ばれた。
『高峰君、最近どうしちゃったの? 今まで遅刻なんてした事なかったのに今年に入ってから、これで十回目よ』
桜井美奈子(さくらいみなこ)先生。
水泳部の顧問をしていて、生徒からの人気も高く学校一の美人教師だ。
『すみません……。』
桜井先生は顔を近づけ俺の耳元で囁いた。
『高峰君の家から一組の獅子駒さんが出入りしてるの先生見たんだけど、先生に何か隠し事はない?』
『……!!』
驚きのあまり言葉が出てこなかった。
『先生は高峰君の味方だから話したくなったらいつでもいらっしゃい。 それと遅刻は気をつけてね高峰君』
先生はニコッと笑うと帰って勉強するように言われ、俺は職員室を後にした。
『竜ちゃん……物凄く顔色悪いけど大丈夫?』
『あぁ、遅刻が多いって桜井先生に叱られちゃってさ』
桜井先生には、花蓮が俺の家を出入りしているのがバレている。
こんな時、生徒会長に相談を……っと思ったんだけど、学校休んでるみたいだしメールを送っても返事が返ってこない。
『決めた! 私これから毎日竜ちゃんを迎えに行く! それなら絶対に遅刻しないでしょ♪』
『気持ちは嬉しいんだけどさ、俺も子供じゃないし、それに学校で噂になるぞ……その……俺と小百合が恋人同士とか……』
小百合は、ぽか~んと口を開けたまま固まっていた。
『小百合? 顔も少し赤いけど大丈夫か?』
『大丈夫~竜ちゃん明日は遅刻しちゃダメだよ~ばいば~い♪』
小百合のやつ……大丈夫か。 フラフラしてるし顔も赤いし……熱でもあるのか?
さてと、俺もそろそろ帰るか~。
学校から帰ると騒がしかった我が家が、シーンと静まり返っていた。
『ただいま~って言っても誰も居ないんだよな……』
久々にゆっくり出来ると思ったけど……なんか少し寂しいな……。
花蓮とミーニャ今頃何してるんだろう? そんな事を考えてるうちに睡魔に襲われソファーの上で眠ってしまい、目を覚ますと外はすっかり暗くなっていた。
一人での夕食を済ませ、熱い風呂にのんびりと浸かっていると浴室の曇りガラスに小さな人影が映ると、浴室のドアが開き入ってきたのは、顔を赤くしたミーニャだった。
『ご主人……あたしも一緒に入ってもいいかな?』
『まてまて! 今日は生徒会長の家に泊まるんじゃなかったのか!?』
両手で自分の目を隠しながら言うが、ミーニャは気にもせず浴槽にゆっくりと足を入れた。
『あっつい……。 ご主人……あたしずっと胸がドキドキして……』
俺の方がドキドキして心臓が爆発しそうだよ! とりあえず今はここから出なくて……。
浴室から出ようとすると、ミーニャは俺の手をギュッと握った。
『ミーニャ……?』
『この胸のドキドキ……どうしたら治るのか教えて……?』
『俺達にはまだ早いーー!!』っと叫び、逃げるように自分の部屋に戻った。
『ご主人……』
ミーニャのやつ一体どうしたんだ……。
とりあえず生徒会長に連絡を入れて迎えに来てもらおう。
スマートフォンを取り出し生徒会長に電話をかけるが繋がらない……その場にしゃがみ込み項垂れていると人影で暗くなり顔を上げると花蓮がメイド服を着てもじもじと恥ずかしそうに俺に言った。
『おかえりなさい……ご主人様……花蓮にしますか? それとも花蓮にします?』
選択肢『花蓮』しかねぇーー!
『ど、どうしたんだ花蓮まで……それにその格好』
すると花蓮の顔は真っ赤にしスカートの端をギュッと掴んだ。
『あんたがこうゆう格好の女の子が好きみたいだから……どう……かな似合って……る?』
俺は目を疑った。
普段の花蓮ならこんな格好絶対しないだろう……。
『ねぇ……今日は特別に……一緒に寝てあげてもいいよ?』
上目遣いで俺に迫る花蓮。
小麦色の肌にメイド服と一見合わなそうな組み合わせに大きく開いた胸元からは時折見える白いブラ。
『花蓮、落ち着くんだ!』
俺は後ずさりし部屋を出ようとドアノブを手探りで探していると、ドアが開きバスタオルを巻いたミーニャとメイド服姿の花蓮に挟まれ完全に逃げ道がなくなった。
『『ご主人様・ご主人』』
その時だった、窓ガラスがパリーンと割れる音とともに投げ込まれた小さな玉からモクモクと煙が出ていた
。
その煙を吸った花蓮とミーニャは気を失い倒れ込むと、すぅすぅと寝息を立て眠っていた。
『な、何が起こったんだ……?』
『その玉は我が狐の人獣に伝わる『眠り玉』と言ってな、その煙を吸い込んだ人獣は深い眠りに落ちる秘薬だ。人間には効かないから安心するといい』
マスクをした生徒会長に間一髪で助けられた。
『助かりました……花蓮もミーニャも様子が変なんですがこれってやっぱり満月のせいですか』
『その通りだ。 私の家で本能を抑えるよう訓練をしていたんだが、私がトイレに行っている隙に逃げ出してしまってな。 この二人が真っ先に向かうとしたら、ここだと思ってな』
『……!! 手から血が出てるじゃないですか』
『あぁ、木の枝で切ったのだろう……きゃ……』
生徒会長の手の傷を消毒し絆創膏を貼る。
『これで大丈……』
『見るな馬鹿者……。 私だって満月の夜は本能を抑えるので精一杯なのだ』
顔を真っ赤にし人獣の姿になってしまった生徒会長は、目をウルウルとさせ恥ずかしそうにしていた。
『生徒会長あの……』
『それ以上近づくな…… 落ち着いたら二人を連れ私は家に戻る。 それまで私に近づかないでくれ……頼む』
しばらくすると、生徒会長の両親がうちに車で向かいに来ると三人を車に乗せ生徒会長の家に帰った。
俺は割れた窓ガラスを片付け、リビングでテレビを見ているうち疲れからかウトウトしていると体が動かなくなった。
『竜一君……寝ちゃダメですよ~夜はこれからですから~♪』
気がつくと俺は縄で縛られていて、目の前のテーブルに副会長が笑顔で座っていた。
『未来(みるく)先輩!? どうしてここ……むぐっ……』
俺の口を手で塞ぐと持っていたガムテープで口を塞がれた。
『勝手に喋ったらダメですよ~♪ 今準備をしますから待っててくださいね♪』
準備って何をだーー!! 手も足も動かない……誰か助けて…。
戻ってきた未来先輩の手には拷問器具のような物が握られていた。
『むぐっ! んっーー!!』
口に貼られたガムテープのせいで声が出せない。
『竜一君……今日は邪魔者も居ませんし、ゆっくり楽しみましょう♪』
不敵な笑みを浮かべ持っていた器具を俺に近づける。
『んっーーーーーー!!』
ーー翌日
花蓮とミーニャの声が聞こえる……。
『ちょっと、あんた大丈夫!? 全身傷まみれだし、強盗にでもあったの!?』
『ご主人しっかりして』
『二人ともおかえり……強盗じゃないから大丈夫』
俺はそのまま気を失い目が覚めると夕方になっていた。
後で聞いた話だが、昨日の事は二人とも覚えていないらしい……。
今回の登場人物
高峰竜一(たかみねりゅういち)、16歳(高校二年生)
本作の主人公。
勉強も運動もそこそこの平凡な学生。
炊事洗濯が得意で、幼馴染の小百合に恋をしている。
両親は、仕事で海外にいっており、一軒家に一人暮らしをしている。
獅子駒花蓮(ししこまかれん)、16歳。四話以降は17歳(高校二年生)
ライオンの人獣。茶髪に小麦色の肌。
周囲を寄せ付けない態度を取っていて、周りからはヤンキーっと誤解されている。
言葉使いは悪いが、優しい性格の持ち主。
ミーニャ、16歳
猫の人獣。白髪に透き通るような白い肌。
生まれつき体が小さく病弱だったため両親に捨てられ一度は人獣として生きる道を捨て猫として生きる道を選ぶ。高峰竜一に助けられ、それ以降は稲荷静代に人獣として生きる道を教えられる。
好奇心旺盛で、高峰の事を『ご主人』っと呼んでいる。
稲荷静代(いなりしずよ)17歳(高校三年生)
狐の人獣。普段は黒髪だが人獣の姿になると金茶色の髪に変わる。
高峰の通う高校の生徒会長。
女子からのファンも多く、人望が厚い。
ミーニャに人獣として生きる道を教え、ミーニャのお姉さん。(妹愛が強い)
ミーニャからは『静姉』と呼ばれている。
牛堂未来(うしどうみるく)17歳(高校三年生)
牛の人獣。スタイルが抜群で巨乳。
高峰の通う高校の副会長。
拷問が趣味で、男子のファンが多い。
獅子駒からは『馬鹿乳』と呼ばれている。
桜井美奈子(さくらいみなこ)25歳
高峰竜一の担任。
水泳部の顧問で学校一の美人教師で生徒や先生達からも人気が高い。
読者の方へ
『半獣じゃない人獣なんだから!!』を読んで頂き、ありがとうございます。
次回、『第七話 プールと水着』をお楽しみに!
人獣にとって満月は、もっとも本能が目覚める日だと花蓮は言っていた。
本能が目覚めた人獣は、どうなるのだろう? それは俺にも分からない……。
『今日、私とミーニャは生徒会長の家に泊まるから』
『急にどうしたんだ? もしかしてミーニャ……お姉さんが恋しくなったか?』
俺は、からかうように言うと、ミーニャはムスッと頬を膨らませる。
『違うもん! ご主人こそミーニャが居ないと寂しいくせに』
そうか……花蓮とミーニャが生徒会長の家に泊まるって事は俺一人なのか……。
『今日は満月の夜になるみたいだから、生徒会長の家に泊まるのよ。 そ・れ・と、私とミーニャが居ないからって如何わしい本とか家に持ち込まないでよね』
ギクッ! 読まれてる……。
『本ってこれの事?』
その手には、俺の秘蔵のコレクション『メイドのメアリーちゃんがご奉仕しちゃうぞ☆』を持っていた。
『ミーニャ……それを何処で……』
『ご主人が学校に行ってる時、退屈だったから家の中を探検してたら、ご主人の匂いがするダンボール箱を見つけて、箱を開けたら沢山の本を見つけたの♪ あたし字読めないから後でご主人に読んでもらおうと思って♪ でも、何でみんな裸なの? 』
ミーニャが持っていた本の表紙をまじまじと花蓮は顔を真っ赤にして見ていた。
『か、花蓮?』
『ふひゃあ! あのさ……この表紙の女の子……私に似てる気がするんだけど』
驚いたのか変な声が出る花蓮。
『馬鹿言うなよ! あの本に登場するメアリーちゃんは、お前みたいに口も悪くないし胸だってもっと大きい! それに顔だっ……』
あれ……もう少し肌を白くして髪を黒くしたら似て……。
『ちょ、ちょっと! 私の顔を見たまま妄想するなこの変態! セクハラ大王!』
ガンガンガンガン! テレビのリモコンで俺の頭部を叩く。
『悪かったごめん! だから叩かないでくれ』
『ふんっ! あんたのコレクション全部没取、ミーニャ手伝って』
俺の……秘蔵のコレクションが……でも、捨てられないだけ助かった……。
『そうだ! あんた早く学校行かないと遅刻するわよ。 私は学校に風邪で休むって連絡したから』
壁掛けの時計を見ると八時十五分を過ぎていた。
『やべっ! このままだとまた遅刻だ! 俺もう行くから戸締りだけは頼むな、じゃあ行ってくる』
『『いってらっしゃ~い』』
大急ぎで学校に向かったが……結局遅刻。
最近遅刻が多かったせいか担任の桜井先生に放課後、職員室に呼ばれた。
『高峰君、最近どうしちゃったの? 今まで遅刻なんてした事なかったのに今年に入ってから、これで十回目よ』
桜井美奈子(さくらいみなこ)先生。
水泳部の顧問をしていて、生徒からの人気も高く学校一の美人教師だ。
『すみません……。』
桜井先生は顔を近づけ俺の耳元で囁いた。
『高峰君の家から一組の獅子駒さんが出入りしてるの先生見たんだけど、先生に何か隠し事はない?』
『……!!』
驚きのあまり言葉が出てこなかった。
『先生は高峰君の味方だから話したくなったらいつでもいらっしゃい。 それと遅刻は気をつけてね高峰君』
先生はニコッと笑うと帰って勉強するように言われ、俺は職員室を後にした。
『竜ちゃん……物凄く顔色悪いけど大丈夫?』
『あぁ、遅刻が多いって桜井先生に叱られちゃってさ』
桜井先生には、花蓮が俺の家を出入りしているのがバレている。
こんな時、生徒会長に相談を……っと思ったんだけど、学校休んでるみたいだしメールを送っても返事が返ってこない。
『決めた! 私これから毎日竜ちゃんを迎えに行く! それなら絶対に遅刻しないでしょ♪』
『気持ちは嬉しいんだけどさ、俺も子供じゃないし、それに学校で噂になるぞ……その……俺と小百合が恋人同士とか……』
小百合は、ぽか~んと口を開けたまま固まっていた。
『小百合? 顔も少し赤いけど大丈夫か?』
『大丈夫~竜ちゃん明日は遅刻しちゃダメだよ~ばいば~い♪』
小百合のやつ……大丈夫か。 フラフラしてるし顔も赤いし……熱でもあるのか?
さてと、俺もそろそろ帰るか~。
学校から帰ると騒がしかった我が家が、シーンと静まり返っていた。
『ただいま~って言っても誰も居ないんだよな……』
久々にゆっくり出来ると思ったけど……なんか少し寂しいな……。
花蓮とミーニャ今頃何してるんだろう? そんな事を考えてるうちに睡魔に襲われソファーの上で眠ってしまい、目を覚ますと外はすっかり暗くなっていた。
一人での夕食を済ませ、熱い風呂にのんびりと浸かっていると浴室の曇りガラスに小さな人影が映ると、浴室のドアが開き入ってきたのは、顔を赤くしたミーニャだった。
『ご主人……あたしも一緒に入ってもいいかな?』
『まてまて! 今日は生徒会長の家に泊まるんじゃなかったのか!?』
両手で自分の目を隠しながら言うが、ミーニャは気にもせず浴槽にゆっくりと足を入れた。
『あっつい……。 ご主人……あたしずっと胸がドキドキして……』
俺の方がドキドキして心臓が爆発しそうだよ! とりあえず今はここから出なくて……。
浴室から出ようとすると、ミーニャは俺の手をギュッと握った。
『ミーニャ……?』
『この胸のドキドキ……どうしたら治るのか教えて……?』
『俺達にはまだ早いーー!!』っと叫び、逃げるように自分の部屋に戻った。
『ご主人……』
ミーニャのやつ一体どうしたんだ……。
とりあえず生徒会長に連絡を入れて迎えに来てもらおう。
スマートフォンを取り出し生徒会長に電話をかけるが繋がらない……その場にしゃがみ込み項垂れていると人影で暗くなり顔を上げると花蓮がメイド服を着てもじもじと恥ずかしそうに俺に言った。
『おかえりなさい……ご主人様……花蓮にしますか? それとも花蓮にします?』
選択肢『花蓮』しかねぇーー!
『ど、どうしたんだ花蓮まで……それにその格好』
すると花蓮の顔は真っ赤にしスカートの端をギュッと掴んだ。
『あんたがこうゆう格好の女の子が好きみたいだから……どう……かな似合って……る?』
俺は目を疑った。
普段の花蓮ならこんな格好絶対しないだろう……。
『ねぇ……今日は特別に……一緒に寝てあげてもいいよ?』
上目遣いで俺に迫る花蓮。
小麦色の肌にメイド服と一見合わなそうな組み合わせに大きく開いた胸元からは時折見える白いブラ。
『花蓮、落ち着くんだ!』
俺は後ずさりし部屋を出ようとドアノブを手探りで探していると、ドアが開きバスタオルを巻いたミーニャとメイド服姿の花蓮に挟まれ完全に逃げ道がなくなった。
『『ご主人様・ご主人』』
その時だった、窓ガラスがパリーンと割れる音とともに投げ込まれた小さな玉からモクモクと煙が出ていた
。
その煙を吸った花蓮とミーニャは気を失い倒れ込むと、すぅすぅと寝息を立て眠っていた。
『な、何が起こったんだ……?』
『その玉は我が狐の人獣に伝わる『眠り玉』と言ってな、その煙を吸い込んだ人獣は深い眠りに落ちる秘薬だ。人間には効かないから安心するといい』
マスクをした生徒会長に間一髪で助けられた。
『助かりました……花蓮もミーニャも様子が変なんですがこれってやっぱり満月のせいですか』
『その通りだ。 私の家で本能を抑えるよう訓練をしていたんだが、私がトイレに行っている隙に逃げ出してしまってな。 この二人が真っ先に向かうとしたら、ここだと思ってな』
『……!! 手から血が出てるじゃないですか』
『あぁ、木の枝で切ったのだろう……きゃ……』
生徒会長の手の傷を消毒し絆創膏を貼る。
『これで大丈……』
『見るな馬鹿者……。 私だって満月の夜は本能を抑えるので精一杯なのだ』
顔を真っ赤にし人獣の姿になってしまった生徒会長は、目をウルウルとさせ恥ずかしそうにしていた。
『生徒会長あの……』
『それ以上近づくな…… 落ち着いたら二人を連れ私は家に戻る。 それまで私に近づかないでくれ……頼む』
しばらくすると、生徒会長の両親がうちに車で向かいに来ると三人を車に乗せ生徒会長の家に帰った。
俺は割れた窓ガラスを片付け、リビングでテレビを見ているうち疲れからかウトウトしていると体が動かなくなった。
『竜一君……寝ちゃダメですよ~夜はこれからですから~♪』
気がつくと俺は縄で縛られていて、目の前のテーブルに副会長が笑顔で座っていた。
『未来(みるく)先輩!? どうしてここ……むぐっ……』
俺の口を手で塞ぐと持っていたガムテープで口を塞がれた。
『勝手に喋ったらダメですよ~♪ 今準備をしますから待っててくださいね♪』
準備って何をだーー!! 手も足も動かない……誰か助けて…。
戻ってきた未来先輩の手には拷問器具のような物が握られていた。
『むぐっ! んっーー!!』
口に貼られたガムテープのせいで声が出せない。
『竜一君……今日は邪魔者も居ませんし、ゆっくり楽しみましょう♪』
不敵な笑みを浮かべ持っていた器具を俺に近づける。
『んっーーーーーー!!』
ーー翌日
花蓮とミーニャの声が聞こえる……。
『ちょっと、あんた大丈夫!? 全身傷まみれだし、強盗にでもあったの!?』
『ご主人しっかりして』
『二人ともおかえり……強盗じゃないから大丈夫』
俺はそのまま気を失い目が覚めると夕方になっていた。
後で聞いた話だが、昨日の事は二人とも覚えていないらしい……。
今回の登場人物
高峰竜一(たかみねりゅういち)、16歳(高校二年生)
本作の主人公。
勉強も運動もそこそこの平凡な学生。
炊事洗濯が得意で、幼馴染の小百合に恋をしている。
両親は、仕事で海外にいっており、一軒家に一人暮らしをしている。
獅子駒花蓮(ししこまかれん)、16歳。四話以降は17歳(高校二年生)
ライオンの人獣。茶髪に小麦色の肌。
周囲を寄せ付けない態度を取っていて、周りからはヤンキーっと誤解されている。
言葉使いは悪いが、優しい性格の持ち主。
ミーニャ、16歳
猫の人獣。白髪に透き通るような白い肌。
生まれつき体が小さく病弱だったため両親に捨てられ一度は人獣として生きる道を捨て猫として生きる道を選ぶ。高峰竜一に助けられ、それ以降は稲荷静代に人獣として生きる道を教えられる。
好奇心旺盛で、高峰の事を『ご主人』っと呼んでいる。
稲荷静代(いなりしずよ)17歳(高校三年生)
狐の人獣。普段は黒髪だが人獣の姿になると金茶色の髪に変わる。
高峰の通う高校の生徒会長。
女子からのファンも多く、人望が厚い。
ミーニャに人獣として生きる道を教え、ミーニャのお姉さん。(妹愛が強い)
ミーニャからは『静姉』と呼ばれている。
牛堂未来(うしどうみるく)17歳(高校三年生)
牛の人獣。スタイルが抜群で巨乳。
高峰の通う高校の副会長。
拷問が趣味で、男子のファンが多い。
獅子駒からは『馬鹿乳』と呼ばれている。
桜井美奈子(さくらいみなこ)25歳
高峰竜一の担任。
水泳部の顧問で学校一の美人教師で生徒や先生達からも人気が高い。
読者の方へ
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