勝の道 〜喧嘩甲子園編〜

オラフ

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第二勝 初陣

観察者

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 すまん、おっちゃん。



 俺の両親は海で釣りをした時にボートが沈没して死んじまった。



 そんな身寄りのない俺を、猟師であるおっちゃんは一人で育ててくれた。



 そのおっちゃんに恩返ししたくてこの喧嘩甲子園に出たってのに、一回も勝てずに負けちまったよ。



 悔しいよ。



 撤兵は気絶しているというのに一筋の涙を流した。



「おーい撤兵、起きろ」



 撤兵はずっと気絶したままだ。



 撤兵を見ていると後ろにスーツを着てサングラスをかけた若い男が来た。



「おめでとうございます、優勝候補を倒したので鬼越選手は優勝候補になり、1000万円が授与されます」



「それは嬉しいんだが、撤兵はどうするんだ?  」 



「私たちが病院まで運びますのでご安心を」



「なるほど、それは頼もしいな」



「また後程、1000万円をお持ちしますので」



 そう言って若い男は撤兵をかつごうとした。



「俺がかつぐから下がってろ」



「大丈夫ですよ、休んでてください。私が運びますので」



「俺が運ばなきゃいけねぇんだよ」



 そうして俺は撤兵を若い男の車に乗せた。



「泣きたい分だけここで全部泣いちまいな。撤兵の涙は誰にも見せねぇからよ」



 男は人前で泣いたらいけねぇんだよ。


 
 若い男は車に乗り、発信する。



 さぁ、俺も帰るか。



 髪ゴムを外した時、僕の携帯からラインの着信音が聞こえた。



 天羽からよろしくスタンプが来た。



 かわいいなこのスタンプ、僕も使ってみようかな。



 ていうか2時20分にラインが送信されたって今じゃねぇかよ。



 既読が早すぎるのってキモいんじゃなかったっけ、やっちまった。



 かちゃ



 そうしていると天羽が家から出てきた。



「ど、どうしてまだいるの? 」



「いや、今帰ろうかなって」



「顔血だらけじゃん、何かあったの? あ、でも」



 天羽は顔を赤くして下を向いた。



 なんで下を向いてるんだ? 



「どうしたの? 」



「今、寝ようと思っててすっぴんだから。見ないで」



 と、尊い~~。



 こうして鬼越 勝と熊頭 撤兵の喧嘩は幕を閉じたが、この喧嘩を観察していたものがいた。



 その観察者は黒いパーカーを着て、フードを被っている。



「熊頭 撤兵の喧嘩を見に来たのに負けちまったよ。それにしても相手の鬼越 勝か、なかなか強いな。こいつなら出来るかもな」



 観察者はそう言って暗闇に消えていった。
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