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ルカSIDE 3.
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俺はリズと月二回の交流を楽しみにしていた。
あの頃の俺はリズが好きで、ただあの笑顔を見ながら声を聞いているだけで幸せだった。
話すこともそうない俺は、ただリズの話に頷くことしかできなかったが、それでも楽しかったのだ。それをリズがどう思っていたかなんて思いもしなかったが。
そして一年が過ぎて俺とリズは正式に婚約をした。俺は嬉しくてその日はなかなか眠れないまま、リズの笑顔をずっと思い返していたほどだ。
だが、その年は俺もレイフォール学園に入学を控えていたことで色々と準備に忙しかったこともあって、リズともそれまでと同じように月に二回はお互いの家を行き来して交流をしていたが、それまでの交流とはそう変わらない内容だったと今では思う。リズには申し訳なかったと謝りたいほどだ。
そして婚約して半年ほどした頃に、リズは流行り病に罹りリンデン伯爵家の領地で療養することになった。
会いに行きたい思いはあったが、リンデン伯爵領は馬車で山越えもあり7日はかかる遠方なのだ。軽く行けるものではない。そのため手紙を出すに留めた。
話すこともままない俺だが、手紙に関しても何度も書き直すほどだ。婚約者だからとあまり親しくしすぎたとしても、逆に固くなりすぎても駄目だと思ってしまい、どうしても簡潔になりがちだった。
兄から溜息を吐かれるほど、俺のリズへの手紙は最悪な部類だったらしい。だが、気持ちがこもっていればいいだろうと兄の言葉に苛立ったことも何度もあったほどだ。
そんな時に、兄のあの事故が起こった。
兄は昔から乗馬が好きで、よく遠乗りへと出掛けていた。
学園に在籍して勉強をすることで、今までよりも増して領地のことを真剣に考えるようになり、時間があれば騎乗して領地の隅々まで出向くようになっていった。
そしてそんな時に兄が遠乗りに出掛け、落馬してけがをしたのだ。
命には別状はなかったが、思ったよりも足の骨折が酷く元のように治ることはないと医師から告げられた。
外傷が治っても歩くことも補助がいるだろうと、車椅子での生活をすることになるだろうということだった。
しばらくの間ふさぎ込んでいた兄だったが、怪我も治りリハビリをしてからその医師の言葉が事実なのだとようやく受け止めることができたのだろう。ある日、父に次期の地位を放棄すると申し出たのだ。
今まで次期侯爵として常に学び、様々な人々と交流して積み上げてきたものを諦めると。
俺が公爵家が保有するロスタ子爵を受け継ぎ、コゼルス侯爵となった兄を補佐する予定だったが、自分の足の不自由さを考え、それであればと自身がロスタ子爵を受け継ぐと、弟の俺に侯爵を譲ってその補佐をしようと父に対してそう言い切ったのだ。
兄が婚約の女性に婚約を白紙に戻そうと話したらしいが「次期侯爵だから婚約したわけじゃなく、スコット様だから婚約したのだ」と言われて心を打たれたらしい。
確かに兄の婚約者は兄のことを真剣に考えているのはその表情からわかっていたし、俺もリズからそんな目を向けられたいと思ったほどだ。
それほど二人の姿は俺の理想でもあったのだ。
だが、兄の怪我が治ったとはいえあくまでも外傷だけだ。まだ日常生活を卒なくこなすことはできないし、学園の四年に在籍していたが、このまま通うことは無理だろうということで、それからは家で家庭教師から習うこととなった。
次期コゼルス侯爵としてではなく次期ロスタ子爵として、するべきこと学ぶべきことがあるのだと兄は意志を固くしていたのだ。
兄の補佐をしていたエイド伯爵家のマドラス殿はそのまま兄に仕えることになり、俺は自分の補佐をする人間を選ぶ必要があった。数名の候補の中から選ぶ必要があったが、俺はその中からニュード子爵家のエミルを選んだ。
エミルはニュード子爵家の四男で、学園の成績はいつも上位をキープしていた人物で、俺よりも一回りは年上だ。そのこともあって、安心して仕事に対しても相談できるだろうと思って選んだ人物だった。
だが、この選択がこの先長い間にわたり俺の立場を苦しめることになるとは思わなかった。
あの頃の俺はリズが好きで、ただあの笑顔を見ながら声を聞いているだけで幸せだった。
話すこともそうない俺は、ただリズの話に頷くことしかできなかったが、それでも楽しかったのだ。それをリズがどう思っていたかなんて思いもしなかったが。
そして一年が過ぎて俺とリズは正式に婚約をした。俺は嬉しくてその日はなかなか眠れないまま、リズの笑顔をずっと思い返していたほどだ。
だが、その年は俺もレイフォール学園に入学を控えていたことで色々と準備に忙しかったこともあって、リズともそれまでと同じように月に二回はお互いの家を行き来して交流をしていたが、それまでの交流とはそう変わらない内容だったと今では思う。リズには申し訳なかったと謝りたいほどだ。
そして婚約して半年ほどした頃に、リズは流行り病に罹りリンデン伯爵家の領地で療養することになった。
会いに行きたい思いはあったが、リンデン伯爵領は馬車で山越えもあり7日はかかる遠方なのだ。軽く行けるものではない。そのため手紙を出すに留めた。
話すこともままない俺だが、手紙に関しても何度も書き直すほどだ。婚約者だからとあまり親しくしすぎたとしても、逆に固くなりすぎても駄目だと思ってしまい、どうしても簡潔になりがちだった。
兄から溜息を吐かれるほど、俺のリズへの手紙は最悪な部類だったらしい。だが、気持ちがこもっていればいいだろうと兄の言葉に苛立ったことも何度もあったほどだ。
そんな時に、兄のあの事故が起こった。
兄は昔から乗馬が好きで、よく遠乗りへと出掛けていた。
学園に在籍して勉強をすることで、今までよりも増して領地のことを真剣に考えるようになり、時間があれば騎乗して領地の隅々まで出向くようになっていった。
そしてそんな時に兄が遠乗りに出掛け、落馬してけがをしたのだ。
命には別状はなかったが、思ったよりも足の骨折が酷く元のように治ることはないと医師から告げられた。
外傷が治っても歩くことも補助がいるだろうと、車椅子での生活をすることになるだろうということだった。
しばらくの間ふさぎ込んでいた兄だったが、怪我も治りリハビリをしてからその医師の言葉が事実なのだとようやく受け止めることができたのだろう。ある日、父に次期の地位を放棄すると申し出たのだ。
今まで次期侯爵として常に学び、様々な人々と交流して積み上げてきたものを諦めると。
俺が公爵家が保有するロスタ子爵を受け継ぎ、コゼルス侯爵となった兄を補佐する予定だったが、自分の足の不自由さを考え、それであればと自身がロスタ子爵を受け継ぐと、弟の俺に侯爵を譲ってその補佐をしようと父に対してそう言い切ったのだ。
兄が婚約の女性に婚約を白紙に戻そうと話したらしいが「次期侯爵だから婚約したわけじゃなく、スコット様だから婚約したのだ」と言われて心を打たれたらしい。
確かに兄の婚約者は兄のことを真剣に考えているのはその表情からわかっていたし、俺もリズからそんな目を向けられたいと思ったほどだ。
それほど二人の姿は俺の理想でもあったのだ。
だが、兄の怪我が治ったとはいえあくまでも外傷だけだ。まだ日常生活を卒なくこなすことはできないし、学園の四年に在籍していたが、このまま通うことは無理だろうということで、それからは家で家庭教師から習うこととなった。
次期コゼルス侯爵としてではなく次期ロスタ子爵として、するべきこと学ぶべきことがあるのだと兄は意志を固くしていたのだ。
兄の補佐をしていたエイド伯爵家のマドラス殿はそのまま兄に仕えることになり、俺は自分の補佐をする人間を選ぶ必要があった。数名の候補の中から選ぶ必要があったが、俺はその中からニュード子爵家のエミルを選んだ。
エミルはニュード子爵家の四男で、学園の成績はいつも上位をキープしていた人物で、俺よりも一回りは年上だ。そのこともあって、安心して仕事に対しても相談できるだろうと思って選んだ人物だった。
だが、この選択がこの先長い間にわたり俺の立場を苦しめることになるとは思わなかった。
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