色々物語

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体験入学!

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ほのかがにこにことせんえとせいまを案内しながら、校舎の中を歩いた。

「ここは呪文の教室。今日は火の魔法の基本を練習できるよ!」

教室の中では、魔女の子どもたちがそれぞれ杖を振って、大小さまざまな火の花を咲かせていた。
杖の先からパチパチと火の粉が舞い、まるで焚き火のように、あたたかい色が部屋を満たしている。

せんえも恐るおそる挑戦してみる。
すると、指先にすっと、小さな火の光が灯った。

「すごい……ちゃんとできた!」

その輝きに目を丸くしながら、せんえは心の中で月夜の顔を思い浮かべる。

一方、せいまは何度か杖を振ってみるものの、うまくいかず、火はひとつも生まれなかった。

「せいま、大丈夫?」

「うん……これ、難しいなあ」

ほのかは明るく笑って言った。

「魔法はね、練習あるのみ! いきなり上手くいく子なんて、そういないよ。あきらめちゃだめ!」


---

その後、三人は校舎の中を巡りながら、風の魔法や小さな治癒魔法の体験もした。

風の魔法では、そっと息を吹きかけるように空気を操る練習。
治癒魔法では、小さな切り傷に光をあてて、じんわり癒していく。

せんえはどの魔法にも、少しずつ手応えを感じていた――


---

やがて、時間が経ち、三人は校舎の裏庭に出た。昼休みの時間。

あちこちに魔女の子たちが集まり、草の上に座って楽しそうにおしゃべりしている。
空には軽やかな風が吹き、空中に魔法の光がゆらゆらと浮かんでいる。

「せんえちゃん、さっきの火の魔法、すっごくきれいだったね!」

ふわふわの三つ編みを揺らしながら、ひとりの女の子が目を輝かせて駆け寄ってきた。

「うん、ありがとう~! 実は師匠が色々教えてくれて、大体はおさえてるんだ!」

せんえは少し照れたように笑った。

「師匠? 魔法学校の先生とかかな?」

「ううん、私は学校に通ってないよ。全部、師匠が教えてくれたの」

「せんえちゃんの師匠、すごいね!」

「うん。私のこと、優秀だって褒めてくれるし……私、師匠のこと、大好きなんだ」

せんえは手のひらをくるりと返すと――ぽんっ。
そこには、ほんのり湯気の立つ、あたたかい焼き菓子がふわっと現れた。

「それ、召喚魔法!? 食べられるの?」

「うん。よかったらどうぞ」

「すごーい!」「わたしにも魔法見せて!」

次々に声があがり、せんえのまわりには自然と小さな輪ができていった。

その光景を、少し離れた草の上で見ていたせいまは、ぽかんと口を開けていた。

(……やっぱり、せんえってすごいな)
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