人類はとうとう「魔法」が使えるようになったみたいです。

しぐれ

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1話 昔と同じだ......

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 起床し徐おもむろにスマホを開く。現在の時刻と4月6日という日付が画面に表示される。



「はぁ……。寮生活になるし今日でしばらくこの家ともお別れか」



 流川涼人るかわすずとはため息をこぼしながら朝の支度を開始した。



 日本人の平均より少し高い身長にお世辞にも筋肉質とは言えないような貧相な体。死んだ魚を持つその少年は、よく不審者と勘違いされ職質をされることもしばしば。



「いざ学校に行くとなるとなんか……やだなぁ」



 重い体に鞭を打ち、何とか朝の支度を終了させて登校を開始した。



 学校に到着すると周りには同じ制服をきた人たちがたくさんいる。みんなおんなじ服装……なんだけど。



「制服とかカバンから見えまくってんなー。ナイフやら拳銃やら。やっぱり普通の学校とは違うな」



 俺が今日から通うことになる学校は、国立第1軍事学校。数年前に発見された不思議な力『魔法』を軍事的な用途で使用すべく作られた学校だ。生まれたころにされる魔法適性検査で適性が認められた者はこの学校に好待遇で迎えられる。



何も持ってない俺が逆に浮いてるみたいだ。



校門の前に貼ってあったクラス分けの表で指定された教室に入る。周りを見渡すと、お互いに自己紹介をしあい交友関係を築いている真っ最中だった。



「俺に人付き合いは無理だな……寝るか」



学校の机の寝心地の良さを堪能していると、先生らしき人が入ってきた。



「皆さん初めまして。これから1年間みなさんの担任になる小桜芽生こざくらめいです。よろしくおねがいしますね。早速ですが入学式があるので体育館まで移動をお願いします」



体育館まで移動して入学式が始まった。校長の長い話を聞いた後生徒代表として、俺の見慣れた人物が舞台に上がった。



「新入生のみなさん、入学おめでとうございます。私は生徒会長の流川涼音るかわすずねです。この学校は『魔法』を学ぶところです。現在政府は魔法を社会や軍事に組み込むことを検討しています。世界にも魔法を使える人が増え続けている中いち早く新技術として魔法を導入できれば日本は非悪的な経済成長を遂げるでしょう。そのためには皆さんの力が必要不可欠です。3年間頑張ってくださいね」



 今挨拶をしているのは俺の姉だ。昔からなんでもこなすいわゆる天才だった。彼女も子供のころに魔法の適性が認められここに進学し今は生徒会長をやっているようだ。生徒会長は学校行事で活躍しないとなれないらしく、卒業後の進路にも有利に働くみたいだ。



その後無事入学式は終了し教室に戻された。



「今日は授業がないのでこれで終了です。最後に明日からはペアで行動することが多くなっていくので男女で2人1組のペアを組んだ人から下校してください」



――ペアを組む。それは俺のようなコミュニケーションが苦手ないわゆる『コミュ障』と呼ばれる者たちにとってはほぼ不可能と言われる行為だ。



「これ……やばくね?」



そう焦っているうちにいつの間にか教室にいる生徒の人数は減っていきとうとう俺を含めて2人になっていた。俺とペアになるであろう少女は机に突っ伏し寝ている様子だった。



「どうやって話しかけよう……」



俺が悩むこと数分、いつの間にか起きたらしく向こうから話しかけてきてくれた。



「ペアってことで。じゃあよろしく」



 平均程度の身長に整った顔立ち。腰まで届く程の長く綺麗な髪。その完璧とも言っていい容姿に俺はつい見とれてしまい、俺は適当に返事を返してしまった。



「あ、ああ。よろしく」



 一言挨拶を交わすと、彼女はそそくさと教室を出て行ってしまった。



「名前聞き忘れた……。まあ明日聞けばいいか。とりあえず、学校の敷地内でも探検しに行ってみるかな」



俺はとりあえず寮に荷物を置き、学校の敷地内を探検してみることにした。この学校は寮の他にも商業施設や娯楽施設などもあり、一つの街として成り立っているようだった。敷地も広く、全部を回り終えたころにはすっかりあたりは暗くなり、人気もなくなっていた。



「すっかり暗くなっちゃったな。そろそろ寮に戻るか」



 帰ろうと一歩踏み出したときその一歩は壁に阻まれた。何にぶつかったか確認するために前を見るとそこには、到底日本人とは思えないほど体格のいい男がいた。



「す、すみません。前を見ていなくて」



とっさに謝ったもののその男から返答はなかった。



「あの、大丈夫ですか?」



 やはり返答はない。視線を落とすととそこにはナイフと拳銃が握られていた。命の危機を感じ咄嗟に逃げようとするが、もう遅かった。脇腹に鋭い痛みが走り、その場に倒れこむ。



 数年前の時と同じ感覚に陥る。全身が思い通りに動かなくなり、思考がまとまらない。刺されているところが妙に熱く感じ、血が垂れ流しになっている。



――たす、け、て。



 俺は助けを呼ぼうと力を振り絞り言葉を発する。だが日常会話以下の声量ではだれにも届くことは無い。ましてやこんな暗く人気のない場所に助けが来るはずも無かった。



静寂に包まれる空間。眼前に広がるのは血の海。先ほどまで深くナイフが刺さっていた場所からは強烈な痛みと共に絶えず血液が噴き出ている。



全身を強い脱力感が襲い呼吸をすることすらままならない。刺された場所が、まるで溶岩を注がれているかのように熱い。



薄れゆく意識の中さっき俺のことを刺した男は拳銃をこちらに向け「最後に言い残すことはあるか」と言わんばかりにこちらを見ているのが分かった。



――これは詰んだな。



俺はあきらめるかのように目を閉じる。それとほぼ同時に発砲音が、静寂を打ち破る。銃弾は軌道を変えることもなくこちらを目掛けて一直線に飛んでくる。



耐え難い現実に直面した時、人間の脳はその状況を自分に都合がいいように解釈する。



――いっそのことこのゴミみたいな人生を終わらせて『普通の人』に生まれたほうがいい。



などという考えがよぎり本格的に死を覚悟したその刹那。



大きい金属音と共に俺にあたるはずだった銃弾は明後日の方向に軌道を変え曲線状に飛んで行った。



恐る恐る目を開けると見覚えのある美しい少女が淡い光に包まれながら俺に背を向け立っていた。そして少女はこう呟いた。



「安心して。あなたは私が守るから」



俺は微かに残った意識の中その言葉を聞くと、意識をつなぎとめていた糸が、プツリと切れた。
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