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第十二章 ヘタレ情操教育
第十九話 歌とダンス
しおりを挟む「兄さま、先ほど給食室の方とお話したんですけれど、この中華スープの素を使った簡単な料理を作って給食で出すので、良ければご一緒にどうですかということですけれど」
「味の感想も聞けるし良いかもな。エリナやミコト、エマも今日は見学ついでに給食室で飯を食うって言ってたし俺たちも一緒に食うか」
「はい兄さま」
ベースとなる中華スープの素を職員に渡す。
職員曰く、今日のメニューに加えて、チャーハン、野菜炒め、中華風スープを大皿で作って提供するとのことなので、実際に調理したときの味付けをレシピにして欲しい旨を伝えて学園に向かう。
もう少しで昼なのだが、まだ授業中なので校舎内は静かだ。
廊下を歩いていると、ミコトとエマを連れたエリナがちょうど見学を終えたのか教室から出てくる。
「お兄ちゃん」
エリナたちも俺とクレアに気づき、いつもよりかなり抑えた音量で俺を呼ぶ。
ちょうどそのタイミングで、ミコトとエマの服の中からヤマトとムサシが出てきて頭の上に飛び移る。
教室の中じゃ隠れてるのか、っていうか学園にペットを持ち込むなよ……。
「見学終わったのか?」
「うん。音楽とダンスの授業を見学したんだけどね、ミコトちゃんとエマちゃんがやりたいって言うの」
「パパ、わたしもがくえんにいきたい」
「えまも」
静かな学園内の廊下ということで、ミコトとエマも普段より抑えた声を出している。ヤマトとムサシも一切鳴かないし。
学園に通いたいというミコトとエマはまだ六歳未満なので、規則では学園には通えない。
孤児院や託児所も学園に併設しているが、そこで生活している六歳未満の幼児は、以前の俺たちのように絵本を読んだり、読み書き、簡単な計算などを教える程度なのだ。
とはいえ六歳から十一歳までの基礎教育課程と十二歳から十五歳までの専門課程を義務教育期間と定めてはいるが、家庭教師を雇える貴族や富裕層は通わなくても良いと定めてるし、すでに学園の運営、経理や、領地のアドバイザーとして実質的に働いているクレアは、十四歳だが学園に通っていない。すでに学園で習うレベルの学力は習得してるしな。
しかし、六歳未満でも就学するのに必要な学力があれば入園を許可するというのはあったほうが良いかもしれない。
いわゆる飛び級制度だな。
それに加えて、成績優秀なら十一歳まで行う基礎教育課程を修了扱いにして、専門課程に進めさせれば学園生のためになるかもだし。
「うーん。ミコトは来年から学園に通える年齢になるけど、エマはまだなんだよな」
「えー、えまもみこねーといっしょにいく」
「頑張って勉強すればミコトと一緒に通えるかもしれないぞ?」
「がんばる」
「がんばってエマちゃん」
「うん。ありがとーみこねー」
「お兄ちゃん、今はミコトちゃんとエマちゃんも魔法科の授業には出てるよね?」
「魔力の扱いは早く身に付けないと危険だしな。特例扱いだけど」
「音楽とかダンスとか、絵を描く授業も参加できないかな?」
「年内の芸術科の授業は試験的に行ってるから構わないけど、邪魔になるようだったら駄目だぞ」
「ミコトちゃんとエマちゃんなら大丈夫だよ。ね?」
「「うん」」
芸術系って幼いころからのエリート教育が大事なんだっけ?
孤児院や託児所でも簡単な授業をやって、才能が有りそうな子には早めに講師を付けるとかしたほうが良いのかな。
しかし教員の確保がな。
エルフの連中は基本的に引きこもりだし、といってファルケンブルクには音楽を教えられる楽師は少ないし、絵画やダンスとかになるともう壊滅レベルだ。
「でね、お兄ちゃん。午後は、今年の収穫祭の出し物でダンスをするんだけど、男女に別れてその練習をするんだよ」
毎年盛況な収穫祭だが、今年から中央公園にステージを作って、色々なイベントを企画しているのだ。
内容は幹部連中に任せていて俺は全部を把握してないが、一部民間からも公募しているらしい。
その民間部門からの出し物で学園の生徒がダンスを披露するのか。
「ほう」
「で、お兄ちゃんにも見てほしいなって。あとついでにミコトちゃんとエマちゃんを見ててほしいの」
「エリナがダンスをやるのか?」
「私とクリスおねえちゃんとシルお姉ちゃんだね。クレアも誘ったんだけど断られちゃった」
「私は姉さまたちに比べてお子様なので……」
そうか? クリスはともかく、エリナやシルよりよっぽど大人なんだけどな。
「わかった。とりあえずそろそろ昼飯だし一緒に給食室で飯を食うか。午後からはミコトとエマを預かってエリナたちのダンスの練習をクレアと見学させてもらうよ」
「うんありがとう」
と言ってる間に<キンコンカンコン>と授業終了の鐘が鳴る。
それと同時に各教室の扉が一斉に開き、生徒が飛び出してくる。
腹ペコか。
「俺たちも行くか」
「「「はーい!」」」
「「ピッピ!」」
授業が終わって騒がしくなった廊下で、エリナとミコトとエマはやっと大きな声が出せると大きな声で返事をする。
あとそこの動物を給食室に連れて行っても良いのだろうか?
◇
中華スープの素を使った料理は大好評で、職員から渡されたレシピをもとにクレアがもう少し改良するという。
そんな給食の時間も終わり、早速女子チームの出し物の練習の見学に来たのだが……。
「みんなー! 今日は来てくれてありがとー!」
「ありがとー!」
「あ、ありがとうございます……」
「わー! かわいいー!」
「まま! くりすねー! しるねー! かわいいー!」
エリナとシルはノリノリで、クリスは恥ずかしそうに挨拶をしながら教室内に設けられたステージに登場する。
凄くアイドルなコスチュームで。
しかも少し露出が多かったりする。
「じゃあ今日は楽しんで言ってね! 音楽スタート!」
エリナが合図をすると、魔導具なのだろうか? 大人が抱えてなんとか持てそうなサイズのスピーカーのような物から音楽が流れだし、そのまま踊りながら歌いだす三人。
意外と踊れてるし、歌えてるなと思いながら一通り見終わる。
「お兄ちゃんどうだった?」
「はい駄目!」
「えー!」
「お兄様、何がいけないのでしょうか?」
「ですよね旦那様。わたくし少し恥ずかしかったのですがエリナちゃんが……」
「衣装が駄目」
「ぶー! 可愛いのに!」
歌ダンスの内容はまあ問題ない。
もう少し練習すれば、収穫祭のステージで披露しても問題ないだろう。
でもその衣装は駄目だ。
ちらりとクレアを見ると、俺の視線に気づいたクレアがそっと目を逸らす。
なるほど、この衣装を着るのが嫌だったんだな。
「パパ! わたしもやりたい!」
「えまも!」
どうしよう。娘ふたりがアホ三人組に影響されてしまった。
まずは早急に衣装を直さないと。
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本作は小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
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