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第十二章 ヘタレ情操教育
第二十一話 魔物ふれあい広場
しおりを挟む各担当からの報告が終わり、本日の議題になる。
「ではまず畜産担当官からの議案です。畜産担当官!」
もうすっかりおなじみになった三人目がアイリーンに促されて立ち上がる。
「はいですじゃ。閣下、まずは資料をご確認くださいじゃ」
三人目は女官に目配せをすると、俺の前に束ねられた数枚の書類が置かれる。
「魔獣の展示?」
「はいですじゃ。ゆくゆくは動物園のようなものをと考えておりますじゃ」
「動物園か、受けるかな? 珍しい動物がいないと客が来ないようなイメージはあるけど」
「実際、領民に受け入れられるのかは未知数ですじゃ。なのでまずは魔鶏の雛、角を落としたホーンラビットの子、毒を抜いて、繁殖力を無くしたスライムあたりの危険のない魔物を集めて、ふれあい広場を作ろうと思いますじゃ」
「ふれあい広場ねー」
「多少手荒く扱われても平気ですじゃ」
「ほんと魔物って扱いが酷いのな」
「事実ですからの」
スライムふれあい広場はちょっと楽しそうかも。
完全にスーパーボールが大量に浮いてる浅いプールのイメージだけど。
「でも魔繁殖力の強いスライムはまだしも、魔鶏とかホーンラビットの子って簡単に捕まるのか?」
「魔鶏は一般の養鶏場で千匹に一匹程度の割合で混じりますじゃ。ホーンラビットの場合は同じく養兎場で千匹に一匹程度混じったり、ホーンラビットの巣の中にいたのを捕まえたり、とまあ色々ですじゃ」
……「色々」の部分を少し濁した感じで発言する三人目。
まあお腹の大きいホーンラビットを狩って腹を裂いたら子ホーンラビットがいたみたいな感じだろうな。ちょっと残酷な話だ。
「んで、魔物でも子どもの頃から育てると人間に懐くんだっけ?」
「ですじゃ。そのまま放置するのは危険じゃということで今までは処分してましたじゃ」
「それを動物園で飼育すると」
「普通の動物から魔物が生まれたり、つがいの魔物から魔物が生まれたりと、まあ魔物に関しては色々詳しくわかってない部分もありますでの。その研究も兼ねて飼育をしながら、ふれあい広場で領民の反応をみてみたいということですじゃ」
「突然変異だったり、普通に繁殖で生まれたりと魔物でも色々あるんだな。両者の違いとかっていうのは確かに気になる。突然変異が発生するプロセスもな」
「ですじゃ。そのあたりの研究はまったく進んでないのが現状ですじゃ。こればかりは異世界本でもわかりませんのでの」
「この世界のオリジナル要素だしな魔法とか魔物って。わかった、魔導遊園地の敷地にはまだ余裕があるし、ふれあい広場の設置を許可する」
「おお、ありがとうござますじゃ! して閣下、ふれあい広場設置と魔物研究に関する予算の話ですがの」
「そっちに関してはアイリーンと財務担当官と打ち合わせてくれ。足りなければ相談に乗るが、あまり期待しないように」
「わかりましたじゃ……」
予算は頑張って交渉しろと俺が言うと、三人目は小さな声で「あのアイリーンの嬢ちゃん相手に予算を分捕るのはしんどいのう。婆さん相手よりはマシじゃが」とぶつぶつ言いながら着席する。どんだけだよお前の嫁さんは。
その後は、各部門からの提案や新規開発などの、別名補正予算の奪い合いが行われる。
幸い予算は好調な交易で潤沢だし、別財布扱いながら、実質予算に回される領主家の試算はクレアの特許料で潤っている。
元々、今期の初めに十分な予算を各部門に回しているので、緊急的な対応以外に関しては、俺の気に入った事案を優先するとアイリーンに言われているのだ。
それは各部門も承知しているようで、補正予算を配る月の領主会議はいかに俺のツボを突くかというアピール合戦の場と化している。
三人目が魔物のふれあい広場と言い出したのも、魔物研究の予算を俺から引っ張るために、子ども受け、特にミコトとエマが喜びそうな要素を追加したんだと思う。
まんまと乗せられたけど。
「はい、じゃあ絵本の増刷と各地の民話や伝承なんかを収集する人員の編成、派遣、そしてそれを物語にして絵本にする作家の育成、学園で使う教科書のクオリティアップ、そしてそれに伴って学園の図書館を拡張をするっていう教育担当官の案を最優先でやるぞ」
「はい」
しれっと今月から教育担当官として会議に参加するようになった婆さんが、九月の補正予算の大半を獲得した。
絶対グロ絵本をこっそり流通させた上に、自身のコレクションに加えようとしてるな。
だが図書館に納入する絵本は俺の検閲を通った物だけという学園設立当初に作ったルールがあるので問題はないだろう。
魔物ふれあい広場をはじめ、各部門から出された案の中には興味をひかれた物があったのでいくつか許可は出したが、予算の額については婆さんの案以外はアイリーンと財務担当官に丸投げだ。
今月の予算には収穫祭の追加イベントですでに用途が決まってる分があるので、アイリーンや財務担当官の財布のひもは固いと思うが頑張れ。
「よしじゃあそろそろ飯にするか」
「「「わーい!」」」
もうこいつらの弁当に対する反応は無視しよう。
「今日のメニューはなんだろうな」
「今までの傾向とクレア様の御性格を考えると、今日はスタミナ丼だな」
「スタミナつければ婆さんに対抗できるじゃろか」
……三人目はもう哀れ通り越して通常営業だけど、二人目はなぜメニューがわかるんだ? マジックボックスにまだ入ってるから匂いとかしないはずなんだが。
「まだ残暑も厳しいだろうからと、クレアがスタミナ丼を作ってくれたぞ」
「おお! 流石クレア様! お心遣いありがとうございます!」
「うむ、読み通りだ」
「しかし婆さんは毎日肉を食ってるからのう。ワシはこのタイミング以外は滅多に食えないのに」
もうあの三人は黙っていられないのかな。
仕事ができるのはわかったからとやかくは言わないけどさ。
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本作は小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
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また、小説家になろう版は、序盤から新規に挿絵を大量に追加したうえで、一話当たりの文字数調整、加筆修正、縦読み対応の改稿版となります。
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