平和の狂気

ふくまめ

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旅は道連れ、世は情けなし②

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「まだ何かできることあるの?」
「…。」
「私、この旅で重要なこと、分かっているつもりです。」
「…重要なこと。」
「私たち、と言ってもロランさんは違いますが…。少なくとも、このままの三人で旅をするとなると、お尋ね者の旅になってしまうことは否めません。となれば、商業施設なんかを気兼ねなく使用することは難しいと思われます。」
「ほぅ?」
「それは例えばケガや病気になったとしても同じことです。」
「…なるほど。」
「気軽に施設を利用することができない以上、体調不良は非常に危険。命取りになります。そこで、重要となるのはケガや病気の予防!これに尽きます。」

医療施設、といってもそもそも一般人が利用できる程度などたかが知れているのだが、大手を振って歩くことのできない私たちが利用するなんてことはますますできないだろう。小さなケガでも、放置すれば大きな病気にだって…。破傷風なんかの恐ろしさは、ギルさんであれば痛いほど理解しているに違いない。

「予防って言ってもさぁ…どうするの?病気にならない魔法の薬でも作ってくれるの?」
「そういったものがあるならいいのですが、そうもいきません。でも、私たちは自然と対策をしながら生活をしてきているんですよ。食事です、栄養バランスのとれた食事。」
「食事だと?…確かに、君は手慣れているようだったが…。」
「食事を甘く見てはいけません。古くは『医食同源』と言われ、非常に重要視されるものです。自分の口に入れるものを適当にするべきではないと思います。兵士の方々も、豊かな食事があればやる気だって出ますよね?」
「それは、まぁ…。」
「精神面から見ても、食事は非常に大切なものです。私をこの旅に同行していただけるなら、食事に関する部分は全面的に私が担当させていただきます。…いかがでしょう?」

食事が待つ力に対して、少々ギルさんは懐疑的なようだが、実際のところものを食べなければ人間は死んでしまうのだし、せっかくならおいしいく体に良いものを、と思うのは自然だろう。こういった旅では、心身を癒す大事なものにもなる。しかしながら、食事の準備となると往々にして手間がかかってしまうもの。そこを一手に担うことを約束すれば、多少この旅での役割もはっきりするし、連れていくメリットがあるかどうか判断しやすいはず。どうかロランさんが食事作りを面倒と思うタイプの人間であってくれればいいのだが…。

「採用。」
「え。」
「いいんですか?」
「もちろんもちろん!元々、メアリちゃんにはそんな対価とか求めるつもりなかったし!まぁでもせっかく料理をしてくれるっていうんなら、お願いしちゃおうかなー。正直、俺様もそこそこ長く旅してるし、料理すんのもそこまで苦痛じゃないんだけど。」
「うっ…。」
「でもメアリちゃんの手料理だっていうなら、話は別ー!いやー楽しみだなぁ!」

やけに上機嫌で荷物を整理し始めてしまったロランさんに、肩の力が抜けてしまう。あまりにもあっさりと同行を認められてしまった。いや、彼に言わせれば私が一緒に旅をすることは最初から織り込み済みのようだったが。あんなにそれらしく話したのは、特に必要なかったというわけね。はぁ…。

「簡単な料理なら、俺にもできるが。」
「だーれが好き好んで野郎の手料理食うってんだよ!断然女の子の愛情こもった手料理の方がいいに決まってんの。大体、お前ら兵士連中の料理なんて濃ーい味付けでドカンと大盛、こんなもんだろ。」
「…なぜわかる。」
「専属の奴がいるなら別だが、訓練やら何やらで疲れた兵士がそんな手の込んだ料理できるかよ。とにかく腹に入りゃいいって考えなんだから、あーやだやだ。」
「兵士の本分は戦場にあると言ってもいい。食事にまで気を裂ける奴はそういない。」
「お前たちの仕事にケチつける気はねぇよ。全力を注ぐことにもな。お前に関しちゃ、名門の出の人間だったら料理する機会だってそう多くはねぇだろうし、そこんところは理解あるつもりよ?ただ俺様は、女の子の手料理が食べたいの!」

二人で言い合っている光景を見ながら、案外ロランさんはチョロいのでは?と思わずにはいられなかった。
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